第25話 えっ新たな冒険?
現在時刻、朝6時。場所はシャーレビルの第1仮眠室。そこで私は―――
「あっ♡んん!せん…せいっ♡そこっ!そこいい♡んんあ!もっとぐりぐりしてっ♡」
「先生のっ♡”固いの”でっ気持ちいいところっ♡刺激してほしいのっ♡」
"っくう…!これは中々…!!あまり長くは持たないかもっ……!!”
「んんん!あぁぁあ♡!!」
”………っく!はぁ、はぁ……!どうだった……??”
「はぁ、はぁ、きもち、よかったです……♡うまいですね、先生♡」
”って何やらせるの!!??途中までそのノリに合わせてたけどさ!!もし誰かが”聞いていたら”とんでもない淫行教師って思われちゃうよ!!??”
「ええー?そんな誰も”聞いて”いませんって先生。気持ちよかったですよ♡」
―――マッサージを受けていた。
決戦の日からそれなりに経ち、私の体も万全になった。だが車いす生活が長く、その状態で日夜書類仕事をこなしていたために、私の体は凝り固まってしまっていた。
そこで私は決戦前夜に頑張った報酬を要求していたことを思い出し、背中をマッサージしてもらっていた。
意外にも先生の”ほぐし”が上手く、自然と声が出てしまった。先生も先生で運動不足がたたり、少し無理な体制で力を込めただけで、息が上がってしまう始末。
その結果が「勘違いされそうな場面」だった。
途中から悪戯心でワザと声を出しふざけていた。そして先生も男の人。理性はあるが体の方は正直なようでマッサージが終わって座り込み、笑っている。その光景がたまらなく嬉しくて破顔する。
端的に言えば私は先生に堕とされてしまった。これも本来の青春の1ページなのだろう。
この日常が楽しくて仕方ない。
さりげなく動いて捲れたスカートには何か思ってくれたかな?私はいつでも待ってますよ。
「マッサージ、ありがとうございました、先生。私は汗を流しにシャワーを浴びた後、朝ご飯を作るので先生も顔を洗ってきてくださいね。」
「………それとも一緒に入りますか?」
”なに言ってるの!?入らないからね!?”
「それは残念。介助の時も先生にしてもらって構わなかったのですけども。」
”私は構うの!!毎日生徒の裸を見ていた、なんて噂が流れたら教師生活終わって牢屋行きだよ!!”
「誰にも言わないのに…。それじゃあ先生、座ってないで先に顔洗ってきてください。私は着替え取ってくるので。」
”えっ、あっ、うん。もう少し休んでからがいいかなーって??”
バレたくないのか頑なにしゃがみこんだ姿勢を崩さない。でもバレバレですよ。
頑張って隠しているのでその意思を尊重し、私は部屋を後にする。
私は先生が出てくるまでの間に朝の献立を考え、メールを確認する。
すると業務連絡の他に、気になるメールを発見した。そのメールの優先度を上げながら整理していく。
気が付くと先生は顔を洗って出てきており、私の背後からパソコンのデスクをのぞき込んでいた。
”何か気になるメールでも来てた?”
「ええ、まぁ。ミレニアムのゲーム開発部というところからですね。先生が読んでる間に私はシャワーと朝ごはんを作ってきますので、ご飯の時にでも所感を教えてください。」
先生にその長ったらしい要領の得ない、めんどくさいメールを押し付けシャワーを浴び、慣れてきた朝ご飯を作る。
ミレニアムサイエンススクール。おそらく私がこの世界に来てから、最も長く係わった学園だ。
治安もよく、先進的。科学文化に慣れた日本人なら馴染みが深く、それでいて真新しさを忘れさせない飽きない自治区。
私の発見にカイチョーが係っているためにミレニアムの要職についている人たちとは顔なじみだが「ゲーム開発部」という部活に覚えはない。どんな子たちなのだろうか?ユウカさんに聞くのが早いが、ここはゲームらしく情報なしのわくわく感で当たってみようと思う。
「それで先生、どうでしたか?メール。結局何が言いたいメールだったんですか?」
”ああ、うん。やっぱり途中でめんどくさくなって読むの諦めたんだね……?ざっと見た感じ3000文字くらいあったよ……。”
わぁお。あの文章そんなにあったんだ。
「それで、そんな長ったらしいゲームのテキストを起こしたような文章の要約は何でした?」
朝ごはんを頬張りながら頭の中で要約しようと先生の動きが止まる。
”部活がつぶれそうだから助けて!……かな……??”
マ?あれだけ仰々しくクッソ長い文章連ねておいて要約したのがそれか?1行で済むじゃん…。
なんかゲーム開発ってだけで興味そそられたけど、途端に行くの嫌になってきたなぁ。
”言いたいことは分かるよ……でもとりあえず直接会って事情を聴いてみないとね。軽く朝仕事したら早速向かってみよっか!御馳走様!今日もおいしゅうございました!!”
「お粗末様でした。まぁ、ですよね。一応何も危険はないとは思いますが、用意だけはしておきますね……。」
こうしてミレニアムへ向かうことになったのだった。
”なんだか久しぶりに感じるね、ミレニアム。”
「そうですね、でも他自治区と違ってD.U地区に最も外見が近い場所なので、あまり遠くに来たという感じもしません。」
私たちはアビドスの時の様な遭難や不良に絡まれると言ったアクシデントもなく、校舎まで来ていた。ああ、そこの自治区もこのくらい平和だといいのに。
だが私は知っている。自治区は比較的安全だが、校舎の中は実験失敗による突発的な爆発が発生し、前触れなく吹き飛ばされる最も危険な校舎であるということを。何度吹き飛ばされたことやら。
数々の事故に巻き込まれた悲しき過去を懐かしみ、天を仰ぐ。すると隣を歩く先生に向かって、上から落下物が向かっていることに気が付く。
「先生、ちょいと失礼しますね。」
”うわっ!?”
私は先生をお姫様抱っこし、落下物を足でうまく受け止める。
再度上を見上げると、落下物のあった校舎の窓から生徒がこちらを見ていた。目が合ったのでとりあえず中指を立てておく。
すると窓を勢いよく締められてしまう。人の頭の上にこんな厳つい固まり投げ込んでおいて、謝罪もなしか。先生がいなかったらこのまま窓から「こんにちは」しに行くところだ。
”えっなに……これは…ゲーム機?あっぶなぁ……ありがとね、守ってくれて。”
「どういたしまして。こんなの先生に当たったらどうするつもりだったんですかね。それにあの態度。上等ですよ。」
”何か事情があるかもしれないから程々にね……?”
「それは先ほどの生徒さん次第ですね。とりあえずユウカさんに挨拶に行きましょうか。」
「こんにちはー。」
「あら、サエカじゃない!ひさしぶりね、体はもう大丈夫なの?無理してない??辛いことがあったらいつでも言ってね!」
私のお婆ちゃんか何かか?
セミナーの部室に、ノックしてはいると書類整理をしているユウカさんと、ノアさんがいた。
本来はリオさんもいるはずだけど、今日はタイミングが悪かったのか居なかった。
”こんにちは。今日はミレニアムの生徒から救援依頼があってね。そこに行く前に挨拶に寄ったんだ。”
「あっ、先生も。こんにちは。」
「うちから救援依頼?シャーレの手を煩わせるような案件は、特にないはずですけど……。」
「こんにちは、サエカちゃん。それに先生も。事前に言ってもらえれば、サエカちゃんの大好きなロールケーキを準備して待っていたんですけど……今は無いので代わりに、これ上げますね♪」
飴ちゃん貰った。わぁい。
「ノア、今ってシャーレに頼らないといけない案件って、何かあったかしら?」
「いえ、特には。強いてあげるなら「デカグラマトンの件」や、「例の爆弾」などの進捗のお話くらいしかありませんけど、救援依頼となるとどうも違うようですし。……よければどこから依頼が届いたのか教えていただいても?」
”ゲーム開発部って所からかな。”
「それと先生の頭にゲーム機投げたハッピーな奴がいるので、追加でそいつにカチコミに行きます。」
「ゲーム開発部」という言葉を聞いてユウカさんの顔色が険しくなる。この顔になるときは大体、問題児の相手をするときの顔だ。わぁ、やっぱりこの依頼めんどくさい奴じゃん。
「ユウカちゃん……。」
「待ってノア。何も言わないで……。とりあえず事情は概ね分かりました。せっかくだから案内しますね。」
「ノア、少しの間席を外すわ。」
「はい、ユウカちゃん。行ってらっしゃい♪」
「ゲーム開発部ってどんなところなんですか?」
私たちは部室に向かいながら前情報を得るべく話しかける。わくわく感などもうない。ユウカさんの表情的にろくでもない奴らの集まりなのだろうけど、万が一、もしかしたらがあるかもしれないので、モチベーションの回復に聞いてみる……が。
「その名の通りゲーム開発が主な活動‥‥なんだけど実際に完成して世に出したのは1つのみ。普段はゲームの開発そっちのけで、ゲームのプレイばかりしている子たちよ。」
”わぁ……なんか親近感わくなぁ……。”
「先生?」
先生はゲーム大好きだからなぁ。普段から休憩時にスマホで何かやっているようだし、その手の話は好きなのだろう。私も興味自体はあるけど、コントローラーすら持ったことがない身では手を出すまでには至らない。お陰で熱中できる趣味はなく、お金は溜まっていく一方だ。
「ゲームと言えば「クラブ・ふわりん」は最近どうですか先生?」
”あっ、今その話は……!”
「なんですか先生??そんな、いかがわしい気配のする名前のゲームは??サエカが知ってるってことはこんな無垢な子の前でそんなゲームを!?……先生!後でお時間いただきますからね!!」
わお、誤解がフルスロットルだ。すまぬ先生。でもせっかくだからそのゲームにアホ程課金して、食費削った事をユウカさんにみっちり絞られてくれ。
……それとユウカさん、私は無垢ではないよ……。
そうこうしていると目的地に着いたのかユウカさんが扉の前で止まる。
あれ、この部屋ってさっき先生にゲーム機投げてきたところじゃない?
「着いたわ、ここがゲーム開発部の部室よ。モモイ、入るわよ。」
ユウカさんが扉を開けようとする……が、カギがあるようには見えない扉が開かない。
これ、内側から必死に抑えてない?
「モーモーイー!?開けなさい!!居るのは分かってるんだから!!くっ、これミドリもやってるわね!?」
2人相手だとさすがに若干分が悪いのか、ユウカさんは筋力対抗ロールに失敗する。
わぁ、生徒会の役員に対して籠城とか……これにはユウカさんもあんな表情になりますわぁ。
でも単純なフィジカルなら現状私以上の生徒はいない。カチコミの時間だおらぁ!!
ユウカさんと代わり軽く扉を引き、対抗ロールに自動成功する。
「「うわぁぁ!!」」
「流石のパワーね……その小さい身体のどこにそんなパワーが隠されているのかしら……。」
扉を引くとドアノブに引きずられるような形で生徒が二人廊下に転がり出てきた。
「で、でたな!「冷酷な算術使い」のユウカ!部室没収はまだ先のはずだよ!?」
「だれが「冷酷な算術使い」よ!人をモンスターみたいに呼んで!失礼ね!」
「それと今回は没収に来たわけじゃないわよ、貴方達が呼んだ「シャーレ」の二人を案内に来たのよ。」
「シャーレ……?う、うわぁ!?さっきの中指立ててきた奴!こ、ころされる!!??」
目の前でギャーギャーと喚きたてる、双子だろうか?生徒が二人で抱き合って震える。
なんだろ、誰彼構わず、すぐ殺す殺人鬼を見たかのような反応だ。
「そんなビビらなくても…。」
「嘘だ!あなた、「シャーレの決戦兵器」でしょ!?歯向かった市民を骨も残らず消し炭にして、高笑いしながら蹂躙した挙句、3大校の連合討伐隊でも手を焼いたレイドボスを、1撃で消し飛ばしたっていう魔王!!」
えっ、私陰でそんな風に言われてるの??ちょっとショックなんだけど‥‥。
事実確認、というか否定してほしくてユウカさんの方を見ると、肩をすくめてみせた。うそだろ。
「こんな形でサエカに知られたくはなかったけど、一応本当に流れてる噂よ……。勿論、内情を知ってる私たちは違うのを理解しているけど、結果だけ見れば大体事実だから火消も難しくて。」
だから最近不良に絡まれなくなったのか……治安良くなったなぁ、なんて暢気に考えてましたわ。
「殺したりしませんよ……でも話を聞く前に、先ほど”コレ”を先生の頭上に投げた弁解は欲しいです。」
「あっそれ……お姉ちゃんの……。」
「ほんと!?殺さない!?じゃあ、むしゃくしゃしてゲーム機投げたら、偶々下に人がいました!故意に狙ってません!!ごめんなさい!!」
なんか謝罪が薄っぺらいというか、なんというか。「じゃあ」ってなんだ「じゃあ」って。
「殺しはしませんがすぐ謝らなかったので、今回はデコピンで勘弁してあげます。往生せーよ。」
”さ、サエカ、ほ、ほどほどにね……。”
「なぁんだ!「デコピン」なら甘んじて受けるよ!こんな私たちより小さい子の「デコピン」なら大丈夫!それで許してくれるなら!」
「……モモイ、あなたさっき自分で言ったこと覚えてる?大丈夫?」
私は中指に力を込めて、正座するモモイさんとやらのデコにロックオンする。
ミドリさんとやらはその言葉の意味を理解して、これから起こるであろう悲惨な光景に、顔を青ざめさせ距離をとる。
「モモイが自分で言ったのよ。「シャーレの決戦兵器」「魔王」って。」
「あっ」
バコォン!
その顔が絶望に染まる前に、私は容赦なく中指を開放する。私は分かっていたことだがデコピンではまずありえない音が廊下に響き、その音にふさわしい衝撃がデコを襲う。
それをもろに食らったモモイさんは、正座したまま部室の中に転がっていき、芸術的なブリッチをかます。
「っ~~~~~~~!!!!」
”「「うわぁ……。」」”
よし、これで断罪完了。私は人を舐め腐ったムーブを大人だろうが子供だろうが許さないのだ。
これに懲りたら悪い事したらさっさと謝ることをお勧めするよ。次やったらラリアットかますからな。
モモイさんが復帰するまでそれなりの時間を要することになり、事情を理解するまで時間を要することになった。
先生はサエカのデコピンの威力を知っています。
買い物中に絡んできたヘルメット団のヘルメットを、デコピン一発で粉砕したのを目撃しているので。