シャーレの決戦兵器   作:わんぱくフォックスですまない

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第44話 えっ、停電?

スラマッマラン!早朝バタバタしたことがモヤモヤして、中々眠くならない百合園シスターサエカちゃんだよ。

防犯上の懸念から、先生の部屋で寝泊まりすることを打診してみたけど、案の定先生本人に断られてしまった。まぁそうだよね、先生もプライベートな時間は欲しいよね?うんうん、分かってますって。

で、しょうがないので朝方に全力稼働の待機状態のまま一切消耗することがなかった装備類の整備をする。なんでこの手の大出力系は一度待機状態まで出力制限あげて、使わないでいると故障するんだろうか。実に使い勝手が悪い……。

けど幸いにもダメになってしまったのはバッテリー全般だけのようだ。空のは何個かあるし、ダメになったのはエンジニア部に送っておこう。そう思いからのを充電しようとした時、事件は起こった。

 

 

 

「わっ……停電……?まだ差し込んでないからブレーカーじゃないよね……。いや……。」

 

 

コンセントに差し込もうとした時、周りの光が一斉に消える。突然の消灯に一瞬視界が奪われるけど、その原因と思しき光が私の視界を保ってくれた。

 

 

「雷……この程度で停電とは。流石トリニティ。ミレニアムやD.Uではよほどのことがない限り、ないのに。まったく、紅茶ばかりに金使ってないで、設備にお金回せっての。」

 

 

なんて愚痴りながら、万一の事を考え、プチカタストロフだけ持ち先生の部屋に向かう。

すると先生も同じ事を考えたのか、丁度廊下でばったりと出会った。

 

 

「あ、先生。よかった、暗闇に紛れて……なんてことにならなくて。」

 

”その声はサエカかな?ごめんね、暗くてまだ目が慣れてなくてね。”

 

 

シッテムの箱のうっすらしたライトで進んできた先生だったけど、月明かりもなしでは流石に見づらいらしい。私は何とか視界を確保できているので、部屋に備え付けられていた懐中電灯を先生に渡しておく。どうしても明かりが欲しくなったらプチカタストロフを待機モードにすれば光るしね。

 

 

「補習授業部の皆さんは大丈夫でしょうか?」

 

”どうかな……私はシャーレの書類仕事で起きていたけど、時間も時間だからね。”

 

 

そう、現在時刻は深夜2時。本来は暗いのが当たり前であり、停電が起きていることが分からないはずなのだ。多分、寝ているだろうし、起こすのも気が引けた私たちは、万一の場合に備えてブレーカーだけ落とし、自室へと戻るのだった。

そして次の日。

 

 

 

「んむぅ。まだ電力は復旧せず、ですか。幸いというか最先端の設備ではないのでガス供給があります。なのでシャワーと料理は問題ありませんが、冷蔵庫が開かないのは腹立ちますね。無駄にいいもの仕入れやがって。」

 

 

食材はすべて開かずの金庫と化した冷蔵庫の中。これには私もお手上げで、朝食は備蓄のカップ麺となった。そのためのお湯を沸かしていると、補習授業部の皆がドタバタと外へと走って行った。

土砂降りの中何か……あ……。

そうだ、洗濯ものだ。私も外に干したままだった。なんで昨晩思い出せなかったのだろう。

こうして私たちは無事、今日着る服を失ったのだった。

 

 

 

”まぁ……なんていうか仕方ない……よね?”

 

 

なんてカップ麺を啜りながら、困惑する先生。

その先生の視線の先には、スクール水着に身を包む生徒が4人。私はというと。

 

 

「私、否定のしようがないくらい変態ではありませんか……仕方ないとはいえ、仕方ないですませないでほしい気持ちもあります……。」

 

 

なんて自分でも意味が分からないことをぼやいているが、私に水着はない。

なので下着姿に、シャーレの上着一枚というコートを開けば露出狂と同じ、何とも情けない姿になっていた。

 

 

「こうなっては、パジャマパーティーならぬ水着パーティーしかやることはありませんね♡」

 

”なんでちょっと嬉しそうなの……。”

 

「って言うかなんで何かする前提なのっ!?普通に部屋に戻って休みとかでもいいじゃん!」

 

「ごもっともなんですけど、コハルさん。補習の想定ペースよりだいぶ下回っていまして。何もせずに休む、というのはちょっと。」

 

「う゛っ……。」

 

「では勉強ではなく、交流というか、雑談しましょう?コミュニケーションとるのも一蓮托生の私たちにとっては大事ですし♡」

 

「たしかに。連携……チームとして互いの信用は大事だと思う。それに、なんだかこうゆうのもワクワクして楽しい。補習授業部に来てからずっと楽しい気持ちが止まらないんだ。」

 

「あらあら。その気持ちよくわかります。私こうゆう合宿っぽいことに少し憧れていまして。なんだかテンション上がりますよね。」

 

 

なんて言うか分からなくもない気がする。うまく言葉にできないけど、青春っぽい。私の憧れた青春だ。皆はこの状況に困惑半分、楽しさ半分といった感じだけどハナコさんとアズサさんは明らかに楽しんでいる。……もしかしたら私と似通った部分があるのかな?流石に考えすぎかな。

 

 

 

”ところでサエカ……あんまりコートを嗅がないでほしいかなって……それで臭いって言われたら先生しばらく立ち直れそうにないからさ……。”

 

「な、なんてこと言うんですか!?まるで私が匂いフェチみたいに!!」

 

”そ、そこまでは言ってないけど!?”

 

 

そう、何を隠そう私が今身を包んでいるシャーレのコート。実は先生の白いコートなのだ。

私の黒のコートは特注のもので、連邦生徒会では異例のものだったりする。理由は単純で、連邦生徒会には中等部の人がいない。学年によって若干デザインの変わるそれは中等部の年齢である私に対応したものがなかった。なので一目でわかるように、とカイチョー自らデザインしてくれたものなのだ。なのでセイアさんの襲撃の時以来まだ手元にはない。

にしても先生の匂いのするコート。シャーレではよく洗濯するのに軽く嗅いだりするけど実際に袖を通したのは初めて。なんかいい匂い。……一着もらえないかな。あー嘘嘘そうゆうのじゃなくて。

 

 

 

「ふふ、サエカちゃん先生の事大好きですもんね?私も先生の事大好きなので分かりますよ。大事な秘密を知られちゃうくらいには♡」

 

「な、何を言ってるのこの変態!?そうゆうのはダメなんだから!!」

 

「ちっ、ちがいますよ!?こ、これはそうゆうのじゃなくて……。」

 

「あ、あはは……。」

 

「うん、なんだかこうゆうのが楽しい。色々なことが知れて、仲間と笑ってコミュニケーションをとる。とっても大事で、当たり前だけど当たり前じゃない今のこの日常が大好きだ。」

 

 

???わちゃわちゃしてる私たち女子組の中でアズサさんだけ楽しそうな、懐かしんでいるような。それでいて罪悪感に苛まれているような難しい顔をしていた。

ふふふ、難しい事があったら先生に相談してみなさいな。きっち光の波動で脳を焼いてくれるよ。

アズサさんも先生ファンクラブに入らないか?まだいらない?そうですか……。

なんてやり取りの途中。先生のスマホに何やら着信。先生は一言断りを入れて離れてしまった。

 

 

「そういえばトリニティのアクアリウムで、「ゴールドマグロ」とかいう珍しいお魚が展示されているらしいですね。」

 

 

私が意識をそらした間に、どうやらもう次の話題に入っていた。流石JK。トークの速さが凄まじい。あたしゃーお婆ちゃんだからついていくのに精いっぱいだぜぃ。

 

 

「あ、それ私もチラシで見ました!なんでも「幻の魚」と呼ばれているんですよね?」

 

「なんですかそれ。おいしそうですね。」

 

「今の話で涎を垂らされるその魚が可哀想……。」

 

「食べちゃダメですよサエカちゃん?話を戻しますと、いつか見に行ってみたいと思いません?」

 

「魚が見れるということは、海なのか?海に行ったことはないからそれも含めて興味ある。」

 

「えっ、アズサちゃん海に行ったことないんですか?一度も?」

 

「私もないですね。」

 

「サエカちゃんも?じゃ、じゃあ補習授業終わって予定が合えばみんなで海に行きましょう!勿論サエカちゃんも一緒に!」

 

 

わぉ、ヒフミさんがえらい輝いて見える!そしてそれはアズサさんも一緒の様で二人そろって感動してしまった。うぉぉまぶしいぃぃぃ!!

 

 

「あっ、電気点きましたね。復旧したということでしょうか?」

 

「あら……せっかくの薄暗い中での水着パーティだったのですが……。」

 

「なんで残念そうなのよ……。」

 

 

なんてことはなかった。ヒフミさんが光輝いたのではなく、突然の蛍光灯の光に目がやられただけだった。それでも私にはヒフミさんが女神さまに見えた事は間違いない。なんだかご利益ありそうだし拝んでおこう。なむなむ。

 

 

”みんなブレーカーあげてきたよ。洗濯の続きをしよっか。”

 

 

 

こうしてハナコさんの言う「薄暗い中での水着パーティー」は終わりを告げたのだった。

勿論服の乾燥が終わった後、先生のコートは回収された。ふぁっきゅー。

 

 

 


 

 

 

”サエカ、お出かけしようか。”

 

 

時刻は夜8時ころ。停電も完全復旧し、勉強も終わりいつものように今日が終わるかと思っていたのに、先生が突然そんなことを言い出した。

だけど先生だけかと思えば、廊下にはお出かけ準備が完了した補習授業部の面々。随分用意がいいけど、こんな夜にどこに行こうってんだい。

 

 

「サエカちゃんも行きませんか?夜のお散歩。合宿中にふらっと夜抜け出して、買い物や食べ歩き。とっても楽しそうかと思いまして。」

 

「行きます。40秒ください。」

 

”わぁ、即答。焦らなくてもいいからね。”

 

 

なんて言ったけど準備なんて装備を持つだけだ。財布よし、スマホよし、武器類よし!いざ夜の街へ!あ、変な意味じゃないからね。

 

 

 

 

というわけでやってきました、トリニティの夜の街。この時間に外を出歩けてぶらぶらできるのはトリニティの強みよね。D.Uはなんて言うか社畜の光って感じがするし、ミレニアムは発展しすぎて人があまり歩いていない。勿論ゲヘナとアビドスのぶらり散歩は論外。やめとけ、死ぬぞ。

 

 

「すごいな、夜だというのにスイーツショップもやっている。24時間営業?流石だ、隙がない。」

 

「うぅ、なんだか流されて来ちゃったけど、ハスミ先輩にバレたらすっごい怒られそう……。」

 

「心配しすぎですよコハルさーん。人間、表の顔は勤勉で真面目な人であっても、意外と裏の顔というものがある物です。このくらい可愛いものですよ。」

 

 

そう、人間というのは表面的な部分はいくらでも取り繕えるんだよね。あのカイチョーが根はポンコツであったように、内面というものは表層から読み取れるものからは真反対なものだよ。

だから私は先生が元ヤンであるとか、件のハスミさんがしれっと夜の街で何かをしていても驚かないとも。

 

 

「折角ですし、スイーツ食べたいです。先生のおごりで。」

 

”ロールケーキが食べたいだけだよね??”

 

「わかってるじゃないですか。さぁさ、日ごろの感謝の印にワタクシめにロールケーキを上納するがよいぞ!」

 

「あんた、キャラが迷子になってるわよ……。」

 

「あ、丁度限定パフェやってるところですね。ここのパフェすっごくおいしいんですよ!夜のメニューもあるみたいですし、行きましょう!」

 

「この時間のスイーツ……あぁん、なんて魅力的で暴力的なんでしょうか♡」

 

「えっ!?何の話……あっ、ちょっと待って、おいてかないでぇ!?」

 

 

ロールケーキの看板めがけて私が駆けだすと、皆もスイーツの誘惑に抗えなかったのか、小走りで付いてくる。

イヤッホゥ!久々のロールケーキだぜ!最近食べれてなかったから不足してたんだよね。

 

 

 

「いらっしゃいませ。」

 

「あはは、なんていうか夜中にスイーツ屋さんって色々な意味でドキドキしますね。」

 

「わかります。なんだかイケナイ事って興奮しますよね?」

 

 

気持ちは分かる。人間、ダメって言われるとソワソワしちゃうよね。特に夜のカロリー爆弾。体形に気を使っている人なら致命傷だ。けど私はまだ成長中なはず。今横に成長しても、縦にも成長するはずだから相殺されるはず!*1

最近数字が増えた?成長著しいと言って。た・て・に伸びてるの。そこ間違えないでよ?

 

 

 

「6名様でしょうか?こちらへどうぞ。ご注文がお決まりになりましたら、お声がけください。」

 

「あっ、限定パフェってまだありますか?」

 

「申し訳ございません、限定パフェはつい先ほど別のお客様が購入されたのが最後でして。」

 

「むぅ、タイミングが悪かったか。興味があったけど仕方ない、別のものを頼むとしよう。」

 

「ロールケーキ3つください。持ち帰りも可能であれば6個追加で。」

 

”容赦ないね……。”

 

 

何を言いますか。ロールケーキはすべてを救うのです。この良さが分からぬとは、先生もまだまだだね。なに?胃もたれする?放置するとカップ麺で命を繋げようとする人に胃もたれなんて概念あったんだ?ほら、ロールケーキは健康にいいんだよ、いや本当。

まだ効果ないかもしれなけど、そのうち健康に効くようになるって。ですよね?その大きく綺麗な羽を持った副委員長さん??

 

 

「あれ?ハスミ先輩……??」

 

「うっ、コハル……それに皆さんも。こ、こんばんは。」

 

 

そこには店内の端っこ、奥の方にテーブルに大量のパフェやらスイーツやらを置いて、此方から隠れるようにしていた正義実現委員会、3年の羽川ハスミさんの姿があった。

入店時、私と目が合った気がするので此方に気が付いてはいただろうに、近づかれるまで知らん顔していたということは、何か後ろめたい状況なんだろう。そのカロリー爆弾なんかは特に。

 

 

 

「あらあら……こんな夜中に偶然ですね。そちらに並んでいるのが限定パフェですか?とてもおいしそうですね?ダイエット中だと聞きましたが、3つも頼んでしまうなんて、さぞおいしいのでしょうね?」

 

「うっ……これは……その……よ、良ければおひとつどうぞ……。」

 

 

うわぁ、ハナコさん怖い。ハナコさん自身は限定パフェにはあまり興味ないだろうに、何か思うことがあるのかな?とりあえず隣の席に座って、ぶんどった限定パフェはヒフミさんとアズサさんがおいしそうにいただいた。

 

 

「こ、こほん。それで先生。自分の事を棚上げするようであれですが、補習授業部の皆さんは現在合宿中のはず。その期間の外出は禁じられていたと思いましが……?」

 

「うっ……ハスミ先輩、これは……ご、ごめんなさい。」

 

「大丈夫ですよコハル。そうですね……ここはお互いに、何も見なかった。ということにしませんか?その方が誰も不幸にならないと思いませんか?」

 

「ハスミせんぱぁい……!」

 

「どうですか?コハル。勉強は頑張っていますか?」

 

 

おー、流石副委員長。委員長のツルギさんが突撃タイプなので、補佐として知略面に優れていると聞いたけど、こんな所でも危機回避にその冷静な頭脳が光るとは。ゲヘナが絡まなければ優秀ですね。あっ、ロールケーキ来た。ひゃっほう、いただきまーす!

 

 

”コハルは最近よく頑張っているよ。成績もすごく上がっていてね。”

 

「なるほど、どうでしたか。それは良かった。コハル、言ったではありませんか。貴女はやればできるのだと。あの時も言った通り、期待していますよ。」

 

「えへへ……、ハスミ先輩の期待を裏切りたくないですから。」

 

 

なんかいい話ですねぇ。先生も感動したのかうるうるしている。きっと伝票の数字が視界に入って涙ぐんでいるというわけでないと信じたい。……黒服の差し入れとはかなり差がある常識的な数字だけど、そこはトリニティ。他学区ではなかなかお目にかからない数字はしていた。ごちでーす。

そんな各々が各々の理由で涙ぐんでいると突然ハスミさんのスマホが音を鳴らす。

 

 

「……失礼します。……はい、此方ハスミ。……イチカ?どうかしましたか?……わかりました。こちらも向かいます。」

 

”難しい顔していたけど、どうしたの?よければ力を貸すよ。”

 

「ありがとうございます。実はゲヘナの生徒と思しきグループがこの近辺に出没。無差別攻撃を行いながらトリニティの施設を襲撃している、とのことです。」

「まったく、これだからゲヘナは。グループということは、万魔殿がついに本性を現しましたかね?」

 

”多分違うと思うから落ち着いてね……。”

 

「では先生のお言葉に甘えて協力をお願いできますでしょうか?今、エデン条約を控えている状況で、色々と過敏な時期。このことから治安維持のためとはいえど、トリニティとゲヘナの衝突を捕えられてしまう可能性もゼロではありません。」

「つまり、正義実現委員会ではなく、「シャーレ」が矢面に立って協力してくださるのが、理想の構図です。つきましては本来頼むべきではありませんが、補習授業部の皆さんにもお手伝いをお願いしまいのです。」

 

”わかった。手伝うよ。皆もいいかな?”

 

「ロールケーキ分は働きますよっと。そうでなくても先生を守るのが仕事ですし。」

 

”もう3本食べたんだ……。”

 

「こちらはいつでも準備はできている。皆も大丈夫そうだ、行こう。」

 

「うふふ、なんだか楽しくなってきましたね?」

 

”じゃあ安全第一で行こうか。補習授業部、出撃!!”

 

 

むーん、街中の戦闘は得意じゃないけど頑張りますかね。今日お出かけだけと思って盾持ってきてないけど大丈夫っしょ。さっさと蹴散らして帰りましょー。

こうして私たち、補習授業部+αはテロの鎮圧のため夜の街を疾走するのだった。

 

*1
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