バグのヒーローアルカディア   作:胡麻蝉あぶら

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なぜか一週間たってないのにお待たせしました感がある!


131話 1つ問おう! 二次創作には何が必要だと思うかね? そう、(原作ルートの)破壊だ!

 

オールフォーワンの恐怖の行進によって人々の心に絶望の影が落ちる中、さらなる異常事態が空を覆った。

謎の空中要塞が突如として出現し、次々と街や人々をその腹の底へと呑み込み始めたのである。

 

雄英高校に設置された臨時対策本部は、かつてない危機の連続に機能を麻痺させかけていた。

オールフォーワンの動向に集中していた彼らにとって、予想の範疇を大きく逸脱する出来事である。

 

モニターに映し出される要塞の威容を前に、対策本部の誰もが困惑の色を隠せずにいる。

この襲撃がオールフォーワンの計画の一部なのか、それとも全く別の勢力によるものなのか、判断する材料すら欠落していた。

 

そんな彼らのもとへ、その下手人が直接話をしたいと連絡を行ってきたのである。

オールマイトが回線を開くことを許可すると、モニターに一人の男の姿が映し出された。

 

金髪のオールバック、彫りの深い目鼻立ち、そして口元に浮かべた不遜な笑み。

 

先ほども確認はしていた。

それでも異様である。

 

画面の向こうにいる男の顔は、オールマイトの全盛期の姿に酷似していた。

だが、その瞳に宿る光は平和の象徴のそれとは決定的に異なり、底知れぬ狂気と野心が渦巻いている。

 

男はモニター越しにオールマイトを真っ直ぐに見据え、傲慢な態度で名乗りを上げた。

力を失い、衰退した貴方の跡を継ぎ、この国を平定するのは自分であると。

 

男は、要塞に呑み込んだ無数の市民を被検体と呼ぶ。

そして、彼らこそがオールマイトの意志を達成し、新たな平和を築くために必要な礎なのだと高らかに語った。

 

己の築き上げた平和の理念を根底から汚されるような言葉に、オールマイトの全身が激しい怒りに震えた。

彼は喉から血を吐くような声で叫んだ。

 

 

「それは私の意志などではない! お前は光ではなく、闇を求めるヴィランだ!」

 

 

その言葉が響き渡った瞬間、モニターの中の男は目を丸くし、ハッとしたような表情を浮かべた。

 

だが、それは反省や後悔からくるものではない。

男の口元が歪み、やがて大仰な身振りで盛大に笑い声を上げ始めた。

 

それはまるで、自分が探し求めていた最後のピースを見つけたかのような、己の存在意義を確立した歓喜の笑いであった。

 

 

「光ではなく、闇。ならば俺はオールマイトではなく、ダークマイトといったところか! 良いねぇ、実にいい響きだ、ダークマイト!!」

 

 

男は狂喜に満ちた声で自らの新たな名を宣言し、通信は一方的に遮断された。

残された暗いモニターの前で、オールマイトは深くうなだれた。

 

過去にも、彼に憧れてヒーローを目指す者は星の数ほど存在した。

しかし、自らの掲げた理想をこれほどまでに醜く捻じ曲げ、己の私欲を満たすための大義名分として利用する者が現れようとは。

 

かつてのように空を飛び、己の拳で悪を打ち砕くことができない自身の無力さを、彼はただ噛み締めることしかできなかった。

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

「よし、殺せ」

 

 

難羽はラボの片隅で静かに控えていた黒霧に向かって、平坦な声で命じた。

 

その声には、オールフォーワンに向けられるような熱を帯びた殺意は含まれていない。

それは害虫の駆除を清掃業者に依頼するような、事務的な口調。

 

黒霧は背筋に微かな悪寒が走るのを感じた。

 

難羽にとって、ダークマイトと名乗るあの男は、怒りや憎しみを向ける対象にすら値しなかった。

強大な力を持った愚者が社会に甚大な被害をもたらすことは、この世界においては自然災害と同じように予測される事象に過ぎない。

害虫の異常発生や、猛獣が人里に下りてくるのと同じ自然の摂理。

 

だからこそ、あれは速やかに処理されるべきものでしかない。

人ではない。

難羽はそう定義した。

 

難羽が手元のコンソールを操作すると、空中に幾つものホログラムディスプレイが展開された。

 

そこに映し出されたのはヨーロッパ最大の犯罪シンジケート、ゴリーニファミリーの構成員たちのデータである。

 

トップに表示されているのは、先ほどダークマイトと名乗った男の顔写真だ。

難羽の指先が宙を滑ると、表示された情報が次々と切り替わり、彼らの素性や個性のデータが羅列されていく。

 

そして自身の推測から導き出した結果を追加する。

部下たちがダークマイトに向ける視線や態度から、彼が外部からやってきた乗っ取り犯ではなく、組織の生え抜きの人間であることが読み取れる。

 

それらの要因から逆算し、ダークマイトの正体はゴリーニファミリーの現当主、バルド・ゴリーニであると難羽は断定した。

 

黒いオールバックの髪に、暗い影を落とした表情の男。

彼の個性は錬金。

触媒から別の物質やエネルギーを生み出す能力であると記録されている。

 

 

「雄英に接近している空中要塞の外部では、現在プロヒーローたちが一斉攻撃を仕掛けている。だが、その結果は芳しくないようだ」

 

 

難羽はホログラムの映像を消去し、黒霧の方へと振り返った。

 

 

「そこでお前だ。ワープゲートを使って要塞の内部へ直接侵入しろ。まずは、取り込まれた一般市民を安全な場所へ脱出させる。そして、ゴリーニファミリーを一人残らず殺害しろ」

 

 

黒霧は、静かに首を横に振った。

 

 

「私たちを、あなたの部下だと勘違いしていませんか? 我々ロシナンテの目的は、あくまで死柄木を助け出すことだけだったはずです。彼が救われて治療を受けている今、我々が無関係な戦いに身を投じる意味はありません」

 

 

黒霧の言葉には、理にかなった拒絶の意志が込められていた。

彼らロシナンテの面々は、オールフォーワンという呪縛から死柄木を救い出すために難羽への協力を申し出たのだ。

 

そして彼は戦うこともなく、オールフォーワンから捨てられた。

それ自体には怒りを覚える。

 

しかし、オールフォーワンの脅威を理解しているからこそ、彼らは今、不要な波風を立てるべきではないと考えている。

 

この戦いが終われば、彼らを待っているのは法による裁きであり、一生を檻の中で過ごす運命だ。

死柄木が目覚めるその日を静かに待ちたいというのが、彼らの切実な願いであった。

社会を救うために行動することは、破滅を早めることに他ならない。

 

だが、難羽は黒霧の拒絶を予想していたかのように、冷たい瞳で彼を見据えた。

 

 

「ゴリーニファミリーの要塞は、無差別に街や人々を呑み込んでいる。だが、その呑み込まれた区画の中に、渡我と迫も含まれているようだ」

 

「……それは、本当ですか」

 

 

黒霧の纏う黒い霧が、激しく揺らめいた。

 

裏社会で不穏な動きがあるという情報を得て、彼らが偵察に向かったことは事実だ。

そしてあの要塞が出現した直後から、二人との通信が途絶えている。

襲撃されたエリアと彼らの向かった地点は一致していた。

 

難羽は自らの手元にあった通信端末を黒霧へと放り投げた。

黒霧はそれを受け取ると溜息を漏らし、自身の身体を闇の霧で包み込んだ。

 

そして仲間の危機を救うため、ラボから姿を消した。

 

 

 

 

静寂が戻ったラボの中で、難羽は一人、黒霧という存在について思考を巡らせた。

 

ロシナンテの面々の中で、彼が最も組織という繋がりに対して強い執着を抱いている。

彼も死柄木を救うという共通の目的のために、自らが捕縛される結末を甘んじて受け入れた。

 

しかし、黒霧だけが、その法による裁きを受けることすら許されない可能性がある。

 

白雲朧という一人の青年の死体から作り出された、意思を持つ脳無。

 

彼の犯した数々の罪は、一体誰が償うべきものなのか。

彼の意思は白雲のものなのか、それともプログラムされた黒霧のものなのか。

それとも創造主である殻木のものなのか。

 

もし法廷で問われれば、彼は自らの意思で人を殺めたと答えるだろう。

 

だが、今の社会の法律は、死体から造られた人工生命体を公平に裁く枠組みなど、最初から持ち合わせてはいない。

人間の尊厳を根底から揺るがす彼の存在は、法の想定を超えているのだ。

 

裁判にもかけられず、危険な廃棄物として処分されるか。

あるいは、光の当たらない精神病院の奥底へ幽閉されるか。

それとも公安の手に落ち、利用されるか。

 

いずれにせよ、彼が他のロシナンテのメンバーと同じように、刑務所で罪を償うという人間らしい罰を受けることはできない。

 

彼を一つの命として、対等な仲間として見てくれるのは、世界中でロシナンテのメンバーたちだけである。

 

そして、彼がその仲間たちと共に過ごすことができる時間は、今この瞬間しか残されていないのだ。

 

 

「……私も仕事に戻るか」

 

 

難羽は低く呟き、再びコンソールへと向き直った。

オールフォーワンによる日本侵攻が始まって以来、彼はこのラボから一歩も外へ出ていない。

彼は頼まれた仕事をひたすらに続けていた。

 

 


 

 

 

 

 

一方、ダークマイトによって創り出された要塞の内部。

創られた水辺の草原で、激しい戦闘が繰り広げられていた。

 

黒いスーツに身を包んだゴリーニファミリーの構成員たちが、二人の侵入者を包囲し、一斉射撃を浴びせている。

 

一人は仮面で顔を隠したロシナンテの幹部、トガヒミコ。

 

もう一人は燕尾服を身に纏った、赤髪の青年であった。

青年の右目には黒の眼帯が装着されており、彼の右腕と左足は、精緻な機械仕掛けの義肢へと換装されている。

 

黒服たちが構えたサブマシンガンから、無数の銃弾が雨のように放たれる。

 

だが、その弾丸がトガの肉体を捉えることはなかった。

 

彼女は愛用のナイフを構え、異常な身のこなしで銃弾の嵐の中を舞い踊る。

放たれた銃弾は彼女の影を穿つのみだ。

そして一度岩陰へと滑り込めば、彼女の気配は戦場から消失する。

 

黒服たちが周囲を見渡した次の瞬間には、彼女はすでに彼らの背後に立っている。

 

音もなく振るわれる刃が、黒服たちの首筋を切り裂き、鮮血の華を咲かせていく。

 

 

赤髪の青年は拳銃を片手に岩陰を巧みに利用しながら、的確な射撃で黒服たちを次々と撃ち抜いていく。

 

だが、彼が撃ち倒した者たちからは血が流れていない。

彼が使用しているのは、殺傷能力を持たない特殊なスタン弾であった。

相手の意識を刈り取るだけで、命を奪うことへの忌避感がその戦闘スタイルに表れている。

 

やがて、最後の黒服が地面に崩れ落ち、草原に静寂が訪れた。

 

トガと赤髪の青年は息を乱すことなく、無言のまま互いを見つめ合った。

そしてトガはナイフの柄尻部分を捻り、ゆっくりとした足取りで青年の方へと歩き出した。

 

柄尻から飛び出たストローを咥え、ナイフが吸い取った血を啜る。

特注のギミックだ。

 

青年は彼女の動きを警戒し、いつでもスタン銃を放てる構えを崩さない。

 

だが、トガは彼を通り過ぎる。

そして地面に倒れている黒服の胸に、躊躇いなくナイフを突き立てた。

 

彼女にとって、敵を確実に排除することこそが戦闘の決着であった。

 

 

「ねぇ、どうしてあの子はそっちで撃とうとしたの?」

 

 

トガはたった今命を奪ったばかりとは思えないほど無邪気な声で、青年に問いかけた。

 

この要塞の空間に囚われる少し前、トガは遠目から青年の行動を見ていた。

 

彼がある女性に向けて、義手に仕込まれた実弾用の銃口を向け、引き金を引こうとした瞬間を。

着弾した跡の破壊力を見れば、それが今使っているようなスタン弾ではなく、確実に命を奪うための実弾であったことは明らかだった。

 

名も知らぬ黒服の男たちには命を奪わない戦い方を選ぶ彼が、なぜあの女性に対してだけは殺意を向けたのか。

義手の銃を構えた瞬間に彼の顔に浮かんだ、苦痛と悲哀が入り交じった強張りを思い出し、トガは純粋な疑問を抱いたのだ。

 

 

「ねぇ、なんで?」

 

「……貴方のような得体の知れないガキ様に、お答えする義理はありません」

 

 

青年は冷たく言い放つ。

しかし、トガに対する警戒を解くことはなく、一定の距離を保つ。

そして自身の足である赤いバイクの下へと歩みを進める。

 

トガは彼の冷淡な態度を気にする素振りも見せず、そのまま青年の後を追いかけた。

 

 

「…………」

 

「仲間と逸れちゃったから、足が欲しいのです」

 

 

青年が乗る赤いバイクは、二人乗りをするには十分な大きさがあった。

 

だが、他人の血を飲み、無慈悲に命を奪うような狂気を秘めた少女を後ろに乗せることなど、青年からすれば御免被りたい提案である。

しかし、先ほど彼女が見せた身のこなしと殺気を隠す技術を考えれば、ここで断ればバイクごと奪われる可能性すらある。

 

青年は深い溜息をつき、不本意ながらも彼女を後部シートに乗せることを承諾せざるを得なかった。

 


 

 

 

 

 

同じ頃、要塞の別の区画。

ダークマイトの出現と共に周囲の空間ごと要塞に呑み込まれ、トガと逸れてしまったコンプレスは見知らぬ場所に立っていた。

 

そこはヨーロッパの歴史ある街並みをそのまま切り取って持ち込んだかのような、精巧に作られた石畳の広場であった。

建物のディテールは完璧だが、どこか作り物めいた虚構の空気が漂っている。

 

広場の中央には、異様な光景が広がっていた。

一般市民たちが、まるで操り人形のように虚ろな目をして、長い行列を作っている。

 

彼らが一歩ずつ歩みを進めるその終着点には、二人の女性が立っていた。

 

一人は、黒ずんだような異質な金髪を持つ女性。

もう一人はダークマイトの側近と思しき、冷酷な瞳を持った女だ。

 

広場には真っ赤な薔薇の花びらが散り敷かれている。

そして意識を失い、深い眠りに落ちた人々の姿が幾重にも重なって倒れていた。

 

 

「……マジでどういう状況?」

 

 

コンプレスは物陰に身を潜めながら、目の前の光景を把握しようと目を凝らした。

彼が状況を分析しようと、少しだけ身を乗り出したその時。

 

背筋に冷たい氷柱を突き立てられたような感覚が走り、彼は直感的に見られたと悟った。

行列の先に立つ女の視線が、コンプレスの潜む物陰を捉えていたのだ。

しまった、とコンプレスは瞬時に後退し、その場から離脱しようとした。

 

だが、その行動はすでに遅い。

彼女の持つ個性の発動条件はイレイザーヘッドと同じく、対象を見ること。

 

意識が急速に濁り、視界の端から現実の風景が崩れ落ちていく。

 

ハリボテのヨーロッパの街並みが融解する。

心の底で密かに渇望していた虚構の理想が、甘美な夢となって広がり始める。

 

彼は抗うこともできず、その深い夢の底へと、静かに堕ちていった。

 

 





映画見返したらA組が取り込まれたの偶然でした。
これ巻き込まれなかったらやばかったのでは?
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