伝説のラ・セーヌの星   作:koh1968

3 / 4
夢への飛翔! ‐飛べよ気球パリの空へ‐第二話

La Légende de Étoile de la Seine

Vol vers les rêves !``Une montgolfière à Paris``vol2

 

À la vaille de la Révolution française, Simone, une belle fille qui aété élevée comme fille d`un magasin de fleurs, s`est appelée L`Étoile de la Seine et s`est battue avec épée.

Mais je ne savais pas du tout que j`étais la soeur de la reine Marie-Antoinete. 

 

 西暦1783年11月21日未明。

 

「ワハハハハハ!やはりラ・セーヌの星が現れたか!」

「何者!?」

男の笑い声が上の方向から建物の中に響くと、ラ・セーヌの星は抜刀して叫んだ。

ここはパリの中心部シテ島から南西に約十リュー(40キロ)南西に離れたセナートの森の近くにあるセーヌ川のそばに立つ城館。仮面の女剣士はここに捕らえられた熱気球の研究家モンゴルフィエ兄弟を助けにやって来たのだ。

ラ・セーヌの星は左足を前に出し、肩幅より少し広いくらいに広げて立ち、後ろに引いた右手にレイピアを持って構えをとった。

ラ・セーヌの星、1781年のパリに現れた謎の女剣士で、それよりも少し前から義賊として活躍していた黒いチューリップ共々フランス絶対王政による圧政、貴族の横暴に苦しむ弱き人々を助ける正義の剣士である。

ラ・セーヌの星の身なりはこの時代にはありえないような独特なものであった。銀色の星印が正面に縫い込まれた青いつば無しの帽子(ベレー帽)、胸乳、腰の括れから臀部にかけて線が露わになった、長袖の先端にはフリルがついた濃紺の装束(レオタード)、裏地が赤い黒のマント、そして彼女の象徴ともいえる深紅の仮面でその白い素顔の上半分を隠している。

仮面の下の青い瞳は円らで優しさと知恵深さと強い意志を感じさせた。白い滑らかな肌にそびえたつ繊細な線の高い鼻、口は小さく赤玉色で下唇が少し前に出ているのはオーストリア娘のようだった。首の後ろで括られた黄金色の髪は首のあたりで紫色のリボンで括られ、一部はもみ上げのあたりから両胸の先端へと流されている。そして対峙する男達をいつも釘付けにした白いむっちりとした太もも、膝から下脹脛を守る黒い革長靴。

覆面をした男達が五人はいて、ラ・セーヌの星に向かって少しずつ間合いを詰めてきた。

卑猥な視線を感じつつ、ラ・セーヌの星は少し後ろに下がったが、そこには晩餐会でも開けそうな長いテーブルと椅子があってマントがそれに触れた。

 ここに捕らわれたモンゴルフィエ兄弟を救うためには、まず彼らを倒さなければならない。世界初且つフランス国王ルイ十六世と王妃マリー・アントワネット夫妻御前での熱気球の公式有人飛行実験の成否はラ・セーヌの星の銀の剣にかかっている。ブローニュの森での実験まで時間がない。果たして彼女は勝てるのだろうか。

 

ラ・セーヌの星外伝

 「夢への飛翔! ‐飛べよ気球パリの空へ‐」第二話

 

 フランス大革命の前夜、花屋の娘として育てられた美少女シモーヌは「ラ・セーヌの星」と名乗り、剣を取って闘う。しかし、彼女は自分が王妃マリー・アントワネットの妹であることを全く知らなかった。

 

両手両足を縛られ、セナートの森近くの城館の冷たい床に座らされているエティエンヌことジャック=エティエンヌ・モンゴルフィエは悔しい思いで一杯だった。

(あと一息だったのに、明日、いや、もう今日だな、朝には国王夫妻の御前で世界初の公式な有人熱気球飛行実験をするところまでこぎつけたというのに!)

 悔しい思いは背中越しに縛られている兄ジョセフ=ミシェル・モンゴルフィエも同じだろう。ジョセフはエティエンヌほどには気球に対する情熱を持っていないようだったが、パリに来て、多くの人々の協力を得て熱気球の制作を始めてからは、人が変わったように気球制作に没頭していたからだ。

 シテ島の人々を始め、多くの市井の人々が、工芸職人、市場の主人や使用人、お針子といったたくさんの男女が気球製作に協力してくれたのは、花屋の若き美しい女主人シモーヌ・ロランの存在が大きい。シモーヌは若い娘ながらとても人望があるようで、彼女の呼びかけに多くの人々が賛同してくれたのだった。

(シモーヌも心配しているだろうなあ)

 エティエンヌがシモーヌの手を取り、彼女が心なしか顔を赤らめたように見えたあとエティエンヌは言ったのだ。

「明日の実験が成功したら、成功したら・・・」

「成功したら?」

「僕と・・・・」

 次の言葉をつなごうとしたとき、兄ジョセフの声がして会話は中断し、そのうち兄とともに謎の覆面男の一団に拉致されたのだった。

シモーヌは黄金色の髪を首のあたりで紫色のリボンで括って腰のあたりまで伸ばしたやや長身の、五ピエ六ブース(165センチ)位の十八歳の娘だった。青い瞳は円らで優しさと知恵深さと強い意志を感じさせた。白い滑らかな肌にそびえたつ繊細な線の高い鼻、口は小さく赤玉色で下唇が少し前に出ているのはオーストリア娘を思わせる。彼女は首周りにフリルがついた緑色のブラウス、エプロンを巻いたロングスカートを履いていて、そこから伸びる腕と足も美しい。そんなシモーヌはきっと自分の気持ちを分ってくれているとエティエンヌは信じていた。

(熱気球は失敗、シモーヌとの仲も終わりだ)

 エティエンヌは絶望した。

 自分達をこの城館に連れてきたのが、と言うよりそれを命じたのが誰かは分りきっている。熱気球の実験を神への冒涜と考えるベルナール枢機卿に違いない。時間になってもモンゴルフィエ兄弟が現れない事で気球の飛行実験は中止となり、国王は激怒するだろう。自分たちを援助し、身元保証人となってくれたド・ロージェ侯爵の政治的な地位も危うくなる。

 だが、そのようなことよりもエティエンヌはシモーヌとの仲を引き裂かれたことに絶望をしたのだ。理由はどうあれ、熱気球の実験を失敗させた男などシモーヌは嫌いになってなしまうに決まっている。

 そのように絶望したのである。

(シモーヌ、許してくれ。僕はもう君には会えない。会わせる顔がない)

 耳を澄ますと、セーヌ川の流れの音がかすかに聞こえた。

 

 一方、ラ・セーヌの星の姿をしたシモーヌは城館に忍び込み、その暗い通路、階段をゆっくりと上がっていった。壁には所々蝋燭の灯り、燭台があって歩くことに支障はない。もっとも彼女は夜目が利くのではあるが。

 階段を上がりきると、そこはかつて晩餐会などに使われていたような広い間となっていた。松明と燭台の灯り、窓から差込む星の光に広く長いテーブルと椅子が並んでいるのが見える。

(敵!?)

 一人の影が仮面の下の青い瞳に映り、ラ・セーヌの星は剣の柄に手をかけた。人影は女のようだった。ラ・セーヌの星は安堵の息を吐いた。それは大きな鏡で、女剣士の成りをした自分を映していることに気が付いたからだ。この時代、鏡は貴重品で、全身を映す姿見のような鏡など、ベルサイユ宮殿か有力貴族の館、裕福な商人の家くらいにしかなく、シモーヌも変装の前後に関わらず、自分の全身を見ることなどほとんどなかったからだ。

 鏡を背にして、ラ・セーヌの星はその広間を眺めまわした。

(エティエンヌたちはどこにいるのかしら?まさか、最悪の事態になっていなければいいけれど)

 だが、間違いなく人がいる気配がした。殺気を放つ男達の匂いだ。

(少なくとも五人、いえ六人はいる!そして、怯えている男の人の気配が二人!ということはまだ無事なのだわ)

 そう思ったときだ。

「ワハハハハハ!やはりラ・セーヌの星が現れたか!」

「何者!?」

男の笑い声が上の方向から城館の中に響くと、ラ・セーヌの星は抜刀して叫んだ。彼女は左足を前に出し、肩幅より少し広いくらいに広げて立ち、後ろに引いた右手にレイピアを持って構えをとった。義父パトリス・アルマン・ド・フォルジュ公爵より授けられた正義の剣である。

そこには覆面をした男達が五人はいて、ラ・セーヌの星に向かって少しずつ間合いを詰めてきた。彼らの卑猥な視線を感じつつ、ラ・セーヌの星は少し後ろに下がったが、そこには晩餐会でも開けそうな長いテーブルと椅子があってマントがそれに触れた。

 (これ以上は後ろに下がれない!)

 深紅の仮面の横に冷や汗が流れた。

 

その男(ここではZ氏としておこう)は、モンゴルフィエ兄弟の熱気球実験を快く思わず、何としても失敗させようとするベルナール枢機卿に頼まれ、兄弟たちを捕え、パリから南西に十リュー(約40キロ)離れたこのセーヌ川沿いに建つ古い城館へと連れてきた。

(気球が飛んだところで世の中何も変わるまいに)

 そう思ったZだったが、ベルナールは神の領域である大空に人間が入り込むのは不遜だと考えていた。さらに、人々が神と教会を敬わなくなり、ひいてはそれが教会を頂点に王族と貴族、そして平民へとピラミッドのように続くフランスの身分秩序を壊すのではないかと恐れているのだった。

 ベルナールの恐れはある意味的中しつつあった。モンゴルフィエ兄弟の気球製作をパリの平民達が誰の指示を受けるでもなく自発的に手伝っているというのだ。そのような事は建国以来このフランスに、いや有史以来世界に無かったことだ。ベルナールは空恐ろしかったのだ。

 枢機卿はZにモンゴルフィエ兄弟が国王夫妻御前での有人熱気球飛行実験を行えないよう何とかしろと迫った。

「お前の組織を使えば何とでもなるではないか。なぜ動かぬ!」

「そう言われましてもなあ・・・・」

 Zが率いる組織を動かすには法的な根拠がいるが、気球を飛ばそうとしている兄弟を逮捕できる理由がどうしても見つからなかった。気球の実験は国王御前会議で決定したことだ。それを覆すことは組織としてはできなかった。Z自身は気球の実験が成功しようが、失敗しようがどうでもよかったが、ベルナールの機嫌を損ねれば、後々政治的に面倒でもある。そこでZは一計を案じたのだ。

「まあ、何とかしてみましょう」

 Zは組織を使わず、モンゴルフィエ兄弟を捕えることを考えた。彼の故郷で馴染みの剣術仲間五人がたまたまパリに来ていたこともあり、彼らの力を借りることにした。

(あの青臭い兄弟を捕えることは簡単だ。日が沈む頃に解放すれば良い。命を取ることはあるまい。だが、兄弟が行方不明になればパリの街は大騒ぎになるだろう。そのとき、あの女がきっと出てくるだろう)

 もし、そうなれば五人の力を借り、その女を捕える、場合によっては殺せば好都合だ。

モンゴルフィエ兄弟を捕えたこの城館に予想通り、白馬に乗った女が現れれば、彼女を館内に招き入れよと命じてあった。

 果たしてその女は現れるのだろうか。

「来る。あの女剣士はこのようなとき、いつも必ず現れた。今夜もきっとそうなる!」

 そして彼女は現れた。館の中の松明、蝋燭の灯りでも女の特徴的な身なりがよくわかった。

Zはそんな女を見降ろしつつ叫んだ。

「ワハハハハハ!やはりラ・セーヌの星が現れたか!」

 

「何者!」

 女の声が晩餐会にも使われる広間に響いた。

Zに雇われた五人の剣の腕利きの男達、その頭目のアランは抜刀したラ・セーヌの星の全身を、星印が正面に縫い込まれたベレー帽(そのような名前はこの時代まだない)から深紅の仮面で隠された顔の輪郭、濃紺のレオタード(こちらもそのような名前はない)に身を包んだ上半身、白さが露わになった太もも、黒革の長靴を履いた引き締まった脹脛(ふくらはぎ)へと視線を泳がせた。続けてレイピアの柄を握る右腕、左を前に出し、肩幅ほどに開いた足から、いつでも戦える状態であることが分かる。

(こいつがラ・セーヌの星か・・・)

 深紅の仮面で素顔は分からないが、思っていたより若くいい女であることは間違いなかった。年齢は十五から二十歳くらいだろうか。仮面の下の青い瞳は強い意思を感じさせた。身体の線が露わになった衣装のおかげで、豊満な欲情を駆り立てる両の乳房、括れた腰つき、白いムチムチした太ももが悩ましくもはっきりしている。胸の先端は前に垂らされた黄金色の髪で隠されているのが残念だった。

(俺好みの女だ。とっとと始末して味見をしたいものだ)

 ラ・セーヌの星の噂はアランが住む、とある貴族の領地にも轟いていた。貴族や強欲な商人を相手に剣を振るい、つまらぬ庶民たちには義賊を気取っているらしい。アランの剣術仲間であり、尊敬するムシューZが率いる組織を翻弄しているという。女のくせに許せない奴だ。

 Zは剣の達人ではあるが、彼の組織の構成員は皆そうではない。無防備な愚民共を威嚇できれば十分だからだ。故に女ながら剣豪とも言える腕を持つ剣士ラ・セーヌの星は捕まることなく、夜のパリで義賊として戦えているのだろう。

(もう少し年増の大柄な女だと思っていたが、それほどでもない。ムシューZはこんな娘っ子にてこずっていたようだが、五人でかかれば、造作もあるまい。女の剣を落し、五人で代わる代わる身体の味見をするとしよう。腰付からしてまだ男を知らないだろうし、男女の営みを教えてやればいい。万一のときは残念だが、俺が剣で女の腹を、椅子の背越しに串刺しにしてやる。許しを請うラ・セーヌの星の仮面をはぎ取り、苦悶の、断末魔の表情を眺めながらワインを飲むのも乙だろう)

 アランは勝利を確信していた。

「やるぞ!」

 アランが叫ぶと覆面の男達は次々と抜刀した。

 

 剣の切っ先が、晩餐会にも使われるテーブルの椅子の背もたれを突き刺すと同時に悲鳴が響いた。それは女の悲鳴ではなく、男のものだった。抜刀をした五人の覆面の男達。その頭目らしい男が椅子に背中をつけるラ・セーヌの星に向かってきたのだ。切っ先がレオタードにまさに触れそうになったとき、女剣士はさっと身体を翻した。ラ・セーヌの星の残像が視界に残るアランは思い切り剣を突いたが、それは椅子の背もたれに突き刺してしまった。

「な、」

 何だとと言おうとしたとき、アランの右手に身体を泳がしたラ・セーヌの星の剣が、彼の右脇下に突き刺さり、その切っ先は心臓に達したのだった。刺された瞬間アランは絶叫をし、前のめりに倒れ、血を吐いて死んだ。即死に近かっただろう。

「こ、この女!」

 そう叫んだのはアランの次に剣の腕がたつバンジャマンだ。バンジャマンは横にいたシャルルとともに抜刀した剣を女剣士に突き刺そうとした。だが、彼女は飛び上がると宙がえりをし、テーブルのクロスの上に降り立ったのだ。

「ば、馬鹿な!」

 ラ・セーヌの星はテーブルの向こうにある階段を見やるとそちらに向かってテーブルの上を走った。

「ま、待て!」

 バンジャマンはシャルル以下三名を促して、ラ・セーヌの星を追いかけた。階段の上にはモンゴルフィエ兄弟がいる。そこにたどり着かせるわけにはいかなかったからだ。

(それにしても何とすばしっこい女だ。あのアランの剣をかわし、一瞬で心臓まで突き刺すとは!)

 バンジャマンはとんでもない女を相手にしたことに戦慄した。Zに請われたアランに誘いに乗ったことを後悔した。女剣士は階段を上り始めた。もし、階段を上り切ったところで、そこには剣の達人であるZがいる。領主に剣の腕を見込まれてパリに呼ばれ、平民ながら組織の長にまで栄達したZだ。負けることはあるまいが、何としてもアランの仇を自分の手で取りたくもあった。

「待てえラ・セーヌの星ィ!」

 するとラ・セーヌの星は立ち止まり、マントを翻してこちらを向いた。深紅の仮面の下の瞳が怒りに燃えているのが見えた。何に怒っているのかバンジャマンには理解できなかった。

「なぜだ、ラ・セーヌの星!愚かな者の為に何故戦う!」

「私は正義のため、弱き人々の為に戦っているのです!そして大空を飛ぶことはパリの人々の夢なのです。さあ、かかってきなさい!」

「おのれええええええ」

 挑発されたバンジャマンが剣を取って突進した。

 

 階段の上にはジョセフとエティエンヌがいるはずだ。シモーヌ=ラ・セーヌの星は裏地が赤い黒のマントをなびかせつつ階段を駆け上がり始めた。

「待てえラ・セーヌの星ィ!」

 男の叫びにラ・セーヌの星は足を止め、マントを翻して四人の覆面男達を見降ろした。エティエンヌ達のもとにたどり着いたとしても彼らを相手にしなければならない。ここで覆面男達を倒しておこうと思ったのである。

「なぜだ、ラ・セーヌの星!愚かな者の為に何故戦う!気球など飛ばして何になる」

 男が、バンジャマンが叫んだ。愚問だった。ド・フォルジュ公爵はシモーヌを養女にし、貴族社会で生きさせようとした。真の貴族は民の模範となり、弱き民の為に、正義の為に戦わなければならないとして剣を教えてくれたのだ。そして気球はモンゴルフィエ兄弟だけでなく、パリの人々の夢なのだ。人類が大空へと飛翔する夢なのだ。

ラ・セーヌの星がその旨答えると、バンジャマンは叫びながら剣を持って突進してきた。決して彼の剣技は最初に倒したアラン同様低いものではなかったが、天賦の剣の才能を持ち、百戦錬磨の戦いをこの数年繰り広げてきたラ・セーヌの星=シモーヌの敵ではなかった。

 女剣士と男の銀の剣が火花を散らせた。そこへもう一人の男シャルルも突進してくる。だが、ラ・セーヌの星は剣の切っ先をバンジャマンの喉に突くと見せかけて、一瞬で引いた。バランスを崩したバンジャマンの剣が宙を泳いだ時、今は亡きド・フォルジュ公爵から授けられた正義の剣はシャルルの剣の刀身に振り下ろされ、彼の手から叩き落とされた。

 だが、さらに後ろに控えていた男二人が剣を振り上げて駆け上がってくる。バンジャマンも態勢を整え、シャルルも落とされた剣を拾い上げた。

(さすがに四人でかかって来られれば危ないわ。パリ警備隊の兵士達とは違う)

 ラ・セーヌの星は決して負ける気はしなかったが、勝利に至るまでには手こずる予感がした。彼らを倒したとしても、大声をあげた首領らしい男が控えている。

(あの男の声、どこかで聞いたような気がする。きっとこの四人以上の剣の腕を持つ男に違いないわ。彼を相手にしたとき、私が疲れたり、傷を負っていたら・・) 

 逆に覆面男達は、表情こそわからないが、勝利を確信し、勢いづいているようだった。

「ラ・セーヌの星!仇を取らせてもらうぞ!」

 バンジャマンの声がしたとき、階段の上から轟音が響いた。それが何かは分からないが、階段にいては危ないことは明白だった。ラ・セーヌの星は剣を一旦鞘に納めると膝を少し屈伸させて跳躍をした。

「わああああああ!」

 覆面男たちの悲鳴が響いた。階段の上からは大きなワインの樽が四つ転がり落ちてきたからだ。たちまち、男達はワインがたっぷりと入った重い樽に打ちのめされ、階段の下へと転がり落ちて言った。

 跳躍したラ・セーヌの星は柱に据えられていた燭台につかまることができ、無事だった。

(何ということを!)

 四人の覆面男達はラ・セーヌの星を翻弄しつつあった。ひょっとしたら彼らに倒されたかもしれない。それなのに首領らしい男は彼ら諸共女剣士を倒すべく、重い樽を階上から転がり落とし、共に葬り去ろうとしたのだ。

 ラ・セーヌの星は再び樽が落ちてこないのを確かめると階段に飛び降り、再び抜刀した。

「やるな!ラ・セーヌの星!今度はわしが相手だ!」

 階上にいたその男Zも覆面だった。

「臨むところです!」

自分の仲間を平気で殺そうとするその男に対しての怒りに燃えたラ・セーヌの星は、マントと黄金色の髪をなびかせて城館の階段を駆け上がった。

 

つづく

 

La Légende de Étoile de la Seine

Vol vers les rêves !``Une montgolfière à Paris``vol2

Continuer!

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。