シャーレの決戦兵器   作:わんぱくフォックスですまない

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第21話 えっ決戦前夜?

side先生

 

「ただいま、戻りましたん…。」

 

”お、おかえり。半日で随分やつれたね…?”

 

アビドスの対策委員会部室にて部隊ごとの最終調整をしていると、シナッシナになったサエカが帰ってくる。協力の取り付けに成功したとは連絡を貰っていたが、やはり心労はそれなりのようで部室に入るなり、ホシノの特等席であるソファーに倒れこんでしまう。

 

「頑張ったので、終わったら、精一杯、甘やかしてください…。」

「あと、これ、ナギサさんから、お土産の、ロールケーキです…皆さんでどうぞ…。」

 

うわぁ、ここまでしんどそうなのは初めて見た。完全に燃え尽きてしまっている。

サエカのことだから戦闘に影響はないだろうが、なんだか居た堪れないので、頑張った子を誉めるように、頭をやさしく撫でる。

頭に触れた瞬間びくっと動いたが、抵抗する気はないようで為されるがままだ。

折角なので白く綺麗な狐耳を撫でまわして遊ぶ。おお、ふわふわだ。ぴくぴくとしていて大変面白い。尻尾もいずれ触ってみたいと思うが、セクハラと言われたらそれまでなので今回は自重した。

 

「ちょっと先生!?イチャイチャしてないで、会議の続きしてよ!!そ、それに耳をそんなに、い、いやらしく触るのはセクハラなんだから!!」

 

「ん、ちょっと羨ましいかも。次お願い。」

 

「シロコちゃんは後で私が耳かきいっぱいしてあげますから、今はだめですよ~?」

 

えっ、耳触るのってセクハラだったの!?触り心地良くてついつい撫でまわしちゃった。

 

”ごめんね、サエカ。いやだった?次から気を付けるね。”

 

「嫌じゃないので、続けてください…。」

 

「「「”えっ”」」」

 

『あの、先生?会議そっちのけで、私たちは何を見せつけられているのかしら??』

 

『まぁまぁ、ユウカ。あの耳は魔性というか中毒性が高いのは知っているだろう?羨ましいからと言ってカッカするものじゃないよ。』

 

『べ、別に羨ましくなんて…!今は大事な会議中なんです!それが言いたかっただけです!!』

 

『なぁ委員長。私たちはこれを手伝うのか?緩すぎないか?帰って寝てもいいか??』

 

『ダメよ、イオリ。借りを返すって約束を反故にするわけにはいかない。それともアコと二人で反省文の続きの方がよかった?』

 

『それはそうだけどさぁ…補佐官帰ってきてからアコちゃん震えて使い物にならないし、セクハラかましてきた変態の手伝いは…いやなんでもない…。』

 

各々好き放題喋っているが、確かにこれはホシノを救出するための大事な会議だ。ある程度場も和んだことで会議の続きをしなければならない。敵は待ってなどくれないのだから。

可能なら夜明け前までに準備を終わらせて仮眠を挟みたいところだ。本来なら生徒である子供たちの睡眠時間を削ることなどあってはならないが、今回ばかりは仕方ないと割り切る。

それでも睡眠不足が戦闘に影響を及ぼすのは避けたい。会議を再開すべく声をかけようとしたときちょうど最後の協力者が通信に入ってきた。

 

『こんばんは。こちらはトリニティ総合学園、フィリウス分派代表。桐藤ナギサです。通信は聞こえていますでしょうか?』

 

”うん、聞こえているよ。今回はシャーレの要請を聞いてくれてありがとう。よろしくね。”

 

「本当にトリニティまで…ホシノ先輩一人を助けるために、ここまでの力が動くなんて…シャーレの力は凄まじいですね。」

「皆さんにはアビドス高等学校副生徒会長、小鳥遊ホシノに代わり私たちより感謝を。」

 

「「「「ありがとうございます。」」」」

 

『お礼の言葉は受け取っておきます。ですが構いません。今回は幼い友人の頼みを気まぐれに聞いただけであり、シャーレからの要請を承諾したわけではありませんから。』

 

”えっ、そうなの?”

 

『はい、シャーレの先生。ですがサエカさんが提示した見返りは、しっかりとシャーレからいただきますので悪しからず。』

 

これで全員揃った。本格的に救出作戦に向けて話し合いができる。サエカの再起動はまだだが耳は動いているので聞いてはいるのだろう。

 

”じゃあ改めて今回参加するメンバーの自己紹介と主な進捗状況を聞こうかな?”

 

『ではゲヘナより風紀委員会。委員長の空崎ヒナよ。今回参加するのは私と、先日アビドスで迷惑をかけてしまった2個中隊、さらに追加で1個中隊を足して大隊規模での援助をするわ。旧アビドス校舎を拠点として貸してもらえるとのことだったので現在移動中。凡そあと1時間程度で到着後簡易陣地を作成する予定よ。こちらからは以上。』

 

『次にミレニアムサイエンススクールから、セミナーの早瀬ユウカよ。立地的に遠く、政治的な配慮もあり人員の現地入りは予定していないわ。こちらの戦力としてはセミナー会長から貸し出されたAMASが凡そ700機、物資輸送や索敵のためのドローン群が300ほどが参入予定よ。』

『ある程度戦闘のサポートはできるけど、今回の私たちは正体不明の超兵器のデータ収集と援護、敵の航空機の無力化を主に行っていくつもりよ。』

 

『こちらはエンジニア部、部長の白石ウタハだ。未知の超兵器が出現した際、主力になるであろうサエカのバックアップを特異現象捜査部と共に担当する。それと、今回の作戦に趣味で作成していた”プチカタストロフ”強化キットと大電力バッテリーなどを現在ドローンで輸送中だ。大体2時間ほどで到着、その後ドローンによる強化改造を行う予定さ。此方からは以上だよ。』

 

『では最後に私達トリニティ総合学園からフィリウス分派代表、桐藤ナギサです。こちらもミレニアム同様、政治的な介入が難しく大部隊の派遣はできません。ですが、”偶然”砲兵隊の野外実習授業がありましたので、広いアビドスの土地をお貸しいただければと思います。』

『その際”偶然”標的付近にカイザーPMCの戦車部隊がいるかもしれませんが、誤射ですので仕方ありませんよね?ああ、野外学習の規模ですがL118榴弾砲が80ほど、それらを警備する2個中隊を予定しています。野外実習は日が出てから始めますが、合流は簡易陣地作成なども計算に入れて恐らく4時間以内には。こちらからは以上です。』

 

まさかここまでの協力が得られると正直思わなかった。だが、これで戦力差はひっくり返せたと思っていいだろう。各学園ごとの思惑はそれぞれだろうが、友好の懸け橋になれたら幸いだ。

後の不確定要素は情報源が黒服しかないホシノの所在とビナーなる超兵器の戦力だけだ。

こればかりは直接事に当たってみないことには何とも言えない。

 

「す、すごい…こんなに…ありがとうございます!!」

 

「圧巻。これならホシノ先輩を取り返せる。」

 

「これでようやく、カイザーをぶちのめせますね☆」

 

「あ、一応私からの報告だけど、便利屋はもう事務所引き払ってもぬけの殻だったわ。どこ行ったのか分からないから、戦力としては当てにしない方がいいかも。」

 

”わかった。みんなありがとう。今回は急造のチームだから各学園の大まかな指揮は任せるね。もし判断に困った場合、私はアビドスの皆と行動しているから遠慮せず無線で聞いてほしいな。”

 

その後、作戦会議を終えた私たちは仮眠を挟むために一旦解散した。

対策委員会の皆は慣れた場所ということもあり、比較的早めに意識を落としていたようだが、私は緊張していたのかうまく寝付く事が出来なかった。

そこで、気持ちのリセットを図るため夜風を求めて屋上へと上がる。だがそこには先着がいた。

 

”やぁ、さっきぶり。サエカも緊張して眠れないの?”

 

「ん…それもありますが、少し、昔のこと、思い出していまして。」

 

此方には気が付いていたのか驚くそぶりも見せず、声をかけた彼女は振り返らずに抑揚のない声でこたえた。

 

”それはどんなこと?一人で抱え込まず、話してみたら楽になるかもしれない。気休めかもしれないけどサエカのお話を聞かせてほしいな。”

 

「…少し、ホシノさんが、羨ましいなって。」

 

”ホシノが?”

 

「私は、物心ついた時には、既に病院の、ベットでした。家族の温かみも、友達も、青春も、社会のことも、病室の外でありふれていた、ごく普通のことを、私は知りませんでした。」

「いつしか私の命を、繋ぐ部屋は私を、閉じ込める鳥籠に、なっていたんです。」

「だから、私にとって、この世界は、ありふれた日常が、酷く眩しい。それと同時、私は本来手に入って、当たり前のものを知らず、生きてきたことが、悲しくなりました。」

「私は何も、悪いことをしていないのに、どうして。そう思っています。」

 

「ですが、私のように、悲しい人生を、この世界の子供たちに、送ってほしくない。それと同時、深い嫉妬の、感情があります。」

「だからこそ、ホシノさんが羨ましい。彼女は彼女で、抱えているものは、あると思います。」

「けど、こんなに皆に、想ってもらえて。手を伸ばしてもらえて。どうしても嫉妬して、しまうんです。嫌な子ですよね。軽蔑してもらっても、大丈夫ですよ。」

 

―――ああ。この子はきっと人との付き合いがなかったせいで、何も知らずに育ってしまった子なんだ。サエカが何歳で亡くなってしまったのかは知らない。だがもし成人年齢に達していたとしても情緒は子供のままなのだ。友達と遊び、喧嘩して仲直りする。そんな誰しもが経験して成長していくはずの”当たり前”を経験できなかった。

だからこそ、今の感情の整理ができず、混乱しているのだろう。

でもサエカは気付いていない。既に友人と呼べる人も、心配して涙を流してくれる家族もいることを。彼女が何歳かなんて関係ない。この世界で卒業するまでは等しく私の生徒だ。

故に教え導き、時に叱り、時に甘やかす。私は親にはなれないが道を示すことならできる。

 

”そんなことはないよ。サエカはそうやって辛い目にあっても、人を助け思いやる事が出来ている。誰が何と言おうがサエカ、君はやさしい子だ。私が保証するよ。”

”それにね、嫉妬するのも、自己嫌悪するのも青春の1ページなんだ。皆が皆そうとは言わないけど後になってみれば、そんなこともあったっけなって笑えるようになるよ。”

”大丈夫。まだシャーレも始まったばかりだ。色んな所に行き、友達を作り、合間のちょっとしたお仕事。そんな悲観しなくていいのさ。

 

「ありがとうございます。少し、気が晴れたような、気がします。」

「…先生も、お疲れでしょうし、夜は冷えます。少しでも横になって、休んでください。私はもうしばらく、夜風に当たったら、戻りますので。」

 

”うん、わかった。サエカも体を冷やしすぎないように気を付けてね。おやすみ。”

 

私は最後まで顔を見せてくれなかったサエカを残し、屋上を後にする。

サエカはどのように私の言葉を受け取ってくれたのかは分からない。

昔は確かにつらい過去だったかもしれない。その記憶を忘れろとは言えない。でも、今のサエカには周りに沢山の友達がいる。君が紡いだ絆だ。

だからね、サエカ。こんな夜の屋上で一人寂しく泣かなくたっていいんだよ。

 

私は一人だけの倉庫に戻る。横になると意外にもスッと意識が落ちていくのだった。

 

 

 

sideサエカ

 

おはようございます。

あぁー、自己嫌悪。最悪だよ。多分先生には悔しくて泣いていたのバレてる。はぁ…。

憂鬱な気分で体を起こすと皆起きて準備を進めており、私が最後の起床だった。

 

「あ、おはようございます☆よく眠れましたか?シャワーはないですけど、顔を洗うのであればあちらでどうぞ!」

 

「おはようサエカ!朝ごはんにおにぎり作ったから、よかったら食べてって!」

 

「おはよう、ございます。寝坊してすいません。おにぎり、顔洗ったら、いただきますね。」

 

「サエカは気にしすぎ!まだまだ育ち盛りなんだからいっぱい食べていっぱい寝て!」

 

うむぅ。なんだかセリカさんに気に入られている気がする。身長的に庇護欲みたいなのが沸くんだろうか?扱いが完全に妹のそれだ。言われた通り顔を洗いおにぎりを貰う。

食品系のバイトをしているだけあってうまい。塩みが効いていて朝の軽い食事にフィットだ。このふんわりしながらも崩れない技術は感心した。あとで教えてもらえないかな?

おにぎりを口に詰め込みながら地図データを確認しているとドローンがやってくる。

 

『おはようサエカ。随分おいしそうなものを食べているね。羨ましい限りだ。食べながらで構わないから説明を聞いてくれ。』

『サエカのプチカタストロフの外付け強化キットの換装がさっき終わった。余裕が出来たら動作の確認をしてほしい。』

『なに、ゆっくりで構わないさ。作戦開始までそれなりに―――『こちらパトロール4よりHQへ。目標が行動を開始した。繰り返す、目標が行動を開始した。』なさそうだね。すまないが急いで確認してほしい。』

 

おにぎりを口いっぱいに詰め込みハムスターのような状態で廊下を走る。指定された教室に入ると若干大きくなった愛銃と盾。バッテリーパックを背負い動作を確認。よし、大丈夫そうだ。

今回の私の主な役割は開戦の一撃とビナーに対する警戒だ。すでにPMCは無差別破壊をしながら校舎に向かっているらしいから急いで輸送ヘリに乗る。今度こそぶちのめしてやんよ☆

 

 

しばらく空の旅を楽しんでいると眼下にPMCの兵が見えてくる。私はこいつらを蹴散らし、対策委員会メンバーはしばらくしたらスイッチする形で入れ替わる。そのまま敵陣を食い破り、ホシノさんが囚われている基地へ向かう予定だ。もはやこれは小競り合いやただの戦闘行為などではない。

―――戦争だ。そう表していいほどの規模感。

正直ホシノさんとそこまで接点はない。あくまでシャーレの仕事として関わってるというのが大きいだろう。

だけど、ホシノさんを助け、無事に皆のもとに返す事が出来たのなら。

私の中にある燻ぶった感情も、先生の言った青春の意味もきっと理解できると思うから。

 

「さて、馬鹿どもの、出鼻をくじくために、派手に、行きますか。」

 

私は輸送ヘリのハッチから単身、飛び降りるのだった。

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