薬師の末裔が鬼を狩る   作:Haruyama

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鬼殺隊には9人の柱がいる。
しかしながら、今日までお館様の御意志により隠されていた柱がいた。

その者の名は―…


1. 鬼狩り

―産屋敷邸―

 

 

 

「よく来たね、亜寿佐」

「…用件は?」

「近々ね、柱合会議を開くから亜寿佐にも参加してほしいんだ」

 

 

 穏やかな声と顔で、お館様―…産屋敷 耀哉は言う。彼はお館様から背を向けたまま、空を見上げていた。

 

 

「面倒―…「今回はね、例の子達も呼んでいるんだ」…は?」

 

 

 人の言葉を遮り伝えられたのは、「例の子達」の参加。例の子達とは、癸の竈門炭治郎とその妹であり鬼の竈門禰豆子。境遇は彼と似ており、竈門炭治郎も家族を無惨に殺害されたと聞く。

 

 

「色々興味深い事を聞けるかもしれないよ。ぜひ参加してくれないかい?」

 

 

 彼は少しだけ顔をお館様の方に向ける。

 

 

「それに、君を皆に紹介する時が来たと思っているだけなんだけどね」

 

 

 4年前のある出来事を機に、半年に一度の柱合会議はおろか、鬼殺隊の前にも姿を見せることがなくなったため、正直、今代の柱達とは面識がない。

 

 

「…参加するかどうかは、当日の様子を見て判断する」

「そうか、前向きな返事嬉しいよ。とりあえず当日はここに来てくれるんだね?」

「間に合えばな」

「待ってるよ」

 

 

 そして彼は、屋敷を後にした。

 

 

――…

 

 お館様と柱合会議の話をしてから、数日が経過していた。彼は日常的に鬼狩りをしていた。

 

 

「北北東ノ町、鬼ノ気配!向カエ!向カエ!」

 

 

 通達手段は白鴉の壱縷。鬼殺隊に入隊してからの相棒である。

 

 

「…柱合会議はいつだ?」

「珍シイネ、亜寿佐ガ参加スルノ!コレ片付ケタラ間ニ合ウ」

「ある兄妹が来ると聞いたからな」

「ドンナ人間カ、楽シミダネ!トリアエズ、鬼ヲ倒サナイト!」

「あぁ、俺自身の為にもな」

 

 

 腰に差す二刀に触れて、笑みを浮かべる。

 

 

「今回ノ鬼、十二鬼月ノ元・下弦ダソウダ」

「…そうか。相手が何者であろうと殺すまでだ」

 

 

 そんな話をしながら駆けていると、気づけば目的地へと到着する。

 

 鬼の気配や臭い、音を瞬時に捉えて、出没しそうな場所の候補を絞っていく。あとは相手側に気付かれずに、夜まで時間を潰すまで。

 

 

「…この刀身も血に飢えているようだな」

 

 

 見つめる刃は、血とは無縁なくらいに純白に染まっていたが、その輝きは異様に思えるほど白光していた。

 

 

 

 

―夜―

 

 静かに空気と同化しつつ、目的地へとゆっくりと歩みを進める。そこには今まさに、女を襲おうとしていた鬼がいた。

 

 

「テメェの相手は俺だよ」

 

 

 そう、相手の耳元で声を掛ければ、ようやくこちらの存在に気付き驚く。その隙に捕らえられていた女は逃げ出し、鬼は怒りをこちらへと向け攻撃を仕掛けてくる。が、刀を抜かずに相手を見据えるだけ。

 

 

「なんで!なんでだ!攻撃が当たらねぇ!!この野郎がぁぁ!!」

「遅ぇ」

 

 

 相手を煽り、わざと怒らせる。

 

 

「殺してやる、殺してやる、殺してやる!」

 

 

 相手にとって渾身の一撃を仕掛けてくるとわかり、ようやく柄に手を添える。しかし初戦雑魚に過ぎない。相手の姿を見届けずとも、殺せてしまう。

 静かに抜刀したその刃は、日中の陽を彷彿させるほど自然白光している。そのあまりの輝きに、相手は目をつむる。

 

 

「血の呼吸、壱ノ型、血飛沫」

 

 

 刀の波動は、鬼へと降り注ぎ容赦なく肉体を切り裂いていく。そしてその場を血黒い鮮血が舞い、彼が握る白刀へと吸収されていく。刀を鞘に戻し、瞼を閉じて深呼吸をする。鬼の血が刀身を通して、自身の身体に流れ込んでくるのを感じる。

 

 

「…鬼の血を取り込まないと、俺は地に堕ちる…。狂った世界だよ、ホント」

 

 

 空は満天の星が輝いていた。

 

 

――

「オ疲レ、取リ込ミ終ワッタ?」

 

 

 壱縷はどこからともなく飛んできて、肩に乗る。

 

 

「あぁ、次は何処だ?」

「エ?マダ狩ル余裕アルノ?」

「鬼一体じゃ物足りねぇ、会議は明日だろう?夜はまだ長ぇんだ、殺れる」

 

 

 呆気なく殺した鬼に対し、物足りないという彼に、壱縷は普段通りの様子で安堵する。どうやら彼は気分がいいようだ。

 

 

「ナラ、途中鬼ノ巣窟ヲ殲滅シテ!」

「あぁ、いいだろう。複数相手の方が殺り甲斐があるってもんだ」

 

 

 そして地面を蹴り、鬼の巣窟と呼ばれる山へと走り出した。

 

 

―――――

 

 山からは鬼の臭いが充満し、生々しい音が響く。ゆっくりと瞼を伏せ、現在ここにいる鬼と鬼殺隊の人数を把握する。

 

 

「雑魚鬼50、異形2、元下弦1」

「多イナ!」

「鬼殺隊の隊士20、負傷者5、死亡者――…流石にまだいねぇか」

「隊士ガイルノハ、亜寿佐ニトッテ邪魔?」

 

 

 嫌味ったらしく言う壱縷に、彼―…亜寿佐は苦笑い。どちらでもない、というのが顔の表情からでも読み取れる。

 

 

「…殺るに越したことはない」

「私ハココデ待機スル」

「あぁ、分かった」

 

 

 足音を立てずに森の中へと亜寿佐は入っていく。だが地面を走っていてもキリがないため、木々を飛び移って移動を開始した。

 

 早速異形の鬼を見つけ、気づかれないように背後へ回り、抜刀し構える。

 

 

「血の呼吸、弐ノ型、五月雨」

 

 

 相手がこちらに気付いて振り向く間もなく、首を斬り落としそのまま肉体に白刀を突き刺す。

 

 

「…俺の糧となれ」

 

 

 肉体が塵と成す前に、白刀に鬼の血を吸収させる。その工程を終わるや否や、すぐさま次の目的地へと向かう。

 

 

 少し離れた所に暴れまわる元下弦の鬼がいた。が、運悪く一般隊士もいる。一般隊士は血鬼術に惑わされて、間合いの内側に入れていない。その隊士達や鬼に気付かれぬよう、気配を消し近づく。

 

 

「…苦戦しているようだな」

 

 

 急に現れた―…否、突如人間の声が聞こえたことで、鬼も隊士も身動きを止めた。

 

 

「特別に手を貸してやるよ」

 

 

 普段であれば一般隊士とも関わろうとしない亜寿佐は、余裕の表情を浮かべて呼吸を整えると、刀を構える。

 

 

「血の呼吸、参ノ型、血華」

 

 

 血華は、血の呼吸の中でも残虐な技の一つ。鬼の身体を内部から花開き、穴という孔から血を噴き出したと同時に自らの血により蔓が生み出され、首を絞め落とし殺す。そしてその蔓もまた、血と成し塵と成す。 

 その塵は当然の如く、純白の刀身へと吸収されていく。まさに儚くも恐ろしい技。隊士達は目の前で起きた光景に理解できないようで固まっている。

 

 

「…じゃ、用は済んだんで」

 

 

 呼び止められる前に、さっさとその場から離れる。隊士達が当たりを見渡した時、50ほどいたはずの鬼達が既に塵と成していたのを目撃する。亜寿佐はたった1人でそれら全てを仕留めていたのだ。

 

 

 

 再び森の入口へ帰ってくると、壱縷が待ち構えていた。

 

 

「…結局全部殺シタンダネ」

「…ただの気まぐれだ」

 

 

 亜寿佐は面倒くさそうに頭を掻きながら、鬼の血を吸収して紅く染まった白刀を鞘に納める。

 

 

「戻ルヨ」

 

 

 そんな亜寿佐に気をよくした壱縷は先導していく。その様子に亜寿佐は微かに笑みを浮かべると、足早で本部へと向かうのだった。

 

 

 

――…

 

 途中寄り道をしたため、産屋敷邸に到着したのは明け方。既に屋敷内からは人の気配がしていた。

 

 

「希逗沙ノ元ニ寄ラナクテイイノカ?」

「これが終わったらな」

 

 

 そう言って亜寿佐は門を開け、お館様がいるであろう場所へと歩みを進めた。そこでは、

 

 

「いつまで寝てんだ!!さっさと起きねぇか!」

「?」

 

 

 誰かの怒号が聞こえ更に、

 

 

「何だぁ?鬼を連れた鬼殺隊員っつうから派手な奴を期待したんだが、地味な野郎だなおい」

「うむ!これから!この少年の裁判を行うと!なるほど!」

 

 

 無駄にでかい声。ジャラジャラと装飾品が鳴り響く。

 

 

「…何だ、この人た―…「また!口を挟むな馬鹿野郎!!誰の前にいると思ってんだ!柱の前だぞ!」

 

 

 彼らの死角からその様子を見守る亜寿佐は、少年の頭を押さえられていることに気付く。

――そしてその少年こそが、目的の人物であると。

 

 

「ここは鬼殺隊の本部です」

 

 

 凛とした声が聞こえ、そちらに目を向けると4年前にいた花柱・胡蝶カナエの妹である、胡蝶しのぶがいた。どうやら4年の年月を経て彼女は柱に昇格していたらしい。

 

 

「裁判を始める前に、君が犯した罪を説明―…「裁判の必要などないだろう!鬼を庇うなど明らかな隊律違反!我らだけで対処可能!!鬼諸共斬首する!」

 

 

 無駄にでかい声がここまで届く。

獅子のような金髪に、炎を彷彿させる羽織。彼が炎柱の名家・煉獄家の人間。名は確か―…煉獄杏寿郎。

 

 

「ならば俺が派手に首を斬ってやろう。誰よりも派手な血飛沫を見せてやるぜ。もう、派手派手だぁ」

 

 

 一言一言に、「派手」という余計な単語を使う、ガタイのいい男。確か、宇髄天元。

 

 

「あぁ、何とみすぼらしい子供だ。可哀想だ。生まれてきたこと自体が可哀想だ」

 

 

 白目、数珠、その巨体。初対面の相手に対し存在否定にもほどがある。悲鳴嶼行冥という男、柱の中では最古参とも言われ、鬼殺隊最強の異名を持つ。

 

 

 1人視線が空へと向けられている少年―…時透無一郎。彼は目の前の事にすら興味ないのだろう。

 

 

 そして亜寿佐にとって、目的の人物である竈門炭治郎と呼ばれた少年は、辺りをキョロキョロと見回す。何かを探しているようだったが、その様子を見ていた隠は咎める。

 

 

「おいお前。柱が話をしているのにどこを見ている。この御方達は、鬼殺隊の中でも最も位が高い9名の剣士だぞ」

「(…俺は何処にも属さねぇ、陰の柱…)」

 

 

 亜寿佐は彼らの会話に耳を傾けながらも、空を見上げる。

 

 

「殺してやる」

「うむ!」

「そうだな、派手にな」

 

 

 物騒なことを言う柱達を前にしても尚、炭治郎は周りを見渡す。

 

 

「おい!」

「禰豆子…、禰豆子…、どこだ…!?」

 

 

 妹を気に掛ける、優しい兄ということか。

 

 

「禰豆子!善逸!伊之助!村田さん!」

 

 

 炭治郎は頻りに誰かの名前を必死に叫ぶ。

 

 

「そんなことより、冨岡はどうするのかね?」

 

 

 炭治郎は不意に声がした方を見上げる。

そこにいたのは、白黒の羽織を着て蛇を巻き付けた男。

 

 

「拘束もしていない様に俺は頭痛がしてくるんだが。胡蝶めの話によると、隊律違反は冨岡も同じだが。どう処分する、どう責任を取らせる。どんな目に遭わせてやろうか、何とか言ったらどうだ冨岡」

 

 

 グチグチと言う男はそう言い、指をさす。その先には、1人佇んでいる人。半々羽織で恐らく彼が、冨岡義勇なのだろう。だが、当の冨岡は何も語らない。

 

 

「まぁいいじゃないですか。大人しくついて来てくれましたし。処罰は後で考えましょう。それよりも私は、坊やの方が気になるんですが。鬼殺隊士の身でありながら、鬼を連れて任務にあたっている。そのことについて、当人からの説明を聞きたい。勿論このことは、鬼殺隊の隊律違反にあたります。そのことは知っていますよね?」

 

 

 胡蝶の言葉に、炭治郎は顔を上げているだけ。

 

 

「竈門炭治郎君。何故鬼殺隊士でありながら鬼を連れているのですか?」

 

 

 その瞬間、派手と豪語していた男―…宇髄天元は背中の刀に手を伸ばした。

 

 

「聞くまでもねぇ」

「ゆっくりでいいですから、話してください」

「…、俺の、俺のいもう、がはっ!げほっ!」

 

 

 何かを訴えようとした炭治郎は咳き込む。どうやら顎がやられているのだろう。そんな彼に胡蝶は近づき、水を差し出す。

 

 

「水を飲んだ方がいいですね」

 

 

 炭治郎はその言葉を聞き、差し出された瓢箪に口を付ける。

 

 

「顎を痛めていますから、ゆっくり飲んでください。鎮痛薬が入っているため、楽になります」

 

 

 炭治郎は水を飲み、息を吐く。

 

 

「怪我が治っているわけではないので、無理はいけませんよ。…では、竈門炭治郎君」

 

 

 その言葉に炭治郎は顔を上げる。

 

 

 

「鬼は俺の妹なんです。俺が家を留守にしている時、家が鬼に襲われて!妹は鬼になったけど、人を喰ったことはないんです。今までも、これからも!人を傷つけることは絶対にしません!」

「――」

 

 

 亜寿佐は彼の言葉に目を見開いた。ようやく待ち望んでいた存在に出会えたと。

 

 

 

―――

 

「くだらない妄言を吐き散らすな。そもそも身内なら庇って当たり前。言う事全て信用できない。俺は信用しない」

「あぁ、鬼に憑りつかれているのか。早くこの哀れな子供を殺して解き放ってあげよう」

「聞いてください!俺は禰豆子を戻すために、剣士になったんだ!禰豆子が鬼になったのは2年以上前の事で、その間禰豆子は人を喰ったりしてない!」

「(鬼になったのは2年以上も前…、一体どうやって人の肉を得ずに生き永らえている?)」

 

 

 亜寿佐は竈門兄妹に興味を持った。やり方次第では、自身の為に活かせるから。

 

 

「話が地味にグルグル回ってるぞアホが!人を喰ってないこと。これからも喰わないこと。口先だけでなく派手に証明して見せろ」

「何だっけあの鳥。えーっと…」

「…あのぉ、でも疑問があるんですけど。お館様がこのことを把握してないとは思えないです」

「「うーん」」

「勝手に処分しちゃっていいんでしょうか…?」

 

 

 まともな人間が一人いて、助かったわ。

 

 

「いらっしゃるまで取りあえず待った方が―…」

「妹は!妹は俺のために戦えるんです!だからっ!」

 

 

 その時、また別の柱が登場した。

 

 

「オイオイ、なんだか面白そうなことになってるなァ。鬼を連れた馬鹿隊員ってのはそいつかい?」

 

 

 その男の手には、何やら木箱のようなもの。道具箱だろうか。 だが炭治郎はその男が持っている木箱を見て目を見開いている。どうやら探し物はアレだったようだ。

 

 

 

「一体全体どういうつもりだァ?」

「困ります不死川様!どうか!箱を手放してくださいませ!」

 

 

 後から来た女隠が言う。すると胡蝶が静かに立つ。

 

 

「不死川さん、勝手なことはしないでください」

「鬼が何で坊主?鬼殺隊として人を守るために戦える?そんなことはなァ、ありえねぇんだよ馬鹿がぁ!」

 

 

 不意に、不死川が刀を抜いた。 それを見た亜寿佐は盛大に舌打ちをすると、刀を抜き、不死川の刀を受け止めて間合いに入った。

 

 

 

「!?」

 

 

 思わぬところから、見ず知らずの男が自身の刀を受け止めたことに、驚いているようだ。 後ろに控えていた柱達からも動揺の声が聞こえる。

 

 

「誰だ!?テメェ!!」

「当主の意向を無視して愚行に走るか?随分と幼稚な柱だ」

 

 

 交じり合った刀がギチギチと音を立てる。

 

 

「何故一般の隊士がここにいる!?」

「あの方、不死川さんの刀を受け止めました」

「…さっさと刀を下ろせ」

「テメェは誰だって聞いてんだよ!!」

 

 

 不死川の問いに一切答えることはせず、相手の目を見ようともしない。

 

 

「言えねぇのかよ!?よく聞け新人!!今は柱合会議だ!テメェのようなもんが立ち会える場所じゃねぇんだ!さっさと散りやがれ!!」

 

 

 黙っていれば随分と適当なことを言われる。少なくとも、ここにいる連中よりも4年以上前に鬼殺隊にいるし、第一―…彼自身も「柱」の1人だ。

 

 

「…新人じゃねぇし」

 

 

 ため息交じりでそういえば、尚も動揺の声が聞こえてくる。

 

 

「だったら尚更、こんな真似はやめるんだな!」

 

 

 不死川は亜寿佐の刀を弾くと、彼の足に刀を振り下ろした。だが、それを避けて炭治郎の隣に着地する。

 

 

「…ガキだな、ギャーギャー喚いて」

「ふざけてんのかテメェ」

 

 

 新人面の相手に、ガキ扱いされたことに対して、心底苛立ちを見せる不死川。睨みがより一層強くなった。

 

 

「勝手な行動は慎め」

「偉そうに言いやがって。テメェは誰なのか聞いてんだろ。答えろや」

 

 

 不死川は刀先をこちらに向けて言う。

 

 

「不死川さん、隊士同士の争いは隊律違反です」

「だから何だァ?こいつはこの馬鹿ガキを庇うんだとよォ?そんな奴は鬼殺隊員じゃねぇ」

「…あなたも。お名前ぐらいは教えていただけますか?」

 

 

 胡蝶は亜寿佐に目を向ける。だがどうやら、4年前に会った時から風貌が一変しているため、分からないようだった。

 

 

「俺は―…「もういい!時間の無駄だァ!!」

 

 

 そう言うと不死川は、先程やろうとしていたように、木箱に刀を突き刺した。

 

 

「んぁ!!」

 

 

 聞こえたのは女の子の呻く声。貫いた刀から見えたのは血液。 それと同時に香る、鬼の気配。まさか―…

その瞬間、隣にいた炭治郎が立ち上がり、亜寿佐の前に立った。

 

 

「俺の妹を傷つける奴は!柱だろうが何だろうが許さない!!」

 

 

 あの木箱の中に、彼の妹がいる。

 

 

「はっはっは!!」

 

 

 不死川は刀に着いた血を振り払う。

 

 

「そうかい!良かったなァ!!」

「うあああ!」

 

 

 炭治郎は唸り声を上げると、不死川へと駆け出した。そこで冨岡が初めて声を上げる。

 

 

「やめろ!もうすぐお館様がいらっしゃるぞ!」

 

 

 その言葉で不死川の動きが一瞬止まり、炭治郎は不死川がギリギリ振るった刀を避けて、彼に頭突きかました。

 

 

「…ほう」

 

 

 そして炭治郎は反動で倒れ、不死川も鼻血を出しながら倒れた。

 

 

「ぶふぉっ……、すみません」

 

 

 その光景に噴き出すピンクの髪をもつ甘露寺蜜璃。周りの柱達が彼女に注目する。

そうこうしているうちに、炭治郎は木箱を守るように前に立つ。

 

 

「…てめぇっ」

「(冨岡が横から口を挟んだとはいえ、不死川に一撃を入れた)」

「善良な鬼と悪い鬼との区別もつかないなら、柱なんてやめてしまえ!!」

「(一理ある)」

 

 

 珍しく炭治郎の言葉に同意を示す亜寿佐。

 

 

「…てんめぇ…、ぶっ殺してやる」

 

 

 不死川は刀を握り立ち上がると、炭治郎の首に刀を向けた。

 

 

――――

 目の前にいる柱の1人が、俺の首に刀を向けている。その目は殺気立っており、本気で怒っている匂いがする。

 怯むな…、この場で禰豆子を守ることができるのは俺しかいない。絶対に屈するな!そう決意し目の前にいる男を睨みつける。

 

 

「…そこまでだ」

 

 

 まさに鶴の一声。緊張感が漂っていたこの場に、落ち着いた声が響いた。

 

 

「当主の許可なしに彼に手を出すのは、俺が許さない」

 

 

 そう言って俺と男の間に立ったのは、先程も俺を守ってくれた白髪の人だった。紫色の瞳を持った端正な顔立ち。時折禰豆子以外にも鬼の匂いを感じるのは、気のせいだろうか。

 他の柱達が動揺する様子から、彼は柱ではないらしい。では一体何者なのだろうか?

 

 

――まだ敵か味方かはわからない。

 

 

 先ほども、木箱に入っているのが禰豆子だと知らずに守ってくれたようだったから。

 

 

「…またテメェかよ。出しゃばってくんな、失せろ」

「血の気の盛んなガキだな。当主が来る前のこの無礼極まりない行動。到底柱のすることとは思えん」

「…んだとテメェ…」

 

 

 明らかに男の匂いが変わった。これは、目の前の獲物を狙う猛獣の匂いだ。後ろにいる柱の数人も、不死川を止めようと前へ踏み出そうとしている。

 

 

「…こんな偏屈で怒るのかよ」

「黙れ!!その餓鬼を庇うということはすなわち!鬼を守るという事だァ!!これは明らかな隊律違反だよなァ!!」

「どちらでも構わないだろう。俺はただ、当主の言葉を待てって言ってんだけど?」

「さっきからお館様の事を"当主"呼ばわりするとはなぁ…。一介の隊士如きがァ!」

「ウゼェんだよ。勝手なことはするな」

 

 

 亜寿佐自身も苛立ちを見せ、腰に差している刀に手を添える。

 

 

「当主の目を血で穢すつもりか」

「テメェ!!一度分からせた方がいいみたいだなァ!!」

「お館様の、御成です」

 

 

 いつの間にか縁側に立っていた白髪少女達が口を開いた。この瓜二つな2人は、最終選抜の時にいた2人組と同一人物なのだろうか? 柱達は少女たちの方に向き直る。そして、奥から1人の男が出てきた。

 

 

「よく来たね」

 

 

 顔を半分以上覆う火傷のような爛れ。光のない瞳。聞くものの心に安らぎをもたらす声。

 

 

「私の可愛い剣士たち」

 

 

 彼こそが、産屋敷家第97代目当主、産屋敷耀哉である。

 

 

 

 

 

 

 

-----------人物紹介-----

 

 

名前:緋威羅木 亜寿佐(ヒイラギ アズサ)

年齢:16歳

身長:174cm

性格:感情を表に出すことがない、洞察力は鋭く、一方で自己犠牲の一面を持つ

容姿:白髪を後ろに1つ結、瞳が赤紫色

武器:血を彷彿させる赤黒い刀身と、純白に染まった刀身をもつ二刀流

 

 

詳細

・血の呼吸を使用する血柱。

・毒や薬が効きにくく、自然治癒力といった、鬼のような一面もある。

・柱達とは今日まで顔を合わせることがなく、神出鬼没。

・鬼に対して理解を持ち、鬼殺隊員としては異端者だが、時に冷酷無慈悲な一面も兼ね備える。

・中性的な顔立ちであり、体格もそれなりにあるが故、性別不詳扱い(一人称:俺)

・鬼を殺し、鬼の血を刀身に吸収させることが出来る白刀(妖刀)を用いる。

 

 

 

名前:緋威羅木 希逗沙(ヒイラギ キズサ)

年齢:11歳

容姿:濃藍色(暗い藍色)の髪に、浅葱色の瞳

 

詳細

・生まれながらにして身体が弱く、太陽の下に出ることが出来ない

・産屋敷邸で面倒を見てもらっている

 

 

 

緋威羅木一族

 

千年前から鬼舞辻無惨とは因縁の関係であり、鬼化しない血族であるが故、戦国時代以降は根絶やしにされていた。

代々初子は鬼舞辻無惨を殺すために、心身共に強く優れた能力を持って生まれ、2番目はそれに劣る。鬼殺隊創立以前まで、産屋敷一族を陰ながら守り続けていた一族でもある。

尚、初子は代々短命とされ、20歳以上生存した記録はない。

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