シャーレの決戦兵器   作:わんぱくフォックスですまない

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第15話 えっ、男の…?

side先生

 

「こんにちは、大将。お見舞いに来ました。」

 

「大将、大丈夫?」

 

「おっ、セリカちゃんにアヤネちゃん、それに先生さんじゃねぇか。こんな朝早くからありがとな。」

 

 

 

私達はあの戦闘の翌日、大将にお見舞いもかねて補償や事の顛末を伝えに来ていた。

大将は怪我こそあまり無いものの、念のためということで検査入院をしてもらっており、たまにゆっくりするのも悪くない、と快く受け入れてもらっていた。

 

 

「まっ、あの子…サエカちゃんのおかげでかすり傷程度しか負ってねぇから、こんな年寄りにここまでしてもらわなくていいんだけどな!」

 

「でも、大将のお店が…。」

 

「あぁ。すまねぇなセリカちゃん。バイトできなくなっちまって。」

「それに、もうしばらくしたら店を畳む予定だったんだ。それが少し早まっただけの事だから、あんまり気に負うことはねぇさ。」

 

「えっ、そうなんですか?」

 

「ああ。だいぶ前から退去通知が来ていてな。最後にアビドスのみんなに来てもらってよかったと思ってるんだ。」

 

「退去通知って何ですか…?アビドス自治区の土地や建物の所有権は、高校にあるはずですが…。」

 

”その件に関してはゲヘナの風紀委員長から、個人的な補償として情報を貰っているよ。”

”皆が集まってから話す予定だったけど、少しだけ話すね。アビドスの土地は借金が返せなくなった生徒会が土地を売却していて、今の所有権はカイザーコーポレーションとなっているんだ。”

 

”だから先の風紀委員による行動は、確かに良くない行動だったけど一応グレーゾーンなんだ。”

 

「だからあのような行動を…。」

 

 

 

その言葉を最後に一人思考の海を泳ぐ。彼女の中でありとあらゆる可能性を考えているのだろう。

反対にセリカはわけわかんない!という感じで感情が前面に出ている。

大将に引退してほしくないと、少し感情的になっているが確かにそれは私も同意するところ。

きっとサエカも引退してしまったら落ち込むだろう。あの子は食べ物が絡むと恐ろしいのだ。

 

だが最終的に決めるのは勿論、大将の意思だ。おそらくだがあのラーメンも、あのクオリティであの値段では、採算もあまりとれていないと思う。それを無理に頼むのことはできない。

 

 

 

 

”あまり長居しても休まらないだろうから、この辺でお暇しようか。”

 

 

ゲヘナ側からの補償や事の顛末を伝え世間話もそこそこに退室しようとする。

 

 

 

「―――先生さん。」

 

 

 

たった一言だけ、退室の際に声を掛けられる。その目は好々爺としての優しい目ではなく、真剣な男の目をしていた。

 

 

 

”あ、ごめん二人とも。少しだけロビーで待ってて。シャーレとしてまだ少しだけお話があったんだ。”

 

 

 

先に出ていた二人にそう声をかけ、病室に一人残る。

 

 

 

「すまねぇな、先生さん。」

「あの子たちの前では、ちと恥ずかしくてな。少し話を聞いて行ってくれるかい?」

 

”いいえ、大丈夫です。それで、お話とは?”

 

「いやなに、情けねぇ大人の話さ。俺は長くアビドスであの店をやってきた。それこそあの土地が最も栄えていた時より前からだ。」

「あの土地で技術を磨き、沢山の人たちにラーメンを提供してきた。そしてアビドス高校に通う生徒さん達にはよくしてもらっていたんだ。」

 

「俺はずっと、アビドスの生徒さんたちが、復興に向けて試行錯誤し奔走していたのを知っている。」

「本来なら、まだ青春を謳歌する学生がやる事じゃねぇ。それこそ俺たちのような大人が、なんとかしなきゃならねぇ問題だった。」

 

「情けなくも俺は何もできなかった。借金の問題も、土地の問題も人口流出による過疎化問題も全部知っていたが、大人の俺は彼女たちを助けてやれなかった。」

「それどころか、最後に助けられちまった。自分の命が脅かされたことや、店がなくなったことに何も思わないわけじゃねぇ。」

 

「だが、たった一杯のラーメンを食べただけのサエカちゃんは、自分の身の安全を無視して俺を庇ったんだ。瓦礫をどかした後、精一杯強がって俺が心配しねぇようにって、笑ってくれていたんだ。」

「俺はあの時分かっていた。頭から血を流していたし片足だって折れていたんだ。それでもこんな情けねぇ大人の心配をして盾になってくれた。本来、子供を守るのは大人の役目なのに、だ。」

「そのあとサエカちゃん一人で奮闘したのも知ってる。彼女たちにも事情はあるんだろうが、俺の代わりに怒ってくれてうれしかったよ。」

 

「俺は弱い、子供を助けられない情けねぇ大人だ。だが先生さんは違う。大人としてしっかり彼女たちと向き合い、手を伸ばして必死に助けようとしている。」

「無責任な話だがどうか頼む。彼女たち、子供の笑顔が曇るのは俺は見たくねぇ。アビドスを、彼女たちをどうか助けてやってくれ。」

 

 

 

そこまで言うと大将は深々と頭を下げた。その姿は芯の通った”男”の姿だった。

 

 

 

”任せてください大将。それと大将は間違いなく彼女たちの助けになっています。”

”あなたは寂れていく、あの土地で街を作ってきた数少ない大人です。そしてそこで作られるラーメンはその土地に住む人々の、彼女たちの笑顔となり支えとなっています。情けなくなんてない。しっかりと大人の役割を果たしていますよ。”

 

”一口に大人といっても役割がありますから。大将は町を盛り上げ笑顔を作ってきた。”

”私はその笑顔を守り、その思いを紡ぎ、問題があれば解決する。分業ってやつですよ。”

 

 

大将は手をついたまま顔を上げる。その顔には救われたような、一つの重荷から解放されたような顔があった。

 

 

「さすがは”先生”さんだ。俺にも教えを説いてくれるなんてな。ありがとな、救われた気分だ。」

「となると俺も、大人としての仕事をやめるわけにはいかなくなったな!いずれまたラーメンを作るからその時にはまた来てくれや!特別サービスするからよ!」

 

”ええ。ぜひ。サエカとアビドスの皆で。楽しみにしていますよ!”

 

 

 

あまり長話してアヤネとセリカに不審がられてもよくないので大将に礼を言って退室する。

大将も大将なりに悩んでいたんだ。おいしいラーメンはもういただいている。ならばそのお返しに私は私の仕事をしよう。

 

 

ありがとう…

 

 

退室した病室からそんな小さな声が聞こえた。

 

 

 

 

 

sideサエカ

 

はい。風紀委員会相手にカムチャッカファイヤかまして、療養中の燃え尽きフォックスです。

今回は入院とまではいかず、松葉杖ついてシャーレビルにて仕事中でござい。

この足ではどこにも行けないし、バッテリーの充電も終わっていないので先生とは別行動です。

先生の護衛とは。

 

椅子に座りひたすらキーボードをたたく。最近事務仕事を進めすぎたので、ぶっちゃけ手持無沙汰だ。だからと言って新しい仕事を貰ってくるのもなぁ。リンさんなら笑顔でとんでもない書類送ってきそう。

ワカモさんの気配もないしなぁ。

そこでふと好奇心が沸く。この時の私は暇すぎて少し頭がおかしくなっていたんだと、後で思ったのだった。

 

 

 

 

場所は先生が徹夜する際に使う仮眠室の前。

先生はシャーレビルの近くに、部屋を借りているが滅多に帰宅することがない。つまり今この扉の奥には先生のプライベートが転がっている。

きっと汚くなっているだろうから掃除してあげなきゃ、という建前の下この聖域に足を踏み入れるのだ。

 

私が言うのもなんだが、先生はプライベートに関してはかなりズボラだ。

それこそ病院から一歩も出ることなく、生を終えた生活力皆無なはずの私よりもずっと。

毎朝のご飯は私が作るし、洗濯した後のシャーレの制服のアイロンがけなんかも。

年頃の女の子ということで気を使って、肌着や下着といった部分は触らせてくれないが、私の目の届かないところではいったいどうしているのだろう。純粋に興味がある。

私は”男性の部屋”というものに大変興味があった。

 

 

というわけでオープンザドア!………わーお。

 

 

予想通り、中々に汚い。匂いも中々だ。

ベットには充電器、漫画やゲームが転がり、机には中身がなくなったインスタントラーメンの残骸やエナドリ。

棚はしっかり整理されていてプラモデルや何かのフィギュアが飾ってあった。

私にはコレの良さは分からないけど、先生が食費を削ってユウカさんに土下座をかますほどに、熱中している趣味だったはずだ。しかし部屋は汚くとも棚だけきれい、というのも気になった。

 

最初はただの好奇心だったのだが、ここにきてお世話欲求が顔をのぞかせる。

そして行動してしまった。ここで満足して執務室に戻るべきだったのだ。

私は”良かれと思って”部屋の片づけを始めてしまった。そして見つけてしまった。ベットとマットレスの間に挟まっている”ある本”を。

 

 

 

「ふん~ふんふん~♪……ん?なんでしょうか、この盛り上がり。裏になにか、ある?」

「表紙がない、本?雑誌より薄い、何かの資料、かな?(ペラッ)」

「!!!???」

 

 

 

私は生前、男性との付き合いがなかった。それゆえ失念していた。男性の部屋は少し小汚いのがデフォ、という偏っているかもしれない情報は知っていても、若い男の人が隠している物の事は完全に頭の中から抜け落ちていたのだ。

 

ここにきてようやく先生のプライベートに無断で侵入していることに気が付く。

私はせっかく片づけた部屋を、入る前と同じ状態に復元してから部屋を後にした。

せ、先生も男の人だったね…!領域侵犯ダメ絶対。

 

完全に自業自得だが、その日は悶々としながら床に就く羽目になったのだった。

明日から先生の顔を見れない…。

 

 

 

 

翌朝。残りの仕事に手が付かず早寝しまったために、いつもより早く起きる。

いつの間にか先生も帰ってきていたようで執務室のソファーで横になっていた。

自然とその下半身に視線が行く。これ以上はいけない。煩悩退散!!

 

変な妄想を捨てるためにシャワーを浴びる。ああ、これはいけない。こんなことなら部屋に入らなければよかった。いや、職場の仮眠室にあんなものを置いている先生が悪いのだ!私はわるくない!

気が付けば40分ほどシャワーを浴びてしまっていたようで、執務室の方から目覚ましのアラームがかすかに聞こえる。

最後に水を頭からかぶり頭を冷やしてシャワー室から出る。…これでは恋する思春期の生娘ではないか。

冷静になった頭で朝食を作り、先生を少し乱暴にたたき起こすのだった。

 

 

 

 

”うう、何もソファーから落っことさなくてもいいじゃない…?”

 

「知りません。あんな所で、寝ていたら、風邪をひきますし、取れる疲れも、取れません。」

「ね、寝るのなら、べ、べっとで、寝ればいい、じゃないですか!どうせすぐ、そこなんですから!」

 

”ごめんて。それと、心配してくれてありがとう。でもそこまで怒らなくても…。”

 

「お、怒ってません、から!」

 

”そう?あ、この卵焼きすごくおいしい。”

 

 

 

そうして朝ご飯を食べながら昨日の進捗と、今日のスケジュールの打ち合わせをしていると、先生のスマホが鳴る。

味噌汁を啜りながら先生が電話に出る。行儀悪いですー。

 

 

 

”はい、此方連邦捜査部シャーレの先生。……うん。うん、うん。わかった。すぐに向かうから、皆に先走ったことはしないで待っていてほしいって、伝えてもらえるかな?”

 

「どちらからですか?」

 

”アヤネからかな。ホシノが何も言わず、退部届と謝罪の手紙を置いて姿を消してしまったらしい。”

 

 

えっ、ホシノさんが?なぜ今になって?1年生組がいなくなるならまだギリギリわかる。

けど3年間もいた学校を、皆で守ってきた学校から突然いなくなる理由が分からない。

 

 

”私はアビドスに行ってくるよ。サエカは―――”

 

「私も、行きます。足もこの通り。昨晩には骨もくっついて、激しい運動を、しなければ問題なく。キヴォトス人の、回復力様様、ですね。」

 

”わかった。でも無理はしないでね。”

 

 

私達は急いで身支度をしアビドスへ向かったのだった。

 

 

 

 

 

そして現在。私はアビドス高校の屋上にいた。先生は対策委員会の部室で、対応策を皆と考えている。なぜ私はそれに参加しないかというと―――

 

 

 

「ワカモさん、そちらから見える、PMCの動きは、どうですか?」

 

『…今のところ動きはありません。しかし次々とカイザー傘下の建物に部隊が集結しています。動き出すのも時間の問題でしょうね。』

 

「そうですか。ありがとう、ございます。引きつづき、報告をお願い、できればと思います。」

 

 

 

何を思ったのかワカモさんから連絡があった。古典的な方法で。いつの間にか私のバックの中に連絡を取りたい旨と、連絡先を記したメモが入っていた。あなた何処の忍者ですか。

 

びくびくとしながら連絡を送ると、PMCが先生の周りで不審な行動をとり始めたのだという。

あくまでもワカモさんは緊急時、本当にヤバくなった時だけ助太刀するらしく、7囚人の自分が表立って介入するのは、シャーレの先生として外聞が良くないから、避けたいということらしい。

つまるところワカモさん本人が出張らず、情報だけ送ってやるから私に先生を守れというメッセージ。

 

PMCの行動は私の知らない”何かしらの脅威”に対応するため、兵を集結させている可能性も捨てきれない。

だが、ホシノさんがいなくなったこのタイミングでその可能性は限りなく低いように思う。

そして、先生の推察するカイザーの目的の一つに、アビドスの完全占拠がある。

最終的な目的は分からないが、その目的を叶えるためにはおそらくアビドス高校は邪魔で廃校にするため様々な工作を行ってきている。拉致襲撃にも関与しているかは不明だが、最近過激な手段に出ていることから、強ち先生の推察に間違いはないと思う。

 

となると、このPMC集結の目的は、アビドス高校最後の生徒会であったホシノさんがいなくなった今のアビドスを、自治権の喪失と判断し攻め落とすためのもの。

そう想定したうえで、連中が行動を起こした場合に、最も火力と対集団戦に優れた私がスクランブル発進できるように待機しているのだ。

……正直この前の戦闘は不完全燃焼気味で八つ当たりしたい、というのもすこしあったりなかったり。

 

 

 

『おや…どうやらそろそろ時間のようで。何か先生を守るうえで有用そうな情報があれば、また連絡します。しくじらぬように。』

 

 

そう言って通話が途切れる。おいでなすった。装備の最終点検を済ませ構える。

残念だけどワカモさん。私は先生を守る”盾”であると同時”矛”でもあるんだよ。

先生の身の安全を考えるなら、側で盾を構えていればいいかもしれないけど、守っているだけじゃ何れ攻撃を通してしまうかもしれない。

それなら先生に仇為す存在を、その魔手を伸ばす前にぶったたく。攻撃は最大の防御だよ。

 

遠くで爆音が聞こえる。始まりましたね。楽しいパーティの始まりです。通話していた耳と逆につけた通信機。そこから先生とアヤネさんの声が聞こえる。場所の特定をしてくれたようだ。しごでき。

 

さーて。ウーバーフォックス、お届けの時間です!

依頼内容は爆撃、荷物は空から。爆弾は、私!

 

 

 

「スラスター、オーバー、ドライブ!」

 

 

 

ウタハさんが後付けしてくれた、この対衝撃用反発推進機、通称スラスター。

主な機能は、強い衝撃を検知した際にスラスターを起動させ衝撃を相殺するというもの。

手動で作動させることによって、短距離における高軌道を実現させるこの便利装置。

だが。ロマン部でもあるエンジニア部はリミッター解除とかいう、先生が大変喜びそうな機能をつけていた。

その機能によって実現可能なエンジニア部らしい頭のおかしい機能。

それは、動力源であるバッテリーを焼き切るほどの出力を瞬間的に発生させ、疑似飛行が可能という機能。これにより一回限定の人間砲弾ができた。なんて頭の悪い機能だ。

 

だけど―――今は都合がいい。私の八つ当たりに付き合ってくれ。

 

 

 

「イグニッション!!」

 

 

 

爆音とともに、尋常でないGがかかる。私はキヴォトス初、空飛ぶ狐となったのだった。

 




サエカの装備は
プチカタストロフ ビナーベース 黒服製作
ケセドの盾    ケセドベース エンジニア部製作
アイマスク    ペロロジラベース ゴルコンダ&デカルコマニー製作
???????? ??????ベース マエストロ製作

があります。

ババアが捨てた後、他ゲマトリアメンバーがサエカにリソースを割いているのには、しっかりと理由があります。
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