シャーレの決戦兵器   作:わんぱくフォックスですまない

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エデン条約編がドロドロになりそうな予感
セイアとサエカの邂逅です。現時点でセイアはピンピンしています。
誰が襲撃されるんでしょうね?


第19話 えっ、ヘルプミー?後編

電車で揺られること1時間半ほど。

私は断頭台に上る気持ちでここ、トリニティ総合学園に来ていた。

連邦捜査部”シャーレ”として先生が面会許可を取った時には、回答を保留され時間がかかりそうだったが、直接赴くのが先生本人ではなく、補佐官の「百合園サエカ」が赴くかもしれない、と濁しながら伝えたところ即答でOKが出たそうな。

絶対、私情が大部分を占めていると思う。やり取り自体は政治的なものだが明らかに”姉”の影が見える。というかホストだし。最高権力者だし。

 

どうやって話を切り出そう?救援要請の話も勿論そうだが、”私自身”の話も。

サエカが行方不明になっていた数年間は、相当な荒れ具合だったそうだし、消費されたリソースも莫大なものだ。

それでようやっと出てきたと思えば、ガワは同じだが中身が別物で、愛する家族ではない。そう知った時の反応が怖い。本来は知的で温厚、平和思想の持ち主と聞くが私は知っている。

普段怒らない人がブチギレた時というのは、世界の破滅と思えるほどの状態になるということを。

 

 

 

「はぁ…憂鬱。最悪、火あぶりの刑、とか、打ち首とか、されちゃうのかな…。」

「もしくは拷問…車輪刑とか、苦悩の梨…帰りたい…。」

 

 

何よりつらいのが、恐らく待ち焦がれているであろう、姉が歓喜の顔から絶望の顔にかわるその瞬間。救われたと思ったのに、そうではなかったという落差。

生きている”かもしれない”。再会できる”かもしれない”そのわずかな希望にとどめを刺す悲劇。

「百合園サエカ」はもうこの世にいないのだと。突きつけねばならない。

 

 

「魔女認定され、魔女狩り、になれば、いっそ楽なんだけどなぁ…。」

 

 

一人シナシナになりながら校門を通る。行き交う生徒はお嬢様学校に恥じない、高貴な身なりの人ばかり。ちらほらと見える黒い制服は、ハスミさんのいる正義実現委員会だろうか?

案内人が庭の噴水に来る、そう言われ向かうのだがその周りだけやけに人が少ない。

何か特別な場所でおいそれと、この空間に入ることはできないのだろうか?

そう思っていたらその原因が「いた」。

 

 

…………えっ、水着姿のネーちゃんが徘徊してる。周りがお嬢様然としているため、余計に浮いている。ひそひそと陰口を言われ避けられている様子からトリニティの常識というわけではないようだ。

…どうしよう、「アレ」が案内人ってことはないよね…?もしそうなら私は腹痛の原因を増やすことになる。仮にも連邦生徒会直下の組織、しかも現ホストの妹の案内人に、露出狂をよこすだろうか?

 

しかし足を止めて露出ネーちゃんをジッと見つめてしまったために、視線に気づかれ目が合ってしまった。やらかした!!

万一本当に案内人だった場合困るので、鋼鉄の仮面をかぶり、柔らかそうな人当たりのいい表情を作ってから会釈する。

すると、あちらも深々と頭を下げ歩いてきた。

 

 

 

「こんにちは。あなたがセイアちゃんの、妹ちゃん。連邦捜査部シャーレ補佐官、百合園サエカさんですか?」

 

 

どうやら私を知っていたらしい。きょろきょろしていたのも私を探していたからだったのかな?

案内人は多分この人だ。今回の面会は急遽決まったから非公式。関係者以外は知らないはず。

無視しなくてよかった。安堵する気持ちと同時、とんでもない案内人をよこしたものだ、と私の胃がキリキリと痛む。

 

 

「あっ、失礼しました♡私は、トリニティ総合学園2年生、浦和ハナコといいます。セイアちゃんとはお友達ですので、よければ仲良くしてくださいね♡」

 

 

むーん、ボンキュッボンのダイナマイトボデーだが、色気とかそうゆうのより困惑と恐怖が勝る。

そしてこの人と「お友達」だと?私の姉は大丈夫か??

 

 

「自己紹介、感謝します…ご指摘の通り、私はシャーレの、百合園サエカ、です。よろしくお願いします。」

 

「あーん、セイアちゃんを小さく、幼くした感じでたどたどしい喋り方!新しい扉を開いちゃいそうです♡私のことはハナコ「お姉ちゃん」って呼んでくださいね♡」

 

 

やべぇ奴にロックオンされてしまったようだ。助けてくれ、姉上。反応に困っていると―――

 

 

「あっ、お待たせしたっす!……ってハナコさん何やってるんすか!?」

 

「あっ、見つかってしまいました。もう少しお話ししたかったんですけど、それはまた今度♡」

 

「ま、待つっすよ!そんな恰好で庭先走り回らないでください!」

「ああ、行っちゃいました…。あっ、失礼しました、連邦捜査部シャーレ補佐官の百合園サエカさんで合ってるっすか?私はこの度、ティーパーティへの案内役を務めさせていただきます、正義実現委員会2年、仲正イチカっす!どうぞよろしくお願いするっすよ。」

 

「こちらこそ、ご丁寧に、ありがとうございます。よろしくお願いします。」

 

「にしても…はぇー、ハスミ先輩から聞いてはいましたが、本当にセイア様の妹さんなんすねー。幼さはあれど、すごい似てるっすね。あっ、様つけて呼んだほうが良かったっすかね?」

 

「あっ、お構いなく…私は現在、トリニティの生徒ですら、ない部外者ですから…。」

 

「それはよかったっす。ここはお嬢様が多くて、気にする人が多いから助かるっすよ。」

「では、あまり好奇の目で見られるのもアレなんで早速行きましょうか。」

 

 

 

歩くこと15分。イチカさんは人当たりが良く、正義実現委員会という立場もあり顔が広かった。

面会予定の場所に着くまで、色々なお話が出来て私は大満足だった。もし今度来ることがあれば何か差し入れでも持ってこようと思う。

 

 

「…着いたっすよ。ここから先はそこのティーパーティーの子が案内してくれるっす。と言ってもすぐそこですけどね。」

 

「案内、ありがとうございました。お話、楽しかったです。」

 

 

去っていくイチカさんを見て溜息が出そうになるのをこらえる。

廊下の手前で武装の類をすべて預ける。10人くらいで運んで行ったが大丈夫だろうか。

この数十メートルの廊下は私にとって断頭台の「階段」だ。この先に、この扉の奥に私の運命を決める存在がいる。

私は意を決してティーパーティーの子が開けてくれた扉をくぐるのだった。

 

 

 

 

 

中に足を踏み入れれば、絢爛で美しく、豪華でありながら豪奢でありすぎない、実用性と芸術性の両立をした、お嬢様の頂点に君臨する者たちが茶会をするにふさわしい趣のある一室だった。

 

正面には体の前に手を組み目を瞑る狐耳の生徒。おそらくこの人がティーパーティー現ホストでありながら、私の姉「百合園セイア」さんだろう。

向かって右側には紅茶の香りを楽しむ、優婉で気品ある生徒。おそらくはフィリウス分派代表の「桐藤ナギサ」さんだろう。

その逆、向かって左側には私が入室するなり好奇の目から”鋭い視線”に変わったピンクの髪の生徒。この人がパテル分派代表、「聖園ミカ」さんだろう。

ミカさんのその表情は見覚えがある。アビドスでホシノさんや、ヒナさん、ワカモさんといった一部の生徒が初対面時に一瞬だけ見せた顔。敵意に近い表情だ。

 

 

 

 

「やぁ、久しぶりだね。帰ってきてくれてうれしいよ。心から心配したんだ。本当に……。」

 

 

「……誰だ、君は。」

 

 

瞬間、目にも止まらない速度でミカさんが跳んでくる。その左手には銃が握られていた。

私は反応すらできず床に組み伏せられてしまった。

 

 

「あっぐぁ!うぐっ!?」

 

「こんにちは、サエカちゃん、のような人。早速で悪いんだけど色々質問に答えてもらっていいかな?☆」

 

「なっ!?ミカさん!?大切なお客人に何をしているのですか!?セイアさんも何故止めないんですか!?」

 

「ナギサ、すまないが少し静かにしていてくれ。君、私の妹ではないね。私の妹をどこにやった?サエカに何をした?返答は慎重に頼むよ、今際の際だぞ。」

 

「ナギちゃんには分からない?この子、人の形してるけど”人間ではない”よ。存在自体がありえない者だよ。」

 

 

これが本気かどうかわからないけど、ミカさんの片手なら脱出は可能だ。今も首をへし折らんと力を込めているが、まだ問答の時間であると言わんばかりに、殺さない程度に力を籠め続ける。

ここでその手を跳ねのけるのは、悪手であると私の本能は訴える。完全に不意打ちで流れを持っていかれてしまった。

 

 

 

「ああ。そうだとも。ミカの言う通りだ、ナギサ。「アレ」は人間ではない。人間の皮を被った「化け物」だ。サエカの見た目をしているのは私に対する挑戦かい?」

「正直、3年ぶりの妹との再会に色々な感情が渦巻いたものだよ。年甲斐もなくはしゃいだりもしたさ。だが、今は一つの感情に支配されているよ。それがなんだかわかるかい?」

 

「憤怒だよ。腸が煮えくり返っている。可能なら今すぐにでも縊り殺してやりたいところさ。」

「だが、幸か不幸かお前はサエカの姿でいる。怒りに任せて情報を失ってしまうのは愚か者のすることだ。」

「だから心して答えたまえ。おまえはだれだ?」

 

「うっ、ぐぅ…私は、百合園サエカでは、ありません!騙す気はなく、腰を据えて、お話をするつもり、でした…!」

「私は、百合園サエカと契約し、この姿でいます!私に敵意や、悪意は、一切ありません…!」

 

「契約だと?面白いことを言うじゃないか。じゃあその契約した本人はどこにいるというんだ?」

 

「……おそらく、死亡しています。」

 

 

 

その言葉を受けセイアさんの表情がストンと抜け落ちる。目を閉じ逡巡するとツカツカとこちらへ歩いて―――

 

 

「おまえが!!お前が殺したのか!?私のかわいい妹を!サエカを!!あの子が何をしたっていうんだ!?人知れず拉致され、助けもない中!その命を散らさねばならないほどの罪を、犯したとでもいうのか!?答えてくれよ!なぁ!返してくれよ!」

 

 

精一杯の力で私を殴りつける。

その小さい身体で、どれほどの重責にプレッシャー、罪悪感と無力感に喘いで生きてきたのだろう。ああ、だから嫌だったんだ。家族だけが生きる希望でもあったのに、その家族が死んだと、伝えるのは。

 

 

「ゲホ、ゴホッ!うっぐぅ……あぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

最後には力尽きて座り込んで泣いてしまう。私もしこたま顔面を殴られたのだから心の傷も相まって泣きたい。

 

 

 

「セイアさん…。」

 

「セイアちゃんを泣かせた罪は重いよ。化け物。敵意はない、だっけ?信じられると思う?そんな薄っぺらい言葉。」

「連邦生徒会長も随分適当なことしてくれたよね。サエカちゃんが見つかった、なんて言ってたのに出てきたのはガワだけの偽物。サエカちゃんと会ったことがない私でも気が付くのに、「超人」が聞いてあきれるじゃんね。」

 

「うっぐ…くそ、くそ…!!なんで、なんで…!」

 

 

 

いたたまれない空気が場を支配する。確かにあの「超人」たるカイチョーが、こうなるのを予想していなかったというのは変な話だ。先に事情を伝えていれば、ここまで事態が悪化することもなかったはずだ。変なところで抜けてはいたけれど、肝心なところではその名にふさわしい結果を残す。まるで本来はポンコツな人が()()()()()()()()かのように。

 

 

「他に言いたいことはある?無ければ一旦落とさせてもらうよ。その後に偽りを騙った魔女に断罪をしてあげる。」

 

 

首を絞める力が強まる。どうする?暴れれば命だけは助かるかもしれない。だがそれをしたらもう弁解の余地もなく決定的な亀裂が生まれる。

迷っている間に意識が薄れゆくほど体力が消耗してしまった。しまった、これじゃあ暴れることもかなわない。意外とあっけない終わり方するものだね。でもよかったのかもしれない。結末は最悪かもしれないけど、サエカとセイアさんの物語に一応は決着を見せる事が出来た。

それが正しいのかは分からないが、進むしかないのだ。泥に嵌った瞬間、人生というのは沈むだけなのだから。

 

薄れゆく意識の中、走馬灯だろうか?失踪する前のカイチョーの様子が頭をよぎる。

それは自分のデスクに座り、意味のない、いや、本人からすれば意味はあるのだろう、理解不能な言葉をただ羅列して頭を抱える姿。きっと仕事で疲れたのだろうちょいちょいみられるその姿が最後の走馬灯になるとは。今も汚いままのカイチョーのデスク周りと付箋の数々。

私はそのカイチョーの言葉と付箋を無意味に、もはや意識があるかもわからない状態でリピートする。

 

 

 

「たすけ、死に…ない、キヴォ…、最…後、しき、さい、回…避できな…先、生……カギは…無…貌の…カ……た、まし、い、別……お、ねえ…ちゃ……。」

 

 

思わず口を衝く言葉。意味は分からないがその言葉に意味はあったようだっだ。

 

 

 

 

「!?ミカッ、まってくれ!」

 

「えっ!?あ、う、うん。」

 

 

途端、ミカさんの手が首から離れ失神寸前の私は床に崩れ落ちる。

だが、失神を防いだだけで手心は加えるつもりがないらしい。俯せにされ両腕を背中で決められる。

 

 

「あ……う、あが……ヒューヒュー」

 

「…………。」

 

「セイアちゃん?どうしたの?固まって?大丈夫?」

 

「いや、大丈夫だ。だが…なんだ?少し大事な何かを見落としている気が……。」

「”今”が分岐点のような、結末が変わるような、私の未来視にない、また違った結果をもたらすような。言葉にするのは難しい。とにかくその「何か」を見逃したら死ぬまで後悔するようなそんな気がしたんだ。それに……妹の、サエカの魂が見えた気がして……。」

 

「なあ、今から聞く質問に答えてくれ。」

「君は、君の中に()()()()()()?」

 

「う…あ…何人……?私は、私の中には、”私”と”サエカ”しか、いません…。」

 

 

意識がはっきりしない中どうにか答える。何人かだって?私とサエカしかいないだろう。いてもせいぜいそのくらいだ。いや、自分以外にいるのもおかしな話だけど。

 

 

「…やはりサエカがいるのか!?君の中に!?いや、これは……。」

 

 

またしてもセイアさんが固まる。その間に私の脳に血が行き渡り意識がはっきりとしてくる。

 

 

「あの…話に全くついていけないんですが…どなたか説明をしてもらえませんでしょうか…?」

 

「ミカ。この子の奥深く、ずっと奥深くに意識は向けられるかい?もし見えるのならどうみえる?君のその野性的なまでの直感を聞いておきたい。」

 

「奥深く?しれっとディスられた気がするけどやってみるよ。とりあえず、よく分からないけど目を凝らせばいいのかな?」

「……うーん…。わ、なにこれ!?こんなの初めて見たよ!?」

 

「どうみえた?」

 

 

 

「うーん、なんて言うんだろ。沢山の人?魂?があって、それぞれここ数年前まで()()()()()感じがする。でも意識はもうないね。」

「それで、意識がある?大きな魂があって、それが2つある。けどそれ、別の魂というよりなんていうのかなぁ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ような、違和感がある、かな?うわーん!説明が難しいよこれ!?」

 

「ミカの語彙力がないのは、昔からだから気にはしてないさ。」

 

「ひどい!?」

 

「けど、そうか。確かに、この子はサエカじゃない。だけどサエカでもあるんだ。矛盾しているようだが、私の魂が肯定しているんだ。」

「意味合いは若干異なるが、割れてしまったグラスの破片を集めて、もう一度同じ形に修復する。ただくっ付けたしたところで罅は消えないが、形は同じだ。だがグラスに水は灌げない。漏れてしまう。形は同じなのにね。」

「これと同じことがこの子には言えるんじゃないだろうか?」

 

「それは強いストレス下で人格が分かれてしまった、というのと似ているということですか?」

 

「いや、違う。あっている部分もあるだろうが、枝分かれした人格ではないと思う。」

「魂が混ざっている?だが元々同じ色のものが混ざっているような感じだ。」

「ミカの言うことが的を得ているのかもしれないね、これは。」

「どちらにしてもサエカ本人で間違いないと私は思う。中身、というか魂は歪だが。」

「ミカ、放してやってくれ。それに聞きたいことが増えた。」

 

「え、あ、うん。」

 

 

 

ようやく解放される。勝手に誤解が解けたけどその内容にまでは全くついていけない。あとで黒服にでも聞こうかな。

 

 

「手荒な真似をしてすまなかった。誤解をしてしまったが、確かに私の妹だ。私の愛した、たった一人の妹だ…!怖い思いをさせて……すまなかった…!守ってあげられなくて、助けてあげられなくてすまなかった…!許してくれなんて言わない。だが今度こそ、守ってみせる…!」

 

「改めて言わせてくれ。おかえり、サエカ。」

 

 

 

私より少し大きい身体で強く抱きしめてくる。そこから堰を切ったように泣いてしまう、セイアさん。いや、お姉ちゃん。

今度の涙はつらく寂しい涙ではなく、優しく温かい涙だった。

彼女が泣き止み、落ち着くまでには相当の時間を要し、この再会は強烈な記憶に残るものとなった。




セイア「うぉーん!妹が返ってきた!(お話ししに来ただけ)」
ミカ「良かったじゃんね、セイアちゃん☆私もこの子を守るよ!」
ナギサ「話にまたったくついていけません…魂…?どなたか説明を…!」

サエカの魂を観測した二人は真理への理解度が上昇。
これにより神秘にバフがかかりました。
”世界”はバランスをとるため運命に調整を加えました。

邂逅編が思った以上に長くなりました。キャラ崩壊半端ないです。
次回アビドス決戦に(サエカが)戻れればいいなと思っています。
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