シャーレの決戦兵器   作:わんぱくフォックスですまない

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第43話 えっ、事故?

side先生

 

 

朝の6時。普段ならまだベットの中でスヤスヤしている時間。サエカも起こしに来ないような時間帯に、私はある生徒から「話をしたい」と短く綴られたメールを受け取っていた。

 

 

「やっほー、先生。プール、とっても綺麗だね?ここがこんなに綺麗なの久しぶりだけど、水泳の授業もしちゃってたり?」

 

 

そう元気よく気さくに挨拶をしてきたのは、ティーパーティーの聖園ミカだった。本来ならばトリニティにおいて護衛もなしに自由に歩き回れる身分ではないはずだが、どうゆうわけか今は彼女一人。いや、実は私が知らないだけで護衛は隠れているのかもしれないが、特に彼女に対して危害を加えるつもりはないので気にしなくていいだろう。

 

 

「あっ、まずはおはよう!だったね。あれ?朝早くに呼び出しちゃったから、ごめんねが先かな?まっ、細かいことは隅に置いておいて、わざわざありがとうね。」

 

”大丈夫だよ。生徒が会いたいなんて言ってくれたんだ。何処でも会いに行くとも。”

 

「わーお。火力高いね?サエカちゃんがやられちゃうのも、理解できちゃうかも。」

 

”サエカがやられた?だ、誰に!?助けないと!”

 

「そしてこの鈍さ……サエカちゃんは全然元気だから安心してね?ってそうじゃなくて。」

「合宿の方とかはどうかなーって思って、気になっちゃったから聞きに来てみたの。誰の目もないことをいいことに、何か楽しそうなこと隠れてやってないかなーなんて!」

 

 

どうやらサエカに大事はないようだ。ミカの言葉の意味は理解できなかったが、行動の理由は理解できた。わざわざメールで呼び出したのだから、人に聞かれたくない内容かと思い一人で来たが、ミカはただ視察に来ただけの様だった。勿論、相談事であれば力になりたいと思う。子供は元気が一番だからね。

 

 

”皆頑張って勉強に励んでいるよ。合宿、なんて慣れないかもしれないけど、皆良い子だからうまくコミュニケーションをとって、協力して進める事が出来ていると思う。”

 

「そうなの?なら良かったー!あっ、食事とかは?ちゃんとおいしいもの食べれてる?もし不足してるようだったら、ケーキとか紅茶とか送ろっか?」

 

”ロールケーキならサエカも喜ぶかもね?食べ物に関しても大丈夫だよ。サエカが毎日おいしいものを作ってくれるんだ!”

 

「ロールケーキはちょっと……。というか毎日サエカちゃんの手作り!?いいなー!私も食べてみたい!!」

 

 

 

そうして近況の報告という名の雑談をすること暫し。ニコニコと年相応に笑っていたミカの表情に影が落ち、真剣な顔になった。突然の変化だったので正直驚いたが、この切り替えこそマンモス校のトップに君臨する一人なのだと思い知らされる。

そして同時に、()()()()()()なのだと理解する。

 

 

「さて、場を温めるのもこの辺にして、本題に入ろうかな?因みにここに来たのは完全に私の独断。付き添いもなければ、ナギちゃんも知らない私の単独行動だよ。」

 

「………先生、ナギちゃんから何か言われなかった?」

 

”何か、ね……。”

 

「うん。例えば……裏切者を見つけてほしい、とかかな。」

 

”……………。”

 

「あー、やっぱり。ナギちゃんならこうゆう時、沈黙は肯定と捉えますよ、なんて言うのかもね。他には何か言われた?何か情報とか……。」

 

”いや。確かにそういったニュアンスの話はされたけど、1教育者としてそれはできないと断ったよ。たとえ本当に良くないことをしている生徒がいたとしたら、私は先生として正しい道を示す。犯人探しとかそうゆうのはあまり得意じゃないかな。”

 

 

実際にはどの程度事態が切迫しているのかは私には分からない。サエカの話もそうだが、セイアという生徒の襲撃。何かを企んでいる人物がいるのは間違いないのだろうが、どうにも事態が複雑に絡まりすぎている。ナギサの言う通り、裏切者と呼ばれている生徒を見つけたとして、解決するとはとても思えないのだ。

なので、私としては犯人捜しはまず論外としても、どのように立ち回るべきかまだ測りかねている、というのが本音だったりする。

 

 

 

「……ふーん。あくまでもトリニティの味方ではないと?じゃあ先生は誰の味方なのかな?ゲヘナ?それとも連邦生徒会?」

 

”私は生徒の味方だよ。”

 

「あー……。そういえば先生はそうゆう人だったね……。じゃ、じゃあさ。一応私の味方でもある……ってこと?私もほら、生徒ではあるわけだし。」

 

”もちろんさ!ミカの味方だよ!だから助けてほしい事とかあったら、遠慮せずに言うんだよ。”

 

「わーお……だから火力高いって……。でも、うん。うれしいかも。」

「でも、私はトリニティで育ってきたから、素直に受け取れないかも。嫌な性格だよね、生徒一人一人の味方なら、誰の味方にもならない、っと事とも捉えられるよね。」

 

「だからさ、先生。誰の味方でもなく、平等にみんなの味方な先生を信じて、一つお願いしたいことがあるんだ。」

 

”なにかな?”

 

「ナギちゃんの言う、「トリニティの裏切り者」を守って。その子はナギちゃんの読み通り、補習授業部にいる。その子の名前は―――白洲アズサ。」

「先生はもう知ってるかもしれないけど、あの子は最初からトリニティにいたわけじゃない。ずっと昔にね、トリニティから分かれた、分派の一つ……「アリウス分校」の生徒だったんだ。」

「昔ね、トリニティ総合学園ができる前。沢山の分派が一つになるために、弾圧して追放してしまったのが「アリウス」。私達トリニティが今の形になるために、()()として使われた。」

 

”アリウス……。”

 

「うん。それでね、話を戻すと白洲アズサ……あの子をこのトリニティに転校させたのは私なの。」

 

”ミカが?”

 

「ナギちゃんには内緒でね。生徒名簿とか書類とかぜーんぶ私の権限で弄って、入学させたんだ。」

「どうして?って思うよね。ここでさっきの話とつながるの。「アリウス」はきっと今もまだ私達、トリニティを憎んでる。でもいつまでも憎しみの中で生きていても、悲しいだけじゃない?だからね、アズサちゃんには「平和」の、和解の象徴になってほしくて。」

 

「―――だから守って。過去の憎しみの連鎖を断ち切るために。」

 

”わかった。”

 

 

―――和解の象徴。アリウス。裏切者。少し絡まっているが、一本の線でつながっている。これが仲直りに繋がるのなら、先生として全力でバックアップさせてもらう。

だが、まだ誰かの思惑が紛れている。セイアの襲撃は?ナギサの本当の思惑は?サエカの考えは?

ダメだ、まだ分からないことが多すぎる。私が疑心暗鬼になってどうする。

等と余計なところにまで思考を回していると、どこからかよく聞き慣れた爆発音のような音が聞こえ―――目の前で話していたミカが吹っ飛んだ。

 

 

 

「えっなに―――きゃっ!?」

 

”ミカ!?”

 

 

ミカを吹き飛ばした白い塊。砂煙と凄まじい熱気を発するそれは私の目の前で止まり、ゆっくりと起き上がる。あまりの速さと煙で分からなかったが、その下手人はえらく見慣れた人物だった。

 

 

「先生!!無事ですか!?怪我とかしていませんか!?」

 

”たった今危ない目にあったかな……。”

 

 

人身事故を起こしたのは、我らがシャーレの補佐官。百合園サエカ殿だった。

結構なスピードでミカに体当たりしていたけど、ミカは大丈夫だろうか?ギャグみたいなぶっ飛び方をしていたが怪我をしていないか心配である。だがそのミカは他の生徒より頑丈なのか、受け身が上手かったのか分からないが、土煙の中でゆっくり立ち上がるのが見える。良かった、ひとまずは無事みたいだけど―――

 

 

 

「いったいなぁ……誰かな?私がティーパーティー、パテル分派のトップだと知っての襲撃だとしたら、随分いい度胸してるじゃんね。結構痛かったからムカついちゃった☆」

 

”わぁ……(泣)。”

 

「先生、危ないから離れてて?おイタをする子にお灸を据えるから―――」

 

「先生、ちょっと相手強くて一筋縄にはいかなそうです。撤退しますので私の後ろに―――」

 

 

風が吹き、互いの土煙が晴れていく。視界不良の中で臨戦態勢を取っていた二人だったが、お互いを認識すると時が止まったかのように固まってしまった。この時のサエカの表情を私はしばらく忘れることはないだろう。

互いに固まり、たっぷり10秒。先に動いたのはサエカだった。彼女はゆっくりと武装を下し、屋外にも拘らず、その場で正座をすると実に堂に入ったDOGEZAを敢行した。

 

 

 

「す……。」

 

”す?”

 

 

「すいませんでしたぁっ!!!!」

 

「えっ、えっ、どうゆう状況これ?」

 

 

 

混乱した中、何とか経緯を説明するサエカ。彼女の言い分では夜間に重要人物である私が拉致されて、襲撃にあったのだと勘違い。それだけは阻止しなければならないと、ドローンで私を捕捉した後、損害無視で全力奪還に走り出したのだとか。

確かにセイアの襲撃でピリついているトリニティで急に行方が知れなくなれば、こうなってしまうのも仕方なく、先生として配慮が足りなかったと思う。相談だと思い一人で出てきたのは私の失策である。

 

 

 

「あ、あー……そうゆうこと…。ちょっとびっくりしちゃったけど、そうゆう事情なら仕方ないかな?」

 

「本当にすいませんでした……。」

 

”私も勘違いさせちゃってごめんね……。”

 

「気にしないで!それにほら、私も悪かったからそう湿っぽくなるのはちょっと嫌かなーって……。だからここはみんな悪くて誰も悪くないってことで、どうかな?」

 

「助かります……。」

 

「うん、じゃあ、私が一人でここに居るってあんまりバレたくないから、この辺でお暇しちゃうね。最後に先生。信じてるから。」

 

 

ミカは最後にそれだけ言い残し、足早に去っていった。残された私たちは茫然とその背中を見送る。そこでふと背中から少し強い力で抱き着かれていることに気が付く。

 

 

「先生……勝手にいなくならないでください。心配、したんですからね……。」

 

”ごめんね。気を付けるよ。”

 

 

その後、事態を重く見た補習授業部の皆が走ってくるまで、サエカは私の背中から離れることはなかった。サエカにとって大人からの愛情というのは分からないのだろう。そんな状態で姉のセイアが行方不明で、さらには最早家族のような距離感で生活している私まで失うかもしれないという恐怖心がこの子を突き動かしたのだと思うと、罪悪感で押しつぶされそうになる。

きっとこの子は私に父性を感じているのかもしれない。二度と同じようなミスをしないよう心に刻んでおこうと思う。

………戻るときハナコの顔がとても怖かったのも含めて、忘れられない事件となった。

 

 

 


 

 

 

sideサエカ

 

あぁぁぁ~死にたい。

とんでもない勘違いしてミカさんに割と本気のタックルしちゃった。皆優しく接してくれるし、何より被害者であるミカさんが何も責めてこないのが一番きつい。ここは切腹するべきだろうか?

……心なしか、先生とハナコさんがやたら構ってくるようになった。この居た堪れない精神状態では染み渡るぜぇぃ……。

そんな心境でも時間はまだ昼前。シャーレ業務をすっぽかすにはまだ早い時間なので、仕方なくニッコニコの先生と模試の答え合わせ。そんな昼前に珍しく来客を知らせるチャイムが響く。

 

 

 

「あら?どなたかいらっしゃったみたいですね?」

 

「ひぃ、ティーパーティから正式なお叱りでしょうか……?」

 

”そんな怯えなくてもきっと大丈夫だよ。”

 

 

私が怯えていると、先生はやさしく頭をなでる。あぁ~落ち着く~。

緊張が解けると同時、わざわざ訪ねてきて人物がゆっくりと扉を開けるが、訪問してきた生徒はティーパーティー関係でも正義実現委員会でもなく、全く意外な人だった。

 

 

「し、失礼します…。」

 

「あら?マリーちゃん。お久しぶりですね?」

 

「ハナコさん、ご無沙汰してます。今日も平和と安寧が、あなたと共にありますように。」

 

 

入ってきたのは修道女の恰好をした生徒。ハナコさんと顔見知りなのか、イメージのシスターっぽい挨拶?をするけど、その顔は少しだけ複雑そうな顔を浮かべていた。なんだろ?ハナコさんと何かあった?ハナコさんが対人関係で何か起こす人には……あっ、対人じゃない方向では大分問題ばっかりな人だったわ。

2人の間に微妙な空気が流れていることを察してか、我らが部長のファウストさんが助け舟を出す。

 

 

「え、えっと、シスターフッドの方がどうしてここに……?」

 

「あ、えっとすいません。こちらに補習授業部の方々がいらっしゃると聞いて来た次第です。ハナコさんが居るとは知りませんでしたが……。」

 

「……私、成績不振の不良生徒なので。」

 

「そう……なんですね。」

 

「それで、マリーちゃんは私を訪ねてきたというわけでないのであれば、補習授業部にどういった用事で?」

 

「はい、白洲アズサさんにお伝えしたいことがありまして。」

 

「わたし?」

 

 

キョトンとするアズサさん。てっきり問題行動の苦情でもあるのかと勘ぐってしまったけど、アズサさん本人を見るにどうやら違うっぽい。いかにも敬虔な信徒といった感じの生徒が、態々こんな歩くには微妙に遠い場所に訪ねてくる理由ってなんだろ?私はアズサさんと一緒に頭をコテンとかしげる。

 

 

「実はですね、先日アズサさんが助けてくださった生徒の方から、感謝をお伝えしたいとの事でして。その方はなかなか時間が合わず、直接尋ねられないとのことでして私が代わりに、と思い。」

 

「感謝……?」

 

「はい。どうやらクラスメイトの方々から、校舎裏に呼び出されイジメられていたところを、アズサさんに助けていただいた、と。」

 

 

おーぅ、やっぱりどこの学校でもあるよねぇ、そうゆうの。ないのはアビドスくらいだと思ってるけど、トリニティでのイジメって他の学校より、殊更陰湿度が高そうだ。これだからトリカスはさぁ……。

 

 

「いじめ!?駄目!そうゆうのはダメなんだからっ!」

 

「……まぁ、聞かない話ではありませんよね、特にここトリニティでは。」

 

 

やはり陰で行われていたのだろう、イジメ。コハルさんだけでなく、先生も若干だが不愉快そうな雰囲気を出す。まぁそうだよね、教育者として、あまり気分のいいものではないでしょ。

因みに私的にはそれもまた青春の一ページとして見ている。良いか悪いかで言えばもちろん良くないけど、私はイジメられたら拳でぶちのめすくらいには短気だ。前世ではそういった相手すら現れなかったが、もしあったのならば死に物狂いで噛みつきに行ったとおもう。言葉が通じぬ獣には獣のやり方で分からせるしかないのだ。これぞ神風を誇る大和魂。*1

 

 

 

「そこに、偶然通りがかったアズサさんが、彼女を助けてくださったそうでして。」

 

「そ、そうなんだ?やるじゃん。」

 

「そういえばそんなこともあったな。数に物を言わせて、集団リンチ紛いな事をしていることが気に入らなかっただけだ。」

 

 

ヒューッ!かっけぇ!多分アズサさんは飾ることなく、本心で思ったことを口にしているのだろうけどクールすぎる!これにはコハル裁判長も見直したようで、皆の中でアズサさんの株がグググーっと上昇する音が聞こえてくる。

 

 

「そしてアズサさんに邪魔された方が、腹いせに正義実現委員会に駆け込んだようでして。……情報を歪曲して伝えたのか分かりませんが、そのせいで正義実現委員会とアズサさんの間でそれなりの戦闘があったとか……。」

 

 

あれ?もしかして正義実現委員会の詰め所に連行されてきたのって、その時のだったりする?

あの時はヤベーテロ行為だと思ってたけど、そんな裏事情があったとは。てかアズサさんも即応戦しないで、事情を説明すればよかったのでは……。ボブは訝しんだ。

 

 

「あの時弾薬が足りていれば、もっと道連れにできたのに。」

 

 

するなするな、道連れに。

 

 

 

「それに状況としては気の毒ではあったけど、いつまでも虐げられているだけじゃ何も変わらない。それがたとえ虚しい事でも、抵抗をやめていい理由にはならない。」

 

「……良い言葉ですね。彼女にも伝えておきます。」

「ふふっ、皆さん楽しそうでよかったです。……では皆さんの貴重な勉学の時間を奪うわけにはいけませんので、私はこれで。貴女方に幸あらんことを。」

 

「では私が送っていきますね。」

 

 

顔見知りということで、ハナコさんが御見送りをしに行った。その間に中途半端になっていた模試の採点を終わらせ、ハナコさんが戻ってきたタイミングで返却する。

―――結果はまだまだ前途多難である、とだけ言っておこうかな?

*1
絶対違う




VSミカでしたが今回は一瞬だけ。
サエカは割と本気でシールドバッシュしましたが、ミカの耐久力の高さにびっくり。サエカ的には一般生徒相手に「死にはしないだろう」くらいの殺意で攻撃を仕掛けてダメージらしいダメージがなかったのでマジびっくり。

ミカはセイアの次に白昼堂々狙ってくるとはいい度胸してるじゃんね☆くらいの殺意。セイアを失ったサエカ相手でなければ勘違いであっても一発ぶちのめすつもりだった。それでも大分痛かった。

万一本気の戦闘になった場合、6割でサエカの勝利、暴走or覚醒で9割8分ミカに勝ち目はありません。理由は攻撃を避けないから。

次回、水着でキャッキャうふふ?
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