バグのヒーローアルカディア   作:胡麻蝉あぶら

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55話 デンジャラスゾンビ

 

翌朝。

昨日難羽の手によってピカピカに磨き上げられたグラントリノ事務所は、再び激しい戦闘音に包まれていた。

 

黄色い閃光が室内を乱反射し、緑色の電光を纏った少年がそれを迎え撃つ。

 

昨日のような一方的な蹂躙ではない。

緑谷出久の動きには確かな「思考」と「適応」が見て取れた。

 

難羽は部屋の隅に置いたパイプ椅子に深く腰掛け、足を組みながらその光景を眺めていた。

手には昨日のような掃除用具はない。

ただの観測者として、そして技術提供者として、友人の成長と自作装備のデータを収集していた。

 

 

(……良い動きだ。昨晩の映画が効いたようだな)

 

 

難羽はサングラスの奥で目を細める。

 

昨日の緑谷は、盾を単なる「壁」として扱っていた。

だが今は違う。

グラントリノの高速移動を目で追うのではなく、部屋の構造と「ジェット」の噴射音から軌道を予測し、あらかじめ盾を射線上に置く動きを見せている。

 

防御ではなく、誘導。

相手の攻撃ルートを限定させるための布石として盾を使っている。

 

 

「しつこいのぉ!!」

 

 

グラントリノが壁を蹴り、鋭角な軌道で緑谷の左側面へ突っ込む。

緑谷の死角。

だが緑谷は焦らない。

 

 

「見えてます!!」

 

 

緑谷は左足を軸に体を回転させ、左腕を突き出した。

昨日のような「受け」の姿勢ではない。

それはカウンターの左ストレートに近い挙動だった。

 

 

(届かんぞ!)

 

 

グラントリノは長年の勘で距離を測る。

緑谷のリーチと盾の厚み。

自分の顔面まではあと数センチ届かない。

このまま鼻先で躱し、伸びきった腕の関節を極める——。

 

その古兵の計算が、未知のギミックによって狂わされた。

 

金属的なスライド音が響く。

緑谷が突き出した左拳よりもさらに前へ、装着された円形の盾が勢いよく飛び出したのだ。

 

 

「なっ!?」

 

 

アームサポーターに内蔵されたレールが展開し、遠心力とバネの力で盾自体が瞬間的にスライド移動する。

それはまるで、槍の穂先が伸びるような奇襲。

 

 

「ぬぅッ!!」

 

 

グラントリノは空中で強引に首を捻った。

回避行動。

だが、完全には躱しきれない。

 

盾の硬質なエッジが、グラントリノの老いた頬を掠める。

数本の白髪が宙を舞い、浅いが確かな紅い傷筋が刻まれた。

 

 

 

 

 

グラントリノは壁に着地し、自身の頬を親指で拭った。

血がついている。

数年ぶりにかいた、冷や汗混じりの血だ。

 

 

「……やりおる。盾を打撃武器のように使いおったか」

 

「難羽くんが言っていました。『攻めるための剣ではなく、守るための盾』だと。……なら、守りながら攻めればいい!!」

 

緑谷が構え直す。

その左腕の盾はすでに元の位置に収納されている。

 

グラントリノはニヤリと笑った。

教育者としての喜びと、現役時代の闘争本能が入り混じる。

 

 

「威勢がいいのは結構だが……ネタが割れりゃあ、対処は容易い!!」

 

 

グラントリノが加速する。

正面からの攻撃に見せかけ、床スレスレを滑空し緑谷の視界から消える。

 

そして、瞬時に背後へ。

 

 

「後ろじゃ!!」

 

「!!」

 

 

緑谷が反応する。

振り向きざま、遠心力を乗せた盾の裏拳。

スライドギミックを利用した大振りの一撃だ。

 

 

「馬鹿の一つ覚えじゃ!!」

 

 

グラントリノが叫ぶ。

その攻撃は読めていた。

直線的なスライド攻撃は強力だが、軌道が単純だ。

グラントリノは緑谷の腕の振りに合わせ、飛来する盾の縁を両手でガッチリと掴んだ。

 

 

(昨日と同じじゃ。この盾を掴んでしまえば、お前さんの身体ごと振り回せる!)

 

 

盾を掴み、そのまま緑谷を一本背負いのように投げ飛ばすか、あるいは盾を足場にして顔面を蹴り砕くか。

グラントリノの脳内で勝利の図式が完成した。

 

しかし。

 

 

「……かかった!」

 

 

緑谷の口元が、微かに動いた。

 

 

「!?」

 

 

グラントリノが盾に体重をかけた、その瞬間。

 

緑谷の左腕から抵抗感が消滅した。

グラントリノの身体が宙に浮く。

 

緑谷を投げ飛ばすはずだった力が行き場を失う。

彼の手には、緑谷の腕から切り離された「盾」だけが握られていた。

 

 

「分離だとぉ!?」

 

 

勢い余ったグラントリノは盾を抱きかかえたまま、慣性の法則に従って部屋の壁へと突っ込んだ。

 

 

「ぐっ!!」

 

 

背中から壁に激突し、埃と共に床へ転がり落ちるグラントリノ。

完璧な受け身を取れなかったのは、予想外の事態に思考が追いつかなかったからだ。

 

 

「いっててて……」

 

 

グラントリノは腰をさすりながら立ち上がった。

手には戦利品となった緑色の円盾。

彼はそれをまじまじと見つめた。

 

 

「油断をつかれたわい……。だが、武器を奪われちゃあ形無しじゃな、有精卵」

 

 

グラントリノは不敵に笑う。

この盾は頑丈だ。

これを自分が装備すれば高速移動時の弾丸としても使えるし、防御壁としても一級品だ。

 

 

「そんな便利な道具、ヴィランも使いたくなるぜ!」

 

 

そう叫んで、グラントリノは盾を構えようとした。

腕を通し、取っ手を握り、自分のものとするために。

 

 

「……あん?」

 

 

グラントリノの動きが止まった。

盾を裏返す。

ツルリとした、滑らかな金属の平面。

そこには腕を通すベルトも、握るためのグリップも、何一つ存在しなかった。

 

 

「なんじゃこりゃ?」

 

 

ただの金属の円盤。

フリスビーのように持つことはできても、盾として固定することができない。

困惑する老兵に対し、椅子に座ったままの難羽が涼しい顔で解説を始めた。

 

 

「……対策済みだぜ、酉野」

 

 

難羽は自分の左腕を軽く叩いて見せた。

 

 

「その盾と緑谷のアームユニットは『電磁ロック機構』で結合されている。物理的なベルトや取っ手などという、破損しやすいアナログな構造は排除した」

 

「電磁ロック……?」

 

「ああ。強力な磁力によって吸着し、固定される。そしてその『吸着』と『解除』のスイッチは、緑谷が装着しているアーム側の掌にある」

 

 

この盾は専用のアームを持つ緑谷以外には、ただの「重たくて持ちにくい鉄屑」でしかない。

奪われたとしても敵には利用できないセキュリティ・ウェポン。

 

 

「そして、このシステムの真価は……『分離していても、システムは生きている』ことだ」

 

 

難羽のサングラスがキラリと光った。

その言葉が合図だったかのように、緑谷が左手のひらを強く握り込んだ。

 

 

「今だ!!」

 

 

緑谷の手の中でアームの制御スイッチが押し込まれた。

無線信号がグラントリノの手元にある盾へと飛ぶ。

 

 

「なっ!?」

 

 

グラントリノが異変に気づいた時、視界は既に白一色に染まっていた。

 

体育祭の難羽が使用したあの閃光。

 

盾の中心に描かれた星の意匠。

そこに埋め込まれた高輝度LEDとマグネシウムユニットが、至近距離で炸裂した。

盾を覗き込んでいたグラントリノの目の前、ゼロ距離で。

 

 

「グオオオオオッ!!? 目がぁぁ!!」

 

 

老人の鋭敏な視神経が強烈な光量によって焼き尽くされる。

平衡感覚が失われ、グラントリノの棒立ちになる。

 

その一瞬。

たった一瞬の、しかし致命的な隙。

 

 

「スマッシュ!!!!」

 

 

緑谷はすでに踏み込んでいた。

光に目が眩んだグラントリノの懐へ。

フルカウル5%。

全身のバネと、床を蹴る反作用。

そして、難羽のくれた知恵と勇気。

 

 

全てを乗せた右のアッパーカットが、無防備なグラントリノの顎を捉えた。

 

 

小気味よい打撃音が響く。

 

グラントリノの身体が宙に浮いた。

それはジェットによる飛行ではない。

純粋な打撃によるノックアップ。

 

 

「がはっ……!」

 

 

老人は天井近くまで吹き飛ばされ、そのまま重力に従って床へと落下した。

受け身を取る余裕もない完全なダウン。

 

 

 

静寂が戻る。

緑谷は拳を突き上げたまま、荒い息を吐いていた。

その足元には、役目を終えた盾が転がっている。

 

 

「……やった」

 

 

緑谷は自分の拳を見つめた。

 

伝説のヒーローに、一撃を入れた。

まぐれではない。

策を練り、道具を使い、相手の思考を誘導して掴み取った勝利。

 

 

乾いた拍手の音が聞こえた。

難羽が椅子から立ち上がり、ゆっくりと手を叩いていた。

 

 

「上出来だ、キャップ」

 

 

難羽は倒れているグラントリノを見下ろし、ニヤリと笑った。

床に大の字になったグラントリノは痛む顎をさすりながら、しかしどこか満足げに口元を歪めた。

 

 

「……生意気なヒヨっ子どもじゃ……。だが……合格だ」

 

 

その言葉は緑谷出久が盾に使われる側から、盾を使いこなす側へと、確かな一歩を踏み出した証だった。

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 「——甘い」

 

 

乾いた音が、静寂を取り戻した事務所に響いた。

 

緑谷出久の右腕に鋭い痛みが走る。

彼が顔をしかめる間もなく、次なる一撃が左脇腹を襲った。

 

 

「ぐっ……!!」

 

「痛いか? だが、骨には響かない程度に加減している……避けてみせろ、緑谷」

 

 

難羽輪太郎は、手にした樫の木の棒——かつてこの事務所で使われていたであろうモップの柄——を、まるで指揮棒のように軽く振ってみせた。

その表情はサングラスに隠れて読めないが、声色は氷のように冷徹だ。

 

グラントリノが昼寝(という名の体力回復)に入った後、難羽が提案したのは「対武器」を想定したスパーリングだった。

 

 

「も、もう一回……お願い!」

 

 

緑谷は脂汗を流しながら構え直す。

 

相手は個性を使っていない。

ただの棒を持った人間だ。

 

なのに、避けられない。

ワン・フォー・オールの5%を発動し、動体視力も向上しているはずなのに、難羽の棒は緑谷の意識の「隙間」を縫うように正確に急所を突いてくる。

 

 

「ヒーロー志望者はどうしても『個性』への対策に偏りがちだ。戦闘訓練もヒーロー関係者だからな」

 

 

難羽は棒の先端を緑谷の眉間に突きつけたまま、講義をするように語る。

 

 

「だが現場のヴィランが全員、派手な異能者とは限らない……ナイフ、鉄パイプ、拳銃。物理的な凶器を持った暴徒に、プロヒーローが遅れを取る事例は山ほどある」

 

 

言葉の途中で、唐突に突きが出される。

緑谷は反射的に左腕の盾で弾こうとするが、難羽は手首を返して軌道を変え、緑谷の脛をパチリと叩いた。

 

 

「いっ……!」

 

「個性による攻撃は、予備動作や発光などの兆候がある場合が多い。だから回避行動に移りやすい……だが、熟練者が扱う武器は違う。呼吸一つ、筋肉の収縮一つで、殺意の塊が飛んでくる」

 

 

難羽の指導はグラントリノの「体で覚えろ」という感覚的なものとは対極にあった。

 

理詰め。

完全な理論武装。

なぜ当たったのか、なぜ避けられなかったのかを言語化し、その上で容赦なく身体に叩き込む。

 

 

「盾があるからと安心するな……盾の裏側、足元、背後。武器を持った敵は、お前の防御の『外』を常に狙っている」

 

 

バシン、バシン、バシン。

緑谷の身体に赤いミミズ腫れが増えていく。

それは激痛ではないが、絶え間なく続く不快な痛みであり、精神を削るには十分だった。

 

棒を構えて無表情に佇む難羽の姿は今の緑谷には、グラントリノ以上の鬼教官に見えていた。

 

 

「死なないために死ぬほど鍛えるんだ。実戦が一番つらいなんてダメだからな」

 

「……ふぁあ。まだやっとるのか」

 

 

ソファからのっそりとグラントリノが起き上がった。

緑谷が殴られ続ける音を子守唄にしていた老人は、あくびを噛み殺しながら難羽を見た。

 

 

「精が出るのぉ、掃除屋。……だが、そろそろいいじゃろ」

 

「まだ基礎が出来ていない。未知は隙となる」

 

 

難羽は棒を下ろさずに答えた。

 

 

「その辺の理屈はお前さんとの特訓で後でもできる。……今は、もっと『生きた』経験を積むべきじゃろうて」

 

 

グラントリノはニヤリと笑い、黄色いマントを羽織った。

 

 

「行くぞ、有精卵。着替えて準備しな」

 

「え? ど、どこへ?」

 

 

緑谷が腫れた腕をさすりながら問う。

 

 

「渋谷だ。……人が多い場所で、もっと複雑な『ヴィラン退治』と行こうぜ」

 

 

 

山梨の寂れた駅から、東京・渋谷方面へ。

三人は新幹線に乗り込んでいた。

夕暮れ時の車内は比較的空いており、出張帰りのサラリーマンや旅行客がまばらに座っている程度だ。

 

座席を回転させ、向かい合わせになったボックス席。

窓際にグラントリノ、通路側に緑谷。

そして通路を挟んだ反対側の席に難羽が一人で座り、タブレットでニュースをチェックしている。

 

流れる景色を眺めながら、緑谷はずっと気になっていたことを口にした。

 

 

「あの、グラントリノ」

 

「ん?」

 

 

老人は駅の売店で買ったたい焼きを齧りながら視線を向けた。

 

 

「グラントリノは、オールマイトの師匠ですよね。……オールマイトを育てて、雄英の教師もしていた。活動していたのは超常黎明期の頃……」

 

 

緑谷は言葉を選びながら、核心に触れる。

 

 

「じゃあ……グラントリノの師匠って、どんな人だったんですか?」

 

 

オールマイトの師匠の、さらにその師匠。

ワン・フォー・オールの継承者として、その系譜を知っておきたいという純粋な探究心だった。

 

その問いを聞いた瞬間。

たい焼きを咀嚼するグラントリノの口が止まった。

 

その瞳から好々爺の穏やかさが消え、どこか遠い、懐かしくも苦い記憶を見るような色を帯びた。

 

 

「……物凄い人じゃったよ」

 

 

グラントリノは短く答えた。

そして、あんこの詰まった尻尾の部分を見つめながら続けた。

 

 

「徒手空拳はもちろん、武器の扱いも天下一品じゃった。……棒一本あれば軍隊でも制圧できるような手練れじゃ」

 

 

通路側の席で難羽の指が止まる。

だが彼は画面から目を離さず、無関心を装い続ける。

 

 

「人に教えるのも上手かったがのぉ……。とんでもなく厳しかった。今のワシなんぞ可愛く見えるレベルじゃ」

 

 

グラントリノは苦笑いを浮かべた。

 

 

「論理的に『なぜダメなのか』を説明された後、ボコボコにされるんじゃ。……そして殴り終わった後、また理詰めで説教が始まる。逃げ場なんてなかったわい」

 

「うわぁ……」

 

 

緑谷は引きつった笑みを浮かべた。

 

 

(論理的に説明して、ボコボコにして、また説教……なんか、誰かに似てるような……)

 

 

緑谷はチラリと難羽の方を見たが、彼はイヤホンをして音楽に没頭している。

 

 

「その人は……今は?」

 

 

緑谷の問いにグラントリノはふっと息を吐いた。

 

 

「ワシが若い頃の時点で、既にそれなりの年齢じゃった。……もう15年くらい前かのぉ。忽然と姿を消したわ」

 

「15年前……。じゃあ、寿命で亡くなられたんですか?」

 

「寿命? ハッ、まさか」

 

 

グラントリノは鼻で笑った。

 

 

「あの人はなぁ、老いた身体を機械と交換して、無理やり生に繋ぎ止めていたような御仁じゃ。……もう、寿命だの老衰だのという次元ではなかった」

 

「身体を……機械と!?」

 

 

緑谷が驚愕する。

サイボーグのようなヒーローが、そんな昔に存在していたのか。

 

 

「……名は、ガイツ」

 

 

グラントリノはその名を口にした。

重く、そして敬意を込めて。

 

 

「黄金の骸骨マスクを被った、高笑いを上げて現れる異端のヒーローじゃ。……ライセンスの更新も途絶えて久しい。世間じゃ死んだと思われておるがな」

 

「黄金の……骸骨……」

 

 

緑谷はそのヴィジュアルを想像し、ごくりと喉を鳴らした。

その響きにはどこか不気味さと、圧倒的な強者のオーラが漂っていた。

 

 

「……だが、ワシは思うんじゃ」

 

 

グラントリノの声が低くなる。

 

 

「あの執念深い人のことじゃ。……姿を変え、形を変え、まだこの世界のどこかで、じっと目を光らせているんじゃないかとな」

 

 

そう言ったグラントリノの視線は緑谷を見ていなかった。

彼の目は緑谷の肩越し、通路を挟んだ向こう側。

 

難羽輪太郎が座る席の背もたれに向けられていた。

 

 

 

その時だった。

 

 

 

突如新幹線の車輪が悲鳴を上げ、車体が激しく揺れた。 緊急停車。

慣性で乗客たちが前のめりになり、棚の荷物が落下する。

 

 

「うわっ!? 事故!?」

 

 

緑谷が体勢を立て直そうとした瞬間。

車両の側面、強化ガラスの窓が粉々に砕け散った。

 

 

「ぐあああああっ!!」

 

 

悲鳴と共に、一人の男が車内に飛び込んできた。

 

いや、飛び込んできたのではない。

 

「投げ込まれた」のだ。

全身に怪我を負い、コスチュームが裂けたプロヒーローが通路に転がり落ちてきた。

 

 

「ヒーロー!? だ、大丈夫ですか!?」

 

 

緑谷が駆け寄ろうとする。

だが破壊された窓の向こうから、絶望的な影が差し込んだ。

 

 

「……ウゥゥゥゥ……」

 

 

唸り声。

知性の欠片もない破壊衝動だけの瞳。

筋肉がむき出しになった異形の肉体。

 

脳が露出した、黒い怪物。

 

 

「あ……」

 

 

緑谷の動きが止まった。

 

忘れるはずがない。

あのUSJで、相澤先生を痛めつけていた怪物。

 

 

 

「脳無……!!」

 

 

 

保須市を通過中だった新幹線に、新たな混沌が襲いかかろうとしていた。

 

 

 

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