シャーレの決戦兵器   作:わんぱくフォックスですまない

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第12話 えっ、復活?

おはようございます。現在朝8時。場所はミレニアムサイエンススクール、エンジニア部の部室です。

バチくそ暇だった検査入院の翌日です。傷も完治しくまなく検査しても問題はなく、すこぶる元気というので釈放されました。うーん、シャバの空気はうまいなぁ!

 

本来心配をかけた各方々に(主にアビドス)に先に出向くのが筋ではあるんだけど、武器が支給用の拳銃一丁でいるのは心もとなく先に装備を預かっているエンジニア部の方に来た次第。

ベットでゴロゴロしながらウタハさんとユウカさんにはアポとってあるので問題ない。

 

 

 

 

「”プチカタストロフ”の方は清掃と動作チェックはできているよ。本来はオーバーホールしていろいろしたいところだが、悔しいことに未だその機構が理解できなくてね。時間がかかってしまうのは忍びないから特にいじらなかったよ。」

「それに初めてその銃を見たときに沸いたインスピレーションもあって、私たちなりに再現しようとしている所だからいつか驚かせてみせるよ。」

 

「ありがとう、ございます。ウタハさんたち、マイスターの方でも、わからないなんて、お手上げですね。よく分からないものを、見てもらって、感謝しかないです。ご迷惑をおかけします。」

 

「いいや、私はマイスターとして以前にミレニアム生だ。わからないものを研究し、トライ&エラーを繰り返し理解する。それこそこの学校の国是ともいうべきものだ。サエカが気にすることではないよ。」

「それに何よりエンジニア部としては、このような超科学の固まりに触れられるなんて役得だからいつでも来てほしい。」

「もちろん、銃の事だけではなく、君の人柄も大変好ましく思っている。今は後輩二人とも連徹明けで意識はないが私同様、君に好感を抱いている。だからよかったら友人としても遊びに来てくれ。」

 

 

 

本当に感謝してもしきれない。出自不明のオーパーツに触れるのなら、と無償で整備研究をしてくれるのだ。この先輩たちに言わせればあまりにもロマン溢れていて、むしろ金を払うから触らせてほしいという始末。現在ありとあらゆるリソースをつぎ込んで、その溢れるロマンを形にしているらしい。無理はしてほしくないが楽しそうだから止められない。せいぜいその発明品を楽しみに待つとしよう。

 

そうこうしていると部室の扉が開く音が聞こえる。こんな朝早くからエンジニア部に来客とは珍しい。(主に朝方は死んでいるため来ても意味がない)

 

 

 

 

「ああ!もう、サエカ!心配したんだからね!いくらお仕事でも、怪我するほど無理しちゃだめじゃない!」

 

 

入ってくるなり抱きしめてきたのはユウカさんだった。この人にもたくさん心配させていたようだ。抱きしめる力が強い、愛されてますなぁ。あといい匂い。

 

 

「ご心配を、おかけしました。でもほら、この通り、めちゃ元気です、ぶいぶい。」

 

「まったく、もう。回復したからといっても無理しないでよ?」

 

「ああ、そういえば件の兵器に関しても少しだけ解析が進んでいてね。未知の情報が多かったために”ビックシスター”と”全知”が食いついてきたよ。」

「それで3グループで解析を進めていたら分かったことがあるから、このデータをシャーレの先生に届けてくれるかい?」

 

「あの二人が協力するなんて珍しいこともあるのね…軽く内容を聞いても?」

 

「ああ、かまわないとも。どうせあの二人はわざわざ出てこないだろうしね。」

「今回分かったことはあの弾頭に使われた爆薬の効果、というより爆破する対象が肉体ではなく非実体に影響を及ぼすものだとわかったんだ。」

 

「ちょっとそれどうゆうこと?毒性があるとかそうゆう話?」

 

「いや、少し違うね。あれは物理的に肉体ダメージを主目的にしたものではなく、恐らく神秘そのものを対象とした爆弾だ。肉体ダメージはその副産物かな。」

 

「それってつまり…。」

 

「ああ。多分だけど、あれは私たち神秘を持っている生徒に極めて高い効果を出す、言ってみれば防御力を無視したダメージを出すことができる。これにはあの二人とも概ね意見は一致しているよ。」

 

「ということは私達を簡単に殺すことができる爆弾ってこと!?そんなの違法よ!即刻禁止にするわ!」

 

 

 

わお、そんな効果がある爆弾が入っていたなんて。私からしてみれば神秘を伴った攻撃には等しく弱いから違いが分かんなかったなぁ。敵対する相手がその気なら神秘を込めまくるだけで似たようなダメージは私相手に出せると思うし。何が人工天使だよ、ロケラン一発で落ちる天使なんて何かやだよ。

けど二人の様子を見るにこれは由々しき事態なのだろうということが分かる。

ここ、キヴォトスではその防御力の高さゆえに滅多には人は死なない。そのため引き金が軽く治安がクソというべきなんだけど。

 

だからこそというべきか、引き金は軽くても一線だけは絶対に超えない。それだけは禁忌なのだと皆無意識にストップがかかるのだ。

だがあの爆弾は違う。起爆し、当ててしまえばキヴォトスの外の人が爆弾を食らうのと同じ、運が良ければ死なない、といった効果が表れる。

そんなものが流通に紛れ込んだら。普通の爆弾だと思って喧嘩相手に使ったら。一生消えない傷になることは想像に難くない。おおこわ、くわばらくわばら。

 

 

 

 

「声が大きいよ、ユウカ。情報をどう扱うのかは先生に一任する。公開するにせよしないにせよ、今情報が外部に漏れてパニックになる生徒を作るのは避けたいんだ。」

 

「ああ、そうねごめんなさい、軽率だったわ。だとすればよくサエカは無事だったわね。いや、無事ではないのだけど…。」

 

「こういった武器の報告は今回が初めてだ。あの二人ならもしかすると、何か先に知っていたかもしれないが、少なくとも私はこれが初。だから私の個人的な憶測になるんだけど、今回は試作品のようなもので効果を試す意味合いもあったんじゃないかな?技術者としてはそう見える。」

 

「…っ!となると、もしかしたら改良品がそのうち出てくる…!これはこちらもそのつもりで動かないと駄目ね。まずは先生の考えを伺ってからになるだろうけど…。」

「個人単位や部活の単位ではなくミレニアムとして動く必要がありそうね。リオ会長に連絡を取らなきゃ。今回は絶対対応してもらうわ。」

「名残惜しいけどすぐに動くわ。サエカ、あなたは今シャーレという特別な位置にいるからまた狙われるかもしれない。絶対に無理しちゃだめよ。そして疲れたらミレニアムに来なさい?歓迎するわ。」

 

 

 

そういうや否や足早に部室を出ていった。ばいばーい、またねー。

頼れる先輩が多くて困っちゃいますね。

 

 

 

 

「うん、行ったようだね…いやなに、実は奥で死んでる2人の周りには色々ユウカに見られると説教されそうなものが多くて、少し冷や冷やしていたんだ。情報をダシに使うつもりは全くなかったが見つからず良かったよ。」

 

「で、だ。その見つかったら怒られそうな物の中にサエカの盾もあってね。」

「盾の方は勝手ながらアップデートさせてもらったよ。前に7囚人のワカモに襲われた話をしていたのを思い出してね。サエカはフィジカルこそ目を見張るものがあるが、如何せん体重が軽すぎるせいで踏ん張りがきかない。」

「それでは盾を構えても衝撃を抑えきれず後ろに押されてしまう。」

「と、いうわけで盾の裏側に衝撃に対して反作用するようにスラスターをつけさせてもらったよ。動力は”プチカタストロフ”との互換があるバッテリー式。装備重量は重くなってしまったが盾を構えた状態でスラスターを全開にすれば突撃もできるロマン武器さ。」

 

 

おおおお、やったぁ!これで防御に成功してもその場に留まる事が出来る!さすがエンジニア部のマイスター!いい仕事をする!!

 

 

感謝をこれでもかと伝えるととてもいい笑顔をするウタハさん。どうやらロマンを理解してくれたのがうれしいらしい。

その後軽くデータを取ってからエンジニア部を後にした。件のデータを先生に届けなきゃだし。

先生に連絡すると今はアビドスにいるとのこと。シャーレに少し寄って装備を整えてから改めてアビドスに足を運んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして現在。セリカさんに抱きかかえられて肩を涙でぬらされていた。うーん、ちべたい。

 

 

「うう、ぐすっ、ごめん、さない…私…私のせいで…心配して…ううううう!!」

 

「セリカさんのせいじゃ、ないので大丈夫、ですよ。悪いのは襲撃者、ですから。それにセリカさんが、無事でよかったです。」

 

「うんうん、青春だねー。でも本当に元気そうでよかったよー。うちのかわいい後輩を守ってくれてありがとね。」

 

「ん、本当に良かった。サエカを発見した時本当に焦ったから。」

 

 

 

各々感謝を口にする。私としては本当に転んだだけなのでそこまで感謝されるとなんというか、その。言い出しづらいので、このことは私の胸の奥にしまっておこう。

それとセリカさんや、そろそろ泣き止むか離れてくださるとその、うれしいのですが。濡れすぎて下着まで冷たいのです。

 

 

「本当に、気に病まないで、ください。どうしても、というのなら、柴関ラーメンの、とびっきりおいしいメニュー、ごちそうしてください。まだ食べれて、いないんですよ。」

 

 

そう、元をたどれば先生の飯テロに負けてラーメンを食べに来たことから始まったことだった。

病院食は薄味でよりラーメンの暴力を掻き立て、あの時よりラーメンに対する情熱は高まっていた。

 

 

「うっ、ぐすっ、そう、だよね、元々食べたいって、言ってたもんね。いいわ、とびっきりおいしいの御馳走してあげる!」

 

 

セリカさんが離れると鼻水と涙でぐっしょぐしょになったシャーレの上着が皆の目に留まる。うへぇ…。

 

 

「セリカちゃん…。」

 

「わ、わぁー斬新なデザインになっちゃってます…ね?」

 

「ち、ちがうの、こ、これは…!うう、ごめんなさい…。」

 

 

 

 

 

それからシャーレの上着はセリカさんが責任もって洗濯をしてくれるということなので上着を置いて紫関ラーメンにアビドスの皆で向かい退院祝いをすることになった。

 

 

 

「いらっしゃい。おや、アビドスの嬢ちゃんたちじゃねえか、いつもありがとな!」

「シャーレの先生さんとそっちの子は、新しいお友達かい?うれしいねぇ、ゆっくりしていってくれや!」

 

「こんにちは、柴関ラーメンの、大将さん。私は先生と同じ組織の、シャーレの補佐官、百合園サエカ、です。今日はおいしいと、評判のラーメンに、いてもたってもいられず、食べに来ました。」

 

「シャーレの百合園サエカちゃん…ああ!お前さんがセリカちゃんを助けたとかいう、お友達だったかい!その節はありがとうな!そんな恩人が期待してきたんだ、今日は大盤振る舞いだな!」

 

「そのことなんだけど大将…私もサエカに恩返しが少しでもしたくて!大将さえよければ私も作るのお手伝いしたいなって…。」

 

「くっ…なんてこった…歳を取ると涙もろくていけねぇ。先生さんもいい生徒を持ったな!うらやましい限りだ。よし、その心意気をかって最高のラーメンにしようじゃねぇか!」

 

 

おおおお、大将さんが感動してセリカちゃん作の紫関ラーメンが食べられる!これは嬉しい!

そして大将同様、歳のせいで涙腺が緩いのか透き通った笑顔で涙を流していた。

ホシノおじさんは腕を組んでうんうんと頷いて後方保護者面していた。

 

 

 

 

「おまちどうさま!!本日限定、柴関ラーメンDXよ!」

 

「いつも俺の仕事見てたのか、かなりスムーズで出来が良かったから味には期待してくれな!あそこまで一つ一つの作業を真剣に、情熱をもってできるなんて並大抵じゃできねぇ。こりゃ俺が追い抜かれるのも時間の問題だな、はっはっは。」

 

 

そう残して大将は気を使ってか厨房の奥へと引っ込んでいった。

テーブルには夢にまで見た柴関ラーメン。しかもDXだ。こんなの空腹でなくてもよだれが出る。

暴力的なまでの完成されたラーメンの匂い。キラキラとした旨みの濃縮されたスープ。箸で持ち上げると崩れそうでも、しっかりと形を保った柔らかそうなチャーシュー。そしてそれらの中に沈んだ黄金の麺。すんばらしい。他の皆も感嘆している。

では満を持して……いただきます!

 

 

あ゜っ

 

 

”びゃぁぁあうまい!”

 

「むっ、おいしい。セリカ、やりおる。」

 

「おいしい…!セリカちゃんの愛がこもってるのを感じちゃいますね☆」

 

「すごいですセリカちゃん!いつもの大将が作るラーメンも勿論おいしいですが、また違ったおいしさがあります!」

 

「おじさん、ラーメンがおいしすぎて昇天しそうだよー。」

 

 

 

うまい!うまい!こんなラーメンは初めてだ!生きててよかった!最高です!

うおォン 私はまるで人間火力発電所だ!

 

 

 

セリカさんも自分の作ったラーメンを口をつけ成功したのを確信して破顔する。

くっ、こんなの食べたらもう一生ここ以外でラーメンは食べられない。なんてこった、まんまと罠にはまってしまった。

おいしすぎてスグになくなってしまったけど、この満足感。それは他のメンバーも同じだったようで皆一様に幸せの絶頂というような顔をしていた。

そしてそんな中ホシノさんが特定の一人に対して悪魔の発言をする。

 

 

 

「うへぇー満足満足…じゃあお支払いはーっと…そういえば今回の事件って先生が飯テロをサエカちゃんに送ったのが原因だったんだっけー?」

 

 

瞬間、狙い撃ちされた先生が満足そうないい笑顔のまま固まる。ああ、そうだ。飯テロされて復讐を誓っていたんだ。先生には悪いけどここは乗っておこう。

 

 

「あの飯テロの時間、内容、シャーレで一人、事務作業をしてる人間への、仕打ちとしては、最低でした。大人なら、せ…き…に…ん。取ってください♡」

 

”はい…謹んでお受けします…”

 

「サエカ、なんか言い方が…。」

 

 

 

大将に礼を言って店を出た時、先生の顔は入店時と同じ透き通ったいい笑顔だったと言っておこう。

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