爆豪の心は、とめどなく溢れ出す黒い焦燥と怒りの炎で焼き尽くされそうになっていた。
林間合宿を襲撃されたあの夜。
自分はA組の連中——障子や轟たちによって、ヴィランの奇術師から助け出された。
自分の不甲斐なさ、弱さに対する怒りが無限に湧いてくる。
だが今の爆豪の神経を最も苛立たせ、追い込んでいるのはそこではない。
(……なんで、常闇が攫われてんだ)
ヴィランの当初の標的が、本当に常闇だったのかは分からない。
しかし、もし自分が標的ではなく、常闇を攫うためのただの囮として扱われていたのだとすれば。
あるいは自分も狙われていたが、結果として自分は逃げられ、常闇が本命として持ち去られたのだとすれば。
それはヴィラン側から、爆豪勝己という存在は囮として都合が良いと値踏みされたことに他ならない。
自分が敵に捕まって周囲に迷惑をかけることすら腹立たしいのに、そもそも自分がヴィランの作戦に利用され、出し抜かれたのだ。
その事実が、爆豪の強烈な自尊心をズタズタに引き裂いていた。
「……クソがッ!!」
怒りのままに爆豪は病院の無機質な廊下を歩き、とある病室の扉を勢いよく蹴り開けた。
そこは緑谷の病室だった。
ベッドの上に身を起こしている緑谷の姿はまさに惨憺たる有様であった。
両腕は分厚いギプスと包帯でミイラのようにグルグル巻きに固定され、顔にも痛々しいガーゼが貼られている。
林間合宿の夜。
緑谷は洸汰という一人の少年を守るため、マスキュラーという純粋な殺戮の化け物を倒すため、自身の両腕が破壊されることを省みずにワン・フォー・オール を全開で発動し、限界を超えて殴り続けたのだ。
結果として、彼の両腕の骨は粉々に砕け、筋肉の繊維は千切れ、靭帯はズタボロに断裂していた。
雄英に帰還した後、リカバリーガールの癒しによる強めの治療を受け、外見上の傷は塞がった。
しかし緑谷の肉体内部のダメージは、もはや彼女の個性でもどうにもならない領域に達していた。
『……君、これと同じような怪我をあと二度、三度繰り返せば……二度と腕が使えなくなるよ』
担当医から宣告された、あまりにも残酷なドクターストップ。
緑谷は自身の無茶が招いた代償の重さと、クラスメイトである常闇を救えなかったという強烈な無力感に苛まれ、感情がぐちゃぐちゃになったまま、ベッドの上でただぼーっと虚空を見つめていた。
そんな彼の視界に、いつも以上に目を吊り上げ、殺気を放つ幼馴染——爆豪が飛び込んできた。
そしてその爆豪の背中を追うようにして、轟と切島が静かに病室へと入ってきた。
「……爆豪、緑谷はまだ絶対安静だ。怒鳴り込むのはやめろ」
轟が爆豪の背中越しに冷静な声をかける。
「うるせェ! 誰が怒鳴るっつった!!」
爆豪は舌打ちをし、窓際へ寄りかかって腕を組んだ。
緑谷が戸惑う中、切島がベッドの横に立ち、重苦しい口を開いた。
「……緑谷。俺たち……常闇を、助けに行こうと思う」
その言葉に緑谷の目が大きく見開かれる。
切島の拳は血が滲むほどに強く握りしめられていた。
「俺……爆豪が無事に助け出されたって聞いた時、正直、一瞬だけ安堵しちまったんだ。よかった、最悪の事態は免れたって」
切島は自身の弱さを吐き出すように顔を歪めた。
「でも……その直後に、常闇が攫われたって聞いて……俺は、自分の甘さに吐き気がしたよ」
切島はどこかこのヴィランの襲撃を、学校の戦闘訓練の延長線上、護衛ミッションのように捉えてしまっていたのだ。
狙われているターゲットさえ守り切れば、どうにかなると思っていた。
結果として、彼は襲撃の際ガスの中で何もできず、想定とは違う常闇の誘拐という事実に頭をハンマーで殴られるような衝撃を受けた。
「ダチが攫われてんのに……俺は何もできなかった! だから……今ここで動けなきゃ、俺は男でも、ヒーローでもねェんだよ!!」
切島の切実な叫びが、病室に響く。
それに続くように、轟が静かに、しかし確かな熱を帯びた声で語った。
「俺も同意見だ……ヴィラン共は、爆豪のことを明確に捕縛対象と呼んでいた。だが常闇に関しては、偶然攫ったのか、最初から狙っていたのかすら分からない」
轟のオッドアイが鋭く細められる。
「……標的として扱われていた爆豪と違い、イレギュラーとして連れ去られた常闇が、向こうでどのような扱いを受けるか……最悪のケースも考えられる」
轟を動かしているのはその冷静な推測と、眼前でクラスメイトを連れ去られたことに対する、心の底から滲み出る悔しさだった。
そんな二人の真摯な動機を聞きながら、窓際の爆豪は鼻で笑った。
「……ウダウダと理由並べてんじゃねェよ。俺は単純だ……俺の身代わりみたいに連れ去られて、この俺のプライドに泥を塗りやがったヴィラン共を直接ぶっ殺しに行く!! ……それだけだ」
爆豪の行動原理は、ただひたすらに傷つけられた己の自尊心の回復と敵への反撃にあった。
「でも……どうやって常闇くんを探すの?」
緑谷が現実的な問題を口にする。
相手は警察ですら足取りを掴めないヴィラン連合だ。
すると、切島がハッとしたように身を乗り出した。
「どうやら、林間合宿の襲撃の時、八百万がヴィランの一人に発信機を取り付けていたらしいんだ。昨日、オールマイトにその話をしてるのを、俺たち偶然聞いちまってよ」
「八百万さんが……発信機を!」
緑谷が気付く。
それならば、敵のアジトを特定できるかもしれない。
「ああ。八百万に、その発信機の電波を拾う受信機を作ってもらうよう、昨日頼んでおいた……今日の夜、決行するぞ」
切島がそう締めくくった直後だった。
「緑谷くーん! お見舞い来たよー!」
廊下から、上鳴や麗日といった1年A組の面々の声が聞こえてきた。
「……ッ」
切島たちは瞬時に会話を打ち切り、何事もなかったかのように笑顔を作ってクラスメイトたちを病室へと招き入れた。
皆が緑谷の無事を喜び、差し入れを渡して賑やかに振る舞う中。
ただ一人、クラス委員長の飯田だけが、彼らの顔をひどく険しい、刺すような視線で睨みつけていた。
そして、夜。
病院の入り口近くにある人気のない中庭。
切島、轟、そして爆豪の三人は、緑谷と八百万が来るのを無言で待っていた。
昨日、切島から受信機の作成を頼まれた際、八百万は「考える時間が欲しい」と言って即答を避けていた。
彼女が今夜来るかどうかは分からない。
だが、約束の時間。
暗闇の中から、迷いを振り切ったような顔をした八百万百が姿を現した。
「……八百万!」
切島が顔を輝かせる。
だがその後ろから現れたもう一つの影に、三人の顔が強張った。
こちらに歩いてくる緑谷の、さらに背後。
眼鏡の奥の瞳に激しい怒りと悲しみを宿した、飯田が立っていた。
「……飯田」
轟が身構える。
飯田は昼間の病室の外で、彼らの会話を立ち聞きしていた。
そして緑谷と轟の顔を見て、飯田の怒りは頂点に達していた。
飯田にとって、緑谷と轟は特別な存在だった。
保須市でのステイン事件の際、復讐に我を忘れてルールを破った自分を助け、一緒に無免ヒーロー活動という泥を被ってくれた恩人たちだ。
だからこそ。
そんな二人がルールを破ってまでプロヒーローの領域に踏み込み、常闇を救いに行こうと暴走していることが飯田には許せなかった。
「……君たちは! 自分がどれほど愚かなことをしようとしているのか、分かっているのか!!」
飯田が声を震わせて叫ぶ。
「飯田くん、僕は……ルールを破っていいなんて思ってるわけじゃ——」
緑谷が弁明しようと口を開いた、その瞬間。
飯田の容赦のない右拳が、緑谷の頬に深々と突き刺さった。
「緑谷!!」
「てめェ……!」
轟と爆豪が動こうとするが、飯田の眼から溢れる大粒の涙を見て、立ち止まった。
「……悔しいし、心配なのは! 僕だって同じだ!!」
飯田は殴った自分の拳を震わせながら、血を吐くように叫んだ。
飯田の脳裏には、ステインに再起不能の重傷を負わされ、今も病院で奇跡的な復活を信じて過酷なリハビリに励んでいる自身の兄・インゲニウムの姿があった。
兄が倒れたと聞き、病室で包帯だらけの兄を最初に見た時の、あの胸が張り裂けそうな痛ましい光景。
それが今日、両腕を破壊され、ギプスが巻かれた緑谷の姿と完全に重なって見えたのだ。
「君たちの暴走で……もし、取り返しのつかない事態になったらどうするんだ!! 常闇くんを助けるために、君が二度と腕を使えなくなったら!? 命を落としたら!? ……残された僕の、僕たちの心配なんて……どうでもいいと言うのか!!」
友を喪うかもしれない恐怖。
規律を守らなければ、ヒーローとしてのあり方が崩壊してしまうという強い責任感。
飯田の叫びはあまりにも正論だった。
だが、轟は冷たい声でそれを否定した。
「……ルールを破って、正面から戦闘をするつもりはない。あくまで、敵に見つからずに常闇を救出する隠密行動だ」
「そうだ。プロの邪魔はしねェ。……ただ、黙って待ってるなんてできねェんだよ」
切島が轟の言葉に続く。
八百万もまた、自身の手に握られた受信機を見つめながら口を開いた。
「……私も、彼らの行動を手放しで賛成しているわけではありません。ですが、彼らがどうしても行くと言うのなら……私がストッパーとして同行し、万が一戦闘になりそうな時は責任を持って彼らを止める。そう決意してここに来ました」
全員がそれぞれの覚悟を持っている。
殴られた頬を押さえながら、緑谷は涙を浮かべて飯田を真っ直ぐに見つめ返した。
「飯田くん……僕も、自分でもよく分からないんだ。無茶だって分かってるし、プロに任せるべきだって頭では理解してる……それでも、どうしても……いてもたってもいられなくなって、『助けたい』って、身体が動いちゃうんだ」
理屈ではない。
それは緑谷出久という人間の根源にある「ヒーローとしての業」だった。
平行線だ。
彼らの意思は、どれだけ言葉を尽くしても、決して曲がらない。
それを悟った飯田はギュッと唇を噛み締め、一つの決心をした。
「……分かった。ならば、僕も行く」
「え……?」
驚く緑谷たちに対し、飯田は眼鏡を押し上げ、厳格な表情で告げた。
「八百万くん一人に、君たちの暴走を止めるストッパーを任せるわけにはいかないからな……万が一、君たちが戦闘になりそうな行動をとった場合、僕が実力行使をしてでも、君たちを連れ帰る! その条件でなら認める!!」
規律の体現者である飯田が、自ら泥を被る覚悟を決めた。
これで役者は揃った。
少年たちは大人たちの庇護を抜け出し、自らの手で友を救い出すための、暗く危険な夜の街へと足を踏み出そうとしていた。
「考えるより先に体が動いていた……か」
闇に沈む病院の中庭。
覚悟を決め、いざ歩み出そうとしていた緑谷たち六人の足元に、突如として氷のように冷たく、ひどく重圧な声が降ってきた。
「オールマイトもよく口にする話だが……私はその言葉が反吐が出るほど嫌いだ」
「……え」
緑谷が息を呑んで頭上を見上げる。
月明かりを遮るように病院の屋上の縁に立っていたのは、黄金の骸骨のマスクを被った男、ガイツであった。
しかし、初めて雄英の教壇に立った時のようなどこかふざけた高笑いはなく、特撮ヒーローのような派手なポーズもない。
ただ静かに見下ろすその骸骨の眼窩の奥で、赤い瞳だけが夜の闇の中で不気味なほど鮮烈に輝いていた。
「その言葉の前につくのは、『トップヒーローは学生時から逸話を残している』だ……学生が派手に戦う状況となっていることを美談にすべきではない」
「ガイツ、先生……」
緑谷の目が驚愕に見開かれる。
なぜ彼がここにいるのか。
自分たちの企みが、秘密裏に動いていたはずの計画が、既にこの男に完全にバレていたのか。
「……邪魔する気か!!」
爆豪が掌に爆破の火花を散らし、逃走の構えを取ろうとする。
だが。
彼らが戦闘態勢に入るよりも、圧倒的に早く。
『加速装置』
ガイツの奥歯が、カチリと鳴った。
「……ッ!?」
緑谷の視界から、ガイツの姿が完全に消失した。
音も、風切り音すらもない。
ただ、次の瞬間。
緑谷、爆豪、轟、切島、飯田、八百万。
六人の首筋に、寸分違わぬタイミングで重い衝撃が同時に走った。
「あ……」
痛みを感じる暇すらなかった。
圧倒的な速度による、完璧な頸動脈への打撃。
緑谷たちの意識は脳に状況を伝達するよりも前に完全に刈り取られ、糸が切れた操り人形のようにどさりとその場に崩れ落ちた。
わずか一秒にも満たない、神速の制圧。
ガイツは気絶した六人の生徒たちの身体を軽々と抱え上げると、病院の明るい入り口の自動ドアの前へと運び、並べて壁際に座らせた。
「……今夜は、ダメだ」
眠りに落ちた緑谷たちを見下ろし、ガイツは冷徹で、それでいてどこか彼らの未来を案じるような力強い声で呟いた。
戦わなくていい時は、戦わなくていい。
これは彼が何百年も前から背負い続けている、彼自身の
泥拭いなのだから。
ガイツは夜空を見上げると、足元のコンクリートを砕くほどの凄まじい脚力で跳躍し、闇の中へとその姿を消した。
ガイツが跳躍の果てに辿り着いたのは、神野区を見下ろすとある高層ビルの屋上であった。
吹き荒れる夜風の中、そこには既に四つの人影が待機していた。
ホークス、レディ・ナガン、トゥワイス、そして燈矢。
秘密結社ショッカーの幹部全員である。
これまでも彼らはショッカーの活動として、各地で個別の戦闘や任務を行ってきた。
しかし、この四人全員が、同じ任務、同じ戦場に集結するのは組織が結成されて以来、今回が初めてのことであった。
ガイツは屋上に着地すると、即座に彼らへ指示を出した。
「筒美。お前はここから戦場を俯瞰し、狙撃による援護を行え」
「了解……派手にぶち抜いてやるよ」
ナガンが自身の右腕をライフルへと変形させながら不敵に笑う。
「ホークス、トゥワイス。お前たちは連携し、周囲の人間の避難と救助に専念しろ。ショッカー救助隊の指揮権限を、一時的にお前たちに譲渡する……一般人の犠牲は一人たりとも出すな」
「了解です。俺の羽根と分身で、神野の街ごと守り切ってみせますよ」
「任せろボス! 救助なんて退屈だぜ!」
ホークスが真剣な表情で頷き、トゥワイスが二面性のある声で応える。
「……そして燈矢。お前は、私と一緒に来い」
「……ああ。待ちくたびれたぜ」
燈矢が青い炎を瞳の奥に宿しながら、深く頷いた。
ガイツの指示の声のトーンは、いつものように淡々としており、極めて冷静に聞こえた。
しかし。
直属の幹部である彼ら四人には痛いほど理解できていた。
目の前に立つこの男の、強靭な肉体の奥底……その腹の中では、今まさに地獄のような業火が燃え盛っていることを。
今夜は決戦の夜である。
かつて自身からすべてを奪い、ヒーロー社会の裏で糸を引き続ける巨悪——オール・フォー・ワンとの最終決戦。
(……ラグドールに付けた発信機は、未だアジトから動いていない)
ガイツは網膜に映し出されたレーダー情報を睨みつけていた。
誘拐されたプロヒーロー・ラグドール。
その彼女の体内に注入したナノマシンから発信される信号だ。
しかし、ラグドールの個性を求めたAFOが、彼女から発信される信号に気付かないはずが無い。
つまり、この信号は罠である。
AFOは迎撃のために今夜出るつもりだ。
「……彼女も眠らせておくには限界がある」
ガイツはギリッと奥歯を噛み締めた。
自身の専属秘書であるアット。
彼女を林間合宿に送ったのは、ラグドールのような要注意人物と接触した際、気付かれないようにナノマシンを注入するためである。
林間合宿の襲撃の際に、アットがラグドールを追えたのはこのナノマシンを接触した際に注入していたからこそである。
しかし、不可解なことが起きた。
アットが森の中で脳無と接触した直後から、アットに保存されるはずのデータが完全に消失したのだ。
全てのセンサーが停止したとしか言えない状態にも関わらず、アットは眠っていたようだったと言っていた。
あのアンドロイドのボディに睡眠はあってもノーデータとなるタイミングはない。
それは、アットの中に眠る少女が戦闘の刺激によって本格的に目覚め、システムに干渉し始めていることに他ならない。
(……まどかの奴。八百万百が取り付けた発信機と周波数を同じにしやがって)
ガイツは思わずため息をついた。
八百万が創造した発信機の電波と自分の発信機電波を同調させることで、自分がやらかした問題を隠そうとし、ついでに緑谷たちが救出に迎えるようにした。
彼女はやはりノリで今も生きている。
あの時代を生きる上では頼もしかったが、こっちが暗躍する側だと余計なお世話にしかならない。
「……とことん、彼女は
そんな彼女を中途半端なシステム制御から解放し、一人の人間として完全に目覚めさせるためにも。
今夜、絶対に殺さなくてはならないのだ。
すべての悲劇の元凶であり、彼女の命を奪い、転弧を攫った、オール・フォー・ワン、死柄木全を。
ガイツが、ゆっくりとビルの屋上の縁に向かって歩みを進める。
かつて彼は敗北した。
大切な者を守れず、すべてを失った。
だからこそ彼は、自身を無敵の存在として偽装するため、圧倒的な科学力と絶望的なまでの力で、自身の身体を黄金の装甲でコーティングした。
しかし、力を得た彼自身も敗北。
所詮偽物、ガイツの
ガイツが夜風を浴びた瞬間。
彼の全身を覆っていた眩い黄金の装甲が、まるで古い塗料が剥がれ落ちるようにひび割れ、風に流され消えていく。
黄金のメッキが剥がれ落ちた後に残ったのは。
戦いの傷跡がむき出しになった、無機質で恐ろしい白い骸骨、単なる
その時、眼下に広がる神野の街の暗闇から無数の羽音が巻き起こった。
羽音の正体は、金属の飛蝗の群れだ。
無数の金属の飛蝗が竜巻のように空へ舞い上がり、ビルの屋上に立つ骸男の身体へと、貪り食うように纏わりついていく。
飛蝗たちは自らの身体を装甲のパーツへと変形させ、骸骨のボディに次々と融合していく。
彼を『最新の死神』へと再構築していく。
全身を覆うのは、漆黒の強化装甲服。
その上から、過酷な戦闘に耐えうる分厚く黒いレザーのライダースジャケットを着込む。
首元にはかつてのヒーローへの皮肉と憧憬を込めた、偽者を表す黄色のマフラー。
夜風を孕んでバサバサと靡く。
そして腰には、莫大なエネルギーを生成する三連の風車が取り付けられた、凶悪な変身ベルト——アポリオンが鎮座している。
最後に彼の頭部。
銀色の髑髏は鋼の飛蝗達と融合することで、漆黒の飛蝗へとその形を変貌させた。
そのこめかみには、最早オールフォーワンが忘れ去った残骸を意味する、404の刻印が刻まれている。
「……行くぞ」
彼の100年を超える怨念と覚悟の現れか。
漆黒のマスクの白い複眼が、闇の中で凄まじい光を放って輝いた。
仮面アクター・ショッカー。
それは人を救うヒーローではない。
ただ一人、玉座に座る魔王を地獄へ引きずり下ろすためだけに作られた、純粋なる殺戮兵器。
すべてはオール・フォー・ワンを抹殺するために。
黒き死神は燈矢と共に、眼下に広がる決戦の地・神野区へと漆黒の流星となって飛び降りていった。
緑谷たちの活躍シーンを書くタイミングがないと思いましたが、彼らは学生なので活躍する時は緊急事態ですね。
現在句点ごとに改行していますが、通常の文章の書き方に直したほうがいいですか?
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段落を使った普通の文章のほうが良い
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今の文章の方が良い