なので飛ばしても問題ありません。むしろ飛ばして♡
ちょっとした曇らせというか、ここまで一切出てこないおねぇちゃんのターン
前半は日記が続きます。
〇月〇日
妹のサエカが行方不明になって今日で10日目だ。
妹はランニングしてくると言って夕方に出て行ったまま帰ってこない。
何故私はあの時一緒に行くと言わなかったのだろうか。悔やんでも悔やみきれない。
体調が優れなくとも、血反吐を吐いてでも無理やり体を動かして、一緒にいてやればよかったのだ。
ああ、どうか無事でいてくれ。
〇月〇日
サエカの行方不明から25日が経過した。
私は私の持てるすべてを使い捜索している。しかし痕跡すらない。
いくらなんでも痕跡がなさすぎる。ここまで情報がないというのは政治的な犯行の疑いが出てくる。
だが、その場合命まではとられないだろう。そうであってほしい。
もし身代金目的なのならいくらでも払おう。だから私の家族をどうか返してほしい。
〇月〇日
サエカの行方不明から50日
犯人からの要求も情報もなにもない。政治的な犯行なんて生易しい犯行ではないと、非情な現実を突き付けてくる。
何故私ではないんだ。なぜ、なぜ。
〇月〇日
サエカの行方不明から80日
既にみな、不幸な事故だったと言わんばかりの表情だ。
私に憐みの、可哀そうな被害者を見る目でみてくる。たのむ、たのむ。金ならいくらでもある。
私が用意できるものなら何でも用意する。だから、どうか。
〇月〇日
サエカの行方不明から100日
この日記をつけてもう100日が経過してしまった。
周りはすでに彼女のいないことが日常として、定着してしまっている。
私だけか?妹に無事に帰ってきてほしいと思うのは。幸せになってほしいと思っているのは。
〇月〇日
行方不明から130日
私は周りの人間が怖くなってきた。
有用な情報を手に入れたと、すり寄ってくる輩は皆デマや詐欺ばかり。
いったい人がどんな気持ちで、家族を探していると思っているんだ。
誰も、誰も、信用なんてできない。
〇月〇日
行方不明から140日目
散発的に起こる未来視とは別に、悪夢が多くなってきた。
どうしてあの時側にいてくれなかったの?おねぇちゃん?
いたいよ、つらいよ、たすけて、おねちゃん。
毎日のように私を責めるサエカの声が響く。ごめん、ごめんなさい。
弱く、何もできないお姉ちゃんでごめんなさい。
〇月〇日
寝ることが億劫で眠らないようにしてきたが、今度は起きていても幻聴が聞こえるようになってきた。
私はこれから一生この声に責められ続けるのだろうか。意識が朦朧とする。
〇月〇日
サエカの行方不明から340日
進学してしまった。何がトリニティ総合学園だ。
何が未来のティーパーティートップだ。
私はそんなものはいらないというのに。サエカ一人だけいれば、それだけでよかったのに。
〇月〇日
サエカの行方不明から365日
あの忌まわしい日から丸1年経過してしまった。
世の中はもう最初からサエカなどいなかった、そう思えるほど何事もなく回っている。
私の中の時はあの日から止まっているのに。
〇月〇日
行方不明から380日
他の皆が私を腫れものを扱うがごとく接するが、同じティーパーティーの一人は関係ないとばかりにずかずかと踏み込んでくる。
嫌いだ。距離感を保てないやつは。
〇月〇日
行方不明から410日
ぐいぐい詰めてくる同じティーパーティ1年生の聖園ミカに日記を見られてしまった。
彼女にプライバシーの欠片もないのかと怒鳴り散らした。
そんな軽い気持ちで人の心に踏み込むなどと。もう2度と口を利くことはないだろう。
〇月〇日
サエカが行方不明から415日
ボロボロのミカが私に話しかけてきた。
周りにも馬鹿にされ、私もなんだそのだらしない服は。などと思って口をきこうとはしなかった。
だが、お構いなしに彼女はその理由を口にしてきた。
あのバカは妹のサエカを文字通り、草の根をかき分けてその足で探していたのだという。
最近は人を疑うしか知らなかった私の心が、少し動いた気がした。
〇月〇日
サエカの行方不明から440日
ミカは新しい友人を連れてきた。勝手に事情を話すなど、と憤りはしたが冷静に考える
私が妹を探しているのは有名な話で今更かとあきらめた。
彼女はミカの幼馴染みだという。
真偽のほどはわからないが、彼女も共感し私財をなげうって捜索してくれているらしい。
もし本当ならありがたい話だ。本当なら。
〇月〇日
サエカの行方不明から600日
最初こそ険悪だったが、今ではもう3人でいるのが当たり前になってしまった。
私は知らなかった事だが、桐藤ナギサとサエカは幼い時たまにあって遊ぶ仲だったんだそうだ。
何だそれは、お姉ちゃんは知らないぞ。
〇月〇日
サエカの行方不明から650日
ナギサがまたロールケーキを作ってきた。
この紅茶とロールケーキを、こよなく愛する馬鹿は頻繁に作ってくる。
紅茶は種類がまだあるからよいが、ロールケーキの違いは正直分からない。
なぜそこまで好きなのか問うと、たまたまサエカに作ってプレゼントした不格好なロールケーキを喜んで食べてもらえたから、だそうだ。
妹がロールケーキ信者になっていたのは君の仕業か。ギルティ。
〇月〇日
サエカの行方不明から750日
気が付けば進級してあの日から2年もたっていた。
相変わらず悪夢は見るし体調はすぐれない。3人そろって有益な情報はいまだ得られていない。
私の予知夢にも一切映らない彼女は、今どこで何をしているのだろうか。
願わくばどこかで生きていてほしい。
〇月〇日
サエカの行方不明から825日
連邦生徒会長が公務でトリニティに訪ねてきていた。
彼女は同じ2年生ながら、その席に座ることが許された所謂「超人」というやつだった。
思わず私は無関係で礼節を欠くとわかっていたが、妹の捜索と情報を求めてしまった。
先輩たちにはひどく叱責されてしまった。だが、彼女はきっと見つけて見せると約束してくれた。
気休めでもうれしかった。
〇月〇日
サエカの行方不明から1000日
もう少しで3年生へと進級だ。
どうやら私はティーパーティのホストに選ばれるらしい。
周りはあまり助けてくれなかったのに、手のひらを返すように媚を売ってくる。
そんなことをして何になるのか。すでに憂鬱だ。
〇月〇日
サエカの行方不明から1087日
連邦生徒会長から一本の電話があった。
百合園サエカが見つかった、と。
私は詳しい話を聞く前に走り出し、情けなくもすぐに息が上がって転んでしまった。
ミカに付き添ってもらって連邦生徒会まで足を運んだ。
やっと会える、どんなこと言われるかわからない。
歓喜と恐怖がごちゃ混ぜになり情緒が安定しない。
この時の私はミカにはどう映っただろうか。いつか弄られるのだろうか。
それができるくらい、平和な日常が戻ってきたら甘んじて受けようじゃないか。
〇月〇日
結論から言えばサエカには会えなかった。
正確には会えたが意識がなく会話をすることはできなかった。
私としては生きていてくれただけでうれしい。
私は人目も憚らずギャン泣きした。今思えば少し恥ずかしい。
発見した時はミレニアムの廃墟で倒れていたのだという。
少し調べたいことがあるとのことで、身柄は少しの間、預かるとのことだった。
私は猛抗議したが、発見したのは連邦生徒会長であるし、事件性が高く罠である可能性を踏まえ連邦生徒会長の責任の下、しばらく預かると言われ渋々承諾した。
ナギサはロールケーキパーティを開催していた。私は胃もたれした。
〇月〇日
サエカの意識が戻ったと連絡があった。
ようやく会えると思ったが本人が混乱しているうえ、後遺症なのか神秘を抑えきれず危険な状態であると言われてしまう。
連邦生徒会長がうまく抑えているが、抑えきれないと人的被害は甚大になるため落ち着くまではまだ預かるとのことだった。
会いたい気持ちは強いが、行方不明だった時に比べれば少し待つくらいなんてことはない。
気長に待つとしよう。お姉ちゃんの胸はいつでも空いているとも。
〇月〇日
連邦生徒会長が失踪したらしい。
サエカは神秘の暴走は見られず、情緒も安定しているので帰宅は可能と言われ小躍りしてしまう。
指をさして笑い転げたミカの口に、マカロンを放り込んで黙らせておいた。
舞い上がって迎えの準備をしたがサエカは会いたくないという。
お姉ちゃんは今世紀最大のショックを受けた。寝込んだ。
〇月〇日
サエカに拒否されてから7日
仕事に身が入らない。ナギサには株で失敗した人の顔していると言われてしまった。
どうやらシャーレという組織に移ったらしい。
よくわからない男の大人と二人だけの部活だとか。
私の妹に手を出してみろ。膝の皿ぶっ壊して2度と歩けなくしてやる。
心配事が一つ増えた瞬間だった。
sideセイア
「セイアちゃーん、おっはよー!およ?まだその日記書いてたの?今はどんなことを書いてるのかなー?」
私の部屋に朝早く訪れたのは我らがティーパーティの元気印、パテル分派代表の聖園ミカだ。
日記の中を覗こうとするので、見られて堪るかと日記を閉じ隠す。
「ええー!?いいじゃん、いいじゃーん!今は平和な日記なんでしょー!?」
「平和な日記だとしても、他人のプライバシーをいたずらに覗くものではないよ。まぁ、ミカにそう言った乙女心を理解しろ、というのも難しい話かもしれないがね。」
「ええー!セイアちゃんが言っちゃいけないこと言うー!私だって花のJKなんだから、乙女心の1つや2つくらいあるもん!」
「こんな朝から何を騒いでいるんですか、二人とも。」
ミカがギャーギャーと乙女にあるまじき喚き方を見せていると新たな声が聞こえる。
礼儀正しく淑女然とした振る舞いで、あいさつしてきたのはフィリウス分派代表の桐藤ナギサだ。
サエカをロールケーキ中毒にした件は未だに許してはいない。
「やあ、おはようナギサ。この自称乙女が人の日記を覗こうとしていてね。昔怒られたというのにもう忘れてしまったらしい。すぐ忘れるなら彼女こそ日記をつけるべきだと思うが、どうだろうか?」
「う゛っ」
「まぁまぁセイアさん。ミカさんの物覚えが悪いのは今に始まったことではありませんし、物覚えが悪い方が日記をつけても、日記そのものの存在を忘れてしまうので、きっと意味はないと思いますよ。」
中々鋭い毒を吐くものだ。私の意図した嫌味と違っておそらくは天然なのだろう。
まぁそれが許されるぐらいの間柄ともいえるが。
だが冗談を飛ばすナギサの顔色がひどくすぐれないのが気になる。
「ナギちゃんまで!?私のそんなに物覚え悪くないよ!?二人して酷くない!?」
恥も外聞もなく、じたばたと抗議をするミカ。乙女はどこに行ったんだ乙女は。
「それで?わざわざ私の部屋に朝っぱらから訪ねてきたということは、何かあったのかい?」
「無視!?ひどくない!?こんなこと今まで一度も…いや結構あったかも。」
「あの…セイアさん、落ち着いて、聞いてくださいね。」
「先ほど連邦生徒会から一つの連絡がありました。」
ナギサが重い雰囲気のまま、用件を話すために口を開く。なんだ?なんでこんなに嫌な予感がするんだ?なぜだか分からないがその先を聞きたくないと、私の脳内で警鐘を鳴らす。
だが無情にもそれは叶わず、最悪の報告を聞くこととなった。
「連絡の内容は、百合園サエカが昨晩、襲撃され拉致されました。今朝がた救出され瀕死の重傷で病院に搬送されたそうです。」
「「!?」」
サーっとした寒気とともに心臓をつかまれるような、立っているのか座っているのか分からない感覚を覚え、倒れかけるがミカに支えられる。
やっと戻ってきた日常が音を立てて崩れていくのを感じた。また。また、私からサエカを奪うのか。
「え、あ、そんな、うそだ、サエカが瀕死の重傷…?」
「ちょ、ちょっとセイアちゃん大丈夫!?とりあえずベットに横になって!」
「ナギちゃん今の話本当!?だとすれば敵は!?誰なの!?サエカちゃんは大丈夫なの!?」
「落ち着いてください!私だって今すぐにでも報復を行いたいと思っています!ですがサエカさんの無事も、敵も分からないとなるとすぐに動けないのです!!」
「そして報告では不可解な部分が多く、犯人が誰かわからないとのことでした……。」
「どうせヴァルキューレと、連邦生徒会の杜撰な捜査でしょ!?それならトリニティで調べた方が正確な情報が集まるよ!」
「それに体が特別弱い訳じゃないはずのサエカちゃんを、瀕死にさせるってことは、相当な攻撃を叩き込んだって事でしょ!?なんで殺人未遂をしてるやつらを野放しにできるの!?」
「はい、捜査を主導したのはその2か所です……。ですが話は最後まで聞いてください。」
「まず一つ、拉致をしたのはカタカタヘルメット団なる不良グループですが、こちらは一人残らず矯正局に送られました。その際、口裏合わせをしないよう個人個人分けて調書を取ったようです。」
「その際、情報が一貫しているのは『直接、拉致してきたカタカタヘルメット団の姿をした実行犯は、誰も知らないカタカタヘルメット団だった』こと、『匿名で拉致を指示してきた依頼人がいる。』ということです。」
「なにそれ!?そんなこと言ってどうせ嘘ついてるんだよ、そいつら!」
「現場に残っていた薬莢もヘルメット団のものではなく、身柄を渡してきたグループはヘルメット団の恰好をしてはいましたが”ガスマスク”だけは見慣れないものだったそうです。」
「それとこれは確定している情報ですが、痛めつけられたのではなくどうやら”一撃で”瀕死の重傷を負ったようです。これは加害者側の情報ではなく、サエカさんと同じく拉致されたアビドス生の証言です。」
「一撃で…?私達ヘイローを持ってる生徒が一撃で?気絶ならともかく、おかしくない?どんな超兵器を使ったの?」
「いえ、被害生徒の情報ではロケットランチャーの一発だったそうです。サエカさんは奇襲された際アビドス生を庇ってダメージを負ったようです。」
「このことから連邦生徒会とシャーレより、各学園の生徒会に極秘で情報の共有がなされる事となりました。『私たち神秘のある生徒達でも、一撃で生命を脅かしかねない兵器がある可能性』を。」
「はぁっ、はぁっ、すまない、取り乱した。今度こそ会いに行く。そして現ホスト権限を行使し報復行動の宣言を行う。準備してくれ。」
「少し、待ってください。…ショッキングな画像ですので見ないことをお勧めしますが、サエカさんが集中治療室に運ばれる前に、撮影された被害記録画像があります。見ますか?」
「…見せてくれ。」
ナギサはゆっくりとファイルから1枚の写真を取り出して渡してくる。
そこに写っていたのは―――
輸血されたサエカの左腰から鳩尾付近までごっそりと無くなって”中身”が飛び出ている画像だった。
「うっ……!?」
「なっ……!?」
あんまりな状態にミカと二人で吐き気が抑えられず戻してしまう。あんな状態で一晩治療を受けられず放置されていたというのか!?あれでまだ生きているだと?
いくらキヴォトスの人間が頑丈でもそんなことあるのか!?”奇跡”でもなければ希望など、とても持てそうにないのは、誰の目から見ても明白だった。
「現在も懸命な治療がされています。武器の残骸はミレニアムサイエンススクールに運ばれ、生徒会長の調月リオさん、全知の称号を持つ明星ヒマリさん、そしてエンジニア部で解析を進められているそうです。」
「それと報復ですが敵が分かりません。連邦捜査部シャーレの先生にも、大規模な介入は控えて情報の収集や自治区内での行動に収めてほしい、と釘を刺されてしまいました。」
「セイアさんの気持ちは痛いほどわかります!私も振り上げたこの拳は誰にぶつけていいのかわかりません…ッ!ですが今はトリニティにとっても大事な時期。隙を晒すわけにもいかないんです。どうかご理解ください…っ!」
「わかっている…わかっているが……!どうしてあの子だけが!あの子が何をしたというんだ!くそっ…くそっ…!!」
誰も言葉を発する事が出来ずその場は無言で解散となった。
私はとてもではないが仕事をできる状態ではなく、ティーパーティーの仕事は2人が回した。
2人も辛いだろうにその責務を全うしてくれた。落ち着いたらねぎらってやらねばならないね。
それから5日後、ナギサはミカを伴ってもう一度私の部屋に来た。
報告したい事が出来た、と。いやな予想が頭をよぎる。この数日、現実逃避をして外部との情報の一切を断っていた。私の心は限界寸前だったのだ。
だが私の拒否も部下の制止も振り切って、ドアをミカがたたき割って侵入してきた。
「セイアさん、先ほど連絡がありました。」
「いやだ!聞きたくない!!何も言わないで出て行ってくれ!!たのむ…たのむ…!」
「いえ、セイアさん…大丈夫です。サエカさんが目を覚まし、元気に朝ご飯を2度食べようとしていたと連絡がありました。」
「聞きたくな―――え?目を覚ました?聞き間違いかい?」
「もーセイアちゃん引きこもって何も聞いてなかったんでしょー?治療を終えた翌日には峠を越えて、あとは意識が戻るのを待つだけって状態だったんだよ!まぁ、あれだけの怪我から数日で完治したっていう話もおかしな話だけどね?」
「本当かい!?嘘は言っていないだろうね、ミカ!?もし質の悪い嘘を言っているのなら、その羽を丁寧にむしるからね!?」
「おわぁぁあ!?セイアちゃん放して!?揺らさないでぇ!?後、嘘じゃないからむしらないでね!?」
「今日は検査入院でまだ退院はできないそうですが、本人は元気そのものとのことです。」
そこまで聞いていろいろ張り詰めていた糸が切れる。ミカに掴みかかりながらも意識が遠のいてゆく。
「よかった…よかった……Zzz」
「ありゃ、寝ちゃった。よほど安心しちゃったんだね。私も涙出てきちゃった。よかったね、セイアちゃん…。今日のお仕事も任せてゆっくり休んでね。」
さて、今日は久々に体調もいいから、ホストとしての仕事をしようとティーパーティーの執務室に訪れる。そこには相変わらず二人の友人が紅茶を片手に仕事をしていたが、顔色が複雑というか眉間にしわが寄っていた。
「おはよう2人とも。仕事を押し付けていたのは謝るが、朝からそんな眉間にしわを寄せていたらしわくちゃのお婆ちゃんになってしまうよ。」
「おはようございます、セイアさん。最後の言葉は聞かなかったことにして、これが情報部から届いたのですがどう思いますか?」
そう言ってナギサはタブレットを渡してくる。そこにはどこかで戦闘をしている映像が一時停止で映っていた。
「これは?」
「サエカさんの戦闘を撮影したものだそうです。サエカさんたった一人と、ゲヘナの風紀委員の2個中隊が激突した際の映像……らしいです。」
らしい?なにか煮え切らない様子に不思議に思うが、ミカが見ればわかるよ、と言わんばかりに顎でタブレットを指し示すので、流れるような動作でミカのカップに冷たくなった紅茶を注いでから動画を最初に戻し、再生する。
その映像に映っていたのは圧倒的な人数差にも拘らず、蹂躙する一人の生徒。とんでもない火力で薙ぎ払う様子が映されていた。
なんだこれは?理解に苦しみ、眉間にしわが寄る。
「セイアちゃん、しわくちゃのお婆ちゃんになっちゃうよー?それとこの紅茶冷たいんだけど!?年々セイアちゃんの嫌がらせ、陰湿になってきてない?」
「それだけ見ていると各学園の”特記戦力”と遜色ないように見えます。姉であるあなたの記憶でサエカさんはこれほど強い力を持っていましたか?」
「い、いや…記憶では運動が好きなだけで、そこまでの戦闘力はなかったはずだ。成長分を加味しても、恐らくがせいぜい正義実現委員会の1~2年生程度だと思う。」
「この3年間に彼女に何があったのか…いずれ問わねばなりませんね…。」
「ちなみにミカさんはこの映像と同じことはできますか?」
「んんーどうだろ、ゲヘナの野蛮人共がどの程度の戦力か、わかんないから何とも言えないけど、多分できると思うよ」
「ただ、これだけの人数ともなれば弾切れが怖いかな?なくなったら素手で殴ればいいんだけどねっ☆」
できないと言わないあたり
私の妹はこの3年間で一体どれだけ変わってしまったというのか。
それほどまでに変わらなければ、生き残れなかったということなのだろうか。
いずれにせよ近いうちに会わねばなるまい。私達3人はシャーレを巻き込み呼び出す口実を必死に考えるのだった。
セイアちゃんは拗らせてとんでもないシスコンになっています。
どけ!私はお姉ちゃんだぞ!を地で行く残念フォックスです。
元々は容姿の似ているサエカが、セイアと間違われてババアに拉致られましたが、せっかく拉致って来たのだからまぁこれでいいか、と実験されました。
自分の代わりに拉致られて、あんなことやこんなことをされたと知ったら、シスターフォックスはとんでもなく曇ります。知る日が来ないといいですねぇ(ニチャァ