「えっと、失礼しまーす……誰かいますか……?」
「………………。」
「あっ、えっと、こんにちは。」
あの後残りの補習授業部メンバーを捕まえるために、行動を開始したわけだけど、ぶっちゃけここは私にとってアウェー。残り3名の内、2名は何となーく覚えはあるけどどこにいるかまでは流石に分からない。
だからここはホームであるファウストさん……じゃなくてヒフミさんに案内してもらう。
早速サポートとしての仕事が奪われて悔しいとか思ってない。いや、まったく。ないったらない。
で、取り合えず居場所が分かりそうな、コハルさんにロックオンしたわけど、これがビンゴ。
ヒフミさんの読み通り、正義実現委員会の部室に一人でいた。
だけど最初私と会ったときと同じく、ガン無視を決め込んでいる。私はサポート役を奪われてしまったので、役割がなく、扉の隙間から眺めるだけにとどめていた。別にイジけてないし。
だから違うって言ってんでしょ、あんましつこいとぶっ殺すよ?
「……………なに?」
「あうぅ……私何かしてしまったんでしょうか……?」
”大丈夫だよヒフミ。きっと少しだけ、人見知りなんだと思うから、ゆっくり距離を詰めていこう!”
「だ、誰が人見知りよ!?た、ただちょっと知らない人が来たから、警戒してるだけなんだけど!?」
……人はそれを人見知りというのではなかろうか……?
”えっとね、ちょっと探している生徒がいてね。”
「はぁ?私たちに人探しのボランティアでもさせようってこと?そんなに暇に見えるわけ!?」
「い、いえ、ここに居ると思いまして……。」
盛大にキレ散らかすコハルさん。なんて言うか経った数日前の話なのに懐かしく感じちゃう。
最初会った時もキレッキレだったなぁ。今回も色々勘違いしてそうで、真実を知った時の反応が今から楽しみでゴワス。
だけどここで、予想外の人が奥の扉から姿を現した。もっとも予想外なのは人物だけでなく、その恰好……いやファッションか?もだったけど。
「こんにちは。もしかして、私をお探しでしたか?」
「「「”!!??”」」」
「えっ、ちょ、はぁ!?あんたどうやって出てきたの!?ちゃんと牢屋のカギは閉めたはずなのに!?」
「いえ、特に閉まってはいませんでしたよ?大人しく開いたろう屋の中で、放置プレイを楽しんでもよかったのですが、何やら例の部活動の話な気がしたので、こうして出てきちゃいました♡」
「そして扉の隙間から覗いているサエカちゃん。お久しぶりですね。私のあらぬ姿を覗き見られるのも乙ですが、せっかくならその可愛いお顔を見せてください♡」
やっべぇ。やっぱり名簿に載っていたのはあの時、噴水の周りで露出プレイを楽しんでいたチャンネーだ。しかも目がいいのか、視野が広いのか分からないけど、ちょっとだけ開いた隙間から覗いている私を見事に発見してみせた。姿までは見えていないはずなのにどうしてわかったんだ……色んな意味で怖いよこの人……。
「えっサエカ!?ど、どこどこ!?って待って!そんな恰好でうろつかないでぇ!!」
「えっ何か問題でも?」
「あるに決まってるでしょ!?なんで日中、プールの授業でもないのに水着でいるの!?」
それは私も気になる。だけどなんか知らん方がいいって私の勘が告げてる気がする。
「え?これは学校指定の水着で、正式な制服の一種。プールの授業でなければ着用してはいけない、という校則はありません。必要があれば皆さんもこの指定水着を着用するはず……もしや、下江さんは必要な場合でも身に着けない、と?流石は正義実現委員会の方。そのような大胆な分野まで網羅されているなんて。」
「ば、馬鹿じゃないの!?き、着るに決まってるでしょ!?」
「では今、私が着ていても問題はない、ですよね?他ならぬ下江さんも着るのですから♡」
「えっ?あっ、うーん……???」
あっ、何かのまれてる。騙されちゃだめだよ!?負けるなコハルさん!その変態にTPOの何たるかを叩き込んであげて!!
「それにしても裸で授業を受ける、という発想があるとは驚きです。流石としか言いようがありません……ですが何事も挑戦からの一歩が大切。はっ、まさかそれを教えるために!?ならばそれに従い新たな一歩として、試してみるのも一興ですね……!」
そんな訳の分からない世迷言を発しながら、あろうことかスクール水着の肩紐を脱ぎだす。
う、うぉぉおおお!?ちょっとまてぇい!!!ここには男性である先生もいるんだぞ!?
そんなことを許すわけにはいかない!!断じて!!!
”えっ!?うぉ!!”
堪らず飛び出て、何か嬉しそうな声を上げる先生を背後から張り倒す。そしてそのままキャメルクラッチの要領で先生の視界と自由を奪う。
「ちょ、ちょちょっと!?こんなところで脱がないでください!?ここには先生もいらっしゃるんですよ!?」
「あーん!そんな、乱暴ですね♡」
露出狂本人は、静かに見守っていたヒフミさんがその行動を阻止する。混乱しながらも、その我儘ボデーの脱衣から目を離せず、ガン見していたコハルさんと違い、すぐに動いてくれたことに安堵する。先生の眼球は二人の少女の連携によって守られたのだった。
「あら、やっと出てきてくれたんですね、サエカちゃん。今日も可愛いですね♡」
やっぱり私もロックオンされている……なんともまぁヤバい奴にロックオンされたものだけど、でもここで飛び出さないという選択肢はなかったから、きっと最初から掌の上だったんだろう……
変態で策士とか、タチ悪くない??
と、そこでようやくコハルさんが再起動に成功する。
「ななななにをしようとしてるのっ!?変態はしけぇ!!牢屋に戻って!!エッチなのはダメなんだから!!!」
「あーん♡皆さん乱暴ですね?でもそうゆうのも
再起動を果たしたコハル裁判長に、半裸のまま牢屋へと連れ戻される
「あれではお話しすることは難しそうですね……先にもう一人のメンバーの白洲アズサさんに会いに行きましょうか……。」
ヒフミさんはなんだか収拾が難しそうな二人を一旦放置して次のメンバーに移ろうと踵を返す。
だがタイミングが良く、部室の扉が開き、現れて人物とぶつかってしまった。
「わぷっ……。」
「あら?すいません、ぶつかってしまいました。怪我はありませんか?」
「任務完了!現行犯で白洲アズサさんを確保しました!!」
シュコーシュコー
現れたのはシャーレ奪還の時以来となるハスミさん。ハナコさんも中々のダイナマイトボデーだったがこちらも中々である。何がとは言わないが。
そしてその後ろからは続々と、正義実現委員会のメンバーが現れるが、その中で一人だけ正義実現委員会の黒を基調とした制服ではない生徒が混じっていた。
―――ガスマスクを着けて。なんで????
「あ、ハスミ先輩に、マシロ……。」
「お疲れ様です、先生。なんだか久しぶりに感じますね。こちらには何か御用がありましたか?」
シュコーシュコー
”ああ、うん、ひさしぶり。ここにはちょっと探していた人がいてね。ナギサに言われて探していたんだ。”
「ナギサ様が?もしよければその探し人、空いているメンバーで手伝いましょうか?」
”ありがとう。でも大丈夫だよ。探していた人はちゃんと見つかったから。”
シュコーシュコー
確かに運よく?ここの一か所で補習授業部全員見つける事が出来た。
でもここ、正義実現委員会の部室なんだよね……そんな留置所としての役割もあるここで、全員発見するということは、悲しきかな。もれなく全員問題児である……先が思いやられるぜ。
しかも何ってその補習授業部のメンバー、治安を乱す側だけでなく、治安を守る側の人間もしっかり含まれているのがよりカオスを極めている。
シュコーシュコー
「それはよかったです。何かあればまたお声がけを。力になりますので。」
シュコーシュコー
ああ、もう、うるさいなぁ!?なんて言うか気になって話が入ってこないよ!!
しゅこーしゅこーじゃないよ!!
何で誰もツッコまないんだよ!!ハナコさんも中々のインパクトを与えてきたけど、手錠されたガスマスクとかもうわけわかんないよ!!こうゆうときこそガトリングのようによく回る、きつきつのキツツキの如しなトークでツッコんでよ、コハルさん!!あなたのお仕事ですよ!?
「惜しかった。弾薬さえ足りてれば、あと2時間は粘れたのに。」
まだ抵抗するつもりだったのこのテロリスト!?ここトリニティだよね!?ゲヘナな生徒が混じってるんですけど!?
「いや、もういい。好きにして。けど私は拷問に耐える訓練もしている。簡単に口を割ることはない。」
拷問!?何処目指してるのこの子??そしてトリニティでの尋問は、ジュネーヴ条約によって禁止されていますぅ!!あ、でもここ、私の知る地球じゃないんだっけか。
つまり……拷問はある……?なんだろ、トリニティなら地下拷問室がひそかにありそうという偏見がある。
”しないよ!?……しないよね??”
「しませんよ。先生はトリニティを何だと思っているのですか……。」
よかった。多分先生と同じ考えだった。まぁ、本当に凶悪だった場合、矯正局に入れられる。最近ヤバい奴らが、7人も放出されたとか聞いた気がしないでもないけど。ワカモさんとか、狐坂さんとか。
大抵は、学園の牢屋……ミレニアムで言うところの反省室に少しの間ぶち込まれて、謹慎する程度だ。拷問なんて苛烈な事をする学校はないと思う。たぶん。きっと。メイビー。
「それで先生。探していた生徒とは?」
”ああ、うん。ちょうど入ってきたこの子、アズサと牢屋で捕まってる、ハナコともう一人なんだけど、連れて行ってもいいかな?”
「は、はぁ!?だめ!!どう見たって凶悪犯でしょ!?奥にいる変態だって、危ないんだから!!」
弾の装填が終わったのか、コハルガトリングが火を噴きだす。確かにこの二人は野生に返すには少しばかり……いやかなり危ない。正直ヤバいとすら思う。その点はコハルさんと同意見だ。
けどこっちもナギサさんに、代理とはいえこの学校のトップに頼まれたのだ。最悪でも首輪はつけておきたい。
だが私たちが何かを言う前に、他ならぬハスミさんが了承を出す。
「コハル、先生は今回シャーレとして仕事をティーパーティーから受けています。規定上問題ありません。おそらくは補習授業部の話だと思うので。そうですよね、先生?」
「ま、まぁ……先輩がそういうのなら……。」
一応はハスミさんの声で折れてくれるコハルさん。権力を笠に着るわけではないけど、どうやらコハルさんの中では、ティーパーティー>ハスミさん>先生>一般生徒、みたいな感じになってるっぽい。一応権力だけで言えばティーパーティーと同等かそれ以上なんだけどな……?
流石に連邦生徒会長クラス、とまではいかないけど。まぁ、それだけ職務に忠実ってことで。
「ふ、ふん!でもまぁ、良いザマよ!私たちはこんな危ない凶悪犯たちと一緒にいなくて済むし、何より補習授業部?とかいう情けない部活に連れていかれるだなんて!聞いてるこっちまで恥ずかしくなるんだけど!!」
「あはは!結構お似合いじゃない?テロリストと変態の組み合わせ!そこに「バカ」の称号まで加わるなんて、私だったら羞恥心でとてもじゃないけど、恥ずかしくて外を歩けないかもっ!」
おおー、煽るね、エリートコハルさん。でも知ってる?それって”墓穴を掘る”って言うんだよ。
ほら、横にいるハスミさんの表情がどんどん形容しがたいものになってるよ?
これ以上自分を辱めることはやめよう?本当に羞恥心で外を歩けなくなっちゃうよ。
コハルが絶望するまで残り僅か―――
「コハル………。」
「あ、あはは……。あの、非常に言いにくいのですが……補習授業部の最後の一人は……。」
「―――下江コハルさん、です……。」
「……………………………………………えっ?」
沈黙をたっぷり十秒。見事にフラグを回収したコハルさんであった。
「うぅ………。」
「シュコーシュコー」
「それで、ここに居る4人が補習授業部のメンバーということですか?阿慈谷部長?」
「え、えっと、はい……。ですが問題は山積みですね……。」
「ふふっ、こんな放課後に人気のない教室。素行の悪い女子高生に、幼気な少女と大人の先生……始まってしまいそうですね?」
一体何が始まるというんです?
「始まる……襲撃か?まかせてくれ。本気を出せば1カ月は立てこもれる。」
始めるな、座ってなさい。
「死にたい…‥死にたい……。」
「先生……その。よろしくお願いします……。」
”何とか頑張ってみるね……。”
こうして補習授業部の顔合わせと、自己紹介が終わったのだった。
「えっと、よろしくお願いします……。早速ですが今日から放課後は皆さんに集まってもらおうかと……。」
「わかった。要は普段の授業の後に、特殊訓練をする、ということでしょ?」
「特殊訓練……?まぁ、そう言ってもいいかもしれないですね。私たちが目指すものはこれから行われる特別学力試験で、「全員同時に合格」することです。」
「特別学力試験は合計で3回まであって、そのうち一度でも全員合格があれば、落第から免れて、補習授業部も終わりとのことでした。」
えっ、
「了解した。三回もあるなら訓練次第ではそう難しくはない。頑張ろう。」
「はい、頑張りましょう!えっと、確かアズサちゃんは転校してきたばかりでしたよね。学校に慣れていないせいもあるでしょうし、みんなで頑張ればすぐ終わると思います!」
「あら?白洲さんは転校生だったのですか?トリニティに転校だなんて、珍しいですね?」
「あっ、えっと書類上にそう書いてあったので……余計な事を言ってしまいましたかね……?」
「いや、大丈夫だ。そういわれるのも慣れてきた。それに隠す様な事じゃない。」
「なるほど……ではお近づきの証として、私もアズサちゃんって呼んでもいいですか?」
「別に問題ないけど……?」
「ふふっ、ではそう呼ばせていただきますね。アズサちゃん。ヒフミちゃん。コハルちゃん。サエカちゃん。なんだか心地いい響きですね。なんだか補習の仲間ができてうれしい気持ちでいっぱいです。」
ニッコニコで名前を一人ずつ呼ぶハナコさん。実に嬉しそうだ。でも正直分からなくもないかも。なんて言うか集められて理由は不名誉だけど、みんなで何かを目指して頑張るのは心くすぐられる。
だからそのワクワクしているのはよく分かる。すごいよく分かる。これぞ青春って感じがしてね。
だが私の名前まで補習授業部のメンバーにしれっと入れているのはどうゆうことだぁー!?
先生もニコニコしてみてるんじゃないよ全く。
「言っておくけど私は絶対認めないから!!」
「えっと……?」
「私は正義実現委員会のエリートだし!!私の方が年下でも、馬鹿なあんた達を先輩って呼ぶつもりなんてないから!!それにこんな部活、さっさと合格して抜けてやるんだから、あんまり馴れ馴れしくしないでくれる!?」
「問題ない。この訓練に必要なのは各個人の学力であって、馴れ合いじゃない。それに私にはそう言った文化は分からないから、むしろ助かる。」
「そ、そう?なら決まり!それと勘違いしないでほしいんだけど、私が試験に落ちたのは飛び級するために、一つ上の学年用のテストを受けたせいだから!ほんとは1年生用のテストなんて楽勝なんだから!」
えぇ~?ほんとにござるかぁ??実際真偽のほどは分からないし、点数のアベレージも分からないから何とも言えないけど、ここまでの言動を見ているとなんか怪しい。や、わからんけどね?
でも実際、正義実現委員会にいるわけだし、勉強も運動も銃の扱いも何もかもがダメな所謂ポンコツと呼ばれる生徒が所属できるものだろうか?
おそらくは何か他の人にない、特技や長所。光るものがあると思うんだけどまだ分からない。もしかしたらミカさん同様、超絶フィジカルのゴリラである可能性も微レ存。
舐めてかかると後で雑巾のごとく絞られるかもしれない。おお、こわ。
「そうゆうわけで、私が本気を出したらはい終了!こことはおさらばってわけ!それにあんた達と違って、正義実現委員会のエリートは忙しいの!だからじゃあね!」
むーん。言うだけ言って走り去ってしまった。コハルさん一人合格しても意味はないって事には気が付いているんだろうか??まぁ、本当にエリートならそのうち気が付くでしょ!
為せば大抵何とかなるなる!!
「とりあえず今日はもう遅いですし、明日からでもまた集まって勉強しましょうか……。」
”そうだね、今から勉強ってのもね。じゃあ、また明日放課後に集まろうか。夜更かしはしないようにね!”
「では私たちも帰りますか、先生。今日は何食べます?」
「!!お二人は寝食を共にする仲なのですか!?ナニを先生はいただかれるのでしょうか??」
「えっ!?あ、あわわ!?ハナコちゃん!?」
”まって??普通に食事の話だよ!?妄想が飛躍しすぎている!!??”
始まったぜおいぃ!この髪だけでなく、脳内までピンクに染まり切った淫魔がよぉ!?
これじゃおちおち晩御飯の相談もできやしない!!私はハウスに帰らせてもらう!!
…………でもその前に折角だから、おちょくってやろっと。
「先生は、食べたいですか??まだ熟しきっていない、少し青い
「キャー!(歓喜」
「サエカちゃぁん!?」
”馬鹿な!?残っても帰っても地獄だと!!??粉バナナ!!”
こうして少し遅い放課後の教室には、姦しい声が響き渡り、次の日の勉強を開始するときにまたキャーキャーと喚きたてるのだった。
ちなみに晩御飯には、まだ少し硬めのアボカドを湯煎した豚肉とあえて、サラダとして出してやった。
なぁにを想像したんですかねー???