シャーレの決戦兵器   作:わんぱくフォックスですまない

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第29話 えっ襲撃作戦?

「あー、単刀直入に言うね。ゲームのセーブデータを復旧するのは無理。」

 

「うわぁぁぁぁなんでぇぇぇ!!」

 

「お姉ちゃんは置いておいて、G.Bibleの方はどうだったの?」

 

「ああ、うん。ちゃんと分析はできたよ。皆が廃墟から持ってきたG.Bibleはちゃんと本物だったよ。ただねー、パスワードの方が厄介でまだ解析できてないから開けないの。」

 

「えっ、そうなの?」

 

「うん、まぁ私はクラッカーでホワイトハッカーじゃないから…ってそんな話はいいや。一応、時間をかければ何とかなりそうだけど、あんまり時間ないんでしょ?」

 

「うん、まぁ…出来れるだけ早くほしいのは確かにそうかも。じゃないとそこで死んでるお姉ちゃんが報われないし……。」

 

廃墟から帰ってきた私たちはその足でヴェリタスに向かい、早速データの解析をお願いしてみた。

そこでモモイさんにとっての最後の希望が撃ち砕かれたけど、第一目標であるG.Bibleは犠牲もあってか偽物でないことが確定したようだ。ただ、特殊な方法でプロテクトされているらしくヴェリタスの力をもってしても時間がかかり、モモイさんはさらに泣き崩れることになってしまったのであった。

どこぞの全知さんなら、ちょちょいのチョイしそうではあるが、個人的にはめんどくさくてあまり頼りたくない所存。いや、悪い人でないんだけどね。ただ何と言うかねっとりしてるというか。

 

「一応、すぐになんとかなる方法はあるよ。」

 

「じゃあそれを使えば!」

 

「まぁ待って。順番に説明してくね。まず、私の力ではプロテクトをなんとかするのはほぼ無理。で、セキュリティソフトを残したうえで、メインデータだけをコピーすることはおそらく可能なんだけど、それをするためにはOptimus Mirror System…通称「鏡」って呼んでるツールが必要なの。」

 

「よくわからないけど…それを使えばできるってことだよね?何が問題なの?」

 

「えーと、そのソフトがね。押収されちゃって今はないんだよね……。」

 

「鏡もそうですけど、色々持って行かれてしまいました…。私のと、”盗聴器”とかも…。」

 

ほむほむ、生徒会であるユウカさんが態々押収してくぐらいだから、それなりのものではあったんだね。で、ついでに見つかったものも根こそぎ持って行かれたと。

けどコタマさんは何で顔を赤らめているんだ?

 

「そんなに危ないものだったの?」

 

「いや、そんなことはないよ。ただ、私たちの部長が直々に製作したハッキングツールだから…。」

 

「あぁ、やっぱりヒマリさんが。まぁ、謝れば許してくれますよ。」

 

「私が先生のスマホのメッセージを確認したくて、そのためのハッキングツールとして使おうとしたところを偶然見つかりまして。」

 

「前言撤回します。一度怒られてきた方がいいです。」

 

「うっ、でも、人には知られたくないことってやっぱりあるじゃないですか。」

 

「…………………人のプライベートを探るのは良くないと思います。」

 

”なんかすごい間があったけど……??”

 

「そ、そうですよね。ぐ、偶然とはいえ”変な場面”を見てしまう可能性もありますよね…。」

 

まった。ヴェリタスに到着してからコタマさんの様子が明らかにおかしい。顔を赤面させ、私と先生に対して目を合わせようとしない。

私も先生の部屋に入って”ある物”を見てしまったがためにあまり強くは言えないが、もしかしてコタマさんも私、ないしは先生のプライベートを観察してるのかな?

でもシャーレにおいて私が知ってる範囲では、機密はあれど覗かれて困るようなものは特にない。

強いて言えば、トイレやシャワーなどの場所だがコタマさんの性格的にまずないだろうし。

それ以外……執務室と仮眠室かな?…………あっ。

 

「確認します。コタマさん。押収された物の中に”盗聴器”があったと言いましたね。それの最終記録はいつですか?」

 

「あ、えっと……き、”昨日の朝まで”のです。押収自体は今日の昼頃でしたけど……。」

 

”……………………………………。”

 

oh shit……先生も思い当たることがあるのか、刑を執行される前の罪人のような顔になっている。

”あの時”の音声が盗聴されていたら?そしてそれがなんであるか理解する前に盗聴器を取り上げられていたら?なるほど。コタマさんの様子がおかしい原因が分かった。

そしてそこからもっと最悪なのは、押収品の確認として音声データをユウカさんが確認してしまうこと。これはシャレにならないぐらいヤバい。

 

「なんか二人して、お姉ちゃんよりヤバい顔つきになってるけど大丈夫なの……?」

 

「よし!今からでも押収品は取り返しに行きましょう!念のため、生徒会による横暴がなかったかを確認するために、その日ヴェリタスで押収されたものを全部確認します!」

 

「うん、ちょうどその件で手伝ってほしくてね。私たちは「鏡」を取り戻したい。モモたちは解析に欲しい。協力できると思わない?」

 

「まさか。」

 

「そのまさかなんだけど、ちょっと「問題」があってね。」

 

問題だらけしかないが盗聴器だけはなんとしても確保しなければ。先生だけでなく私も終わる。

 

「問題なんて全部なぎ倒して行っちゃえばいいじゃん!どうせ些細な問題なんでしょ!」

 

やっと復活したモモイさんが声高々に吠えるが―――

 

「鏡は今のところ生徒会の「差押品保管室」に保管されてるんだけど、そこを守ってるのがね……「メイド部」なんだよね。まぁ、モモがそう言ってくれるなら心強いよね!些細な問題なんでしょ?」

 

「そっか~!そうだね!なるほどなるほど~……。」

「やめよう!ゲーム開発部、回れ右!帰還を開始せよ!」

 

「まってまって!諦めないでモモ!ないと困るんでしょ!?」

 

「そりゃ困るよ!けどメイド部がいるってわかってて、無駄死にしに行くほど馬鹿じゃないよ!」

 

「でも馬鹿正直に真正面からぶつかることはないよ!私たちの目的はあくまで「鏡」を取り返すことであって「メイド部を倒す」ことじゃないんだからさ!」

 

「あんまり変わらないよそれ!」

 

「しかし、私の盗ちょ…情報によると、今のメイド部は完璧ではありません。」

「コールサイン・ダブルオーが現在ミレニアムから離れています。これならまだ付け入るスキがあると思いませんか?」

 

ネル先輩がいないC&Cかぁ。それなりに本気を出せば蹴散らせるけどナンバー2もぶっちゃけ相性が悪い。負けることはないけど周囲の被害的にあまりぶつかりたくないと思う。まぁ私は戦うつもりはないけど。

 

「う、うーん……。」

 

「………やってみよう、お姉ちゃん。」

「今がきっとチャンスなんだと思う。もしネル先輩が帰ってきてしまったらそれこそ本当にG.Bibleは諦めないといけない。私たちの部活を、部室を守るために今が正念場なんだよ。」

 

「ミドリ……分かった。やってみよう!

「ハレ、何かいい案とかない!?」

 

「あるにはある……けどちょっと準備は必要。それとこの悪だくみに乗ってくれる「仲間」もね。」

 

「あー、盛り上がってるところ申し訳ありません。私は立場上の問題と、戦闘になった時の周辺被害への問題から作戦には不参加でお願いします。」

 

「ええっ!?サエカに蹴散らしてもらえば楽にって思ってたのに!」

 

「周辺の建物が更地になってもいいなら参加しますよ。」

 

「いや大丈夫だよ。今回の作戦に不向きなのはわかってるから。」

 

すまんなモモイさん。嘘は言っていないけど言っていないことはあるんだ。

現状私は「鏡」とやらより「盗聴器」の方をなんとかしないといけないのだ。鏡の方は先生に任せて私の目標物はこちらで処理しておこうと思う。

そう先生の方を見ると通じ合え得たようでバチコーン☆とウインクをしてきた。私はサムズアップして任せろと伝えておく。

こうして各々の戦いのために準備を開始するのであった。

 


 

「はい、サエカ、これ。」

 

「ありがとうございます。」

 

結果から言って盗聴器の確保はかなりスムーズに行った。

シャーレの強権を使うまでもなく、機密情報が入ってる可能性があるため盗聴器だけこちらで預かる、と伝えたところ快くOKを貰ったのだ。これが信頼の差ですよ、へへへ。

 

「ちなみにですがユウカさんは”コレ”の中身は確認したんですか?」

 

「いえ、まだよ。一応中身がシャーレ関係であることはコタマから聞いていたし、様子が変だったからそれなりの機密だと思って扱いは慎重にしていたのよ。その様子だと当たりの様ね。」

 

「ご配慮、感謝します。音声データでは誤解を招きかねない機密であり、漏洩は避けたかったのです。これはこちらで回収しますね。」

 

あぶねぇあぶねぇ。これにてミッション完了だ。一応先生にコンプリートの連絡を入れておく。

後はコタマさんの誤解を解くだけで問題はなさそうだ。

 

「あ、それとこれ。モモイさんから手紙を預かっています。どうぞ。」

 

そう言って私はモモイさんから預かった手紙をユウカさんに渡す。嘘の予告を伝えて少しでも守りを薄くしようという怪盗の予告状だった。浅はかなりぃ…。

 

「モモイから手紙?なにかしら、メールで送ってくればいいのに………はぁ?」

 

怒りと落胆と呆れと困惑といった様々な感情が混じる表情で、妙に凝った手紙を見つめるユウカさん。私も内容までは知らないので、気になってその中身をを見てみると―――

 

【ユウカへ 今日お前の部屋に入ってやるぞ、ふふ、ふふふふふ  モモイ】

 

変態からの予告状だった。まじかこれ。これで差押品保管室の警備が手薄になるとか本当に思っているのかあの桃色。これには私もユウカさんと同じ表情になる。

 

「……はぁ。どうせこれ差押品保管室を襲撃するための情報戦のつもりなんでしょうけど、なんでこれで効果があると思ったのかしら。」

 

「ユウカさんは知っていたんですね。私は立場上、一方に肩入れはしませんので見物予定でした。」

 

「タレコミがあってね。それに立場が難しいのは理解しているつもりだから大丈夫よ。ネル先輩もいないからもし暴れられたら困るし、むしろ助かるわ。」

 

「タレコミ、ですか。情報戦においてミレニアムにはヴェリタス以上のグループはいないと思っていましたが、それを超えるなんて中々層が厚いですね。それともリオ会長が?」

 

「いえ、会長じゃないわよ。あの人何処にいるのかもわからないし連絡もつかないし、仕事ほっぽってるしで……ああ、いえ、今は関係なかったわね。タレコミくれたのはそのヴェリタスよ。」

 

「ヴェリタスが襲撃するのにヴェリタスが…?あっ、チヒロさんですね!」

 

「いいえ、それも違うわ。情報を送ってきたのは部長のヒマリよ。」

 

「…………。」

 

うわぁ、全知さんの計画だったか。となるとこれ、リオさんも一枚噛んでいる可能性がある。

ネル先輩だけいないというタイミングの良さはそのためだったか。

恐らく私が出張ってこないことを想定した何らかの計画の一環だろう。ぶち壊すのはたやすいが、心情的にもメリット的にも意味がない。クッソ掌の上じゃんね。

 

「絶対ろくでもないこと企んでますよね。」

 

「それもあるかもしれないけど、生徒会として無視はできない。サエカとモモイの手紙で裏はとれたようなものだし、多分会長も絡んでるんでしょ。だとしたら無駄を嫌うあの会長だし、きっと何か意味はあるんだと思う。」

 

無駄に信頼度高いなぁ。いい意味でも悪い意味でも。けど、ネル先輩抜きで考えて今の戦力でC&Cとセミナーを突破できるとはちょっと思えない。ハレさんが考えた作戦というのは聞いていないが、これをどうにかできるとは思えない。ここはお手並み拝見といきましょうか。

 


 

現在、私はセミナーの部室でロールケーキとカフェオレを楽しみながら、多くのモニターを眺めていた。目の前には慌ただしく指示を飛ばすユウカさんに、それに応えていく部員たち。

そう、絶賛襲撃中であった。信用の差なのか、ミレニアムの夜は危ないから終わるまで一緒にいて、と言われ内通者である可能性もゼロではないはずなのに、手元に置いていた。

 

「ああもう!アリスちゃんの謎の特攻から次から次へと!アカネもノアも動けないしゲーム開発部は見つからないし!」

 

ふむふむ。うまくやっているようだけど、ゲーム開発部が見つからないのは気になるね。エンジニア部が光学迷彩みたいなの開発したんだろうか?それともヴェリタスがうまい具合に情報戦を制しているのだろうか?ユウカさんには申し訳ないけど見てる側としてはいい余興だ。

しかしゲーム開発部も流石に人の目だけはごまかせなかったらしく、発見報告が流れてくる。

 

『コールサイン02よりセミナーへ。ゲーム開発部を発見、私の射程範囲内だ。これより射撃を開始する。』

 

ああ、カリンさんに見つかったか。当たれば私は勿論の事、モモミドの二人では1撃で落とされかねない。跳弾で先生が危ない目にあう可能性はなくはないけど、そんなの織り込み済みでそんなミスはしないと言い切れるだけの射撃の腕は信じている。どうするのかな?

あっ、射撃が始まった。1発、2発、3発……あれ?止まった。今ので仕留めれたのかな?

 

『こちらコールサイン02!狙撃地点でエンジニア部の妨害を受けている!すぐに援護することは難しい!それとゲーム開発部は健在、位置を見失った!』

 

「くっ!エンジニア部まで出てくるなんて!でも位置を見失っても目標地点は分かる!アカネ!施設の破壊を許可するから目標地点まで向かってちょうだい!ってあれ?」

 

ここにきて電力が全て落ちる。本当に何でもやるね。ユウカさんは色んな所で爆発音が聞こえるのに状況が分からない。ここにきてユウカさんの堪忍袋の緒が切れたようだった。

 

「私も現場に行くわ。サエカも一応、一緒に来てちょうだい。」

 

「かしこまり。」

 

私は残りのロールケーキを口いっぱいに詰め込み、ユウカさんの後ろを走る。

途中、アカネさんと合流しして目的地を目指すが先生たちはここまで想定内なのだろうか?ぶっちゃけネル先輩以前に”詰み”だと思う。

そして最上階の大きなフロアに到着すると、アスナさん一人とモモミドの二人、そして先生が対峙していた。2対1で先生バフ込みのアドバンテージがあっても圧倒出来てるのは流石と言わざるえない。目が合ったので軽く手を振っておく。

 

「あっ、サエカちゃんヤッホー!久しぶり!」

 

「よくもまぁここまで。ありとあらゆる方法でかき乱したのは褒めてあげるけど、生徒会を襲撃するのはやりすぎよ。もう悪戯では済まされない、無条件の一週間停学か拘禁くらいは覚悟してちょうだい。それにアリスちゃんが一人反省部屋では可哀そうでしょ?あなた達もくればきっと喜ぶわ。」

 

それを聞いたゲーム開発部の二人は本当の意味での窮地を知ったのか、目尻に涙を浮かべて先生に謝っている。確かに彼女たちの前にはアスナさん、後ろにはユウカさん、アカネさん、そして大量の戦闘ドローンだ。時間的にもカリンさんは再起動してるとみていい。

状況だけ見たら降伏もやむなしの積みだが、この程度で諦めるのならハナから存続は無理だったというだけの話。だが一生懸命に突っ走ってきたのは知っているので、私は少しだけささやかな、本当にささやかな”お手伝い”をしようと思う。それにほら、みんなの勇者が助けてくれるよ。

 

2人の身柄を抑えようと、C&Cの二人が近づいた瞬間―――

 

ドガァァァン!!

 

何かがフロアの床ごとぶち抜いて辺り一帯巻き込みながら吹き飛ばした。

 

「う、うわぁぁ!な、なにが!?」

 

「きゃぁ!お、おねえちゃん!」

 

”うぉっ、まぶしい!”

 

「大丈夫ですか?3人とも。」

 

私は先生を守る、という建前のもとゲーム開発部も謎の爆発からその盾で守り切り、無傷で耐えた。そして、助けに飛び出す前に転がしておいたヴェリタス製のEMP爆弾が戦闘ドローン群の後ろで炸裂する。私も巻き込まれてバッテリーがダウンするが戦うつもりはないのでこれでいい。

 

「きゃぁ!な、なに!?みんな、大丈夫!?」

 

「あははー!大丈夫じゃないよー!思いっきり当たっちゃった!めっちゃ痛い!1ミリも体動かしたくないかも!」

 

「こちらも無事、とはいいがたいですが一応大丈夫です…!ですが戦闘は難しいかもしれません。」

 

「くっ、今の一撃でドローンも……!?こんな事が出来るのは…。」

 

「モモイ、ミドリ!こっちです!」

 

「アリス!?どうしてここに!?」

 

そう、アリスさんだ。無線でピンチなのを聞いていたのだろう彼女は、階層をぶち抜いて上がってきた。ただ、大雑把な攻撃だったために私が介入しなければ諸共に全滅していたからその行動が正解かと言われると首をかしげるところではある。なんもかんも威力を上げすぎたエンジニア部が悪い。そうゆうことにしておく。

 

「無線で皆がピンチなのを知って助けなければ、そう思い来ました。仲間を見捨てるのは勇者のすることではありません!行きましょう!」

 

「あっ、待ちなさい!」

 

皆煙幕が晴れる前にどこかに走り去ってしまう。この場で自由に動けるのはユウカさんのみ。

しかしアリスが合流したゲーム開発部相手は流石に分が悪いと判断したのか、追撃はしなかった。

 

「大丈夫ですか?皆さん。それとすいません、先生に怪我を負わせるわけにいかないので守ってしまいました。」

 

「あら、あらら。サエカちゃんに心配されるなんて。メイドたるもの、小さな主様に心配かけてはいられませんね。」

 

「いえ、大丈夫よサエカ。貴女は貴女の職務を全うしただけだもの。それよりよく気が付いたわね。」

 

「あはは!すごかったねさっきの!全然動けそうにないや!」

 

「ああ、いえ。作戦中は先生の状態を確認できるようにと、私は全員の音声を拾うことができていますので。その際アリスさんの武器によるチャージ音をマイクが拾っていましたので動いただけです。」

 

「あら、そうだったのね。じゃあ今どこにいるか……ってだめね。サエカは今回どちらにも協力しないって言っていたわよね。今のは忘れてちょうだい。」

 

「いえ、居場所くらいはいいですよ。といっても拾っているのは音声だけなので場所までは分かりませんが。……今は目標物を手に入れどこかに潜伏中のようですね。」

 

私は片方に肩入れしないという約束の元、先ほどのお手伝いへの代償として現状を話す。

だがそれではまだ不公平であると言わんばかりに、今作戦にとっても私にとっても最大級の最悪が音もなく現れたのだった。

 

「おう、チビ助。久しぶりだな。今の話詳しく教えてくれよ。」

 

突如背後から聞こえてきた声に私は腰を抜かす。アイエエエ!?ネルセンパイ?ネルセンパイナンデ!?

なんでここに居るんだ!?いないって話じゃなかったの!?嘘つきぃ!!

 

「ひぃ!」

 

「あら、お帰りなさい。帰ってくるのが早かったわね。もう少し早ければあなたの好きそうなパーティやっていたのだけど。」

 

「ああん?別にパーティは”まだ”終わってねぇだろ?あたしの勘がそう言ってる。まだ”遊べる”ってな。だから教えな、サエカ。片方だけに助力はフェアじゃねぇよな?」

 

ぐっ、この人さっきの私のお節介どっかから見てたな……!正直この人相手に何をやっても俎板の鯉だ。

どうやら私はここまでの様だ。

 

「お?なんだ?抵抗するのか?あたしはそれでもいいぜ。サエカとは長い時間遊べないが、攻撃一発一発にはヒリヒリと感じるものがありやがる。短期的に見れば最高の遊び相手だ。」

 

私は立ち上がれないので正座をして姿勢を正す。そこから手を床につけ、奇麗なフォルムで頭を下げるのだった。俗にいうDOGEZAである。

 

「すいませんでしたぁ!場所を言うので見逃してください!!保管室周辺でブツを手にした後ネル先輩に気付いて潜伏中でありますぅ!!それ以降の音声は拾えていません!!」

 

私は情けなくも仲間を売ったのだった。だって怖いもん。

 

「ちっ、まぁいい。目標地点だな?ちょっくら遊んでくるからお前らはもう帰っていいぞ。」

 

そういうと音もなくネル先輩は消えていた。ひぃん、怖かったよぉ。いきなり背後に立つんじゃねぇよ……下着濡れるかと思ったじゃねぇかバカヤロー……。

皆の視線が居た堪れない。あの人に睨まれたら誰だってちびりそうになるでしょ。ミレニアム諸君は慣れているかもしれないけどもさぁ!

 

「だ、大丈夫?ああ、もう。ほらティッシュ。鼻水拭いて。」

 

「あはは!さすがはリーダー!覇気が違うよね。帰っていいって話だったから誰か私のこと背負ってくれない?」

 

「ええ、そうですね。では私がアスナ先輩を背負っていくので、ユウカはサエカちゃんをお願いしますね?」

 

「構わないけど……流石に運ぶのは無理よ?ほらサエカ、立てる?」

 

「ひぃん、もう少し時間をくださいぃ……。」

 

こうして生徒会襲撃は幕を閉じたのであった。

後の結果としては、ユズさんによる決死の時間稼ぎによってネル先輩を退けたのを、腰を抜かしながらも音声だけは聞いていた私は知ることになった。

多分だけどあの人、保管室に隠れているのを知りながらユズさんの行動を気に入って引いたんだと思う。きっと気に入られたゲーム開発部は今後悪魔の先輩に絡まれるのだろう。あの人はお気に入りで遊ぶ癖があるんだ。私は詳しいんだ!くわばらくわばら。

私が回復して先生たちと合流するのは随分後になってからになった。




廃墟から連邦生徒会長が連れ帰った時、しばらくミレニアムで世話を焼いていたのがC&Cです。
その際、神秘を制御できなかったサエカを抑える役割を買っていたのがネルパイセンであり、制御失敗するたびにボコボコのボコにされていたのでトラウマです。
連邦生徒会長もサエカを制圧はできましたが、ネルパイセンと違って優しく制圧してくれました。

サエカ「も、もう少し、優しく、お願いし、まゅ……。」
ネル「ぶちのめした方が早ぇだろ。」
サエカ「囧」
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