特に本編にはいらない話。飛ばしても(ry
曇りの描写がへたくそなのが嘆かわしい。
沙華のテンション乱高下。
あぁ、まただ。またこの浮遊感。夢の中を揺蕩うような、水の中に居るような。
私は何をしていたんだっけ。イマイチ思い出せないや。
確か皆と夜遊びしに出かけたんだっけか。ロールケーキ、おいしかったな。また行こう。
そのあとは?たしか……ああ、そうそう。美食研究会を捕まえて……ヒナさんに引き渡したんだ。
じゃあ今は帰ってきて合宿場で寝てるのか。起きたら朝ごはんは何を作ってあげようか。冷蔵庫には何あったっけ。そのあとは模擬試験だっけか。コハルさん、最近すごく頑張ってるし合格までもう少しだよね。精一杯サポートしなきゃ。
先生……先生は次どうやってからかってあげようかな。先生……先生?
≪お注射しまーす!≫
ブスッ
―――おあぁぁぁぁあああああ!!!???
≪お前ボケてんのか?いつまでも薄ら眼こすってんじゃねーぞ。≫
―――だからって私のプリティバットに何刺したのさぁ!?
≪あぁ?元気になる薬だ。なに、礼はいらねぇ。≫
―――礼じゃなくて文句を言ってるの!!
突然の乱暴ををされ、ぎゃあぎゃあと文句を言う。その下手人は記憶に懐かしい病室で看護師の服装に身を包み、デカい注射器を携えていた。
≪えぇい、キャンキャン喚くな。テメーがいつまでも寝ぼけてっからだろ!お前自分が何したのか覚えてないのか!?≫
―――ひ、ひどい……何をしたって……。
そこでようやく帰ってきた記憶がないことに気が付く。何故?確かにヒナさんと会った。先生をからかったりもした。そのあとは?
おかしい。どうにもそのあとの記憶が曖昧だ。いや……あぁ。思い出した。最悪な記憶を。
―――……ごめん。
≪やっと思い出したか。ッカァー!まったくこの薄らトンカチはさぁ……≫
恐らく死んでしまったのだろう。折角目の前の口が悪い少女がくれたチャンスを、人生を私は油断から棒に振ってしまった。文字通り恩を仇で返したのだ。
先生は……状況から考えて恐らく先生も……。なんてことだろう、私は立った一つのミスで二度とこないチャンスをふいにしてしまっただけでなく、何の罪もない先生を守れないばかりか巻き込んでしまった。そこでようやく自分の犯した過ちの大きさを自覚し、涙があふれてくる。
―――うっうぁ、あうぅ、ぐすっ……ごめん……なさい……ごめんなさい……!
≪おう、泣け、喚け。そしてこの私の寛大さに咽び泣くがいい。そして感謝するがいい。二度と同じようなヘマはするなよ。コンテニューだ。≫
―――うっ、うぅ……コンテニュー……??
≪感謝しろ、私がコインを入れてやったんだ。だから死んでない。いや、次のお前はもっとうまくやるでしょう、というやつだ。≫
―――それってどういう……。
≪だぁー!察しが悪いな、このすっとこどっこいは!私の神秘でお前の死を
―――……つまり生きてる……??ありがとう……そしてごめんなさい!!
≪うぉ、抱き着くんじゃねぇきたないな!≫
―――そんなこと言わないでよ……先生も生きてる……よね?
≪モチのロンだ。あれに死なれるのはまずい。アホな私と特異点。両方守らなきゃならないってのが私の辛い所だな。ああそうだ、お前を襲ったやつ。錠前サオリって名前なんだが―――≫
よかった、先生も生きているらしい。私のせいで危ない目に合わせたのだからあとで謝らなきゃ。そして泣きじゃくる私を蹴り飛ばして、相変わらずよくわからないことを言う彼女はさらにとんでもないことを言い放つ。
≪次会ったら容赦するな。殺せ。お前初撃で手加減しただろ。かまうな、殺せ。あれはきっとお前かお前の身近な人間にまた死を運ぶぞ。やられる前にやるしかないんだよ。全員が全員、笑ってハッピーエンドなんて奇麗事を言える段階はもうとうに過ぎている。……ころせ。≫
殺せ、だなんて。確かに初手で殺すつもりはなかった。少しずらした場所を撃って、大怪我程度で済ませるつもりだったのは否定しない。銃社会であるこのキヴォトスにおいて、殺す覚悟で出来ている生徒なんて一体どの程度いようか。それに対して目の前の少女は「殺せ」という。
そうしなければ次がないと言わんばかりに。もし。万が一。
≪最悪、特異点の前でなければ私がなんとかしてやる。段々馴染んできたしな。とにかく、今回の事はお前の失点だ。少し死にかけすぎだ。あーあ。姉から余分にかっぱらった神秘がなくなっちまった。くそが。≫
―――ごめんて。それで、いつ頃目が覚めるのかな……。
≪んんー、いつでも戻れるぞ。すぐ戻しても良かったけど、お前が事の重大さをしっかり理解しているか知りたくてな。自分の馬鹿さ加減にはほとほと頭を抱えるが、大丈夫そうだな。戻るか?≫
―――戻りたい。
≪そうか。分かっていると思うがここで過ごした時間と、現実との時間経過には差がある。たいして経過はしていないはずだが、一応留意しろ。≫
―――わかった。
≪じゃあな。せいぜい醜く足掻け。時が来るまでは自由だからな。≫
???なんだろう、口が悪いのはいつもの事なんだけど、今回は少し優しさを感じた。なんだかんだ根は優しいのかもしれない。なんて考えていたら現実に意識が戻るのを感じるのだった。
「んな……。」
あぁ、まただ。長い間寝ていたような倦怠感。そして感じる空腹感も。とりあえず状況を把握しなきゃ。そうして起き上がるが、合宿場ではない。外を見るに夜であるということしかわからない。どこだここ?
「あら、目が覚めたようですね。体の不調や違和感など感じるところはありませんか?」
「うわっ!?」
突然声をかけられて跳ね上がる。先ほどチラッと外を見た時には窓際に誰もいなかったのに、そこから声をかけられた。驚いて振り返ると救護騎士団の生徒が一人立っていた。
「あっ、すいません。驚かせるつもりはなかったんですけど……私は救護騎士団の鷲見セリナっていいます。ここには
「えっ……。」
過労で倒れた?私が?病室のサエカの話や私自身の記憶と大分異なる情報だ。……先生の配慮か何かがあったのかもしれない。あとで聞いてみよ。
「まったく、あなたはまだ中等部のまだまだこれからという時期です。そんな大事な成長期にこのような事はダメなんですからね!役職上、激務なのは理解しているつもりですけど、先生も酷くやつれた様子でしたので二人ともしっかり休養を取ってください!」
「すいません……。あの、私はどのくらい寝ていましたか?」
「運び込まれたのが深夜でしたので……丁度二日ほどになるかと。」
二日……。二日かぁ。じゃあ日が明けたら第二次試験だ。それまではゆっくり休むとしようかな……。
「一応、身体の方は問題なさそうですので、いつでも戻ることはできますが折角なので朝まで休みましょう。補習授業部、でしたか?その方々も先生も今は寝ていると思いますし、夜が明けてからまた元気な姿を見せてあげてください。またすぐ倒れて戻ってきたら許しませんからね!」
あぁ~なんて言うか優しさが染み渡る……特に特大のポカをやらかした後ではこれは効く。
最近やらかしては優しくされ、やらかしては……って事が多い気がする。気を付けねば……。
いや、やらかしたのならば言葉だけでなく行動で誠意を示そうと思う。であればここで休んでなどいられない。
「すいません、やっぱり戻ります。心配してくれているのは重々承知してますが、やるべきことがありますので。ご迷惑をおかけしました。」
「えぇ!?戻るんですか?まぁ……体調は万全そうですし、引き留めねばならない理由はないんですが……あまり無理はしないでくださいね?」
「はい、ありがとうございます。では。」
私はそのまま着替えて足早に救護騎士団を後にした。そして戻る前に第二ティーパーティー寮の最上階の一部屋に明かりがついているのが見えた。こんな時間まで起きてるなんて仕事熱心な生徒もいるんだな、なんて思っているとちょうど窓を開けたその部屋の主と目が合った。
「あら?サエカさん?いけませんよ、このような時間に一人で出歩いては。」
「うっ、すいません。つい先ほどまで寝ていたものですから、目が冴えてしまいまして。」
換気の為か、窓を開けて声をかけてきたのはナギサさんだった。その顔には遠目にもわかるほどのクマが出来ており、明らかに疲弊しているのが見えた。
「そうでしたか。それでしたら私の話し相手になりませんか?私も目が冴えて眠れないものですから。」
「はい、大丈夫ですよ。ではお邪魔しますね。」
本当は戻るつもりだったけど、なんだかナギサさんの様子が気になり、私はその誘いに乗っていた。まぁ、戻ったところでみんな寝てるだろうし。ナギサさんの仕事を少し手伝っておくのもいいかもしれない。なんて思いながら明かりのついた部屋に向かうのだった。
「失礼します。」
「今はプライベートですからそこまで硬くならなくて大丈夫ですよ。どうぞ、紅茶とロールケーキです。」
「わざわざありがとうございます。ナギサさんのロールケーキとってもおいしくて私大好きなんですよ!」
「それはそれは。それだけ喜んでもらえると私も作った甲斐があるというものですね。これだけ喜んでくれるのはサエカさんだけですよ。」
「そうなんですか?こんなにおいしいのに……。そういえばナギサさんはこんな時間までお仕事ですか?ホストというのは大変ですよね。なんて言うか……ごめんなさい。私からの謝罪では満足してもらえないかもしれませんけど……。」
私は深々と頭を下げる。別に私が悪いわけではないけど、本来この役割を担うはずだった姉が隠れ家で悠々自適のスローライフを送っていると知っている身としては、どうしても罪悪感を感じざるを得ない。手伝おうにも「シャーレ」という立場上、学園のトップとの癒着を疑われる可能性がある手前何もできないでいた。
そうして私の謝罪を受けてナギサさんはとても悲しそうな顔をしているのに気が付く。うんうん、そうだよね。こんな激務の仕事を押し付けられて辛くなりますよね。わかるわー。
「頭を上げてください。サエカさんも消息不明であるセイアさんも悪いなんてことは一切ありません。寧ろ私は貴女方に頭を下げたとて許されぬ行いをしています。謝るべきは私なのです。」
「そうですか?ナギサさんはナギサさんで思うことがあると思いますし、
「ッ……!!!」
およ?なんだかナギサさんの様子がおかしい。どしたん話きこか?あー、それはセイアさんが悪いわ。私ならそんな思いさせないのに。
「わ……わたしは……。」
「大丈夫ですか?顔色が大分悪いと言いますか……今日はお開きにしてゆっくり休―――。」
「爆弾を……仕掛けました……。」
「―――は?な、何を言うんですかナギサさん。急にジョークだなんてびっくりしますよ。あ、ミカさんを真似てみたとか―――。」
「違いますっ……!補習授業部の二次試験会場に……爆弾を……。」
「……………………。」
うわまじ?え?なんで?人の心とかないんか?やべーよ、本格的に疲れてるよこの人。
なんにしても補習授業部はまだしも、先生が巻き込まれるのはまずい。それを聞いてしまったらこんなところで暢気に茶をしばいてる場合ではないのだ。
「……一応場所と起爆時間を聞いておきましょう。除去してきますので、それで水に流して―――。」
「すでに。起爆済みです。」
「……こんな時間にですか?」
「ええ。サエカさんが来る前。
試験開始?何を言っているんだろう、ナギサさんは。私の記憶違いでなければ、二次試験は今日の朝8時だったはずだ。今の時間はまだ寝ている筈。
そこで少し嫌な予感がよぎる。ナギサさんの反応的にも嘘を言っているようにも見えない。
私はおもむろにスマホを取り出して、試験会場と日時を確認する。
………午前3時、ゲヘナの指定されたビルでの試験を執り行う?今の時間は……3時30分。
「謝罪はいかようにも。ことが全て終わった暁には、私の身はどうなっても構いません。私は、私の正義のために、少数を殺して多数を生かします。」
先ほどまでは泣きそうなくらい自責の表情だったのに対し、今は信念を曲げない決意の籠った声色に変化していた。それと同時、先ほどの言葉に偽りはないと嫌でも理解させられるものだった。
「……自分が何をしたのか、分かっているんですか?」
「……勿論です。サエカさん。貴女にはとても酷であるということは重々承知しています。それでも、私は。どんな犠牲を払ってでも。進まねばならないのです。」
言外に反省はしても後悔はしていないと言っている。先生が死んだかもしれない。そう思うだけで私の視界は赤く染まっていくのを感じる。そしてそれは神秘となって膨れ上がり、対面しているナギサさんに強烈な圧として叩きつけられる。
濃密な死の気配を感じ、ナギサさんは言葉を発する事が出来ず恐慌をきたす。
それと同時、圧倒的な気配を感じ取った警備の生徒が飛び込んでくるも、今まで生きてきた中で一度も感じることがなかった「死」というものを理解し、その場でへたり込んでしまう。
「うっ………!」
「ナギサ様!どうなされ……ひっ……!?」
「……………シャーレ所属の私の前で、堂々と告白したことに免じて、今すぐ手は下しません。もし。先生の身に何かあればその時は。」
「覚悟してください。」
「では。」
このままでは踏みとどまる事が出来ない。情報が確定するまでは振り上げた拳はぶつけてはならないのだ。せめてその拳は。後悔の無いように振り下ろさねばならないし、そしてそれは今ではない。それを理解しているからこそ、私は
―――残された食べかけのロールケーキは、二人の関係性のようにナイフで真っ二つになったままだった。
sideナギサ
私は自分の行いを心から呪った。自分の行いは再会した幼い友人から大切な人を二度も奪うような、友人以前に人としてあってはならないほどの外道のすることだった。
あれだけ酷い目にあいながらも、屈託なく笑い、地位など気にせず接してくれる小さな友人。
世界がどんなに残酷でも、私達3人だけは彼女の味方でいよう。そう話し合ったはずなのに。
それがどうだ、一番あってはならない、味方どころか直接苦しめている。
確かに、爆弾にキヴォトスの外の住人である先生が巻き込まれると思い、一時は踏みとどまった。
だが私は先生の安全よりも、補習授業部の中に居るであろう裏切者の排除を重視した。
その結果がこれか。裏切者は未だわからず、先生の安否は不明。そして友人から向けられた極大の殺意。正直、この地位にいれば人に殺意を向けられることなど掃いて捨てるほどある。
しかしそれは本気で殺すという類のものではなかった。矛盾してはいるが。
―――彼女、サエカのそれは違った。今すぐにでも首をへし折られそうな、そんな凄みを感じたのだ。
「申し訳ありません……サエカさん……。それでも。」
全てが終わった時、私は何と呼ばれるのだろうか。独裁者、偽善者、臆病者。あるいは
これで私は止まることはできない。たった一人の友人のために、私はこれからも大事な物を捨て続けるのだろう。あぁ、どうか神様。私を―――たすけて。
部屋から足早に退出するサエカさんを見て、引き留めそうになったがその資格はないと手を引っ込めてしまった。
―――そのとき、視界に映った食べかけのロールケーキが、私の末路を暗示しているように感じた。