「それでは変態、念のため報告してもらってもいいです?」
”あ、あの、先生が悪かったので変態呼びはちょっと……。”
「時間は有限です。朝ごはんなしでもいいならそれでいいですけど。」
”ウス……調子乗ってすいませんした……。”
おはようございます。ゲヘナで試験を受けれず、落ち込んでいる補習授業部を何とかしようとしている、慰めサエカちゃんだよ。
今は大雑把にナギサさんから聞いているとはいえ、情報の齟齬がないように、先生からも聞き込みをしているところ。
まぁ寝坊かまして、必要とされる場面で活躍できなかったのに、どの口が言うんだって話なんですけどね。
皆がテーブルで朝食をとる中、半裸でうら若き少女を襲ったとして床で正座をしながら、犬のようにご飯を”待て”されている変態、もとい先生が文句をこぼすが、ここに先生の味方をする者は誰一人としておらず、その呟きは封殺され、ただ報告を上げるマシーンと化していた。
「ふむ……、どうやっても合格させるつもりはなさそうですね。」
「もうやだぁ……トリニティの偉い人が私たちを退学させるつもりなら、もうどうしようもないじゃん……。私バカだけど……精一杯、頑張ったのに……。」
「コハル……。」
うーん、流れというか空気が最悪だ。どうしてこうなった。
先生も具体案が出せず、唸るだけ。あっ、違った。ご飯を前に涎垂らして唸ってるだけだった。
しょうがないな、ヨシっ!あ、こら!ちゃんと箸を使って食べなさい!!
「最悪私が突撃しますか?」
「いえ……。ありがたい申し出なのですが、サエカちゃんが表立って事を構えてしまうと連邦生徒会の介入を招き、事態をより複雑にしてしまう恐れがあります。」
「ですよねぇ。うーん、何か交渉できる材料でもあればいいんですけど。」
この場合、明確にナギサさんが狙っている「トリニティの裏切り者」を見つければ交渉の余地ありなんだろうけど、私は補習授業部の中に明確な”悪意”を感じない。
ナギサさんの言う、トリニティを転覆させ、エデン条約を邪魔するもの。そして姉のセイアさんを襲撃し、私の命を脅かした純粋な悪意。とてもではないがそんなものは、目の前で悲しそうにご飯を食べる少女たちの中にあるとは思えない。もし、それすら隠し通せるのならばそれは才能だ。学芸などではなく演劇をやるべきだと思う。
果たしてあの少女、錠前サオリの背後にあるような、どす黒く濁った悪意が目の前の少女たちにもあるのかな。私はそうは思わない。だって悲しそうにしながらも、ご飯はおいしいって言ってくれるんだもの。人の作ったものに情緒がどうであれ美味しいと言える人物に悪い人はいないよ。*1
「まぁ、今は何もいい案が浮かびませんし、今まで通り次の試験に向けて勉強しましょうか。しない努力よりする努力、です。なぁに、心配することはないです。何がなんでもテストだけは受けてもらうのでそれに備えてください。」
”わん!わんわんわん!!”
「いつまで犬プレイ楽しんでるんですか。ぶっとい針ケツに刺しますよ。」
”クゥン……。”
「ほらほら、コハルさんも。いつまでもしょげてないで勉強しましょ。まだ諦めるには早いですし、何とかテスト受けれたとしても諦めて勉強してませんでしたでは笑いにもなりませんよ。」
「うん……頑張る……。」
こうして気力が上がらないまま、惰性で勉強することになり、テストの前日までティーパーティーの動きもなく、具体的な打開案を出せずに過ごすのだった。
「はぁ、先生。明日……ですね。」
”そうだね。後半は少しモチベーションが落ちちゃったけど、模擬試験はしっかり結果を出せているし、テストを受ける事さえできればきっと大丈夫だと思う。”
「ですね……。受ける事ができれば、ですけど。」
時刻は夜の11時。本来なら寝ている時間だが、私も先生も緊張から素直に寝る事が出来なくなっていた。そのため、どちらから言うでもなく、気を紛らわすために互いにだべりながら随分先の仕事にまで手を付けていた。
そんな時、先生の部屋のドアが控えめにノックする音が響く。
「こ、こんばんは、先生……。夜遅くに良くないと思ったんですけど光が見えたので……。」
”こんばんは。ヒフミも眠れない感じ?”
「はい……。不安と緊張で……。」
ノックと共に恐る恐る顔をのぞかせたのは、ジャージ姿のヒフミさんだった。普段弱音をあまり吐かない彼女には珍しく、その顔には言葉にせずともわかるほどの不安が滲んでいた。
そしてそれはヒフミさんに限った話ではなかったらしく、団子さん兄弟を彷彿とさせる形でヒフミさんの上下から現れた。
「私も不安なので慰めてください♡」
「みんな何してるの……。」
そのままというのもアレなので、3人とも部屋に招き入れ、ホットココアを渡す。*2
誰も口を開けない微妙な空気の中、渡されたホットココアが熱かったのか、冷ましながらちびちびと口を付けながらコハルさんが不安を吐露し始める。誰ともなく集まった深夜の行動だったが、次第に半泣きのコハルさんを慰める場となっていた。
「私は嫌……せっかく頑張ったのに、ハスミ先輩や補習授業部のみんなと会えなくなるのは……。」
「あらあら……嬉しい言葉ですね。皆で頑張ってきたのですから、きっと大丈夫ですよ。」
「そうです!コハルちゃん、すっごい頑張ってました。その頑張りを否定なんてさせません!だからきっと大丈夫です!」
「ほんと…?みんなよくいなくなるから、ちょっと不安になっちゃった。今もアズサ、どっかいっちゃったし……。」
確かにこの合宿中、アズサさんが居なくなることは非常に多かった。ドローンでその足取りを追うこともできたけど、年頃の女の子のプライバシーもあるかと考え、調べてはいない。*3テストが終わったら聞いてみてもいいかもしれないね。
そんなことを考えていると、コハルさんの心境の吐露に自身も見覚えがあったのか、申し訳なさそうにハナコさんが謝罪する。
「すいません、コハルちゃんを不安にさせる意図はなかったのですが……。実は私、シスターフッドの方と少し会って、調査をしていたんです。」
「内容は、トリニティの現状と、今回の真の意図。そして明日の第三次試験に関すること。」
「試験に関することって……また場所が変わって……!?」
「いえ、そうではありません。ただ、私たちが試験を受ける予定の第19分館に、エデン条約に関する機密文書を保管する、という名目でティーパーティーから建物周辺の封鎖を正義実現委員会に要請したとのことでした。」
「つまり……。」
「はい。試験を受けたくば、正義実現委員会を敵に回し、無理やり突破しろ、ということです。」
うわ、きたねぇ。やることがきたねぇ。そこまでして補習授業部を退学にさせたいの?
だけどこれには私にも一定の罪悪感はある。こうしてさも協力者のつもりでここに居るけど、元をたどればセイアさんのことが発端の可能性がある。そしてそれの真実に対し、口を噤んでいる私も同罪であり、本来はナギサさんを強く攻める事が出来る立場にないのだ。
こうなってくると難しい立場になってくる。セイアさんの生命の安全を確保するために、私はその口を閉ざしてきた。だけどそれが原因で補習授業部の4人が不当な扱いを受け、あまつさえ退学ということになるのは本意ではない。………これって私が一番悪いんじゃないかな。
「ど、どうしてハスミ先輩と敵対しなきゃならないのよ!?」
「正義実現委員会はティーパーティーの直属の下部組織です。そのティーパーティーが封鎖を指示したのであれば、私たちを助けることはできません。もし助けてしまえば、明確な離反行為と捉えられ、最悪ハスミさんも追放されてしまうかもしれません。」
「どうして……そこまで……。」
どうしようもない現実に、誰も口を開く事が出来ない。それほどまでに置かれた状況は悪く、悲壮感だけが無駄に広い部屋を支配する。
そしてそこに、唯一集まりに参加していなかった最後の補習授業部のメンバーが、罪悪感に押しつぶされそうな、悲しそうな表情を浮かべて現れる。
「…………私のせいだ。」
「アズサちゃん!?どこに行っていたんですか……?」
「みんな、聞いてほしい。話したいことがある。」
そんなアズサさんを見て、先生とハナコさんは目を伏せる。どうやら何か心当たりがあるようで、二人の表情にも悲しみの感情が窺い知れた。
しかし当のアズサさんは、そんな二人をちらりと見るだけにとどめ、震えながらも言葉を繋ぐ。
「どうしたの?アズサ……?具合でも悪いの?」
「……いや、大丈夫、ありがとう。……私はずっと皆に隠してきたことがあったんだ。でも、ここまで来たらもう隠すことなんてできない。」
皆が心配そうに見守る中、アズサは軽く深呼吸をし、気持ちを整える。
そして自身の重荷となっていた事実を話した。
「……ティーパーティーのナギサが探している「トリニティの裏切り者」は、私だ。」
「な、何の話よ……?」
「私は元々アリウス分校の出身。今は身分を偽ってトリニティに潜入していたんだ。……分かりやすく言うなら、「スパイ」。」
「アリウス分校……。昔、トリニティができる前。今のトリニティができる際にその連合を否定し、反対した分はの学園だったと記憶しています。そして、その反発でトラブルとなり、弾圧されてからはキヴォトスのどこかに身を潜め、表に現れなくなった、とも。」
「そう、そのアリウス。私はここに来る前、アリウスの自治区にいた。そしてそこで任務を受けて今、トリニティに潜入している。」
「その任務。その最たるものはティーパーティーのヘイローを破壊し、暗殺すること。次に狙うのは……現ホスト代理、桐藤ナギサ。」
ああ、納得。出会った時から私がアズサさんに感じた妙に距離を置いたように感じたのは、そうゆうことか。
きっとアズサさんの中では、セイアさんの事で私に負い目があったんだと思う。あれ?でもセイアさん、というより私を夜中襲撃したのはあの錠前サオリとかいう奴だ。アズサさんは関係ないはず。
「それってつまり……セイアちゃんを……。」
「……うん。本来は私に任務が来ていた。けど私以外にも任務を受けた仲間がいたんだと思う。だからこれは私の責任でもある。サエカ、黙っていてごめん。」
「アズサちゃん……。」
「お気になさらず。直接手を下したのはアズサさんじゃないことは知っています。ええ。良く知っています。ならアズサさんが謝る理由なんて一ミリもないですよ。」
「……それでもっ!」
「……………………。」
またしても悲痛な空気が流れる。はたから見れば目の前にいるのは姉の仇の仲間だ。本来なら私が激昂して殴りかかることも理解できる場面だろう。
そのせいか、周りの表情に緊張が滲んでいるのが分かる。けどその思い切った告白は、私にとって憤怒の感情よりも、罪悪感の方がより一層引き立てられた。
「え?セイア様って体調を崩して入院してるはずじゃ?」
「私もそう聞いていますが……。」
まあ、そうだよね。一般的な生徒に真実は公表していない。けど、どうやらトリニティの深い所に精通しているハナコさんは……。
「……表向きの公表はそうなっていますが……セイアちゃんは……恐らく死亡したものとして扱われています。」
「「……えっ……??」」
「つまり今の話が本当であれば、アズサちゃんは……サエカちゃんのお姉ちゃん。セイアちゃんを殺した犯人の一味、ということになってしまいます。」
「うん。だから私はサエカに殺されても文句は言えない。全部終わったら……私の命を絶ってくれて構わない。」
「…………なんでそんなこと言うんです?」
どうしてそんなに責任を感じているんだろう。
どうしてそんなに罰を受けたがるのだろう。
どうしてそんなに命を粗末に扱うのだろう。
どうして。どうして。
自分の命は一つしかない。自分の意思で歩く足があり、夢を掴むための両手があり、希望を見るための目があり、音楽を聴く耳があり、おいしいものを食べ、友達とくだらない話をする事が出来る口がある。
それなのに。負わなくていい
そう考えると、私は見当違いなイラつきを覚える。
「それは……私の責任―――。」
「ふざけるな!!!」
我慢できなくなった私の声が、部屋に響き渡る。
「どうしてそんなに責任を負いたがるんですか!?アズサさんは直接何かしましたか!?殺そうとした!けど実行はしてない!それで命が奪われる世界なら多くの人が命を落とすでしょう!」
「………………。」
「私はそんなの望んでない!勝手に命を捨てるな!アズサさんにも事情はあると思います!それでも!アズサさんには自由に走り回れる足がある!自由に勉強できる手がある!自由にできる健康な身体がある!!そんな恵まれた体を持っておきながら勝手に命を投げ捨てようだなんて!!」
「わたしは望んでない!!!」
ついカッとなって怒鳴ってしまう。でも後悔はしてない。一つしかない命を粗末にするやつは大っ嫌いだ。私がのどれだけ望んでも、願っても叶わなかったそれを捨てるなんて、絶対に許さない。
嫌いだ………私自身も、一つしかない大切なそれを蔑ろにするやつも。
「………ごめん。」
「……分かればいいんです、冗談でも二度と言わないでください。……すいません、突然怒鳴って。話の腰を折ってしまいました。私はしばらく黙りますので続けてください。」
私のせいで悪かった空気が最悪と言えるものになった。でも事情を知っているのは先生だけだから、理解はされないと思う。せめて子供の癇癪と思ってくれますように。
”サエカはアズサに対して怒ってないから、責任感じなくて大丈夫だよ。アズサに犠牲になってほしくない。それはサエカだけでなく、私も、補習授業部のみんなも一緒。きっと今このタイミングで話したのも、自責だけでなく、みんなを助けたい。そう思ったから告白してるんだよね?だからあまり自分を追い詰めないで、話してほしいな。”
「……わかった、続ける。アリウスはどのような手段を使ってでも、ティーパーティーを抹殺したいんだと思う。多分、ティーパーティーのミカを騙して私をトリニティに編入させた。詳しくは分からないけど、和解したいとかそういう嘘をついたんだろう。」
「なるほど、それでミカさんが。全て終わった後に責任を擦り付けるのも想定しての事でしょうか。」
「ま、待って……急に何……話についていけないんだけど…。いや、嘘とは思わないけど、私たちに関係あるの……?」
「それは……。」
「……それで、明日の朝。アリウス分校の生徒たちが、ナギサの命を狙ってトリニティに潜入する。だから、私は……ナギサを守らなきゃいけない。」
「明日!?」
「正確には数時間後、だと思う。」
「タイミングが悪いですね……。正義実現委員会の大半は本館にいない状態。自ら首を絞める形となりましたが、これを静観するわけにもいきません……。」
懲りずにまた来るのか。確かにナギサさんは少し暴走気味というか、人としてやってはならないことに片足を突っ込んだ。先生を危険にさらしたことを許してはいないけど、殺されるとわかってそれを黙って見ていられるほど、私は外道じゃない。
「待って!なんかそれっておかしくない!?アズサはティーパーティーをやっつけに来たんでしょ!?なのに守るってどうゆうこと?訳わかんない!」
「それは……。」
「……アズサちゃん
……なにが殺されても仕方ない、なのさ。ハナコさんの推理が合っているなら、私は最低な事を……。
「……………。」
「なぜそのようなことを?誰に指示されたんですか?」
「誰に命令されたとかはない。これは私の独断。桐藤ナギサが、百合園セイアが、エデン条約が、トリニティが。これらが崩れた時、今の平和が壊れて、キヴォトスの混乱はさらに深まると思う。そうなったらまた、アリウスのような存在が生まれてしまう。私は、そんなの見たくない。」
「甘々です。現実を見ていなくて、絵空事です。アズサちゃんは、トリニティで裏切り、アリウスでも裏切っていた。みんな、みんな騙してきた。そんな嘘偽りで塗り固められたアズサちゃんを信用できる人がいると思いますか?」
「ハナコちゃん……。」
「そうだ。私はみんなの裏切り者。そんな私のせいで、補習授業部は危機に陥っている。本当にごめん。」
”私はそうは思わない。”
「先生?」
”元々の原因は、互いを理解し、信じる事が出来なかったことだと思う。”
”みんな疑心暗鬼になってしまったんだと思う。誰か一人でも、もう少しだけ信じて、心を通わせる事が出来たなら。一人で何とかしようと思わず、協力する事が出来たのなら。きっとこうはならなかった。”
「……ふふ、良いこと言いますね、先生?」
”先生だからね!言葉だけでもカッコいいこと言ってそれっぽくしなきゃ!”
「なんだかその一言で台無し……。」
信じる、か。確かに、私もセイアさんの事を先生だけにでも伝えていれば、もう少し違った未来があったかもしれない。そんな一人一人の小さな”殻”が積もり積もってここまで大きくなったのかもしれない。だとすれば、私がすべきことは……。
「確かに、アズサちゃんは私たちを信じて、自分を信じて、本心を語ってくれました。このまま黙っていなくなることもできたのに、何度も謝ってくれました。私も、ごめんなさい。そんなまっすぐなアズサちゃんを見ていたら、つい意地悪言いたくなっちゃいました。」
「……………。」
「いつでもいなくなる事が出来たのに、アズサちゃんは今も残っている。私はその理由を理解できます。今の日常が、補習授業部での時間がとても楽しかったから。違いますか?」
「……そう、だね。ハナコの言う通り、掃除をしたり、お出かけしたり、勉強したり。皆と一緒にすることの全てが楽しかったんだ。でもまだ足りないと思ってしまう。皆と遊園地に行ったり、お祭りに行ったり、海に行ったり。まだまたやりたいことや行きたいところは沢山ある。けど…。」
「私もその気持ち、よく分かるんです。私は、嘘と欺瞞、お飾りと建前で出来たトリニティが大嫌いでした。だから学校をやめるためにわざと低い点数を取り、試験を台無しにして去ろうと思いました。ですが補習授業部の皆さんと過ごした日常がとても楽しかったんです。それこそ、もう一度頑張ろう。そう思えるほどに。」
「だからこそ、守りましょう。今の楽しい日々を。悲観などせずに、全てをぶち抜いて誰の文句も言わせない合格を。」
そうだねぇ。悲観していても何も始まらない。皆のテストは受けさせ、尚且つナギサさんも守る。あぁ~シャーレの仕事のやりがい感じますぅ~……。
だけどこの二人が心の内を話してくれたんだ。自分の立場が危なくなるかもしれないのに、だ。
となれば、私も話しておくべきだろう。なぁに、どうせセイアさんも穴倉生活にもう耐えられなくなってるんだ。敵対する勢力はすべて私が薙ぎ払えばいい。もう手加減なんて、しない。
「まずはナギサさん。彼女をアリウスの襲撃から守りましょう。その後、皆でテストを受け、合格しましょう。」
「……不可能だ。試験は9時から。アリウスの襲撃開始も凡そ同じ時間に予定されてる。」
「…ふふ、大丈夫です。私、攻めるのも好きなんですよ♡」
「あ、あれ!?守ってテストするって話してなかった!?」
コハル裁判長はこんな空気でもブレないなぁ……。
「ええ。今まで受け身でされるがままでしたが、たまには此方から翻弄するのもありかと♡」
「心配しなくても大丈夫です。何せここには正義実現委員会のエリートと、情報を持っているゲリラ戦の達人と、ティーパーティーの偏愛を受ける自称平凡な人と、トリニティのほぼ全てに精通した人がいます。」
「そして、カギとなる先生と、最強の戦力、サエカちゃんまでいるんですよ?」
”な、何をするつもりかな……?”
「多分きっと楽しい事ですよ、先生。今のうちに腹くくって始末書考えておきましょう。」
”うへぇ~……。”
「こんな愉快な仲間たちが居るんです。きっとトリニティくらい、半日で転覆できますよ♡」
「こ、こんな物騒なこと言ってますけど、先生とサエカちゃんは大丈夫なんです……?そ、その、立場とか。」
なんだかハナコさんがテロリストのようなことを言い始めたせいか、ヒフミさんがここにきて常識的な配慮をしてくる。そんな羊の皮被ってもバレバレですよ。分かってないのは多分コハルさんくらい。寧ろヒフミさん。貴女ボスでしょ、テロリスト集団の。ほら胸張って!”ファウスト様”!
”大丈夫。何も心配しなくて大丈夫。先生は生徒の味方だからね。”
「私も問題ありません。だって私も―――。」
「トリニティの陰湿な部分、嫌いですから。」
「な、何するつもりなの…!?」
「なにも何も、ただ試験を受けて合格するだけです♡そのための作戦は一旦私にお任せください。」
うーん、本格的にハナコさんがフル稼働する前に、今回秘密にしていた元凶を伝えておくか……。
なんだか今逃したら伝える暇なさそうだし、伝えなかったら伝えなかったらで、前提条件が変わりそうだし。
べ、べつに私だけ秘密って言うのも座りが悪いとか、毎日メールをアホみたいに送り付けてくるセイアさんがうざったいからとかそんな意図はない。ないったらない。
「あー……私から一つ……この際なので私から爆弾一つ暴露させてもらいますね。これで共犯ってことで何卒よろしくお願いします。」
”サエカ……?”
ふぅー、深呼吸……ヒッヒッフゥー。よし。
「セイアさん生きてます。超元気に隠居してます。毎日鬱陶しいぐらいメール来ます。襲撃受けたのセイアさんじゃなくて私でーす!以上!!!!」
勢いとヤケクソで特大機密をばらす。もうどーにでもなーれ☆
そして数秒の時が流れ―――。
「「「「”えええええぇぇぇぇええええええ!!??”」」」」
mission complete!同じ釜の飯を食べた仲だ、死ぬときは一緒だぜ!
この日一番の大声が深夜に響き渡るのだった。
その夜、サエカから久々の通信を貰い、ウッキウキで応答したらハナコに鬼詰められた哀れなお姉ちゃんフォックスがいたとか、いなかったとか。
セイアの死に責任を感じていたアズサの情緒がぐちゃぐちゃです。