シャーレの決戦兵器   作:わんぱくフォックスですまない

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第22話 えっ全速前進DA?

「おはよう、ございます。カイザーPMCの、みなさん。朝早くから、ピクニックですか?」

「ここより先は、アビドス自治区。引率の方は、いらっしゃいますか?」

「……無視ですか。残念ですが、まぁよいです。」

「アビドス自治区へ、ようこそ。越境の目的は?それとビザはお持ちですか??」

 

おっ、このポンコツ共、指揮官から指示があったのか問答無用で銃口を向けてきたぞ。

先日痛い目を見たばかりだろうに、スペアボディと記憶の同期はされてないのかな?

 

「…一度だけ、警告します。スペアボディが、ない者、死にたくない者、無理やり戦場に、出されたものは、武器を捨て、伏せなさい。多分死ぬ事は、ないでしょう。10秒だけ、あげます。」

 

「撃て!小娘一人で何ができる!さっさとアビドスを落とすぞ!」

 

わぉ、あぶな。10秒もたたず撃ってきた。流石にこれだけの量を受ければ、神秘が乗ってなくてもダウンするだろう。けど真正面から神秘もなしに倒せるほど私は甘くない。

 

『サエカさんより前方、距離10キロ、120度の範囲に民間人、および重要施設はありません。オールウエポンフリーです!そのあたりは本当に何もないので、ぶっ放しちゃってください!」

 

アヤネさん有能じゃんね。

 

「了解。チャージ85%!消し飛べ!!」

 

すっかり得意技になった薙ぎ払いで、カイザーの1番槍を圧倒的熱量で消し飛ばす。

轟音が収まった時には元々あった崩れた古民家、廃ビル、倉庫などの建造物の射線上の全てはPMC兵と諸共に消し飛んだ。圧倒的な熱量によりアビドスの砂もガラス状になっている。

わお、かなり出力が上がっている。余裕の音だ、馬力が違う。

外付けキットにより重量はかなり増したが、固定砲台みたいな戦い方しか基本出来ないため問題ない。

なんにしても最初の一撃としては十分すぎるだろう。これにビビって逃げだしてくれる兵がいれば少しでも楽になるんだけどな。

私の任務はいったん終わり。後は頼みましたよ、先生、皆。ホシノさんをちゃんと連れ帰ってきてくださいね。その小さいお口にロールケーキぶち込んでやりますから。

 

 

 

side先生

 

『第一任務、完了。機関部冷却、ビナー警戒のため、後方待機へと移ります。ご武運を。』

 

当初の予定通り、ヘリから降りてサエカの一撃によって発生した敵陣の空白地帯を対策委員会と一緒に駆ける。辺りは砲撃の余熱により凄まじい熱気だが、こんな最初から大人である私が泣き言なんて言っていられないと我慢する。

 

「す、すさまじいですね…このあたり、結構いろいろあったと思うんですけど…。」

 

「サエカが味方で本当によかったわ…。」

 

「ん、本当。先生、これだけの火力を出せるサエカがいても、そのビナーってやつは楽に倒せないの?」

 

”わからない。私も実際に見たことあるわけじゃないからね。ホシノなら何か意見を出してくれそうだけど。”

”それに情報提供者曰く、サエカのあの銃はビナーってやつの主砲劣化模造品らしいから多分これと同じことは普通にしてくると思う。”

 

「こんなの吐き出してくる奴どうやって倒すのよ…。」

 

ビナーに関しては情報が少なすぎて戦術が組み立てられていない。出現しない、ないしはすぐ撤退してくれると助かるのだが、楽観視はするべきではないだろう。最悪、泥沼戦や生徒の安全のために敗走も視野に入れねばならない。

 

『こちら風紀委員会。北側にてPMC部隊とエンゲージ。合流はできそうにないけど、ただの一人も通さないから安心して。』

 

『こちらセミナー!ドローンたちが攻撃ヘリを発見したわ。制空権はこちらで何とかするから上は気にしないで進んでちょうだい!」

 

他2部隊も交戦を始め無線が慌ただしく飛び交い、遠くで爆発音が聞こえるようになる。

私たちはできるだけ消耗を避けた状態で、ホシノのいるであろう基地まで行きたいが、流石に基地まで一直線というわけにもいかず足が止まったしまう。だが、ここで最後の協力者が現れる。

 

『おはようございます!遅れてすいません、合同野外実習の参加に来ました!』

 

「あっ、ヒフミ!」

 

『ナギサ様より開始時刻と砲撃ポイント等を伺っていましたので、すぐに開始しますね!』

 

その溌剌とした声で発射の指示するヒフミ。すると前方に立ち塞がらんとした、戦車と歩兵の混合部隊の一切合切を砲撃の雨によりスクラップへと変えていく。

サエカのそれとは違った圧倒的暴力。なんて心強いだろう。

 

『目標地点…わわ!?人がいますよ!?私、人がいる場所に撃ってしまったんですか!?』

 

”あれ、ナギサから聞いてなかった?今回の敵はカイザーPMCだから大丈夫だよ。”

 

『ええ!?何も聞いていませんよ!?ううっ、ナギサ様ぁ…!!』

 

「さすがファウスト。無慈悲な攻撃で知らぬ存ぜぬを押し通す。そこに痺れる憧れる。」

 

『あはは…こうなってしまっては仕方ありません!全部そのファウストのせいにしちゃいます!』

『ここで発射の指示を出したのはヒフミという生徒ではありません!ファウストという悪の親玉が勝手にやったんです!私は何も知りませんから!』

 

そういうと第二射を発射しスクラップを量産していくファウスト。

何も教えず人を撃つ指示を出すナギサも中々の性格だが、それをすぐにファウストのせいにして続行するヒフミも中々いい性格をしている。私の中でトリニティへのイメージがちょっと変わった瞬間だった。お嬢様学校とは??

だがその強烈な支援により大した消耗もなく基地の近くまでこれた。協力してくれた皆には感謝してもしきれない。だからホシノ、帰ってきたら「ごめんなさい」より「ありがとう」って言わなきゃね。

だがここにきて最後の部隊が待ち構えていた。

 

「おやおや、アビドスの諸君。ここから先は私達カイザーグループの私有地だ。何の用でここまで来た。」

 

「あんたは!!」

 

「あ、サエカに追い回されて、無様に逃げてた理事。生きてたんだ。」

 

「黙れ!あんな化け物とまともに相対などできるか!だが、奴とて一人の生徒、数で押しつぶすなり、奇襲をかければあの時のように―――」

 

「あの時?今あの時って言った?」

 

あっやばい、セリカの目が据わってる。セリカほどでないにせよシロコもノノミも殺気立ってる。

 

「ああそうだとも。チンピラ風情に奇襲をかけられ、間抜けにも庇われた生徒よ。だがまぁ、誤算であったものの、最高の成果になったよ。礼を言うぞ?」

 

「気に入ったわ。あんたは最後にボコボコにしてやる。覚悟しなさいよね。」

 

”さっき何の用で来たのか。そう、問うていたね。理由は単純。ホシノを取り返しに来たんだ。”

 

「はっ、何の権限があって?あれはしっかりとした契約に基づいたものだ。いくら連邦生徒会とはいえ口を出すことはできんはずだ。」

 

”そうだな。その契約が学生でなければ、の話だな。残念だったな、理事。黒服にも言ったが私はまだ退部届と退学届けのどちらにもサインはしていない。つまりはまだ私の生徒だ。その生徒を不当に拘束している。シャーレの強制捜査権を使用するには十分すぎる理由だ。”

 

「なんだと?ゲマトリアめ、しくじりやがったのか。副生徒会長で実験すると言っていたが、中々始めないのはそのためだったのか!」

 

「だが、まだだ。我々に退路などない。このままアビドス高校を手中に収める事が出来れば時間ができる。その間に”宝”を見つけさえすれば…!」

 

理事は諦めが悪く抵抗の意思を示す。確かにホシノはアビドス高校の守りの要。不当であると突き付けられても易々と返すわけにはいかないのだろう。なんとしてでも食い止める、そんな不退転の意思が見られたその時。

 

『HQより全体通信!アビドス砂漠にて”UNKNOWN”の動きを捕捉!これは…大きい!?砂漠側の部隊は注意してください!!』

 

「ぐっ、何だこの地揺れは!?状況を報告しろ!」

 

シロコ、ノノミ、セリカの3人は周囲を警戒する。理事も把握していない地揺れ。

そうなるとこの地揺れの正体は作戦立案の際、最も警戒され、不確定要素だった”ソレ”

 

ドォォォォォン!!

 

遠くで白く巨大な蛇のようなものが砂煙を上げながら出てきた。これが―――

 

「なっ!?「ビナー」だと!!??くそっ、対デカグラマトン大隊に対応させろ!!」

 

あれがビナーか。とんでもない大きさだ。まるで怪獣そのものじゃないか。

デカグラマトン、第三セフィラ・ビナー。パスは「理解を通じた結合」

神の存在証明と分析をし、新たな神を作り出す、対・絶対者自律型分析システムAI。

そのAIが自分自身こそ神であると宣言し、預言者にするため感化された存在。

黒服はそう言っていたが正直ちんぷんかんぷんだ。だが、理事のこの焦り様、黒服の言っていた話は嘘ではなく、本物の脅威そのものであると証明されている。

 

だが、どうする?ビナーが出現した際、サエカが対応する手はずになっているが、正直あんなのをサエカ一人でどうにかできるとは、とてもじゃないが思えない。

かといって今即座に動ける部隊もおらず、サエカが対応しきれなければ被害は甚大になるだろう。

最悪の予想が頭をよぎる。ホシノを救出できず、泥沼化し、敗走する。それだけはあってはならない。

ここは無理やりにでも突破してホシノを救出するべきか?どうする?どうする!?

こんなところで足踏みをして焦っている猶予はないのに決断に足を鈍らせる。先生として失格だ。

 

「…あれが…あんなのどうしろっていうのよ…ホシノ先輩抜きで絶対無理よ…。」

 

「ホシノ先輩が見かけたら絶対逃げろ、なんていうのも納得ですね…。」

 

「……仕方ない。ここは私がひきつける。だから皆は―――」

 

ドカァァァン!

 

突然、PMCの一部が爆発で吹き飛ぶ。今度は何だ!?

 

「じゃーん、やっほー☆」

 

「お、お邪魔します!」

 

「やっと追いついたー!けどなんか今大事なシーンって感じだった?だとしたらごめんね?」

 

「あ、あんた達…!」

 

突然の爆発、その下手人が元気よく現れる。多少の戦闘をしながら無理やり来たのか、体のあちこちに煤や小さな痣を作っていた。なんて義理堅い子たちなんだろう。私は素直に嬉しく思う。

 

「なるほど、そうゆうことだね。」

 

「え、なになにー!?その期待に満ちた目!?」

 

「待って、なんか嫌な予感がする。」

 

「……ふふっ勘は鈍っていないようね、対策委員会。私たちがこの絶妙なタイミングで現れた理由なんて、一つしかないでしょう?」

「ここは私たちに任せて先へ行きなさい!!!」

「仲間を助けるんでしょう!?そしてあの化け物をなんとかするんでしょう!?それならこんな木っ端で躓いてないで行きなさい!そのための道は私達、「便利屋68」がこじ開けるわ!」

 

「…はぁ。」

 

「うわー、それは惚れちゃうよ、アルちゃん……。」

 

「さ、流石です!一生ついていきます、アル様!!」

 

「んぐぐっ、もう!お礼なんて言わないからね!!」

 

「…でも、全部終わったら、一緒にラーメンでも食べに行くわよ!!」

 

「この恩は必ず!」

 

「ん、ありがと。」

 

便利屋の子たちが全力で作ってくれた部隊の穴を私たちは駆け抜ける。

これで最悪を回避し、最善への道を歩む事が出来る。一人一人の生徒が力を尽くし、道を作ってくれた。自治区の垣根を超え、たった一人の生徒を助けるために此処までお膳立てされたら先生としてしくじるなんてあり得ない。

ここでようやくほとんどの兵が出払ってしまった基地にようやくたどり着く事が出来たのだった。

 

基地の兵を蹴散らし大きな扉の前までやってくる。おそらくホシノはこの先だ。だがどう突破したものか。こちらの火力で突破できそうにない。だからと言ってコントロールパネルを探すのも時間がかかる。足を止め悩んでいると、ここが最後の砦だと知っている奴が死に物狂いで立ちはだかってきた。

 

「くそっ!便利屋の連中め!!依頼を受けただけの分際でここまで邪魔をしてくるとは!だがお前ら程度、私一人でも蹴散らせる。このゴリアテでな!!」

 

”あそこから追ってきたんだ。ここまで追い詰められても、まだ諦めない姿勢。その諦めない気持ちは評価するよ。だが、教育者としてここで引くわけにはいかない。だから身の振り方は考えろよ、今際の際だぞ。”

 

「ふん、小僧が…いい気になるなよ。夢を追うのが子供だけの特権でないことを教えてくれるわ。あの化け物の小娘はビナーから手を離せない。ならば貴様を守るのはそこの小娘共が最後だ。」

 

「貴様の身柄を抑える事が出来れば、戦略の幅も広がろう。先ほどの言葉をそっくりそのまま返してくれる。貴様こそ今際の際だ。」

 

「勝ち誇ってるのなら最後に聞いておきたいんだけど。」

 

「なんだ?大人は寛容だからな。最後だろう、手短になら答えてやるとも。」

 

「結局私を拉致するよう指示して、あんなとんでもない兵器を供与したのはあんたで合ってるわけ?」

 

「セリカちゃん…。」

 

2人とも心配そうにセリカのことを見つめる。ヘルメット団のちょっとした手違いで怪我をさせてしまったのなら、まだ事故として納得できなくもなかったのだろう。

だが”大人”がそう指示したのなら。子供に”殺人”の片棒を担がせようとしたのなら。

その”責任”はとらなければならない。

 

「…そうだ。アビドスの生徒であれば誰でもよかったが兵器に関しては供与した覚えなどない。」

 

”その話を仮に信じるとして、誰があの兵器を供与したんだ?”

 

「さてな。これ以上は知る必要はない。私も暇ではない。小僧、拘束させてもらう、悪く思うな。」

 

「そう、少しすっきりしたわ。あんたが指示を出したのね。これでようやく復讐できるわ。」

 

「セリカ、闇落ちはダメ。」

 

「大丈夫、シロコ先輩。私は許すわ。」

 

「セリカちゃん…。」

 

「だけどこの子(シンシアリティ)は許すかなっ!?」

 

「セリカちゃん!?」

 

こうして私たちの最後の壁を排除する戦いに火蓋が切って落とされた。

 

 

 

sideホシノ

 

「ねぇ、ホシノちゃん。」

「私ね、初めてホシノちゃんと会った時、これは夢なんじゃないかなって、何度も頬をつねったの。」

「ホシノちゃんみたいな可愛くて強い、頼れる後輩が来てくれたことが夢みたいで。」

「うまく説明できないけど、ホシノちゃんと一緒に居られることが、私にとって「奇跡」みたいなものなの。」

 

―――毎日毎日こうして一緒にいるじゃないですか。

―――昨日も今日も、明日だって一緒です。こんな当たり前なことで、何を大袈裟なことを。

―――「奇跡」というのはもっと凄くて、中々見られないものなんです。

 

「ううん、それは違うよホシノちゃん。」

「ホシノちゃんにもきっとかわいい後輩が出来る。その時は―――」

 

ああ。私は馬鹿だ。大馬鹿者だ。

あの時の自分には分からなかったけど、今なら理解できる。先輩の言っていた「奇跡」が正しかったことを。

心底自分が嫌になる。また大人に騙されて、先輩の言っていたことも理解しようとせず、後輩の話も聞き流して。真摯に向き合ってくれた”大人”も、自分が死ぬかもしれないのに身を挺して後輩を庇ってくれた”少女”もどこか信じられなくて。

私は正真正銘の大馬鹿者の”わからずや”だ。

 

せめて、私のような失敗を後輩たちがしないことを祈る事しか、今の私にはできない。

ああ、外がうるさい。こんなバカな先輩は助ける価値もないし、その必要もない。

でもここにきて未練たらしく、後輩たちの声が聞こえる。

こんなところに来るはずなんてないのに。

それなりの覚悟をもって決断して、あの場所から背を向けたのに、さもしいものだ。

ああ、いやほんとにうるさいな?まるで近くで大怪獣バトルでも、おきているかのようだ。

色々ありえない幻聴に、私の精神は此処までか、なんて諦めていた時。

 

ドカァァァァン!!

 

(やった!成功した!)

 

(ゴリアテにヘリで突っ込むなんて、流石アヤネ。アビドス魂にあふれてる。)

 

(先輩におかえりするのに、私だけHQなんていてもたってもいられず…。)

 

(でもアヤネちゃん、危ないのでもうしないでくださいねー?☆)

 

皆の声がより鮮明に聞こえる。体も自由に動くようになっている。

ああ、幻聴じゃなくて私は夢を見ているんだ。

せめて―――夢ならばもう一度みんなに会いたい。

ただの慰めにしかならないかもしれないが、私は声のする方へと歩く。

せめて。せめてもう一度だけ。

扉を開けると、眩い光が私を照らす。夢だからか余計に眩く感じる。

だがそこに広がっていた光景は夢でもなんでもなくて。

 

「「「「ホシノ先輩!!!!」」」」

 

「あれ、どうして…どうやって…だって、私は―――」

 

”ホシノ。”

 

ああ……そっか。みんなが、先生が。”大人”がね…はは、色々考えていた私が、馬鹿らしくなっちゃう。

 

「……お、おかえりっ!先輩!!」

 

「ああっ!?セリカちゃんに先を越されてしまいました!恥ずかしいから言わないって言っていた

のに!!ずるいです!」

 

「無事でよかった。おかえり、ホシノ先輩。」

 

「ホシノ先輩!おかえりなさい!!」

 

「おかえりなさい!です!!」

 

「…なんだかみんな期待に満ちた表情だけど。求められているのは、あの”セリフ”?」

 

「わかってるなら焦らさないでよね!!」

 

”わくわく!”

 

「うへ…まったくかわいいなぁ、私の後輩たちは。」

 

―――ただいま―――

 

私はこの”夢”のような”奇跡”を今度こそ大切にしよう。そう心に誓ったのだった。

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