IS 〜偽りの腕に抱くもの〜【本編完結】   作:sha-yu

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sha-yuカフェへようこそ。

紅茶?ここはブラックコーヒーしか置いてないんだ。


今回、途中で三人称場面を挟みます。


88話

 

更衣室へ向かう途中にある渡り廊下を一夏と並んで渡っていると、なにやら箒がしゃがみこんでいる。

 

 

「箒?」

 

「なにしてるんだ?」

 

 

声をかけると、箒はしゃがんだままこちらに振り向いた。

 

ちらりと、なにやらメカメカしいうさ耳が地面から生えているのが見えた……なるほどねぇ。

 

 

「一夏に将冴か。コレが……な……」

 

 

地面から生えたうさ耳を指差す箒。よく見ると、抜いてくださいと書いてある。これはもしかしなくても、あの人だよね……。

 

 

「あぁ……これは……」

 

「確実に……」

 

「どうする?」

 

 

3人で腕を組み考える。

 

が、すぐにみんなは結論を出した。

 

 

「無視しよう」

 

「スルーしよう」

 

「そっとしておこう」

 

 

箒、一夏、僕の順に結論を言葉にする。

 

そして最後に三人揃って……

 

 

「「「よしっ」」」

 

「よしっ、じゃないよ!」

 

 

どこからともなく束さんが現れた。まぁ、いるのには気づいていたし、何かしらのサプライズ的なことをするためにこんなことしたんだろうけど、相手が悪かったね。

 

 

「やっぱりいたんですね。束さん」

 

「しょーくん、束さんがいるのわかってたでしょ!反抗期だ!私のしょーくんが反抗期だ!」

 

「久しぶりです束さん」

 

「やぁやぁ、いっくん。本当に久しぶりだねぇ。ずいぶんと男らしくなったね〜。さすがはちーちゃんの弟というかなんというか」

 

「はは、束さんは相変わらずですね」

 

「むむ、それはどういうことかなぁ〜?」

 

 

一夏と束さんが談笑しているのを、僕と箒は眺めていた。箒の顔は、困惑の色に染まっていた。

まぁ、箒からすれば、接し方に困るであろう人だからね。さっき無視しようと言ったのは、できるだけ関わりたくないからだろう。

 

重要人保護プログラムを受けなければいけなくなったのは束さんがISを開発したせいだし、多分今の今まで全く連絡を取ってなかったんだ。

 

多分、束さんも接し方を迷っている。だから、今は一夏と話して気持ちに整理をつけようとしている。

 

このうさ耳仕込むくらいなら、仕込んだときに覚悟しておけと言いたいけど。

 

と、ここで箒が先に覚悟を決めたようだ。キリッとした表情で、束さんに近づく。

 

 

「姉さん。お久しぶりです」

 

「箒ちゃん……お、おひさー!元気にしていたかな、かな?」

 

「はい、おかげさまで……」

 

「……」

 

 

会話が止まってしまう。

 

しょうがない。2人で話すしかない状況にしてしまおう。

 

 

「箒、束さん。僕と一夏はこれから海に行ってきますね」

 

「ま、待て!私も……」

 

「箒。わだかまりを取るなら今しかないよ」

 

「将冴……」

 

「束さんも、そのために来たんでしょ?」

 

「しょーくん……」

 

 

これだけ言えばもう大丈夫だろう。

 

 

「ほら、一夏。着替えに行こう。車椅子押して」

 

「お、おう」

 

 

解決してくれればいいけどね……。

 

 

ーーーーーー

ーーーー

ーー

 

将冴と一夏が去った後、箒と束は数秒の沈黙し、二人同時に口を開いた。

 

 

「姉さん」「箒ちゃん」

 

 

言葉が被ってしまい、また沈黙。

 

 

「……姉さん」

 

「な、なにかな?」

 

「私は、姉さんを許せませんでした……」

 

「……」

 

「でも、このままではいけないと思います」

 

 

箒は束の手をとり、束の目を見つめる。

 

 

「姉さんは、私のたった一人の姉です。だから……」

 

「箒ちゃん……」

 

 

束の目に涙が滲む。

箒も同様に。

 

 

「私は、姉さんを許します」

 

「うっ……ふぇぇん!箒ちゃぁぁぁん!」

 

 

束が箒に抱きつき、箒は優しく束を受け止める。

 

 

「箒ちゃん……私、ずっと謝らなきゃって……箒ちゃんに……」

 

「姉さん……」

 

「本当にごめんね……ごめんね……」

 

「いいんですよ。これからは昔のように……」

 

「うん……」

 

 

涙を拭い、体を離す2人。

お互いの顔を見て微笑みあう。

 

 

「あ、そうだ。箒ちゃん、明日誕生日だよね?」

 

「姉さん、覚えてくれていたんですか?」

 

「もちろん!たった一人の妹だもん。ちゃんとプレゼント用意してきたんだよぉ〜。明日楽しみにしていてね!」

 

「はい。ありがとうございます、姉さん」

 

 

ーーーーーー

ーーーー

ーー

 

「箒と束さん。2人にして良かったのか?将冴」

 

 

水着に着替え終わり、一夏とビーチに向かっ並んで歩いている途中で、心配そうに一夏が聞いてくる。

 

あ、僕は今義足しかつけていない。砂浜では、僕の車椅子はまともに動きそうにないからね。

 

 

「二人の問題だからね。僕らが口を挟んでいい問題じゃないさ」

 

 

箒は前のように、力ばかり求めたりしないし、束さんはずっと箒のことを心配していた。

 

まぁ、なるようになるさ。

 

 

「……そっか。将冴がそう言うなら、そうかもな」

 

「あんまり、僕のことを過信しない方がいいと思うけどね。さ、そろそろ海につくよ」

 

 

砂浜に足を踏み入れると、すでに海で遊んでいたクラスメイトが、目ざとく僕らを見つけた。

 

 

「あ、織斑君に将冴君だ!」

「さすが男の子……いい身体してる……」

「し、将冴君、なんて肉体美……」

「は、捗るわ!薄い本が厚くなるぅ!!」

 

 

はは……ISスーツ着てる時はおなか出してるからみんな気づいていると思ってたけど……普段は車椅子に座ってたり、バーチャロン展開してたりするから、そこまで見てないのか……。

 

 

「ち、注目の的だな」

 

「まぁ、たった2人の男子だからね」

 

「それもそうだな……」

 

 

はぁ、とため息をつき肩を落とす。

 

と、こちらに向かって誰かが走ってくる。

 

 

「いぃーちぃーかぁぁーーーー!!」

 

「り、鈴……わっぷ!?」

 

 

鈴が飛び上がり、一夏の肩に手をつき空中で半ひねり。そのまま一夏に肩車した。

 

 

「お、おい鈴!なんなんだよ」

 

「おぉ、高い高い。ほらほら、早く海へゴー!」

 

「なんだってそんな……お、おい暴れるなって!わ、わかったから!」

 

「はは、早速だね……一夏」

 

 

一夏は僕にごめんな、と一言断りをいれ、鈴と一緒に海の方へ向かっていった。

 

鈴のアプローチも大胆だな。それでも一夏は気づかないと思うけど。

 

 

「さて、僕はどうしよっかな」

 

 

泳ぐのは……義肢のせいでうまく浮かぶことも難しいだろうし、パラソルの下で寝ていようかな。バスの中では寝れなかったし。

 

空いてるパラソルを見つけ腰を下ろす。

何人かの女子が僕の方をチラチラと見てくるけど、この体だから誘うのを躊躇っているみたいだ。

 

まぁ、しょうがないか……。

 

 

「あ、やなしーだ!おーい、やなしー!」

 

 

この声は、布仏さん。

声のする方を見ると、なんか着ぐるみのようなものがこちらに近づいてきた。

 

え、あれなに?隣に簪さんいるけど……。

 

 

「む?やなしー、どうかした?」

 

 

よく見たら布仏さんだ!え、なにそれ?水着なの?

 

 

「将冴君……こんにちは……」

 

 

ワンピースタイプの水着を着た簪さんが恥ずかしそうに挨拶をしてくれる。

 

 

「こんにちは、簪さん。布仏さんも」

 

「やなしーは遊ばないの?」

 

 

ズバッと聞いてくるね。

まぁ、あんまりよそよそしい方僕も嫌だからね。

 

 

「この体だからね。泳ぐのも難しくて」

 

「なんだかかわいそうだねぇ〜」

 

「ちょっと、本音!」

 

「いいよ、簪さん。僕は見てるだけで楽しいからね。二人は気にしないで遊んでおいでよ」

 

 

二人はやや戸惑いながらも、海の方へ向かっていった。

 

僕、なんだか嫌な奴かも……。

 

 

「将冴ー」

 

「ん?」

 

 

また僕を呼ぶ声。今度はあのオレンジ水着を着たシャルと……

 

 

「なにそのタオル怪人?」

 

 

大量のタオルにつつまれた何かが、シャルの隣をもそもそと歩いていた。

 

「ああ……これは……」

 

「に、兄さん……」

 

「ら、ラウラだったの?」

 

 

なんだってそんな……。

 

 

「水着着て海に来たら、いきなり恥ずかしいって言い始めて……将冴からも何か言ってあげてよ」

 

「何かって……」

 

 

随分と大雑把な……うぅん、どうしたものか。

そう言えば……

 

 

「僕、ラウラの水着姿見てないんだよね……見せて欲しいなぁ。僕が選んだ水着」

 

 

これでどうだろう。

案外、このセリフ恥ずかしいんだけど……。

 

 

「う……し、しかし……」

 

 

駄目か。

 

 

「あぁ、もう。ラウラ、ウジウジしないの!えい!」

 

 

シャルが耐えきれなくなったのか、ラウラのタオルを引っぺがした。

 

 

「なっ!?シャルロット何を!?」

 

「ほら、可愛いでしょ?将冴」

 

 

タオルを剥がされたラウラは、僕が選んであげた水着を見事に着こなしており、シャルに結ってもらったのか髪をツインテールのようにしていた。

 

 

「うん、可愛いね。ラウラ」

 

「え、あ、その……ぁりがとぅ……」

 

「将冴もそう思うよね!本当にラウラ可愛くて可愛くて」

 

「シャルロット……抱きつかないでくれ……」

 

 

ふふ、この2人、すっかり姉妹みたいだな。

 

 

「兄さん助けてくれ……」

 

「シャル、少し離れてあげなよ」

 

「えぇー、どうしよっかな。むふふ」

 

 

ああ、だめだこりゃ……。

 

 

「そう言えば、ハルフォーフ先生は?一緒じゃなかったの?」

 

「うん。一夏と来たからね。そろそろ来るんじゃ……」

 

「将冴」

 

 

お、噂をすれば……。

 

 

「あ、クラリッ……サ……?」

 

 

二度目のタオル怪人だった。




水着回はもう一回続くんじゃよ。
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