シャーレの決戦兵器   作:わんぱくフォックスですまない

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第3話 えっ、この人が?

私物や仕事に必要そうな道具、新たに手に入れた武器をシャーレビルに運び込み半ば私室と化した第2仮眠室で先生の人物像やこれからのことを考える。

 

秘書のような役回り、なんてリンさんは言っていたが体のいい厄介払いなのでは、と勘ぐってしまう。

別段仕事が早いこともない――何なら事務能力は連邦生徒会の一般生徒の人たちに大きく劣る、雑用程度しかできないポンコツである――し戦闘力も、瞬間的な火力こそ目を見張るものがあると褒められるがそれだけだ。

継続的な戦闘はできず、数発ぶっ放したら終わりのそこらの不良に数発銃で撃たれたらノックアウトされるような耐久力の低さ。

 

 

そして要人警護にも向かない体躯の小ささに加え、装備重量からくる鈍重さ。ミレニアムサイエンススクールのエンジニア部の先輩たちはロマンがあっていいじゃないか、なんて破顔したがこれからの仕事内容を考えると些か。いや、かなり不安が残る。

というのもこれからの仕事内容の一つに先生の警護を最優先にするというものがある。

なんとこの先生という方は、銃弾一つで致命傷を負うほどの紙装甲だというのだ。

この銃弾飛び交い戦車やロケットランチャーや攻撃ヘリなんてしょっちゅうその辺で見かけ、あまつさえ、此方にその脅威があいさつ代わりと言わんばかりの気軽さで向く、戦争最前線もかくやという頭のおかしい場所なのだ。

 

 

そんな場所に働きに来るというのだから最初こそ正気か?なんて思ったものだが、よく考えたら一発の弾丸が致命傷って普通のことじゃんね☆私もこの一カ月と少しでずいぶん毒されちゃったじゃんね。

 

そしてこの先生の警護が基本私一人で行うというのだ。ここまで仕事に不向きな人もなかなかないと思う。これを思いついた人はなかなかクレイジーな奴だと思いそいつを呪う。ツラァミセロ。

一縷の望みにかけて少しでも守りやすい身長の小さな人が来ないかな、なんて思ったが相手は成人男性。

身長139cmの私では到底かばいきれるものではないと早々に希望を捨てる。

全身は守ろうにもきっと頭が出ててヘッドショット、きたねぇ花火だぜ☆になるのが目に見える。

しかし私はやればできる子。

悩みに悩んで出した結論は「別に私が戦って守らなくてもよいのでは?」という身も蓋もない責任転嫁。

 

 

どういうわけか私の銃、”プチカタストロフ”はあのロボットたちと戦っと時のようなエネルギー残量がどうもないらしく、コンセントに丸一日接続してようやっと数発撃てる程度のエネルギー効率になっているらしい。

おそらくだがエネルギー供給源とのパスが切れている、と推察したのがミレニアムのエンジニア部の先輩たちだ。

そういう事情もあって私はあまり継続的に戦えない。しかし守らねばならない。ならばと手に入れたのが盾である。

盾で先生と我が身を守りつつ時間稼ぎをしている間に救援に来る生徒を待つ…これぞ最適解!あたいったらサイキョーね!!

 

特注品…というよりは私が保護された場所にあったという、素材を持ち帰り研究や加工もあまりできずに持て余していたところを無理言って、一番大きな残骸を何とか盾らしいものにしてもらったのだ。

これからの貴重な研究材料であると、調査解析していたミレニアムのお偉いさんに渋られたがエンジニア部の『これはこの子が倒れていた場所にあった残骸だし、他に生徒らしき姿も痕跡もなかった。つまりこの子の戦利品なんじゃないかい?』という言葉で渋々受け渡してもらえたものだ。

 

 

どうやってあの固いロボット?を壊したのかはわからないけど、すさまじい硬さがあるのはわかる。これなら安心できると基本装備に採用したが、装備がごてごてしすぎて不格好になってしまった。だが命には代えられないと吹っ切れることにした。

 

そいうこうしてるうちに先生の来る時間が迫ってきていた。迎えに行く前にお世話になった連邦生徒会の方々に少し挨拶をしてから先生のところに向かおう、そう思い予定時間よりかなり早いがシャーレビルを発つ。

不安は沢山あるが、駄々をこねこねしても犬の餌にもならないので気合を入れる。何とかなれー!

 

 

 


 

 

 

side???

 

――生―

―き―――さい―

 

 

声が聞こえる。長旅で疲れていたのもあってだらしなくもあと五分…なんて口走ってしまう。

 

 

―にが――分――か!――てくだ―!

 

 

どうやら声の主は5分も許してはくれないらしい。ふと回らない思考を動かし状況を考える。

ああ――そうだ――私は。

 

 

 

「少々待っていてくださいと言いましたのに、お疲れだったみたいですね。熟睡されていたようです。」

 

 

寝ぼけ眼で起き上がるとそこには少々疲れたような期待と呆れ、諦観やらをごちゃまぜにした何とも言えない複雑そうな表情をする女の子がいた。

 

 

「長旅でお疲れのところ申し訳ありませんが、少々予定が押していまして。申し訳ありませんが早速動いてもらいたく思い起こさせていただきました。」

「私は七神リン、学園都市キヴォトス連邦生徒会所属の幹部です。」

「先生にはどうしてもやってもらいたいことがあるのです。――学園都市の命運をかけた大事なこと――そう解釈してもらって構いません。ですがどうか、お願いします。」

「良ければ歩きながら話しましょう。ついてきてください。」

 

 

そう矢継ぎ早に言って彼女――七神リンは歩いていくのを見て私はついていく。

 

 

 

「ちょっと待って代行!ようやく見つけた!待ってたわよ!連邦生徒会長はどこ!?」

 

 

部屋を出るなり声を掛けられ止まる。何故だろう、彼女の後ろにいるために表情はわからないが思わず謝りたくなるような雰囲気を出す。

 

 

「うん…?後ろの大人の方は?」

 

「主席行政官、お待ちしておりました。」

 

「連邦生徒会長に会いに来ました。風紀委員長が現状に対する姿勢を回答を要求しています。」

 

 

各々が返答を差し控えることは許さないと詰め寄る。

 

 

 

「こんにちは、各学園からわざわざお越しくださった各グループの暇を持て余していて要職についてる皆さん。」

「暇そ――隙間時間の活用がうまい方々がここに訪ねてきた理由はわかっています。」

「今の学園都市キヴォトス中に起きている問題の責任を問うため。違いますか?」

 

 

なんというか…険悪な雰囲気があるというか言葉や態度から滲み出る物があるが事情を詳しくは知らないため口を出さず見守る。

 

 

「そこまで分かっているなら対応しなさいよ、連邦生徒会でしょ!」

 

「矯正局にいる生徒たちも一部が脱走、また不良行為を行っているという情報もあります。」

 

「不良たちが登校中の生徒を襲撃、急激な治安悪化により対応が難しくなっています。」

 

「戦車や攻撃ヘリなどの流通ルートが不明な兵器が2000%を超えました。これでは正常な学園生活を送るのに支障をきたしています。」

 

「こんな惨状で連邦生徒会長は何してるの?納得いく回答をしてもらうわ!」

 

 

 

 

どうやら思っていたより深刻な状態のようだ。というか聞いていたとはいえ凄まじい治安だ…

私のいた世界ではとても考えられないような状態だ。世紀末すぎる。

それに対応するため彼女たちは権限のある連邦生徒会長を探しているらしい。この切迫した状況に無言で貫いていたリンちゃんが静かに口を開く。

 

 

 

「……連邦生徒会長は今、その席におりません。より正確には行方不明になりました。」

 

 

 

―――あたりを静寂が包む。各々様々な反応を見せる。言葉を失ったとばかりに驚愕するもの、その言葉の真意を測ろうとするもの、薄々感じ取っていたためにある種納得の表情をするもの。

それほどまでに連邦生徒会長の職責は重く、また関係性も多岐にわたっていた。

その爆弾のような特大の情報に対し、頭の整理が追い付いていない彼女たちをさほど気に留めずリンちゃんは続ける。

 

 

「それにより現在”サンクトゥムタワー”の管理者が不在のため連邦生徒会は行政制御権を喪失した状態です。」

「なんとか認証を迂回し一部だけでも回復できないかと連邦生徒会で対応をしていましたが結果は芳しくありませんでした。―――先ほどまでは。」

 

「先ほどまで…?今は何とかする方法があるということですか、主席行政官?」

 

「はい。」

 

 

 

そう肯定し私を紹介するためだろうか、少し横にずれ先ほどまで話の輪に入っていなかった私を輪に改めて入れる。

 

 

「この先生こそがフィクサーになってくれるはずです。」

 

 

そのように説明するが残念ながら私もいまいちわかっていない。

彼女たちはというと理解できていない、というよりは話のつながりが見えず怪訝な顔をしていた。

よかった、わからないのは私だけじゃないみたい。初対面の大人の理解力の低さを露呈させ恥ずかしい思いをしなくてよさそうだ。

 

 

「話が見えない…どうしてその先生の話に?キヴォトスの外から来たようですがその方は一体どなた?先生といっても色々あるはず。何故こちらに?」

 

「こちらの先生はこれからキヴォトスで先生として働かれる方でありここにいる理由は――連邦生徒会長直々に指名した方だから、です。」

 

「行方不明の連邦生徒会長がわざわざ指名…?駄目ね余計こんがらがってきたじゃない…」

 

 

 

うまく事態を飲み込めずこんがらがっている彼女たちには申し訳ないのだが、残念ながら私自身も理解しているとはいいがたく助け舟を出すことができないでいた。

しかしここは大人として別のアプローチからの助け舟を出そうと極力不信感を抱かせないよう挨拶をする。

 

 

”こんにちは!私は■■、気軽に先生って呼んでくれると嬉しいな、これからよろしくね!”

 

「あっ、えっとこんにちは。先生。私はミレニアムサイエンススクールの――」

「って今はそれどころじゃなくて!」

 

「そのうるさい方は気にしなくても結構です、先生。話を続けますね。」

 

「誰がうるさいですって!?私は早瀬ユウカ!よろしくお願いしますね、先生!」

 

”よろしくね!”

 

「こちらの先生は連邦生徒会長が特別に作ったとある部活の顧問をしていただくべくお呼びしました。その部活の名前は”連邦捜査部シャーレ”。この部活はただの部活ではなく、一種の超法規機関のような権限を持ち連邦組織のためにキヴォトスにおける全生徒を制限なく入部させることも可能で、各自治区における戦闘行為を制限無しで行うことができます。」

 

「シャーレの部室はここより30kmほど離れた場所にあるビルで連邦生徒会長の指示により”あるもの”を運び込んでいます。」

「先生にはそちらでやってもらいたいことがあります――モモカ、シャーレに直行するためのヘリが必要なんだけど…それと”彼女”は?」

 

 

 

 

そう通信機に話しかけるとホログラムが現れモモカと呼ばれる生徒を映す。

 

 

『シャーレの部室?あーあそこね。今大騒ぎみたいだけど?』

 

 

大騒ぎ?と、何か事件があったのかリンちゃんの眉間にしわが寄る。

 

 

『矯正局を脱走した生徒が騒ぎを起こして戦闘中みたい。戦車まで出てきて結構な規模の戦場になってるよ。それと彼女はあいさつ回りをしているようだよ、律儀だよねー。』

『あっ、お昼ご飯のデリバリーが来たからまた今度ね!』

 

 

 

そう最後に言い残しホログラムが消える。

そして残されたこの場には目元がよく見えずプルプルと如何にも限界という様子のリンちゃんがいた。

 

まだ付き合いが短く彼女の人となりはよく知らないがこれだけはわかる。というよりこれが何を意味するのか分からないほうがどうかしてる。

つまり―――

はらわた煮えくりかえるほど怒っている!!!怖い!なんか目元に光源的におかしい影の落ち方してる!

それは彼女たちも感じ取ったようで冷や汗とともに生唾飲み込むような音まで聞こえる。

 

 

 

「だいじょうぶ…まだだいじょうぶです…少し問題が発生しましたが、ここにいる各学園のいかにも暇そうな方たちがいるので私は心強いです。」

「これからキヴォトスの正常化に向けての仕事をするために暇を持て余したあなたたちの力が必要です。さぁいきましょう。」

 

「えっちょっと待って私たちは…ってもう仕方ないわね…」

 

 

 

皆、彼女の不興をあまり買いたくないのか渋々ながら協力をすることになり移動を開始した。

 

 

 

 


 

 

 

 

sideサエカ

 

よし、あらかた挨拶も済ませたし件の先生とやらの面を拝みに行くとしますか。

願わくば幸薄そうですぐ死にそうな人じゃないことを願う。

 

―――そう思ったのが20分前。

すでに到着しリンさんが対応と説明をしているはずなのにどこにも見当たらない。

ただ散歩していても仕方ないので、ちょうどお昼ご飯を食べているモモカさんに聞いてみる。

 

 

 

「んー?先輩と先生ー?あー、さっきシャーレの部室にキレ散らかしそうな顔で先生とやらと向かっていったよー?なになにー?もしかして置いてかれた?」

 

 

 

新事実発覚。補佐官、忘れ去られ置いてけぼりを食らう。

いやまぁ私にも非はあると思いますけども。それでも出発の時間までまだかなり余裕があったはず。

何か予定が押していたとか緊急で対応しなきゃならないことでもあったかな?

シャーレから朝来たときは何もなかったはず。強いて言えば巡行戦車がちらほらあるなー、妙に不良が多い気がするなーなんて思ったぐらい―――これじゃね?

 

oh....shit!なんてこったい。やっちまったなぁ!絶対これじゃんなにスルーしてんの私。

えーと、状況を整理するに今朝方沸いていた不良たちが騒ぎを起こす、シャーレ近くでの兵器使用による大規模戦闘は現状のシャーレの建物的に非常によろしくない。つまりこれの鎮圧に急行した可能性。ありますねぇ!!ありますあります!

そして戦場に駆り出た生身のくそ雑魚先生とやら。

これは――死ねるぞ。主に物理的に先生と精神的な私が。

責任という言葉が脳裏をよぎる。私責任って言葉嫌いなんだよね、なんて屑のような思考を挟みつつ予測される最悪を回避すべく行動を開始する。

 

 

 

「どうやら、そのよう、です…私も、追いつくためにバイク、借り、ますね」

 

「ああやっぱり。とりあえずバイクねー、りょーって思ったけど身長的に大丈夫そ?」

 

 

そうなのだ。私の身長では一般配備されているバイクはもちろん車も運転できない。

そんなくそ雑魚でヘタレのクソガキが乗るのはいつだってそう。*1

 

 

「いつも通り、スクーター、借りま、すね。」

 

 

 

そう、安心安全で速度も出なく運転のしやすさと小回りの良さ、維持費最強というヘタレ御用達*2スクーター様である。

原付でもいいがスクーターはおしりを傷めづらく膝に当たる冷たい風の少なさ、そしてスカートで運転しやすいというメリットがある。よってスクーター様が最強なのだ。

 

 

そう一言断ってからその場を後にして車両保管庫から目当てのスクーターを見つけ拝借する。

装備重量故に毛ほども速度は出ないが気持ちだけ焦らせあくまで安全運転で向かう。

なるようになる!!何とかなればいいな、何とかなってくださぁい!おねがいしまぁす!

*1
(偏見)

*2
(ひどい偏見)




サエカの身長を少し下方修正しました。
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