シャーレの決戦兵器   作:わんぱくフォックスですまない

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第53話 えっ、最悪の始まり?

おはようございます。先生に抱き着いてそのまま寝落ちしたサエカです。

最近の疲れもあってか、センセニウムの過剰摂取で中毒症状を起こし、キマってしまって幸せのまま寝ていた次第。

 

…まさか抱き着いたら抱き返してくるとは思わないじゃん。危なく死んでしまうところだった。

私や一部の生徒にはプチカタストロフより火力高いからね、それ。

 

さて。緊張の糸が切れたことによって、疲労が強く出てしまったというのは確かの様で、起き上がっても暫く、先生のもとに向かうのを、救護騎士団のセリナさんが中々許可してくれなかった。

それでも何とか説得し、装備を整え先生の元へ向かっている所です。

因みにセンセニウムの摂取により、投石で付いた傷は寝ている間に跡形もなく治っておりました。

あれは条約で禁止すべき危ない成分だと思う。

 

 

 

「先生、ただいま戻りました。」

 

”サエカ?もう体は大丈夫なの?”

 

「ええ。良いお薬をキメたので、むしろ調子がいいくらいです。」

 

”そ、そう…危ない薬じゃないよね…?”

 

「モチのロンですよ。今はまだ合法のお薬ですから。」

 

 

浮かれながら先生の控室に行くと、そこには調停式での最後の調整や、資料を読み漁る先生の姿が。

ソファーに座りながら、こちらに半身だけ向けて気遣うその優しさに、幸せいっぱいの少女脳が爆発して、再度抱擁を求めそうになったが、護衛と案内を兼ねて生徒が見ていることと、今は仕事の時間であること。そして今の自身のゴツめの装備*1では、抱き着かれたら痛いだろうと考え、何とか我慢する。

 

先生を案内して、本来私がやらねばならない警護や補助をしてくれた生徒にはどこか見覚えがあった。どこか……そう。第三次特別試験の日だ。あの時体育館で瓦礫撤去の手伝いをしていた、シスターフッドの生徒。その生徒はどこか気まずそうな雰囲気を出しているが、私の代わりに仕事をしてくれていたのは事実なので、挨拶をしておく。

 

 

「失礼しました。シスターフッドのヒナタさん…でしたよね?私の代わりに先生の補助をしてくださりありがとうございました。」

 

「い、いえ、私はたまたま居合わせただけですから…。」

 

”いや、私からも礼を言わせてもらうよ。ありがとう。ヒナタのおかげでいろいろ歴史を知ることが出来たし楽しかった。もしよければ調停式の会場まで一緒に行かない?”

 

「よろしいのですか?」

 

「勿論ですよ!それにヒナタさんも、シスターフッドの補助としてサクラコさんの近くにいるんですよね?行先も役割も同じですから、ご一緒しましょ!」

 

「で、ではお言葉に甘えて…。」

 

 

 

なんだかシスターフッドの人って、言動は清楚で誠実な人ばかりなのに、どこか引っかかる生徒さんが多い気がする。マリーさんはマリーさんで何だかどこかに欲を感じるし、トップのサクラコさんは遠目で見た時、何か企んでそうにも見える。あれだ、役職的に異世界ものの教皇みたいな…。どーにも胡散臭い…。多分誠実な人なんだろうけど。

 

そして目の前のヒナタさん。一見してマリーさんと同じく心の澄んだ人に見えるけど、何だその服装。エッチなのはいけないと思います!

ほら、先生もなんか鼻の下伸びてるじゃん!裁判長!仕事して!

 

まぁ正義実現委員会のハスミさん然り、補習授業部のハナコさん然り、セイアさん然り…トリニティの何かに秀でた人は露出する傾向にある。多分そうゆう校風というか文化なんでしょ。だから目の前で頬を赤らめている極深スリットのシスター服も常識の範囲内なのだ。きっとそう。間違いない。や、肌面積が少ない生徒が能力ないとかそんなことはないけどね。

 

だから先生?ヒナタさんを見て鼻の下伸ばした後に私をチラ見するのはやめてください?握りつぶしますよ??ナニかを。

 

私の殺意の籠ったジト目に気が付いたのか、先生はあからさまに視線を彷徨わせて、逃げるように会場へと―――地獄の入口へと向かうのだった。

 

 

 


 

 

 

エデン条約の式典中。トリニティからは各分派や派閥のトップとその補佐などの生徒が大勢出席していた。ゲヘナ側からは何の意図があってか知らないが、出席するはずの万魔殿のメンバーがほぼいない。これにトリニティ側の生徒は青筋を立てるが、今は平和を願う式典の最中。比較的冷静なトップ人や先生がなんとか収める事で不満は表層化しなかった。

 

式典の演説のメインは代理のナギサさんと、シスターフッドのサクラコさん。本来は姉のセイアさんがホストなので出席して舵取りをするのだが、謹慎中なためここにはいない。同じ理由でミカさんもおらず、トリニティの生徒会たるティーパーティーの席は寂しく空席が目立っている。

 

そんな中でも己の責務を全うしようと、ナギサさんは平和を謳っているが、彼女も疲労を隠し切れず、メイクでクマを誤魔化す有様。放送されている映像では分からないかもしれないが、マジかで見れる此方からは丸わかりであった。

 

三者三様。信賞必罰。思い上がらぬよう正しく罰を与えられた少女たち。そんな既に裁かれ、業を背負った少女たちに、さらなる罰と試練が今日この日襲う。

 

 

最初は小さな違和感。この世界で短期間に何度も命の危機に瀕し、実際にその命を散らしたおかげか、何となく分かるようになったピリつくような気持ち悪さ。

しかしそれと同じものを感じた生徒は式典会場にはおらず、サエカ一人と先生の持つAIのみが感じ取った危険信号。

 

今すぐ逃げろ。本能が激しく警鐘を鳴らすが、私の任務は先生の安全を確保すること。なればこそ、その仕事を全うするために、私は演説中にもかかわらず盾を展開させ、先生の近くに寄る。

 

 

―――しかし私の覚悟は、あくまでも子供の覚悟。大人の本気に到底かなうものではなかった。

 

 

 

轟音。初めは耳がおかしくなったかと思った。しかし同時に襲う熱波と衝撃波。それと同時理解する。爆弾だと。種類や威力は分からなくても、先生には間違いなく致命的なものだろう。

それを瞬時に理解して、盾を構えながら未だ椅子に座っている先生に飛びつき、その頭部を必死に暴威の悪魔が支配するこの空間で守るのだった。

 

 

 

 

 

―――ぱらぱらと音がする。何かが崩れる音も。暗い。そして重い…。

どうやら私は少しだけ意識を飛ばしていたようだと、まだ少しぼーっとする頭で理解する。

 

 

「っ…先生!そうだ先生…!!」

 

”無事だよ、サエカのおかげでね。”

 

 

下から突然声が聞こえて驚き飛び跳ねるが、体はあまり動かない事に気が付く。

どうやら私たちは建物の倒壊により、その下敷きになってしまったらしい。そして私が先生に飛びついたお陰かは分らないが、私を支えにして瓦礫の中で人一人分の空間が確保されていた。

 

 

「よかった…!怪我はありませんか?」

 

”うん、軽いかすり傷くらいだよ。ありがとう。でもちょっと身動きできないから現状を何とかしたいけど…サエカ、動けそう?”

 

「……ふふ…無理……ですね。ちょっと私も瓦礫に挟まれてるみたいで。無理に動かせば押しつぶされかねません…。」

 

 

先生にはこういったが、実際は痛みで絶叫したい。意識がハッキリしてからというもの、左腕と右足の感覚がない。何となくわかる。これはダメだ。そのせいで踏ん張りがきかず、瓦礫を押し上げることが出来ないでいた。

 

私は瓦礫に潰されても、苦しいだけで恐らくは耐えるだろう。だが先生は?先生には瞬間的になら身を守る術があると聞いたことがあるが、圧殺などの常時その命を奪わんとする衝撃に耐えられるとは到底思えない。

だからこそ痛みにこらえて踏ん張る。今は私の右腕と左足だけが彼の命を繋ぐ唯一の命綱だから。

 

しかしそれも長くは続かないだろうという確信めいたものもある。理由は簡単だ。私の小さな体では出血に耐えられず、いずれ意識を失ってしまう。そうなれば必死に耐えている瓦礫の重量に潰され、その下で身動きが取れない先生はそのまま道連れとなるだろう。

 

何だか似たような事あったな、などと考え次第に先生に対する応答も上の空となる。

万事休すか。いっその事奇跡にかけて、手元の愛銃で瓦礫を吹き飛ばすか。そんな危険な考えをするようになった時、背中のおもりがふわりと軽くなるのを感じた。

 

 

「先生!!」

 

”ヒナタ!?”

 

「今……瓦礫をどかしていますので少々お待ちいただけますか!今は…今だけはこの力に感謝を…!」

 

 

幸運にも爆発の被害が軽かったヒナタに二人は助けられる。が、動くことが出来たのは先生だけであった。

それもそのはず。サエカのフィジカルはキヴォトス広しと言えど同等か上回るのはミレニアムの少女しか存在しない。少なくとも、先生の知る限りでは。

そんなサエカの手足を潰し、自力救済が不可能な重量。如何に力持ちなヒナタとはいえ、それはあくまでも常識の範囲内。二人の救出に必要な瓦礫をどかすのが精一杯。

そのため、先生は隙間から外に出ることは出来たが、サエカの手足は依然挟まれたまま。そしてその出血からあまり猶予がないことは明白であった。

 

 

 

「サエカさん、聞こえますか!?今動ける人を集めてきます!少しだけ頑張ってください…!」

 

「………まだだいじょうぶ…。」

 

 

先生は一声二声かけた後、周りの生徒に声をかけ状況把握に努めている。

 

―――いつもながら情けない。そんな気持ちと共に辛うじて見える空を見上げたその時。

 

さらなる悪意が、今その暴威を振りまかんとしていた。

 

 

 

「ミサ…イ…ル…!?」

 

 

角度的に気が付いているのは私一人だけ。他の誰も気が付いた様子はない。

先ほどの爆発の原因は分からないが、大聖堂が盾となりその被害を抑えた。ではその盾たる大聖堂が瓦礫の山と化した現在の盾は?決まっている。―――私だ。

 

 

 

「う゛…うぁぁぁぁあああああああ!!!」

 

”サエカ!?”

 

 

ブチブチと嫌な音が体中に響き渡る。想像を絶する激痛に耐え、瓦礫に挟まれた腕を引きちぎる。

それによって自由になった上半身で盾を拾い上げ、こちらに向かう飛翔物体に思い切り投げつけた。

直後、再び凄まじい衝撃が大聖堂を襲う。流石に盾を投げつけただけでは先生や周辺生徒の被害をなくすことは出来ず、運よく一度目の爆発で無事だった生徒も吹き飛ばされる。勿論身を守る盾を手放したサエカも例外ではなく、空中で爆発したミサイルは周辺の悉くを吹き飛ばした。

 

この日、トリニティにミサイルが2発立て続けに落ちたことは、最悪の日として後世に語り継がれる事となった。

 

 

 


 

 

 

side先生

 

”う…。”

 

[大丈夫ですか先生!?]

 

 

声が聞こえる。私にしか認識できないもう一人の相棒、アロナの声だ。

2度目の爆発。相棒が言うには巡航ミサイルが2発飛んできた結果だという。1発目は建物とサエカが守ってくれた。そのおかげでアロナの防護は最小限で済み、二発目の防御にも成功した。だがその代償は重く、今にもアロナは電力不足でその機能を維持できなくなりかけていた。

 

これにより画面の奥にいる相棒は、次何かあったら恐らく守れないと警告する。

だから逃げて欲しい、と。しかし私は教師だ。皆が倒れる中、その身を犠牲にしてでも私を必死に庇った生徒達を置いておめおめと逃げられるものか。それに問題は電力不足やそこら中に倒れて動かなくなった生徒達だけではない。

 

 

 

―――あ゛ぁ゛――くふ、ははははは゛はは゛は!

 

 

思い起こされるは2週間ほど前。忘れもしないあの記憶。己の力不足と弱さ。そしてそれによって発露したサエカの不死と思われる異常性。あの時のなり振り構わない逃走したくなるほどの本能的恐怖。そんな相容れない「恐怖」が私の目の前で2度目の顕現を果たす。

 

そんなサエカの形をした誰かは赤黒いのスパークを発し、先ほどまでの傷を癒す。

前回彼女は敵対した生徒…サオリを一切の躊躇なく殺害しようとした。あの時に限れば私と敵対こそしなかったが今回はどのような考えを持っているのか分からない。

もしかしたら殺されるかもしれない。もしかしたら敵味方関係なく生徒に攻撃的なのかもしれない。もしかしたら。もしかしたら。

 

そんな考えても答えのない問に異常なほどエネルギーを使う。それだけ眼前の存在は根源的恐怖に近く、私の生存本能は無意識に生への渇望からありとあらゆる可能性を模索していた。

しかしそんなものは目の前の誰かにとっては関係なく。

 

 

―――はぁー、この糞ボケは何度死ねば気が済むんだ…?お…そこにいるのはもう一人の糞ボケか。酷いもんだなぁ、この状況で唯一一人だけ立てるというのも。

 

”やぁ…この間ぶり……でいいのかな。君は……。

 

―――腰が引けているぞ、先公。ビビっているのか?私は…そうだなぁ。同じ名前では困るだろうから一先ずは「テラー」とでも呼んで欲しい。

 

”テラー…。”

 

―――そうだとも。私も同じサエカだが、君にとってのサエカは花籠 沙華の事を言うのだろう?精々彼女を可愛がって幸せを手にするといい。

 

”君も…生徒……むしろ君こそが百合園セイアの妹であり、3年間行方不明になっていたその子だね?”

 

―――ちょっと待ってろ…んんぁ…。

 

「これで良し。これで少しは聞き取りやすくなっただろう。先ほどの質問の答えだが、君は少し勘違いしている。私は花籠 沙華であり百合園サエカでもある。どちらがどちらという事ではない。どちらも、私だ。表現は違うが君に分かりやすく言うなら二重人格のようなものだとでも思えばいい。」

 

”どちらにしても生徒に変わりないのであれば、私は味方をする。それが私の信念だからね。”

 

「はっ!信念を貫いた結果がこれかぁ?あっほらしい!信念なんてものは何の役にも立たない!肝心なところでいつも役に立つのは、純粋な”力”だけだと知れ!」

 

 

叫びその圧倒的な恐怖の圧をまき散らす「テラー」。

しかしその内面からは、私に対する怒りや失望といった言葉通りの感情ではなく、悲しみと絶望の方が色濃く感じた。

ああ―――この子は怒っているんじゃない。泣いているんだ。劣悪な環境で暮らし、虐げられ、実験動物のように弄ばれたのだろう。サエカは言わないが、きっと治癒されない体中に無数にある大きな傷跡。それはきっと目の前の少女の心の傷なのだ。そう思うと彼女の感情が伝播したように私の頬に一筋の涙が流れた。

 

 

 

「おい、何を泣いているんだ。」

 

”いや…何でもないよ。私がもっと…もっと早くこのキヴォトスに来ていれば……いや、これは傲慢だね。”

 

「何を言い出すのかと思えば……そうだ。お前は傲慢だ。「神」にそっくりだ。だからこそ今のうちに言っておくぞ。全てを救うことは出来ない。諦めろとは言わないが()()()。」

 

”貴重なアドバイスに感謝するよ…それでも私は信念を曲げない。私は大人でみんなの先生だから。もし助けるのに足りないものがあるのであれば、私は構う事無く命でもなんでも差し出すさ。”

 

「……馬鹿が…!命は奇跡の対価にするものじゃねぇ。そんな事したら私は助けないからな。その結果膝をつくことになろうと、私は助けないぞ。せいぜいこの世の不条理に絶望するんだな。」

 

 

 

そう言って愛銃のプチカタストロフを拾い、瓦礫の上に腰を下ろす。どうやらもう会話する気はないようだ。だがどこに行くでもなくその場に留まるのは何か理由を感じた。

…こんなことを考えてる場合じゃないと気が付いたのはそのすぐ後。私は可能な限り生徒の救助活動を開始する。

 

出来るだけ平らな場所に彼女たちを横にして、あらゆる機関に救援を求める。しかしどこにも通信がつながらない。私は一般的な応急処置は出来ても、専門的な医学の心得はない。私の貧弱な力で助け出す事の出来た生徒はそう多くはない。今も先ほどまでの私たちと同じく、暗く重い瓦礫の下で苦痛に喘いでいる少女たちが居ると思うと胸が張り裂けそうになる。

 

それに今この場で助け出す事が出来たのは、2発目のミサイル―――それの爆炎から身を挺して守ってくれた生徒達だ。そしてその中にはここまで案内してくれた優しい生徒、ヒナタの姿もある。

悔しい。少女たちにばかり辛い思いをさせている。私はせめてもの想いで彼女がやっていたようにヒナタの手を両手で握り、祈りを捧げる。そんな私の祈りが届いたのか、はたまたただの偶然かは分からないがヒナタの目がうっすらと開き、微笑む。

 

 

”っ!ヒナタ!”

 

「う…大丈夫です……先生もご無事の様で…。」

 

”喋らないで!今は休んでほしい。それと…ごめんね、私のせいで…。”

 

 

最後にもう一度にこりと笑うとすぐに意識を失ってしまう。その姿に私は嫌な予感がしたが、呼吸は安定しており、気絶しただけと分かると大きくため息をついて腰を下ろす。

それからしばらく。以前目を瞑ったまま動かないサエカとは反対に、救援に生徒が少しづつ駆け寄ってくる。その中には正義実現委員会のツルギとハスミの姿が。

 

 

 

「先生!ご無事でしたか!」

 

”うん私はね…。彼女たちが身を挺して守ってくれたんだ。”

 

 

私の言葉で地面に横たわり、応急処置を受けた生徒達の感謝の念を送る二人。しかし大聖堂からそれなりに離れていたにもかかわらず、ダメージを負った実力派の二人とは逆に、一切の傷らしい傷が見えないサエカを不審に思う。

 

彼女たちとて数多の修羅場を潜り抜けた猛者たちだ。大抵の事は動じないうえ、あの時の死者蘇生紛いの奇跡を目撃している。そのため最初程の驚きはないが、纏う雰囲気が自分たちの知っている少女でないことを見抜き、警戒をする。

 

 

 

「お前…誰だ?」

 

「くふっ…ははは!こうも私の事に気が付くなんて少々ショックだ。私はそんなに臭いかな?まぁいい。質問に答えよう、トリニティの暴力装置。私は百合園サエカ。まごう事無くその人だよ。」

 

「……敵か?」

 

「冷静だな。君の中で答えを得ていないのに無駄な質問もない。この有事に何をするべきかわかっている。素晴らしいことこの上ない。……先生の敵ではない、とだけ答えよう。」

 

「ならいい…。援護は期待していない。先生を安全な場所へお連れしろ。」

 

”え…?”

 

 

ツルギの声と共に突如現れたのは、アリウスの生徒達。おそらく彼女たちは接近する敵対組織に気が付いていたのだろう。私が声をかける前に突撃していく。それによって生まれる一時的な空白地帯に、彼女たちと一緒に来た正義実現委員会や一部の一般生徒達がなだれ込んでくる。

 

恐らくはこの間にけが人を連れて撤退しろという事だろう。なんと情けない事か。だが私がここに居ては前方で暴れている彼女らが、撤退することは出来ないと理解しているために行動に移る。

 

だが退路にもアリウス生と謎のシスター服を着た少女たちが立ち塞がる。サエカはなおも動かない。流石に非戦闘生徒達と怪我人を抱えての突破は難しい。万事休すか。

だが運はまたしても此方に味方をする。突如独特の連射音が鳴り響き、立ち塞がった少女たちを一掃する小さな影。

 

 

 

「先生!私が退路を作る!」

 

”ヒナ!!”

 

 

ボロボロで血を流し、今にも倒れそうな様子で奮闘するゲヘナの最強。ヒナがそこにいた。

そんなヒナがなんとか単身退路を作り、此方に合流する。

 

 

「そこにいるのは…サエカ…?いえ、違う…。貴女は先生の味方?それとも…敵かしら?」

 

「っはー!ほんとどいつもこいつもさぁ。ゲヘナの最強、私は先生の敵ではない。味方でもないけどなぁ。わぉ、話を最後まで聞きなさいな。銃を下せ野蛮人。いいか?私は先生を害するつもりはない。だが助けるつもりも私はない。だが死なれるのは困る。だからこそお前たち生徒ではどうにもならないものを私が引き受けている。」

 

「何を―――」

 

 

ヒナが何かを言う前に、突如鳴り響く本日3度目の破壊を知らせる()()()()が鳴り響く。

これこそが彼女自身が、見晴らしの良くなった瓦礫の山に居座った理由であった。

 

 

「ふん、まさかと思ったが本当に来るとは。2度あることは3度ある、というやつだな。」

「消し飛ばせ。ネームレス・カタストロフ!」

 

 

3発目のミサイル。それを黙視すると同時、少女は空に向けて黒紫色の極光を放つ。

それにより撃墜されたミサイルは着弾前に起爆して空高くで大爆発をする。

 

 

―――奇しくも私は3度もサエカに、ミサイルから守られたのだった。

*1
姉の助言でフルアーマー。尚双方の考えは食い違ってる模様。




対空極レーザー砲サエカちゃん。
因みに彼女が居座っているのはナギサの埋まっている場所だったりする。勿論知っていてそこにいる。だって小高くなってるから。

沙華の状態で受けたダメージなので残基がまた減りました。あと命は何個残ってるんでしょうねぇ…(ニチャァ

表に出てきたサエカは、分かりやすくサエカ*テラーを名乗りましたが、反転は一切しておらず、先生を適当に誤魔化しただけ。
実は作中に既にテラー化した生徒は存在しています。そのデメリットを打ち消しているだけで。

サエカ本人の残基は狐にちなんで9回。2日で1回分の残基回復。セイアバッテリーで急速回復可能。
セイアは大きい尻尾を一本持ってるイメージで、サエカは比較的細い尻尾を9本持っている九尾のイメージ。
9回死んだら……。
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