カイザー狩りから一転、ビナー攻防戦がメインとなった決戦から5日後。
私は先生に車いすに乗せられアビドスへ来ていた。
校舎周りには事態の後処理のため、ヴァルキューレ主体の作戦に協力してくれた学園の連絡要員たちがちらほらと見える。
今回、これだけの戦力をもってしても制圧が困難な「デカグラマトン」なる超兵器の存在に、未だ正体のつかめない生徒に対して脅威の「謎の爆弾」が事件の噂として各学園に広まることになった。
それらの未解決な潜在的脅威とは別にある種、決着したこともある。
アビドスでの騒動を引き起こした首謀者たる「カイザーPMC」との決着だ。
生徒の不当な拘束による監禁罪、市街地における大規模なテロ行為、正体不明の超兵器「ビナー」の発生を誘発させたとして、連邦生徒会による監査が入り名実共に消滅した。
だが、親会社である「カイザーコーポレーション」はPMC理事の独断で今回の事件に関して一切認知しておらず、また無関係としてトカゲの尻尾切をした事により多少のイメージダウンこそあれど生き残ることには成功していた。
一方、生徒側の被害はというと、直接前線で戦った風紀委員やトリニティの生徒が若干名の軽症者を出しただけで、2日後には全員復帰をしていた。
ミレニアムは人的被害は一切なく、ドローンが基地に置いていた1機を残して全滅。私を最後固定していたドローンも撤退までは耐えられず墜落してしまった。(ホシノさんとヒナさんが受け止めてくれたらしい)
よって現在も万全と言えないのは、手足や肋骨の骨折をし、神秘の枯渇故治りが遅くなった私だけとなっていた。
そしてようやく退院を許可されたとして祝勝会をすべくアビドスに集まっていた。
”それにしてもサエカの成長は嬉しいんだけど、”ソレ”を渡してきたのが黒服となると先生は複雑な気分だよ。”
「いいじゃありませんか、便利ですし。貰える物は貰っておく。これ貧乏人の根性ですよ。」
実は先生がお見舞いに来ていた時、どこからともなく黒服が現れ世辞を述べた後、私にプレゼントを置いて行った。
曰く、ビナーの残骸の一部と欠けたヘイローの一部をちゃっかり入手していたらしく、それを元に研究が進んだ報酬として、私の装備を作ってくれたらしい。
私の手足にフィットしたブレスレット。これにはビナーの「理解と結合」の力が込められているらしく、拘束具としての意味合いが強いアイマスクとは別に神秘の調律が可能となった。
”サエカ”と”私”の繋がりをより強固にし、神秘の理解を深める。これにより私は自分の目でこの世界を眺める事が出来ていた。
”初めてサエカの目を見る事が出来て私は嬉しいよ。とてもきれいな目だね。”
「あ、ありがとうございます……。」
いきなり人の目をのぞき込んで、きれいとか抜かすんじゃないよ。ドキッとするじゃん。
「やぁ、先生さんとサエカちゃん。この間ぶりだな!大立ち回りをしてアビドスをあの蛇から守ってくれたんだって?ありがとうな!今日は俺からも柴関ラーメンの再出発を兼ねて、御馳走するからたらふく食べて行ってくれ!」
「こんにちは、大将!出店から始めたんですね!楽しみにしてます!!」
「おうよ!店を再建するにも時間がかかってな!その間だけだけでも初心に戻って屋台をやろうと思ったんだ。味は保証するとも。」
アビドスの皆が再出発するのに合わせて大将も再出発で屋台とは。くっ、この大将ってやつは…!
屋台で食べ物つつくの夢だったんだけどこんな感じで叶うとは。大将に感謝だね。
しばらく、大将の仕込みを見てよだれを垂らしていると近くの体育館からぞろぞろと人が出てくる。
「あー!!サエカ!到着してたんなら声位かけなさい……って目開けられるようになったの!?」
「わぁ、初めて目を見ました!きれいですね♧」
「大将のラーメンに釘付けなら納得ですね……!」
「ん、私とおそろい。」
「シロコちゃ~ん、私ともおそろいだよ~?」
「ホシノ先輩は獣耳が付いてない。私はある。だから私の方がおそろい。」
「急なマウント取るじゃん?でもおじさんはシロコちゃんと違って、色そのものが違うから私の方がおそろいなんじゃない?」
「ぐぬぬ…でも私の方が先に出会ってる。だから私の方が「友達」」
「それを言うなら私はサエカちゃんと同じ戦場に立ったから「盟友」だね~?」
「「ぐぬぬ…。」」
「私は膝枕しました☆」
「何やってるのよ先輩たち……それを言ったら私は命を懸けて助け合ったから「親友」と言っても過言じゃないよね!」
「「「くっ!!」」」
「何やってるんですか皆……。」
えっ、私が友達?みんなそう思ってくれていたの?私が生涯、友達と言えた人は病室に一時いた同い年の子だけだ。その子が退院してしまってからは、私の中で友達と呼べる人はいなくなってしまっていた。
私は私の心情の為に、そして仕事として過ごしていた。こんな短い期間で私が友達だなんて勝手に思って、そうじゃないと拒絶されたら怖くてビジネスライクとして勝手に壁を作っていた。
それがどうだ。彼女たちは自分こそがより友達、なんてマウントを取り合っているではないか。
ふと私の頬に温かいものが流れるのを感じた。これは……。
”サエカ。これが君の守った笑顔の結果だよ。君の紡いだ絆だ。”
”あの時、屋上で言っていたことを覚えているかい?ホシノだけじゃないんだ。サエカ。君だって皆にとって大切で、想ってもらえて。手を伸ばしてもらえる。そんな「大切な友達」なんだよ。”
”君の過去は辛く苦しいものだったかもしれない。その過去は確かに消えないだろう。だけどね、サエカ。”今”、この現実は楽しくて笑顔にあふれた、皆の青春の物語なんだ。”
”だからサエカ。胸を張って。昔手に入らなかったものは沢山手に入る。皆と一緒にこの青春の物語を、日常の一ページを刻んでいこう!”
途端、私の涙腺が決壊する。―――ああ、そうだ。大切なものは手を伸ばして遠くばかり探していたが、本当に大切なものは自分の手元にもう既にあったんだ。盲点だったなぁ。
私は感極まって、車いすの正面に座り込む先生に抱き着き、顔をうずめる。……安心できる匂いだ。
”おっと!”
「あぁー!先生に先に取られちゃいました!!☆」
「ぐぬぬ、漁夫の利とはさすが先生。油断できない。」
「なぁ委員長。友達ってどっちが上とかやるものなのか?」
「私もサエカと友達と名乗っていいのかしら…?」
「えっ。」
「イオリ、無粋になるから黙っていましょう…。」
『ふふ、この清楚な高嶺の花である私もサエカちゃんの親友……いえ、お姉ちゃんです。』
『……ヒマリ、それはやめておいた方がいいと思う…後でメンタルブレイクする未来が見えるから。』
『何言ってるのよ、サエカちゃんは私のかわいい後輩よ。』
『ユウカも何を競っているんだ。サエカは誰のものでもないだろう。……強いて言えば私たちエンジニア部のかわいい協力者だな。』
私が泣き止むまでの間その場にいた皆で私を取り合うこととなった。
勿論誰が一番友達なのか?などという爆弾を落とし、それに対して「みんな等しくお友達」という回答をして、ヒマリさんがドローンの奥でダメージを受けたのはまた別のお話。
”それじゃ、今回の作戦成功と協力に感謝し、乾杯!!”
「「「「「乾杯!!!」」」」」
今回トリニティ組であるファウストなる悪の親玉らしい生徒は「ペロロサマ」とかいうイベントと重なったとかで来ていない。ティーパーティ組もその地位の高さ故動きが取れず、(特に姉上は)悔しがっていたそうな。
「いやー、にしても傑作だったよね。ボロボロの理事に対してセリカちゃんの無慈悲さ!おじさん笑いをこらえるの大変だったんだからね~?」
「ん、あれはひどい。」
「私もドン引きです……何が「最後にボコボコにするって言ったわね。……あれは嘘よ。」ですか。しっかりとどめまで刺して。スペアボディ探すの苦労したんですからね!」
「うっ、仕方ないじゃない!それだけの事したんだし……そ、それを言うならアヤネちゃんだって、ヘリでゴリアテごと轢き殺そうとしていたじゃない!」
「あっ、あれはしょうがなく……。」
「さすがアビドスの裏番長って感じでしたね☆」
えっ、そんなことしてたのアヤネさん??大人しそうにしてやることエグイな……。
「このラーメン美味しいな。チナツ、そっちの胡椒取ってくれないか?」
「はい、胡椒。にしても、これだけの味なら美食研究会に目を付けられても、爆破されずに済みそうですね。」
「そうね、この味には正直驚いたわ。美食も爆破しないであろう店を、勝手に爆撃した生徒がいることが驚きでならないわね。」
「う゛っ!」
「アルちゃーん、そんな百面相しながら食べなくたってラーメンはおいしいよー?」
「わ、分かってるわよ!でもこんな光の当たるような、温かい場所で皆と肩を並べておいしいものを食べる……私のアウトロー図と違うって言うか……。」
「わ、私がこんな祝いの席にいても、い、いいんでしょうか……?」
「社長もハルカも気にしなくていいのに。これは「報酬」だと思えば。ほら、気持ちも変わってくるでしょ?」
『ああ、ドローンでは何も食べられないのが悔しくなるな。いっそ今度味覚を共有できる発明でもするべきか…。』
『それに関しては同感ね。でも予算は増やさないわよ。』
『太もも妖怪のケチ…(ボソッ』
『何か言ったかしら?』
ワイワイとはしゃぎ、ラーメンや、持ち寄ったお菓子などを食べながら、あの時あんなことがなど面白かったり危なかったりの話をしていく。
他にも外で忙しく働いているヴァルキューレの生徒たちにもラーメンを配り、宣伝できたとホクホク顔の大将とセリカさん。
今回の件で解決できていない問題も多くあれど、学園の垣根を越えて集まった私たちは、夕方ごろまで騒ぎ、みな笑顔で満足そうにして帰っていった。
「この度は私達アビドス高等学校の支援要請を受けていただきありがとうございました!!」
「借金の問題はまだありますけど、利子はかなり良くなったので何とかなりそうです☆」
「ん、今度は「友達」として遊びに来て。精一杯もてなす。」
「そうね!また来て!私たちはもう「友達」なんだから!」
「うへ、今度は何かあればおじさんたちが助けるよ。いつでも声をかけてね。」
その言葉に私はまたワンワンと泣き散らかす。砂漠の熱が原因でないのに干からびそうだ。
最後にみなと抱きしめあってから、私と先生は帰路につく。
「今回の遠征は実りあるものでしたね、先生。」
”そうだね、大変だったけどそれ以上に、みんなの成長や協力が見れたことが、先生として嬉しかったかな。”
「明日からはまた書類仕事ですね。私はしばらく事務作業しかできませんが、食生活とか大丈夫そうですか?ちゃんと栄養あるごはん食べてましたか?」
”う゛……ビタミン剤食べてました……。”
「はぁ……左腕使えるようになったら、また作ってあげますからそれまで何とか頑張ってください。」
”善処します……。”
「あ、それと先生?私は見ての通り右腕しか使えませんので、トイレとシャワーの介助、よろしくお願いしますね?」
私は精一杯悪戯な顔を向けて先生をからかう。生前ずっと介助されていたし、決戦の時に服の一部が焦げて下着が見えていたから今更だけど。
”うん………うん!?”
「あ、返事しましたね。ではよろしくお願いしますね?先生が生徒に手を出さないって信じてますから!」
”ま、まってぇ!?せ、せめてシャワーは同性の子に!!先生殺されちゃう!!”
「そのためだけに人を呼ぶのは非効率ですし、迷惑でしょうから。」
「それに先生なら、私は……。」
最後の言葉が聞こえていたのか分からないが先生は頭を抱え絶叫する。
喜びの雄たけびだと嬉しいな。身体はサエカにあげちゃったけど、私の心は先生にあげる。
私に生き方を教えてくれた貴方になら。
アビドスの夜は少し冷えたが、私の心はそれを気にしないくらい暖かいのだった。
対策委員会編―――Fin―――
サエカの絆ランクがカンストしました。人に接する機会がなかったのでチョロいです。
アビドス編はこれにていったん終了です。
書き溜めもプロットも、何も考えず勢いだけの見切り発進でしたがここまで読んでくれてありがとうございます。
エデン条約編はドロドロにしたいのでパヴァーヌ編は比較的平和に行こうと思います。
完全に妄想の垂れ流し駄文ですが、高評価やコメントを貰えると嬉しく思いますので、よければよろしくお願いします!