皆の活躍の詳細は是非映画をご覧ください。
私はポーズを決めたまま突っ込んでいくオールマイトが妙に好きです。
I・アイランドのセントラルタワー周辺は、さながら世界の終わりのような様相を呈していた。
個性増幅装置の力によって周囲の金属を無尽蔵に取り込み、巨大な金属の大樹と化したウォルフラム。
その圧倒的な質量の暴力は、タワーの構造そのものを破壊しながら暴れ狂っていた。
ウォルフラムの攻撃によってタワーの装甲が剥がれ落ち、巨大な金属塊が雨霰のように眼下の広場へと降り注ぐ。
直撃すれば、避難しきれていない一般客や、戦いをサポートしている者たちに甚大な被害が出る。
「させるかァッ!!」
「クソが、落ちてくんじゃねェ!!」
タワー屋上では、雄英高校1年A組の生徒たちが必死の迎撃を行っていた。
轟焦凍の巨大な氷壁が金属塊の軌道を逸らし、爆豪勝己の爆破が空中で破片を粉砕し、切島鋭児郎や他の生徒たちが身を呈して瓦礫を弾き飛ばす。
そして彼らの頭上、さらに高い次元の空域では、一筋の黄金の残像が縦横無尽に駆け巡っていた。
ガイツである。
彼は限界を超えた超高速移動をもって、生徒たちでは対処しきれない特大の金属塊を空中で正確に手刀や蹴りによって両断し、被害を最小限に抑え込んでいた。
「フン……ヒヨッコ共にしては、よくやっている」
ガイツは夜空を蹴りながら、地上で泥臭く奮闘するA組の生徒たちを見下ろし、黄金の髑髏の奥で目を細めた。
彼らはまだ未熟さの塊だが、その目に宿る光だけは、確かに本物のヒーローのそれだった。
彼が守りたいものがそこにあった。
そしてその光の源流たる二つの巨星が、今まさに巨大な金属の大樹を打ち砕こうとしていた。
オールマイトと緑谷出久。
二人の英雄が全く同じ構えから、全く同じタイミングで、限界を超えた一撃を放つ。
閃光。
そして、大気を消し飛ばすほどの凄まじい衝撃波。
二人の拳から放たれた絶対的な力が、ウォルフラムの操る金属の巨樹を根元から粉砕し、その野望ごと完全に打ち倒した。
ヘリポートでその光景を見つめていたデヴィッドの瞳から、大粒の涙が溢れ落ちた。
親友であるオールマイトの力が衰えゆく現実に絶望し、罪に手を染めてまでかつての輝きを取り戻そうとした彼だったが、その必要はもうどこにもなかったのだ。
オールマイトの隣には同じ光を宿し、同じように人々を救うために拳を振るう「次の世代の希望」が、確かな頼もしさを持って立ち上がっていたのだから。
「……ありがとう、オールマイト……君の光は、決して消えたりはしないんだな」
デヴィッドの歪んだ救済の計画は、次代の希望の光によって、ここに完全に浄化されたのだった。
戦いの熱狂が冷めやらぬ中、タワーの屋上に舞い降りたガイツは自らのヘルメットに内蔵された通信機を起動し、冷徹な声で指示を飛ばした。
「——ショッカー救助隊は全機撤退。これ以上の表立った活動は不要だ。装備を解除し、一般人に紛れて姿を消せ」
『ハッ! 了解いたしました!』
裏社会の部隊は決して表の賞賛を浴び続けてはならない。
被害の拡大を防ぐという目的を果たした以上、彼らは再び日常の影へと溶け込む必要があるのだ。
通信を切ったガイツは漆黒のマントを翻し、満身創痍でへたり込んでいるオールマイトと、それに駆け寄るデヴィッドの元へと歩み寄った。
「見事な一撃だったぞ、八木……そして、少年もな」
ガイツの声に、オールマイトがハッと顔を上げる。
「だ、
「昔の忘れ物を取りに来ただけだ」
ガイツは短く答えると、デヴィッドの前に立ち塞がった。
親友同士の涙と感動に満ちた再会。
そこに水を差すのは少しばかり無粋であると、彼の中に眠る昭和のオタク気質が囁いたが、時間がない。
すでに匿名で本国に連絡が送られている以上、警察が来るのも早いだろう。
「デヴィッド・シールド。お前が親友を想う気持ちは理解できるが、目的がどうあれ、結果はヴィランを引き入れ、この島を未曾有のテロの危機に陥れた……その重大な責任と法的な処罰からは決して逃れられない」
ガイツの容赦のない宣告に、デヴィッドは静かに、しかし憑き物が落ちたような安らかな顔で頷いた。
「分かっています……私は、自分の罪を償わなければならない」
「待ってください大師匠!」
オールマイトが立ち上がろうとするが、その身体からは限界を知らせる蒸気が上がり始めていた。
「デヴィッドは、私を想って……!」
「黙れ、八木。お前の活動限界はもうとっくに過ぎているはずだ」
ガイツは冷たく言い放った。
「ここには間もなく、下で戦っていたA組の生徒たちや、警察がなだれ込んでくる。お前はその姿を晒したくないのだろう? ……ここで感傷に浸って談笑している暇はない」
あまりにも率直すぎる指摘に、オールマイトは唇を噛んだ。
ガイツは抵抗しないデヴィッドの身体を、まるで軽い荷物でも扱うようにヒョイと肩に担ぎ上げた。
「彼は私が警察に引き渡す。お前は早く生徒たちの元へ戻れ」
担ぎ上げられたデヴィッドは遠ざかる親友の背中を見つめ、少しだけ悲しそうに微笑んだ。
オールマイトの表情は親友の罪と別離に対する無念で曇っていたが、彼は決して下を向くことはなかった。
彼は遠ざかるデヴィッドに向けて、力強くサムズアップを送った。
今は別々の道を歩むことになっても、いつか必ず、また笑い合える日が来る。
彼らは最高の親友なのだから。
デヴィッドを担いだまま夜風を切って跳躍し、タワーから離脱したガイツは、肩の上で大人しくしている天才科学者の首筋を労うように軽く撫でた。
「……安心しろ。そう遠くない未来、君と八木は再び出会うことになるだろう」
その呟きは誰に聞かせるためのものでもない、難羽としての言葉だった。
実は難羽には、ショッカーの幹部たちにすら伝えていない裏の目的があった。
彼は今回「ステイン事件で顔が割れたから、
だが、それは完全な建前である。
現在の難羽輪太郎の「大人の肉体」は、生身の状態で既に超人的なパワーと耐久力を誇っている。
そしてこのガイツのスーツで使用している特殊機能は、脳神経に直結する『加速装置』ただ一つのみ。
それも旧型である。
つまり、外見だけを黄金の髑髏に似せたダミーのスーツを本土で一から製造し、そこに加速装置を組み込むだけでガイツの復活演出などいくらでも可能だったのだ。
わざわざリスクを冒してまで、厳重なセキュリティに守られたスーツの故郷まで出向く必要性は本来であれば皆無だった。
ではなぜ難羽は、わざわざこのI・アイランドにやってきたのか。
その答えは、今彼の肩に担がれている男——デヴィッド・シールドその人であった。
(ウォルフラムの背後には、
先ほど戦いの合間にオールマイトから聞いた情報が、難羽の脳内で完璧なパズルを組み上げていた。
死柄木——AFOがウォルフラムというヴィランに個性を与え、この島を襲撃させた理由。
それはウォルフラム自身に語ったという、オールマイトの親友であるデヴィッドを巻き込み、絶望させるという陰湿な嫌がらせだけではない。
AFOの真の目的はデヴィッドの頭脳と個性増幅装置そのものを、自らの手元に回収することにあったのだ。
(AFOほどの男がなぜ直属のヴィラン連合や黒霧のワープを使わず、外部の傭兵を使ったのか……答えは簡単だ)
このI・アイランドは絶海の孤島であり、常に移動を続けている。
座標の特定が極めて困難な上、世界最高峰のセキュリティと電波妨害が敷かれている。
そのため、黒霧のワープ個性による「正確な侵入と撤退」のリスクが高すぎると判断したのだ。
だからこそ、AFOは正規のルートで侵入できるウォルフラムを利用した。
もし、AFOの介入なしの強行の末、デヴィッドが逮捕された場合、彼は間違いなく国外の刑務所へと移送・収監されることになる。
そうなれば流石のAFOであっても、海外の刑務所から彼を回収するのは極めて困難になる。
難羽にとってもそれは同じだった。
デヴィッド・シールドという、世界最高のサポートアイテム開発者。
難羽は別の理由から彼を欲していた。
彼の頭脳と技術は、難羽が目指す
AFOに奪われるわけにはいかない。
かといって、厳重な海外の刑務所に収監された後では回収に手間がかかる。
だからこそ難羽は、彼の研究を発見したのちに自らの足でこの島へ赴き、この絶好のタイミングでデヴィッドに接触し、彼にツバをつけておく必要があったのだ。
まさか自分の来島とウォルフラムのテロが、これほど完璧なタイミングでバッティングするとは、流石の難羽も予想していなかったが。
「……今は、おとなしく警察に引き渡してやろう。世間の冷却期間は必要だからな」
ガイツは夜の海風を浴びながら、肩の上の天才科学者に向かって低く囁いた。
「しかし、然るべき日が来れば……必ず、私がお前を回収する」
ショッカーという仲間たちにも話していない世界征服の全貌。
彼は過去に取り残された亡霊であり、未来を知った唯一の観測者でもある。
未だに彼は孤独だった。
「……時間がない」
ウォルフラムによる大規模なテロ事件の翌日。
I・アイランドは、文字通り蜂の巣をつついたような大騒ぎになっていた。
テレビのニュース番組も、ネットのトレンドも、SNSのタイムラインも、全てが昨夜の出来事で埋め尽くされている。
話題の中心は当然、巨悪を打ち倒した平和の象徴オールマイトの活躍であった。
しかし人々の関心は、それ以上に、夜の街路に突如として現れ、圧倒的な力で人々を救った『謎の黄金のヒーロー』へと集中していた。
『特報! 監視カメラに映った黄金の髑髏! その正体は、15年前に行方不明となった伝説のヒーロー・ガイツか!?』
『I・アイランドの研究者たち、歓喜の涙! 「我らが師、ここに帰還する」』
ニュースの画面越しに、デヴィッドの同僚をはじめとする、この島の重鎮たる科学者たちがマイクを向けられて興奮気味に語っていた。
「彼こそが、現在のサポートアイテムの基礎理論を作った偉人です! あの方の残した設計図がなければ、今のヒーロー社会の発展は十年遅れていたでしょう!」
「私の論文の査読をしてくださった恩人なんです! あの黄金の装甲技術、無駄を削ぎ落とした完璧なフォルム……間違いない、あれこそが我々の原点だ!」
島中の研究者や、最先端の技術を追い求めるヒーローオタクたちが、色めき立ってガイツの姿を探して島内を駆け回った。
彼らにとって、ガイツは単なる強いヒーローではない。
かつてこの島の技術基盤を築き上げた天才的な開発者の一人であり、多くの技術者にとっての恩師であり、そして「個性がなくとも技術でヒーローを造り出せる」と証明してくれた、技術者界の英雄だったのだ。
しかし。
彼らがどれほど血眼になって探そうとも、あの夜明け以降黄金の髑髏の姿を見た者は誰もいなかった。
彼は名乗ることも、賞賛を浴びることもなく、まるで夜明けの靄のように幻と消えていた。
やがて人々は熱狂の中で、一つのロマンチックな噂を囁き始めた。
『あれは、かつてこの島の設立に関わった英雄の霊魂が、オールマイトと島の危機を救うために、一時的に現世に蘇ったのではないか』と。
「黄金の死神」
「I・アイランドの守護神」
新たな都市伝説が生まれ、世界中を熱狂の渦に巻き込んだまま、島を揺るがした事件はひとまずの幕を閉じた——はずだった。
それから数日後。
日本の雄英高校、ヒーロー科1年A組の教室。
I・エキスポでの未曾有の激闘を終え、ようやく日本での日常に戻ってきた生徒たちは、朝のホームルームが始まる前の時間を和やかな喧騒の中で過ごしていた。
「いやー、しかし凄かったよなあの夜! 俺たち、マジで映画の主人公みたいだったぜ!」
「ほんと、マジでビビったわ。あの金色のドクロのヒーロー、見た目はヴィラン以上にめっちゃ怖かったけど、すんげぇ速かったし」
「でも、オールマイトがあの髑髏の人にすごいペコペコ頭下げてたよね……一体何者なんだろう?」
上鳴や切島、芦戸たちが、自分たちの武勇伝と、突如現れた伝説のヒーローについての興奮を熱っぽく語り合っている。
緑谷もまた、あの月を背にして浮かんでいた黄金の姿を思い出し、複雑な感慨に耽っていた。
その時教室のドアが開き、担任の相澤消太が気怠げな足取りで入ってきた。
いつものように寝袋を抱えたままの様子だが、生徒たちはすぐに気づいた。
今日の相澤の目の下に刻まれたクマが、いつもより一段と……いや、三段は濃く、黒ずんでいることに。
そして何より、彼がどこか深い諦めのような、あるいはこれから過酷な運命に直面する生徒たちへの同情のような、ひどく重たい空気を纏っていたからだ。
「……席につけ。ホームルームを始める」
相澤の低く掠れた声に、生徒たちは慌てて自分の席へと戻り、静まり返った。
教卓に両手をついた相澤はまるで胃の痛みを堪えるように一度深いため息をつき、重い口を開いた。
「……先日のUSJ、そしてI・アイランドでの事件を受け、雄英高校としても、お前たち生徒の危機管理能力、および実戦における生存能力の向上を急務と判断した……校長と協議した結果、本日から期間限定で、ある『特別臨時講師』を招くことになった」
「特別講師?」
「また新しいプロヒーローが来るのか?」
生徒たちの間に期待と不安の入り混じったざわめきが広がる。
相澤は頭を抱えるようにして天井を仰いだ。
「……俺は、反対したんだ。まだ1年のお前たちには刺激が強すぎるとな……だが、あの人の過去の実績と、なぜか教育委員会や政府上層部からの『強烈な後押し』には、雄英としても勝てなかった」
(政府上層部からの後押し……?)
緑谷は首を傾げた。
それはショッカーの法務担当として暗躍するホークスが、裏から役所や公安に手を回して用意した完璧な根回しの結果なのだが、知る由もない。
相澤は死んだ魚のような目で、教室のドアへと視線を向けた。
その瞬間だった。
教室のドアが、文字通り爆発したかのような勢いで蹴り開けられた。
蝶番が悲鳴を上げ、ドアが壁に激突する轟音が教室を震わせる。
そして廊下から響き渡る、あまりにも聞き覚えのある、傲慢で尊大で、昭和の悪役のような高笑い。
「フハハハハハハハハッ!!!」
教室の空気が、一瞬にして絶対零度に凍りついた。
緑谷の手から持っていたペンがカランと滑り落ちる。
爆豪が信じられないものを見るように目をひん剥く。
飯田が驚愕のあまり眼鏡をずり落とす。
入り口に立っていたのは、彼らがつい数日前にI・アイランドの夜空で見上げたばかりの姿。
光を吸い込む漆黒のスーツの上から、黄金の骨格装甲を重厚に纏った男。
眼窩の奥から赤い光を爛々と漏らす、威圧的な黄金の髑髏。
「……ガイツ……!?」
誰かが震える声でその名を呼んだ。
「USJ……I・アイランド……まったく、お前たちは常に致命的な事件と隣り合わせ。呪われていると見える」
ガイツは、漆黒のマントをバサッと派手に
硬質な髑髏のマスクの形は変わっていないはずなのに、なぜかその顔が獲物を見つけた肉食獣のようにニヤリと凶悪に笑ったように見えた。
「これから先も、お前たちの前に幾多の理不尽な苦難が立ち塞がるだろう……しかし! 安心しろ。お前たちが理不尽に死なないよう……この黄金の老骨に鞭を打って、私が直々に貴様らを死ぬまで鍛えてやる!」
ガイツはチョークを一本手に取ると、黒板に向かってチョークが粉々に砕け散らんばかりの凄まじい筆圧で、二つの文字を書き殴った。
『 地 獄 』
「我が名はガイツ。今日から貴様らの甘え腐った肉体と精神を、粉々に打ち砕いてくれよう……案ずるな、創造と破壊は常に表裏一体だ」
黄金の指が、緑谷たちA組の生徒全員をビシィッと指差した。
「覚悟はいいな? スクラップ&ビルドだ。一年で並のプロヒーローを超えるレベルまで鍛えてやるからな」
1年A組の悲痛な絶叫が、雄英高校の校舎全体に響き渡った。
平和の象徴であるオールマイトですら頭が上がらない大先輩。
伝説の英雄にして、黄金の死神。
(オールマイトが恐れた師匠、グラントリノが……さらに恐れていた師匠……!!)
緑谷は教壇に立つ黄金の髑髏を見つめ、真っ青な顔でガタガタと震えていた。
奇しくも、彼の師匠オールマイトの反応と似ていた。
ご愛読ありがとうございます。
もしよろしければ高評価、感想をよろしくお願いいたします。
感想は展開予想の形になってしまっても、自分は大丈夫です。
現在句点ごとに改行していますが、通常の文章の書き方に直したほうがいいですか?
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段落を使った普通の文章のほうが良い
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今の文章の方が良い