シャーレの決戦兵器   作:わんぱくフォックスですまない

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第16話 えっ、狩り?

「おあぁぁぁああああああああああ!!??」

 

 

こんにちは。フライトフォックスです。現在アビドス上空120mほど。空気抵抗も出力重量比も無視して巡行中です。

街中でカイザーPMCが攻撃を開始、その後アビドス高校へ向けて進軍を開始している所です。

これに対し、敵性戦力の無力化をすべく発射された人間魚雷。着弾地点はランダム。

着弾後、エネルギーが尽きるまでPMCに損害を与え続け、アビドス校舎から反攻作戦にでた対策委員会のメンバー達と合流予定。

 

しかし、このロマン機構Gがすごすぎる。多分2度とつかわない!安全バーなしでのジェットコースターだ。普通に怖い。

 

 

 

「んぎぎぎいいい!熱!あっついわ、ボケェ!」

 

 

 

バッテリーが解け落ち、スラスター本体も赤熱してとてもではない触っていられない。

なので着弾地点に見える、バカでかい主砲を持つ兵器にぶん投げ、”プチカタストロフ”をぶっ放す。

反動でかなり減速できたが勢いは完全に殺しきれずどこかのビルに突っ込んだ。

 

 

 

 

「おあー…いったぁ…2度とやらない…左腕、もげるかと思った。」

 

 

さてここは。現在地はアビドス高校より30キロほどの場所。突っ込んでしまったこのビルは…カイザーの文字。ならいいか。さて―――

 

 

「ちわぁーっす、シャーレ屋でーす。市街地での、無差別攻撃、によるテロ行為を、確認しましたー。よって全自治区に対し、強制捜査、および逮捕権を、有する、超法規的措置の行使をー……あー、鬱陶しいので、はったおしに、きました。」

 

「なんだと?貴様のような”子供”が訳の分からないことを…いやまて、貴様…。」

「ふん、まぁいい。先ほどは何事かと思ったが好都合だな。ゴリアテを一撃で壊されたのは癪だが、逆に言えばそれだけだ。捕らえろ。いい土産になる。」

 

 

ほかのPMC兵と違い、戦場にそぐわぬ豪華な服装をしている奴がいる。

子供との会話は成り立たないと言わんばかりの態度で、私の宣言を無視するとはいい度胸だ。

敵陣ど真ん中に着弾したと思っていたが、指揮系統に影響を与える場所に運よく着弾できたらしい。

 

 

 

「2度あることは、3度ある、といいますが、誘拐の指示ですか。良いセンスです。それと、矛盾するようで、心苦しいのですが、逮捕する気なんて、ハナからありません。」

 

「逮捕する気がない、だと?はははは!それはそうだ、私達は善良な企業であり、これから行うことも慈善事業なのだ。シャーレの小娘なんぞに邪魔される謂れはないな?むしろ抗議文と損害賠償を請求したいが貴様の身柄でひとまずは勘弁してやろう。」

 

「あなた…『覚悟して来てる人』…ですよね。人に「危害」を加えようと、してるって事は逆に、「危害」を加えられる、かもしれないという、危険を常に、『覚悟して来ている人』ってわけですよね。」

「それに、なにか、勘違いを、していますね。逮捕なんて、まどろっこしいことは、しません。」

 

 

「―――塵殺しに来ました。」

 

 

「はっ、何を言うのかと思えば。小娘一人に何ができる?まさかこの戦力差をどうにかできると?やれるものならやってみるがいい。無理だろうが、頭から否定するのはかわいそうだからな?」

 

 

やってみせろというのなら是非もなし。先生たちは学校からすでに出撃しているし、あまり時間をかけては良くないだろう。盾は手元にないが、神秘のこもっていない通常弾程度で、すぐ膝をつくほど私は弱くない。どうせ周りの建物はカイザーのもの。一般人もいない。じゃあ―――

 

 

「薙ぎ払え!プチカタストロフ!!」

 

 

いつもの轟音とともに集束砲撃で横一門に薙ぎ払う。そこに残っていたのは下半身だけとなったPMC兵の残骸だけだった。

 

 

「な、何だ貴様!?何なのだそれは!?人を殺すことに何のためらいもないのか!?」

 

「ご冗談を。お前たち機械ボディを、持っている奴らは、バックアップくらい、あるのは知っています。バックアップが、一つしかないのなら、次は出てこなければ、いいだけ。万一出てきて本当に、死んでしまっても、自業自得というやつです。」

 

「小娘だと思って、一方的に蹂躙される。みっともないですねぇ、みっともないですねぇ?」

 

「理事!ここにいるのは危険です!後退してください!!」

 

 

 

尻もちをついて先ほどの攻撃から難を逃れたやつを、運よく無事だったPMC兵が助け起こす。

理事?多少派手な装いをしていると思っていたら、結構なお偉いさんじゃないか。

つまりは大将首かぁ。首置いてけよ、なぁ?

一撃で薙ぎ払いきれなかったPMC兵が、わらわらと出てきて理事を守る。だがその間に”プチカタストロフ”の冷却とチャージが終わる。

 

再びの轟音。先ほどと同じ光景が映る。薙ぎ払っただけなので戦車は健在だが、主砲は融解しその巨体は遮蔽物以外役に立たないだろう。

 

 

 

「ひゃっはー、逃げる奴はPMCだー、逃げない奴は、よく訓練されたPMCだー。」

「ほらほら、早く逃げなよ、理事さんとやら。”子供”と追いかけっこ、して遊ぼうよ。」

 

 

 

情けなく逃げだすPMC理事の背中にむかい、ストレス発散のため、私は撃ちまくるのだった。

 

 

 

 

 

 

side先生

 

「こんにゃろ!!」

 

 

学校の校舎内まで攻めてきたPMC兵を撃退し、市街地の騒動を収めるために対策委員会のメンバーで押し進む。

サエカは襲撃を予見し、事が起きたら敵後方に浸透作戦を決行、ある程度荒らしたら合流すると言っていた。心配ではあったが戦闘スタイルの都合上、周囲に味方がいない方が良い、と言われれば否定も難しく、有耶無耶のまま飛び出して行ってしまった。

 

 

『敵戦力の増援を確認!その中から一人進んできます!』

 

「これは何のつもりだ?なぜ邪魔をする。」

 

 

そう言って歩いてきた彼は自らをジェネラルと名乗る。

 

 

『学校に対し侵攻するのは明らかな不法行為です!連邦生徒会に通報しますよ!』

 

「スカウトは嘘だったってこと?ホシノ先輩をどこにやったの?」

 

「何を言うのかと思えば。通報だと?面白いことを言う。やってみればいい。」

「連邦生徒会は今まで助けてくれなかったのだろう。それが今更助けてくれると、本当に思っているのか?」

「連邦生徒会だけではない。他の学園も、一切助けてくれなどしなかったのだろう。つまりはそうゆうことだ。諦めるんだな。」

 

「それに此方には大義名分がある。アビドス高校最後の生徒会メンバー、小鳥遊ホシノが退学。これにより生徒会も”正式な”部活も自治区も存在しない、アビドス高校はないも同然の状態だ。」

「このことからアビドス高校はその機能を喪失、存続は不可能だと判断した。」

「企業側として吸収し再建を目的に行動している。既に”何者でもなくなった”子供に邪魔される謂れも、通報され非難される道理もない。」

 

「だが、よかったではないか。私たちが治める事になれば君たちは借金から解放される。無意味にその決して長くない、今だけの青春を削って努力する必要がなくなるのだから。今からでも遅くはない。この土地の事はサッパリ忘れて青春をやり直すんだな。」

 

 

ジェネラルの言っていることは”大人として”一定理解はできる。自分たちが作ったわけでもない借金に追われ、その輝かしい学生の時間を使うことはない。その理屈は分かる。

だが、それはその土地で何とかしようと、汗水たらして頑張ったことがない側の人間の思考だ。

彼女たちは自分たちには本来関係なくても、努力を続けてきた。

その努力を理屈や合理だけで、否定することは決して許されないのだ。

 

 

 

「あんた…それ以上言ったら撃つ。」

 

『でも、これ以上戦っても意味はあるんでしょうか…』

 

「アヤネちゃん!?」

 

『ここで戦って勝っても借金は残ったまま…学校もなくなったら戦う意味もなくなってしまいます…公的な取引のされた土地も、戻ってきませんし、生徒会のなくなったこの状況では…。』

 

「アヤネ…。」

 

 

彼女たちに沈痛の面持ちが浮かぶ。今までの頑張りが否定され、現状の打開策も見つける事が出来ない。

私は先生だ。教え導くのがその在り方で、彼女たちを助けるべくメールを受理をしたが、ここで無責任に何とかしてみせるなどと言えない。そんな気休めと受け取られかねない言葉では、彼女たちの努力に泥を塗ることになる。

だが誰も言葉を発せない空気の中、幸運の女神はまだ見捨てていなかったらしく、立ち止まってしまった彼女たちに力を与えてくれた。

 

 

ドガァァン!!ドガン!

 

 

 

「なんだ?なにがあった?報告しろ。」

 

『北方向から襲撃です!我が部隊と合流予定のブラボーが被害甚大!』

『さらに東方向でも爆発を確認!大量のC4爆弾が次々と爆発しています!」

 

「なぜだ?アビドスの連中は目の前にいる。今更そんな事が出来る勢力など―――」

 

 

 

「まったく。何を泣き言ばかり言っているのかしら。」

「ブラックマーケットではあれだけの大立ち回りをしておきながら、今更この程度の相手に踊らされているの?アビドス。いいえ。―――覆面水着団。」

 

 

爆発で巻き起こった煙の中から現れたのはかつての敵、便利屋68だった。

 

 

「なにをするのかも、どうすればいいのかもわからない。何をやっても失敗に終わる。ここを切り抜けたところで待っているのは逆境と苦難ばかり。」

 

 

「だからなんなのよっ!!」

 

 

「仲間が危機に瀕して困っているんでしょう!?それなのに、くだらない事ばかり考えて!今までの努力を否定され、全部奪われて!それであなたたちは納得できるわけ!?」

「私はそんな軟弱集団に、覆面水着団に憧れてきたんじゃない!!」

 

「いやー、アルちゃんその辺で勘弁してあげなって。今のアビドスは傷心中なんだからさ!」

「でも、かわいいかわいいメガネっ子ちゃんを泣かした罪は重いよ?だから―――」

 

 

「ぶっ殺すしかないよねぇ!!」

 

 

「ふふ、ふふふふ。アル様、準備はできています。仕掛けたC4もまだまだいっぱいありますので…。」

 

「はぁ…埋めた爆弾で増援を遮断。その間に指揮官をを無力化。指揮体系をマヒさせる。」

 

「刮目しなさい。腑抜けたあなたたちに、真のアウトローを見せてあげる。」

 

 

 

そう言うや否や、爆発物をまき散らしながらカイザーPMCを蹴散らしていく。

ジェネラルはいつの間にか部隊に戻っており居なかった。

彼女たち便利屋68に尻を叩かれた対策委員会は、先ほどとは打って変わって闘志を再び燃やしていた。

いくら便利屋68が啖呵を切って蹴散らしているとはいえ、あの人数差ではいずれ押しつぶされてしまう。それが分かっているからか、はたまた尻を蹴られたことで目が覚めたのか、いつも以上の気力を漲らせ便利屋68の後を追いかけたのだった。

 

 

 

 

 

しばらく戦闘を続けていると、敵の部隊後方から武器も持たず走ってくるPMC兵がちらほらと出てくる。最初は破れかぶれの捨て身特攻かと警戒したが、私たちに目もくれず通り過ぎていく。

 

 

『ッ!!みなさん!遮蔽物に退避してください!!』

 

 

アヤネのその一言に誰も疑いを持たず身を隠す。一拍後に独特な駆動音とともに轟音が鳴り響く。

音が収まってから顔をのぞかせると先ほどまで戦闘をしていたPMCの部隊はほとんど消え去っていた。

 

 

 

「あっちゃー、理事ー、ごめんなさーい。当てちゃった。鬼ごっこは、ここまで、かなー?楽しかったね?」

 

「ふ、ふざけるな!!貴様、この俺をここまでコケにしやがって!この借りは絶対に返させてもらう!後悔させてやるから、精々首を洗って待っているんだな!!!」

 

「ふふっ、あまり、強い言葉を、使うなよ、弱く見えるよ?」

「それじゃあ、ストレス発散、ご苦労さん。一昨日、きやがれー☆」

 

 

1部隊を楽々消し飛ばしたサエカは、上半身だけとなったカイザーPMC理事の胸を無邪気に踏み抜くのだった。

 

 

 

”おつかれさま”

 

「ん!先生も、皆さんも、お疲れ様、です!それと、そちらの方々は?」

 

”あ、えっと彼女たちは便利屋68の子たちだよ。前に言った襲撃の。でも今は味方だよ!昨日の敵は今日の友ってやつさ!”

 

「ちょっ、ちょっと先生!?そんな誤解を生みそうな紹介は…!いえ、誤解じゃないのだけども!?」

 

 

アルが白目をむいてワタワタとしている。アルだけでなく他の便利屋メンバーも顔がこわばっている。

 

 

「便利屋68…ああ、柴関ラーメンにも、居た方たち、でしたね。今回の、助太刀、感謝します!」

 

 

 

特に敵意を出すでもなく頭を下げるサエカ。便利屋のメンバーはサエカの圧倒的火力と蹂躙を見るのは2度目なため、一度は敵対していた身としては、その牙を向けられることを恐れていたようだった。

 

まだ長くない付き合いだけど、わかることがある。サエカは良くも悪くも敵味方の判別がしっかりしている。相手がどのような害を与えてきたかより、そこに言い訳の利かない「悪意」があったかどうかで敵味方の判別をしている節がある。

つまるところ「仕方のない事」であれば自身の生命が脅かされようがケロッとしている。

拉致襲撃の際の様子がいい例だ。あれだけの怪我を負い、生きるか死ぬかの瀬戸際まで追い込まれていたのに「仕方のない事」として割り切っている。その在り方は私には少し歪に見えたのだった。




サエカちゃんのストレス発散回でした。
理事は散々追い掛け回され虐められた最後に残基を減らされましたが、ちゃっかりジェネラルは生還しています。

サエカは最後、先生や他の生徒がいることを理解していて、万が一にも当てないように調整してからぶっ放しています。
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