はろはろー、武器整備のためにエンジニア部に残った休憩フォックスだよ。
整備はありがたいけど、変な機能はつけないでくださいね?
「さて、サエカ。あのアリスって子は実にすごいね。先ほどの誤射で瓦礫が体をかすめてうっすら血が出たというのに、瞬時に治ってしまったね?しかもあれを片手で持ち上げる握力……まぁこれはサエカもか。そして極めつけは、発射した時の尋常ではない反動に対して
「さてはて、こんな人材がいきなり生えてくるものかね?何処から連れてきたんだい?」
「普通に……転校してきたんじゃ……?」
「もちろんその可能性もあるだろうね。けど転校生といえど、武器を持っていないというのもおかしな話だ。紛失、または故障してしまったのであれば理解できるけど、それならばなぜ依然と同じ武器種を探さないのかも気になってね。」
「たしかに……持ち方や武器の扱い方は初めて触る人のそれだった気がする……。」
「まるで
流石はエンジニア部の部長だ。言外に人かどうか疑わしいと言っている。だけど私としてもアリスさんが人かそうでないのかわからない。”中身”を見たわけではないから。
それに個人的な事を言えばアリスさんは”人”と信じたい。あれが高度なプログラムと言われてしまえばそれまでだが、倫理的には
そしてもし機械であってもヘイローがある。同じ理屈で行けばビナーもケセドもヘイローがあったが、私はあれを「意思のある者」についてると考えている。
仮にアリスさんが機械だとして彼らデカグラマトンとアリスさんの違いは何か?
それは
たしか「理性、意思、欲望」だったと記憶している。デカグラマトンにはこの内の意思と欲望が足りないように感じた。
隠すような間柄でもないし、信用できる人だと思って事の経緯と思ったことを伝える。きっと悪いようにはならないと信じて。
「ふむ…廃墟で、ね。まぁわかったよ。他ならぬサエカの話だ。信じようとも。」
「サエカの話抜きにしても、私は人だと思います!あんなキラキラとした目、どうやっても機械では出来ませんし、サエカの言う”魂”の話は当てはまると思いますから!」
「私も同意…よい子がゲーム開発部の仲間に入った。」
「ただ……そうだね、別にこれは言ってしまっても構わないか。シャーレ職員であり他ならぬサエカだしね。」
「何かありましたか?」
「ああ、いや、まだ確定した情報でもないし絶対、とは言えないんだけど。なんとなくあの白黒の二人が出張ってきそうな気がする案件だと思ってね。ヒマリの方は融通が利くだろうけど、リオの方はどうだろうか。最近何かに掛かりきりのようだし、何か焦っているようにも見える。」
「悪いようにならなければいいけど、念のためアクションには注意してくれ。」
たしかに。あの二人ならばヴェリタスのハッキングや、先生がどうやってかそろえた書類に気が付かないはずがない。ましてやユウカさんのように丸め込めるような人物でもない。
アリスさんの出自に関してくまなく調査するだろう。そのうえでどう判断するのか分からないが、アリスさんにはこのまま平穏な学生生活をしてほしいと思うところ。
……だって誰も来ない閉鎖された部屋でずっと寝ていたんだもの。ここから幸せになってもいいじゃないか。
「よし、これで整備は終わりだ。本当に頑丈な造りをしていて毎度驚かされるね。あれだけの酷使をして重要部分に一切のダメージがないとは。ぜひとも製作者に会ってみたいものだ。」
「ありがとうございます。製作者は……あまり人前に出たくない人なので…その。」
「それなら仕方ないね。代わりといっては何だけど追加機能はどんどん付けて、私たちは私たちなりのやり方で対抗意識を燃やさせてもらうよ。」
「……ちなみに今の間に何を付けたんですか。」
「ドライヤー機能。」
「いらないです‥‥。」
いらん機能を付けたされて複雑な気持ちになりながら部室に戻る。先生は先生でまたどっかに行ったし、こうやって一人でミレニアムにいると先生に会う前の事を思い出すね。
そこまで考えると、そういえばヒマリさんに会ってねぇやと思い出す。
……絶対めんどくさいから後でいっか。どうせ私の居場所は逐一つかんでいるのだろうから、帰り際に行こう。どうせ粘着されて身動きしづらくなるだろうから。
ゲーム開発部の部室に戻ると3人がうなだれて絶望していた。何があったんだってばよ。
「えと、何があったんですか……?」
「あっ、お帰りサエカちゃん……えっとね、部員数だけの条件クリアでは存続はできないってさっき言われちゃってね……大体お姉ちゃんのせいではあるんだけど、成果も出さなきゃならなくなったの。」
「うぅ、だって仕方ないじゃん!あの時はドロップ2倍キャンペーンで…!」
おけまる。つまりは振出しに戻ったわけだ。でも元々は作らないといけなかったんだし、変わらないのでは?なんて思ってしまう。
「結局G.Bible必要になってきちゃった。またあそこに行くのかぁ。サエカ、たのめる?」
「まぁ、構いませんけどバッテリーの充電してないので連戦になったら厳しいですよ。」
実はこれに関しては半分嘘だ。確かに残弾という意味では嘘はついていない。だが私には神秘砲がある。だけどあれ結構疲れるんだよね。緊急時以外はできれば使いたくないし、神秘が馴染むというか、何かが塗りつぶされていく感じがしてあまり好きじゃない。
何より私はお手伝いだ。私無しでどうにもできないというのならそれはハナから無理だったというだけの話。本当に守りたいのなら進み続ける覚悟を見せてほしい。
「それなら私も一緒に……廃墟に行く。」
「パンパカパーン!ユズがパーティに参加しました!」
「大丈夫なの?半年以上外に出てないし、それに授業だってネットで受けてるし……。」
「大丈夫じゃない…けど今回の事は部長である私にも責任はあるから、多少の戦力にはなる。私だけの部室じゃないから一緒に守りたい。」
「そっか。よし!じゃあいこっか!って先生居ないじゃん!」
”呼ばれて飛び出てじゃじゃじゃじゃーん!”
「うぉ、また妖怪みたいに!!」
「先生そのネタ随分古いですよ‥‥。」
”2人とも容赦ないね…おじさん心は硝子だからね”
「そのネタも…いやいいや、いこっか!」
「敵エネミーを殲滅します!……光よ!」
はい。廃墟に戻ってきました。前回はさほど数がいなかったのに対して今回はやたら多い。なんでだろう。ただ、前回と違って戦力が2人分増えているから私が出なくても押し返す事が出来ている。
特にアリスさんの火力が素晴らしく少しチャージするだけで着弾地点にクレーターを作り出すほどの威力がある。ユズさんもGLで面制圧してくれているし、それをカバーするかのような形でモモミドの二人が展開している。完璧の母。
私?私は先生の横で万が一に備えての護衛と、制圧力が足りなくなった際の後詰だ。つまりサボり。
「ふぅ、戦闘音を聞きつけてぞろぞろと沸いて来るね!このままじゃちょっと危ないかも。」
「でもここまで来て引くわけにはいかない!むしろ今が一番手薄なはずだから突破しよう!」
「無限ポップのイベントは突破しない限り、ジリ貧だとゲームでもやっていました!」
「うん……私も頑張るから、行こう……!」
”よし、じゃああの工場に向けて鶴翼陣形!中央突破で突撃しよう!サエカ!一撃だけお願い!”
ほいきた。チャージはある程度できてる。薙ぎ払ってやんよ、略してなぎハラ!*1あーロールケーキ食べたい。
「アリスさん、スイッチ!……薙ぎ払え!プチカタストロフ!」
アリスさんと入れ替わり正面90度ほどの敵を薙ぎ払い、それによってできた空白地点を走り前回と同じ工場に滑り込む事が出来た。……今回も中までは追って来ないみたい。システム的に建物に入れない?いや、そんなことはないはずだ。理由は気になるが今はまぁいいか。
「はぁ、はぁ……何とか入り込めた…また追撃には来ないんだね。なんでだろ。」
「わかんないけど細かいことは気にしない!成功したからヨシ!」
「お姉ちゃんそれ良くない現場で聞くフラグだよ……。」
「にしてもあれだけの敵を中央突破できるのって、私たちすごく強いんじゃない?C&Cとか他校の強い人たちと渡り合えたりして!先生ならほかの学校の強い人たち知ってるんでしょ?どうかな?」
「もちろん私たちのパーティが一番強いです!サエカも入れて最強の勇者パーティです!」
”うーん、そうだね、確かに息ぴったりだし明確な弱点もないで強い、のかな?”
「先生、曖昧な返事して本気にしたらどうするんですか。変に調子に乗って他校に喧嘩撃ったら面倒ですよ。」
「個人的には弱くないと思いますが、せいぜいがチンピラを退ける事が出来る程度。治安部隊や特記戦力が出てきたら、蹂躙されちゃいますので喧嘩とか売らないでくださいね?」
「そ、外の世界は…そんなに危険が溢れているんですか…。」
「特記戦力といえばゲヘナの風紀委員長とか?サエカはあったことあるんでしょ?サエカとどっちが強いの?」
「よーいドンで戦闘を開始するなら拮抗、すべての損害を許容したうえでなりふり構わない全力なら圧倒、ですかね。その場合私も沈むので結果的には「恐らく勝てる」けど引き分けになる、って感じでしょうか。ヒナさんに誰にも見せてない奥の手がなければ、の話ですけど。」
「自爆みたいなって事?流石はシャーレの決戦兵器。じゃあさ、ミレニアムの”最強”とはどう?」
あ、あれかぁ……昔何度も挑まれたけど全戦全敗、ただの一撃も入れる事が出来ていない。多分なりふり構わなく戦っても一方的に蹂躙される未来しか見えない。弱い者いじめダメ絶対。
「ネル先輩は相性最悪なので私では絶対に勝てません。あの人縦横無尽に瞬間移動するうえに、体術もできて張り付かれたら何もできませんよ。当たりさえすれば一撃でHPレッドラインまで持っていけるんでしょうけど、そもそも当たりませんので……。」
そう、わたしは赤い彗星のごとく「当たらなければどうということはない」を地で来る相手には、めっぽう弱い。連射力が高く上下の動きも激しいから当てられないし、他の生徒と違ってなんというか攻撃が鋭い。私を倒すだけなら攻撃に重さなどいらず、軽くても神秘の籠った攻撃を確実に当てるだけでよいのだ。
「そ、そうなんだ、むぅ、今度何かあったら、サエカをぶつけて逃げようとか考えていたのにダメかぁ。」
こ、このがき、なんて恐ろしいこと考えやがる…あんなのと対峙したら5秒も立っていられない。
逆にモモイさんを身代わりにして、私が生き延びてやる。*2
「それに、強く感じたのならそれはきっと先生の指揮のおかげだと思います。先生は僧侶枠ですからバフが乗ってそう感じたのかもしれません。」
「たしかに……先生の指揮を受けながらだと、安心して戦えました…。」
「わかるかも…。」
「…………。」
「アリス?さっきから静かだけどどうしたの?」
「わかりません。ですが実家のような安心感というか、どこか見慣れたような光景に感じると言いますか……あっちの方に行かなければいけない、という感じがします。」
そう言ってアリスさんはふらふらと歩き出す。まるで目的地がしっかりとしているかのような迷いのない道順で進んでいく。うへ、もう私はどこから来たかわかんなくなっちゃった。*3
「なんでしょう、なにか「セーブデータ」がアリスの中にあるかのような、呼ばれているような。」
「えっ、どうゆうこと…?確かにアリスちゃんのいた場所には似てるけど……あれ、あそこのコンピューター起動してる。」
薄暗い中、目立つように、呼んでいるかのように電源が付いた、コンソールディスプレイがあった。また床抜けしたりしないだろうな…?私はトラップに警戒しながら後をついていく。
【Divi:sion systemへ、ようこそお越しくださいました。お探しのものを入力してください。】
おやぁ?私たちの接近に気がついてか、触れてもいないのに勝手にディスプレイに文字が表示された。なんだか怪しい。私は警戒度をさらに引き上げる。
「お、親切だね!じゃあお言葉に甘えてG.Bibleをこれで探しちゃお♪」
【……#$@#$$%#%^*&(#@】
「わ、壊れた!お姉ちゃん何やったの?」
「えっ、私はまだ何も…ほんとうだよ!」
【……あなたはAL-1Sですか?】
!?なんだこのコンピューター!?前に来た時もそうだけど人のプロフィールを勝手に取得する機能でもあるのか?怪しすぎる。
突如生体スキャンがアリスさんに行われる。それ自体に害はなさそうだけど……何だろう、この胸のざわつき。厄ネタ感がする。
【生体認証スキャン完了。確認できました。おかえりなさいませAL-1S】
「私の名前…あなたはAL-1Sを知っているのですか?」
【…………】
ん?なんか反応遅いね。処理落ちか?質問する癖に質問されたら落ちるとかとんだコミュ障だね。ポンコツAIかな?
【……そうで……@!#%#@!$%@!!!」
「えっ、えっ今度は何!?意味が分からないよ!?」
【緊急事態発生。電力限界に達しました。電源が落ちると同時、すべてのデータが消失します。稼働限界まで残り51秒―――】
画面に表示するとディスプレイの電源がチカチカと点滅を始める。バッテリーならあるんだけどつなぎ方分からないしなぁ。
「ええ!ま、まって!せめてG.Bibleを教えて!」
【あなたが求めているのはG.Bibleですか?<YES/NO>】
「い、イエスイエスイエス―!」
【G.Bible、確認完了。コード:遊戯。廃棄データ193。】
「廃棄はダメ!それは私たちの宝物なんだよ!何とかならない!?」
【提案:G.Bible保存用の記憶媒体を接続してください。転送できます。】
「えっ?あなたが持っているの?ほ、ほしい!接続するからちょうだい!」
……なんか急にことを急いてきたなぁ。みんな気が付いているかどうかわからないけど、タイムリミットの51秒は過ぎている。これは罠だ。意志ある者が私たちに何かしようとしている。
だが敵の正体が分からない。どこに警戒すればいい?私は先生を最優先に守るべく、近くに寄る。
【G.Bibleは私の中に保存されています。しかし電力限界が近く、消失寸前。新しい媒体への移行を希望します。】
なんだこのAI。なんか死にたくねぇから助けてくれ、って言ってるように見える。敵か?それとも味方か?先生も違和感を感じたようでその顔には疑念の顔が見えた。
「ミドリ、媒体って何かある…?スマホ―――は置いてきちゃったし。」
「私も武器以外には……あ、お姉ちゃんのゲーム機、メモリーカードあるんじゃないそれで行けたりしないかな?」
【‥‥‥‥‥‥‥‥まぁ、可能、ではあります。】
超嫌そう!!そして分かったこいつただのAIじゃない!!人間臭すぎるわ!!
溢れる「っち、しゃーねぇな、今はそれで我慢してやる」感が半端ない。今目の前に居たら絶対ため息ついてるぞこいつ!て、敵か?こんな間抜けそうなやつが本当に敵か!?
ミドリさんがモモイさんのポケットからゲーム機を取り出し、持ち主の了承を得ないまま接続する。
【転送開始……保存領域が不足。既存データーを消去し、容量を確保します。】
「ちょちょちょ!私のセーブデータ消してない!?ま、まって!そこまで装備整えるのにどれだけ時間が―――!」
【残念、削除。】
うわっ、ぜってぇ人間だこいつ。なんだか私怨みたいなものを感じる。
モモイさんは泣き崩れてしまったが、きっとこれを成したAI?はどや顔で勝ち誇った顔をしているのだろうと思うと、なんだかモモイさんが可哀そうに見えてくる。
「うわぁぁぁぁあああああ!!私の努力の結晶がぁぁぁぁ!!」
「あ、でも…ゲーム機の中にG.Bible.exeってのが入ってる……。」
「どんなのか開いてみよっか。偽物だったらお姉ちゃんが救われないし……。」
泣き崩れ、意味のある言葉を発しない桃色の固まりをよそに、二人が目標物を起動させる。
だが起動させてすぐにパスワードの要求をされてしまう。えぇ、パスワードぉ?ゲームならばここに来るまでの間にヒントがあるのだろうが、そんなものを見た覚えはない。
「アリスは知っています!フラグが足りていないのですね!」
「……適当に入力してロックでもかかったらめんどくさいですし、ここは専門家、ヴェリタスにでも頼みましょうか。それが本物にせよ偽物にせよ、中身は気になりますし。」
”じゃあ帰り道に気を付けて戻ろっか。帰るまでが遠足だからね。”
ユズさんが桃色の固まりに肩を貸し、来た道を戻ると出入り口にはとんでもない数のロボットが集結していた。ひぇ、きも。アイドルの出待ちとかってこんな気分なのかな。オフはそうゆうの無しでお願いしまーす。
ファンのあまりのキモさに、私は入り口ごと吹き飛ばしてミレニアムへの帰路を辿るのだった。