シャーレの決戦兵器   作:わんぱくフォックスですまない

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第41話 えっ、水も滴る?

「お待たせしました、先生!」

 

 

こんにちは、本日は快晴。体操着に着替えてわちゃわちゃしてる花のJK達を眺めてる、家政婦フォックスだよ。

ハナコさんの一声で、せっかく自分たちが使うのならば、まずはお掃除しましょう、ということで補習授業部メンバーの着替えを待った次第。

 

 

 

”お、いいね。デザインも可愛くて、動きやすそうだ。サエカも着替えればいいのに。”

 

「持ってませんし。」

 

”なんか、もったいないなぁ。”

 

 

 

先生は何故か残念そうにしているけど、私は衣服をそれほど多く持つことはない。

女の子なのだからかわいい服を、なんていう人もいるだろうが、人生の8割を院内着で過ごした人間に、オシャレのバリエーションなどないのよ。興味がない、ともいうけど。

なので今の手持ちは、連邦生徒会の制服と、シャーレの上着、パジャマくらいしかない。

いいじゃん、同じものを数揃えても。面倒だし。

 

 

「あとは……ハナコちゃんがまだですか?」

 

「あ、あれだけ大きいと、着替えるのも大変なの……?」

 

 

何言ってるんですかコハルさん……まぁ、確かに大変でしょうけど。聞ける生徒がここにはいないから分からないね。ひんぬーばっかりだし。あ?ぶっころすよ?

なんて雑談をしていると、ハナコさんが扉を開けて中庭に出てくる。明らかにおかしな格好で。

 

 

 

「お待たせしました~、皆さん早かったですね?」

 

 

「アウトォーーーーー!!!」

 

 

わっ、耳キーンってなった。

 

 

「なんで!?なんで掃除するのに水着なの!?馬鹿なの!?死ぬの!?」

 

「ええ?水着はいいですよ?動きやすく、汚れても洗い流すのが簡単ですし、ピッタリなチョイスではありませんか?」

 

「そうだけど、この前捕まった時に何を学んだの!?やっぱり馬鹿なんでしょ!?バーカ!」

 

「なるほど、合理的かもしれない。よし、私も着替えてくる。少し待っていてほしい。」

 

「だからダメって言ってるでしょ!?ハナコはさっさと着替えて!ほら早く!!」

 

「あ、あらあら……。」

 

 

掃除が始まる前から疲労困憊になってるじゃんね。

この後しっかり体操着に着替えたハナコさんが合流した。

 

 

 

「では熱中症に気を付けながら、草むしりをしてから屋内をきれいにしていきましょう!」

 

「「「”はーい!”」」」

 

 

皆楽しそうに草むしりを始める。その中には腰が死にそうと、オヤジクサいことをぼやいていた先生も交っていた。なんだかんだ楽しいのかもしれないね。

私?私は草むしりでなく、人間重機として転がったガラクタの処分や、アズサさんのトラップ解除に勤しんでいた。勿論私みたいな素人が、トラップなんて見つけられるわけないし、解除なんてできない。なので位置を聞き出し、ガラクタ諸共プチカタストロフで蒸発させてる。

……ところどころクレーター出来たけど、大丈夫っしょ。芸術的なクレーターだと思うことにしよう。うん。

 

 

 

 

草むしりが終わり、屋内の掃除を夢中でしていると、案外時間の経過が早かったのか日が少し傾くような時間になっていた。お腹が鳴るまで気が付かなかったよ。

 

 

「ふぅー。これくらいでしょうか!」

 

「うん、いいんじゃない?なんて言うか気持ちいい!」

 

「まずは環境作りとモチベーションの管理から、ということか。うん。これは確かにいい気分だ。」

 

「先生、腰大丈夫ですか。」

 

”ダ、ダイジョウブダヨ……?”

 

 

埃だらけだった教室も、交換されていなかった寝具類も、シャワーも。来た時に比べ凄く綺麗になった。掃除をすると心が磨かれるという言葉があるように、彼女たちもどこかすっきりした顔だ。

 

 

「あ、でもまだ一か所残ってますね。」

 

「え?やり残しなんてありました?」

 

 

ハナコさんは目ざとく気が付いたようだけど、私には見当がつかない。むぅ、こういった気が付きが女子力を分けるのかな?なんてアホなことを考える。

だけどハナコッさんの指摘した場所は、私にとって気が付きようのない場所、ともいえた。

 

 

「はい、プールがまだ残っています♡」

 

「え、でも今回の試験にプールなんてないでしょ?別にそのままでもいいんじゃない?」

 

「でも、確かにここだけ汚いまま、って言うのもなんだか気になっちゃいますよね……。」

 

 

それは分かるかも。なんか気になっちゃうよね。良く血液型によって意見が分かれるというけど、本当なのかなぁ。こだわりや思考が血液型とノットイコールではないと私は思うけど。

そんなどうでもいいことを考えていると、アズサさんも何か思うことがあるようで、空っぽのプールをジッと見つめていた。

 

 

「……これだけの大きさだ。昔はきっと、賑やかできれいなプールだったと思う。それでも、時間が経てばこうして寂しい光景に変わってしまう。「Vanitas vanitatum」……これがこの世界における真実なのかもしれない。」

 

 

??難しい言い回し……というか言葉だ。だけど、どこかで……。

 

 

「古代の言葉ですね。全ては虚しいものである(Vanitasvanitatum)。その言葉には理解できるかもしれません。」

 

「うん。だけどすべてが虚しかったとしても、今日最善を尽くさない理由にはならない。私はそう思う。」

 

 

なんか刺さる良い言葉だね。自己啓発に良さそう。でも私はその言葉は少し嫌いかもしれない。

 

………世の中には、努力することすら許されないこともあるんだよ。

 

はぁ。なんだろ、みんな楽しそうなのに気分が上がらない。少しセンチな気持ちだ。

場所がトリニティだからってこともあるんだろうけど、”あの”サエカと病室で会ってから少し変だ。なんだか()()()()()()()()()()()。何かが変わりつつあるのを感じる。彼女ならこの違和感の正体を知ってそうだけど、何故か深い情報は教えてくれない。はぁー、なんかストレス。

なんだか暴れたいな。

そんなことを考えて勝手にテンション駄々下がりになっていると皆がいなくなっていることに気が付く。

 

 

「あれ、みんなどこに行ったんでしょう。」

 

”みんななら着替えに行ったよ。ボーっとしてたみたいだけど大丈夫?”

 

 

着替えに?早速補習をするために制服に着替えに行ったって事かな?だとすれば先生がプールサイドにいるのはなんでだろ?

 

 

「大丈夫ですよー。私より運動不足でヒーコラ言ってる先生の方がきついのでは?」

 

”はは……まだまだこれくらいなら大丈夫さ。最近の若いもんには負けん!”

 

「おじさんクサいです。まぁ、人には向き不向きがありますから、デスクワークで出来るところ見せてくださいね。」

「ささ、こんな熱い所に突っ立っていては熱中症になりますし、屋内に戻りましょうか。」

 

”え?いや、これからみんなでプール掃除するからって、着替えに行ったところだよ。やっぱりボーっとしてたのは、気分が優れないんじゃ……。”

 

 

おーぅ、マジですかいな。となるとこれから始まるのは、水着を着たJKのキャッキャうふふイベントかぁ。うーん、私水着とか持ってないしなぁ、無難に見学かな?

 

 

 

「あー、いえほんと大丈夫です。ちょっと考え事していただけで。」

 

”そう?それならいいけど……無理しないでね?”

 

 

待つこと数分。着替えに行った彼女たちが戻ってくる。だけど一人私と似たような服装をしている。どういうこった。

 

 

 

 

「うふふ、皆さん可愛らしいですね。これで皆さんびしょ濡れになっても大丈夫、ということですね?」

 

「うん。問題ない。」

 

「えっ、ま、まぁ……。」

 

「では早速、綺麗にしていきましょうか。」

 

 

「待て待て待てっ!!」

 

 

 

あっ、良かった。コハルさんのストップが入った。誰もツッコまないから流しちゃったけどやっぱりおかしいよね?他のメンバーなら持ち合わせがない、という可能性がないわけでもないけど、ハナコさんはさっき水着を着ていたのは見てる。つまり、”あえて制服を選んだ”ということ。んんー??

 

 

「どうしました?」

 

「どうしたも、こうしたもないでしょ!?あんたさっき自分で「濡れてもいい服」って言ってたじゃん!?なんで掃除するときと逆になるの!?」

 

「はい。なのでこれが「濡れてもよい服」ですよ♡」

 

「は!?何言ってるかわかんない!!私がおかしいだけなの!?」

 

 

大丈夫です、裁判長。多分みんな思ってる。

 

 

「これは美学、こだわりの問題かもしれませんが……。」

「水着と制服。濡れた時にいい感じになるのは、どちらになると思いますか?」

 

 

なんかおっさんクサい問題来たな。

 

 

「え!?待って何の話!?」

 

”ハナコ。”

 

「おっ、先生。あの変態を聖職者として止めてやってください。」

 

”実にGoodだ。素晴らしい。”

 

「流石先生。分かってくれると信じていました♡」

 

「む、流石。先生というだけあるな。今の話、何のことか私にはさっぱりだったけど、それを理解できるとは。知識は武器になると理解していても、私はまだまだということだね。」

 

 

違う違う。なに先生もすごくいい笑顔でサムズアップしてるんだ。折るぞ。

 

 

「まぁ、半分は冗談ですよ。一応中に水着は着ていますので♡お小遣いで買ったビキニが。」

 

”わかっているな……ハナコ。”

 

 

もうやだ、この変態ども。

 

 

「あー、私は持ってきていませんので見学していますね。強いて言えば……そうですね。プールサイドでも磨いています。」

 

「うーん、流石に私のスクール水着はサイズ的に難しいですよね…。」

 

「……どこ見て言ってるんです?ハナコさん。」

 

”大丈夫だ、サエカ。大きさが全てじゃないよ!慎ましいのもまた魅力であり、ポテンシャルがあるということだから!それにほら。ある神父様はこうも言っていた。「女性の胸は、男性自身の手のひらに収まる位が丁度いい」と!”

 

「なんかえらく熱く語りますね。折りますよ。」

 

”なにを!?”

 

 

 

そんなこんなでグダグダになりながら、プール掃除が始まる。

水着姿でキャッキャと水をかけ合い、遊びながらもデッキブラシで的確に綺麗にしていく。

あまり乗り気じゃなさそうだった、ヒフミさんやコハルさんも、もじもじしながらしっかり掃除している。アズサさんはアズサさんで、手際よく走り回り、ハナコさんは一番楽しそうにホースを振り回している。本当に、楽しそうだ。

 

 

 

”ふぅ、絶景。”

 

「まだやってたんですか。先生としてどうなんです?」

 

”わかってないね、サエカは。これは役得というやつだよ。それに手を出さなければ等しく無罪だ。YESロリータ、NOタッチ、というやつさ。”

 

「ほーん。物は言いようですねぇー?では、イオリさんの足舐めは手を出した範囲にはならない、と?」

 

”出したのは手ではなく、舌だから。”

 

 

余計アウトだと思う。

 

 

”あと……その、非常に言いづらいんだけど、サエカは着替えてくるべきだと思う……。”

 

「え?なんでです?私、水に濡れてなんて……。」

 

 

私が先生の発言に理解できないでいると、プール掃除中のヒフミさんが見かねて話してくれる。

 

 

「あの、サエカちゃん……サエカちゃんのそれって、ハナコちゃんと違って水着……じゃないんですよね……?」

 

「え?はい。水着は持ってないので……あ………。」

「き、着替えてきますね……あと先生は後で記憶を失うまで殴りますね!」

 

”不可抗力!お慈悲を!”

 

 

ふあぁあ!まさか汗で透けていたなんて!!!一生の恥!なんで早く言ってくれないんだよ!!

見せるつもりで見られるのと、油断して見られてるのでは気持ちが違うんだよ!!畜生!

ダッシュでその場を離れると後ろから「コハルちゃん!?鼻血が!?」って聞こえた気がするけどきっと転んでぶつけたのかもしれない。プールは滑りやすいからね、気を付けようね!!

 

 

 

 

その後、恥ずかしくて着替えた後も戻れなかったので、そのまま夕飯の準備を進める。

幸いキッチン回りは奇麗で、冷蔵庫の中にもトリニティらしい高価な食材がぎっしり詰まっており、メニューに困ることはなかった。

うーん、どうすっかなぁ、保存のきかないものから処理していくか。

鯛あるし、アクアパッツァにしよう。サラダは……生ハムとモッツァレラと適当な野菜でいいか。

なんてやってるとみんな戻ってくる。あれからそれなりに時間が経っており、気が付けば外も暗くなっていた。

 

 

 

「おかえりなさい。楽しかったですか?」

 

「いや、流石に泳ぐことはできなかった。でも、楽しかった。」

 

「あはは、コハルちゃんはさっきまで起きていたんですけどね。」

 

 

そっか、流石に泳げるまで水は溜まらなかったかー。でもみんな実にいい顔だ。コハルさんなんて実に幸せそうな顔で寝ている。

 

 

 

「ささ、シャワーでも浴びて着替えてきてください。夕飯は暖かい方が良いでしょうし。」

 

”わぁ、いつものサエカご飯!今日はイタリアンかな?すごくおいしそう!”

 

「これを普段先生は食べているんですか?ふふ、妬いてしまいますね。お嫁さんに欲しいくらいです♡」

 

 

涎を垂らしながら夢現なコハルさんを起こし、シャワールームへ消えていくJKたち。

ふふふ、クックパ〇ド舐めるなよー!どうやらこの世界にも、料理が好きで投稿しているもの好きな生徒が複数人いるようだ。いつもお世話になってます!!

料理はおおむね好評なようで、特にアズサさんが大量に平らげて行った。うんうん、作った側としては、幸せそうにしてくれるとうれしくなるよね。いっぱい食べて成長してくれたまえ!

 

 

 

 

 

夜も寝静まり、消灯時間も過ぎたころ。私は部屋に鍵をかけ、防音フィールド*1を展開し、極秘通信を行っていた。

その通信相手は―――

 

 

『やぁ、こんばんは。夕飯はおいしいものを食べれたかい?』

 

「こんばんは。ナギサさんが気を聞かせてくれたのか、良い食材ばかりで贅沢できました。」

 

 

セイアさんだった。本来なら生きていることを知られるのはまずいので、極秘回線と言えど通信しているのは悪手だといえた。だが、当の本人が暇で暇でしょうがなく、ミネさんの反対を押し切って小型の通信機と手紙をシマエナガに運ばせていたのだ。あの鳥、躾けられてるとは思わなかったよ。

 

 

『それは良かった。私も一度だけでも、サエカの手料理を食べたいものだね。』

 

「普段食べているものよりずいぶん質は落ちますよ?」

 

『そんなことはないよ。食事というのは素材も腕も大切だけど、一番は誰と食べるか。私はこれが大事だと考えるよ。共食というやつさ。』

 

 

そうゆうものなのかな。まぁでも何となく言いたいことは理解できるかもしれない。

私も、先生やアビドスの皆と食べる紫関ラーメンは、とてもおいしかった。誰かと食事をする楽しさというのを私は忘れていたようだ。()()()()()()()お姉ちゃんと一緒にへたくそな料理を笑って食べたいね。……あれ?

 

 

『サエカを誑かしている先生というのが、ひどく恨めしくて仕方のない限りだよ。』

『……さて、こうしてサエカとの何気ない会話も至福な時間ではあるが、そろそろ本題に入ろうか。現状、危ないことはないかい?』

 

「危ない事……特に身の危険を感じるような動きはないですね。」

 

『ふむ……、そうか。いやなに、敵は随分と用意周到に計画をして、私たちに気取られることもなく犯行に及ぶ事が出来た。尻尾を掴む事が出来ていないだけで、もしかしたらまたサエカが襲われるんじゃないか、なんて心配でね。』

 

「心配ありがとうございます。けど現状では手掛かりもなく……。ああ、そういえばナギサさんから頼まれて、補習授業部の合宿が始まりましたよ。」

 

『補習授業部……。仕方ないとはいえナギサも随分と思い切った行動に出たものだね。大方、次は自分が、なんて考えているのかもしれないね。彼女には気の毒だけど敵をあぶり出すにはいいのかもしれない。……すまないがあんなのでも大切な友人なんだ。何かあったら守ってやってほしい。』

 

「任せてください。私はもう誰一人危ない目にはあわせませんから!」

 

『ふふ、頼もしいね。けれど私にとって一番大切なのは、サエカであることは変わりない。万が一の場合は我が身を優先してほしい。……わがままな姉ですまない。』

 

「いいえ。これも私の義務ですから。」

 

『義務、ね。本来サエカには何にも縛られずに生きてほしい所だけどね……。さぁ、話し込んでしまって貴重な睡眠時間を奪ってしまうのは、忍びない。この甘美なるひと時を永遠に感じていたいところだけど、またの機会に。欲張っても良い事はないからね。』

 

「そうですね。また何か進展があれば。おやすみなさい。」

 

『ああ、おやすみ。ゆっくり休むんだよ。』

 

 

通信が切れた。今更ながらに思うけど、これって共犯なのが見つかったら私ヤバいよね?

見ようによっては、国家転覆罪とかになるんだろうか。打ち首は嫌だなぁ。

はー、やだやだ。もう黙って寝ちゃおう。なんだか廊下からこそこそと動き回る音が聞こえるけど、この感じはヒフミさんとハナコさんでしょー。何してるのか分からないけど多分悪い事ではないと思う。だから寝る!

本来なら私は襲撃に警戒していないといけないけど、ぶっちゃけ毎晩警戒していたら身が持たない。けど最低限の警戒として、先生の部屋と、私の部屋にミレニアム製のドローンを設置して、私は床で完全武装で寝ます!*2

 

 

こうして合宿初日は何事もなく?終わりを告げたのだった。

*1
プチカタストロフの射撃消音機能。エンジニア部作。

*2
内心ビビってる

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