ネオンサインが毒々しく瞬く、神野区の夜の街。
行き交う人々がふと足を止めて見上げる巨大な街頭ビジョンには、最近流行りのエナジードリンクの宣伝でも、新作映画のCMでもなく、重苦しく沈痛な謝罪会見の一部始終が生中継で映し出されていた。
『この度は、我々の不徳の致すところにより、未来ある生徒たちを危険に晒し、多大なる被害を出してしまったこと……深く、お詫び申し上げます』
無数のカメラのフラッシュが瞬く中、深く頭を下げる三人の男たち。
雄英高校のトップである根津校長を中央に、1年B組担任のブラドキング、そして1年A組担任の相澤消太だ。
普段は無精髭にボサボサの髪、寝袋を引きずり歩くあの合理の権化である相澤でさえも、今日は髪をきっちりと撫でつけ、パリッとした黒のスーツに身を包んでいた。
その痛々しいまでに整えられた姿が、事態の深刻さと、彼らが背負わされた責任の重さを如実に物語っている。
雄英高校は単なる教育機関ではない。
オリンピックの代わりとまで称され、国中が熱狂する規模の雄英体育祭を主催することからも分かる通り、この国におけるヒーロー育成の最高機関であり、安全と秩序の象徴そのものだ。
そんな絶対安全であるはずの学び舎の生徒たちが、林間合宿という極秘の行事においてテロリストに奇襲され、大量の重軽傷者を出し、あまつさえ一人の生徒を誘拐された。
それは超常黎明期と呼ばれる混沌の時代以前であればいざ知らず、平和と秩序が確立された現代の超人社会においては到底考えられないほどの異常事態であり、国家の威信を揺るがす大失態であった。
『……先日の体育祭を開催する以前、あなた方は「生徒の安全は我々が必ず保障する」と力強く明言されていましたよね? それがこの体たらくです。雄英の基本姿勢そのものに、重大な欠陥があったのではないですか!』
画面越しにメディアの記者から容赦のない矢継ぎ早の質問が飛ぶ。
否、それはもう質問というよりも、失言や綻びを引き出そうとする攻撃に近かった。
結果が全てであるこの社会において。
街頭ビジョンを見上げる夜の街の人々は不安と苛立ちを隠せない。
「なんだよ、雄英って全然安全じゃないじゃんか」
「俺たちの税金で作られた最高の設備があって、プロが何人もいて、なんで子供一人守れねえんだよ」
口々に漏れる不満と非難の声。
夜の楽しげだった街の空気が重く、どす黒く澱み始めていた。
『今後の対策として、より一層の警備強化を図ると共に……現在、警察と連携し、全力を挙げてヴィラン連合の所在を突き止めるべく捜査を続けております……どうか、今しばらくのご猶予を……』
根津校長が苦渋に満ちた表情でそう締めくくる。
実際のところ、彼らは既にヴィラン連合の居場所を正確に突き止めていた。
根津たちは世間に対して「未だ敵の居場所が分からない」「手をこまねいて後手後手になっている」という無能な姿をあえてアピールすることで、ヴィラン側に油断を誘い、今夜決行されるアジト急襲作戦を絶対に察知されないように、自ら進んで泥を被っているのだ。
メディアの批判も、世間の冷たい目も、すべては攫われた生徒を無傷で救い出し、ヴィランを一網打尽にするためのブラフである。
戦略と言えば聞こえはいい。
だが裏を返せば。
この超人社会では、教育機関のトップが公の場で堂々と嘘の謝罪会見を開かなければならない。
ヴィランという存在に振り回され、対応を歪められているということだ。
何かが根本的にズレてしまった、この狂った社会の夜。
そんな白々しい虚飾の映像を背に受けながら、仮面アクター・ショッカーはヒーローたちがこれから向かう決戦の地へと、誰よりも早く先回りすべく、夜風を切って神野の街を疾走していた。
一方で、そんなヒーロー側の周到な罠と急襲作戦が今まさに迫っていることなど微塵も予期していない場所があった。
神野区の裏路地にひっそりと佇む、古びた雑居ビルの一室。
ヴィラン連合のアジトである。
「……また雄英の非難か。テレビも他にやることないのかねェ」
薄暗いバーカウンターのある部屋。
その中央に置かれたパイプ椅子には、全身を拘束具で何重にも縛り付けられた漆黒の鳥の頭を持つ少年——常闇踏陰が座らされていた。
彼の正面にあるブラウン管のテレビには、先ほど街頭ビジョンで流れていたのと同じ、根津校長たちの謝罪会見のニュースが映し出されている。
常闇の周囲には林間合宿を襲撃した開闢行動隊のメンバー……トガヒミコ、マグネ、Mr.コンプレス、そしてマスタードの四人が、それぞれ手持ち無沙汰にたむろしていた。
彼らの林間合宿における真の標的は、常闇踏陰と、プッシーキャッツのラグドールの二人であった。
爆豪勝己はあくまで、混乱させるための囮に過ぎなかった。
そして、戦闘狂で信用ならないマスキュラーやムーンフィッシュといった連中には、あえて偽の目標である「爆豪」だけを伝えて暴れさせていた。
結果として、彼らは見事に本命の目的を達成し、無事にアジトへと帰還を果たした。
しかし不思議なことに、彼らの表情は大仕事を見事成功させたというような達成感には満ちておらず、どこか暗く、重苦しい空気が漂っていた。
「……ねェ、コンプレス。死柄木さんはどうしたの?」
ガスマスクを首にかけたマスタードが、忌々しげに舌打ちをして尋ねる。
鉄哲に殴られた頬は腫れ、喋るたびに痛みが走る。
「ああ、彼なら……ようやく落ち着いたみたいだよ。今はドクターのところから、こちらへ向かっているそうだ」
シルクハットの奇術師、Mr.コンプレスが肩をすくめて答えた。
彼らが合宿所から黒霧のワープゲートを使ってアジトへ帰還した際。
そこには、自分たちよりも先に黒霧によって回収されていたリーダー・死柄木弔の姿があった。
だが、その時の死柄木の様子は、彼らを激しく動揺させた。
はぐれ者の集まりである自分たちと違って安定感のあるヴィラン連合のリーダーである死柄木。
その彼が、あの夜はまるで親に酷く怒られるのを嫌がって怯える幼い子供のように、ボロボロと涙を流しながら、一人で部屋の隅で震えていたのだ。
連合の仲間たちは社会の底辺から拾い上げられ、寄り添い合ってきた。
彼らは死柄木に対して、ただの雇い主以上の感情——リーダーに相応しい器だと感じており、時にはトガやトゥワイスが自らの生い立ちや悩みを打ち明けたこともあった。
死柄木には不器用ながらもそれを受け入れるだけの度量と、仲間に対する不思議な優しさがあった。
しかし、よく考えてみれば。
彼らは死柄木自身の悩みや苦しみ、そして彼がヴィランとなった根本的な過去について、一度も話してもらったことがなかった。
リーダーのあの尋常ではない怯えようを見て、マグネたちは自分たちが彼の本当の闇を何一つ理解していないことを、改めて痛感させられたのだ。
重い沈黙を破り、アジトの奥の扉が開いた。
「……ん? どうしたお前ら、そんなシケた顔して」
入ってきたのは、頭をタオルでガシガシと拭いている死柄木だった。
錯乱して汗まみれになった身体を、シャワーで洗い流して落ち着かせてきたらしい。
何事もなかったかのように平然と振る舞う彼だが、先ほどまでの異常な姿を見ていたコンプレスたちはなんとも言えない微妙な顔を見合わせるしかなかった。
死柄木は濡れた髪のままパイプ椅子を引きずってくると、拘束されている常闇の真正面に腰を下ろした。
「…………」
常闇は無言で死柄木を睨みつけながら、自身の背後から
いくら椅子に縛り付けられているとはいえ、常闇には黒影という独立した強力な攻撃手段がある。
しかし、このヴィランに囲まれた閉所で暴走の危険を孕む黒影を全開にして切り抜けられるかと言えば、それは極めて難しい賭けだった。
常闇は不用意に動くことはせず、相手の出方を窺いながら生き残るための隙を待つしかなかった。
「……答えろ。なぜ、俺を攫った」
常闇は低く、冷静な声で目の前のヴィランのリーダーに問いかけた。
「あァ?」
死柄木は首をポリポリと掻きながら、心底面倒くさそうに吐き捨てた。
「……知らねェよ。お前を攫えって命令したのは、先生なんだから」
(先生……?)
常闇の思考が回転する。
こいつらの指示役、すなわち連合の真のボスということか。
だが、なぜ自分なのだ?
体育祭の時に一位だった爆豪。
嫌な言い方をすれば、彼は強烈な爆破の個性、そしてまるでヴィランのように凶暴で支配的な様相を見せていた。
その優秀さと性格から、彼をヴィラン側に引き込もうとして狙うのであれば、まだ理解はできる。
しかし、なぜ2位の難羽でも、緑谷でもなく自分だったのか。
常闇が思考の迷路に陥っていると、不意に死柄木の手がゆっくりと前へと伸ばされた。
(……来る!)
常闇の全身がぞわりと粟立ち、黒影が防御のために前に出ようと力む。
あの手は崩壊の力を宿している。
触れられれば一瞬で肉体が塵と化す、恐るべき死の掌。
「……あ。わりィ、ビビらせたか」
だが、死柄木は自身の手を見て、ふと何かを思い出したように手を止めると、ポケットから黒い手袋を取り出しゆっくりと嵌めた。
個性の発動を物理的に防ぐための措置だ。
そして。
手袋を嵌めた死柄木の手は常闇の肉体ではなく、彼を守るように前に出ていた黒影の頭へと、そっと触れたのだ。
「……え?」
常闇は激しく困惑した。
目の前のヴィランから、凶暴性や狂気、あるいは敵意といったものが無かったからだ。
死柄木はまるで昔飼っていたペットに久しぶりに再会したかのような、ひどく何かを懐かしむような優しい目をして、黒影の顎のあたりを指先でコショコショと撫で始めていたのである。
『……?』
黒影もまた、初めて向けられた純粋な愛撫に困惑しつつも、手袋越しの不思議な感触にくすぐったそうに目を細めて、少しだけそれを受け入れてしまっていた。
誘拐犯と被害者の個性。
あまりにも奇妙で、不気味なほどに静かなコミュニケーション。
常闇がその光景の異質さに困惑していた、その時だった。
『凄いだろう、弔』
テレビ画面のニュース映像が突如として激しい砂嵐へと切り替わり、部屋中に低く、そしてどこまでも穏やかな大人の男の声が響き渡った。
その声を聞いた瞬間、アジトにいたヴィラン連合の面々の空気が一変した。
トガやマグネたちは息を潜め、死柄木弔は手袋越しの黒影からゆっくりと手を離し、ブラウン管の画面へと顔を向けた。
画面には人影すら映っていない。
ただ無機質な砂嵐が蠢いているだけだ。
だがスピーカーから流れるその声の主が、この場にいる全員の生殺与奪を握る絶対的な支配者であることを、誰もが理解していた。
『その黒影という存在はね……個性因子だけで精神を形成しているんだ。肉体という器の制限に左右されない、個性の中でも極めて珍しい、特異な存在だよ』
テレビ越しの声はまるで珍しい昆虫を見つけた少年のように、心底楽しそうな、知的好奇心に満ちた響きを帯びていた。
常闇は背筋に冷たい氷柱を突き立てられたような悪寒を覚えた。
あの声の主は、自分という人間には微塵も興味がない。
ただ、自分に宿る個性だけを、まるで実験動物の臓器を観察するように品定めしているのだ。
「……先生」
死柄木は、テレビ画面に向かって不機嫌そうに眉を顰めた。
「そもそも、アンタはどうしてコイツを攫えって言ったんだ。ただの学生だぞ」
連合のメンバーたちも同じ疑問を抱いていた。
爆豪のように凶暴で隙のある人間を仲間に引き入れるなら分かる。
だが、この寡黙な鳥の頭の少年を、わざわざ多大なリスクを冒してまで誘拐してきた理由が今の話だけでは全く見えてこない。
スピーカーの奥で男が静かに笑う気配がした。
『僕はね……「完成形」を見たかったんだ』
「完成形……?」
死柄木の眉間のシワがさらに深くなる。
『映像の記録では知っていたけれど、どうしても近くで、僕自身の目で見てみたくてね……ただ、それだけだよ』
悪びれる様子もない、
あまりにも身勝手で、答えになっていない返答。
ただ見てみたかったからという、それだけの理由で彼らは林間合宿の襲撃を命じられ、仲間を危険に晒したというのか。
死柄木がさらに何かを言い返そうとした瞬間、プツリと音声が途切れ、テレビの画面は再び元のニュース番組——コメンテーターによる雄英批判の映像へと戻ってしまった。
「……チッ。相変わらず、何考えてんだか分かんねェな」
死柄木は苛立ち紛れに首を掻きむしろうとして、黒い手袋を嵌めていることに気づき、舌打ちをして手を下ろした。
コメンテーターの甲高い声だけが響く、薄暗いアジト。
その静寂を破ったのはあまりにも場違いで、間の抜けた電子音だった。
『ピンポーン』
「……あ?」
死柄木が、アジトの入り口の重い鉄扉へと怪訝な視線を向ける。
『どーもォ、ピザーラ神野店ですー』
扉の向こうから若い配達員の声が聞こえてきた。
「誰よ、頼んだの……」
マグネが不思議そうに首を傾げた、まさにその瞬間だった。
「黒霧ッ!!」
死柄木が、喉を裂かんばかりの悲鳴にも似た声を張り上げた。
「……分かりましたッ!」
バーカウンターの奥に控えていた黒霧が死柄木の意図を即座に察知し、ワープゲートを開いて自身だけで転移する。
その瞬間、アジトの分厚いコンクリートの壁がまるで薄いビスケットのように一瞬にして粉砕され、凄まじい爆風と土煙が部屋全体を吹き飛ばした。
「なッ……!!?」
舞い上がる粉塵を切り裂き、外の街灯の光を背負って現れたのは巨大な影。
日本社会の平和を支える絶対的な大黒柱であり、ヴィランたちが最も恐れる絶望の権化。
「私が、来た!!」
「オールマイト……!!」
椅子に縛り付けられた常闇の瞳が、驚愕と押し寄せる圧倒的な希望たちの姿に見開かれた。
テレビの中ではあんなにも無能を晒し、マスコミに泥をぶつけられていたヒーローたちが、今、自分を助けるためにこの地獄の底へと壁をぶち破って現れたのだ。
「先制必縛…… ウルシ
オールマイトの背後からシンリンカムイが凄まじい速度で飛び込み、その両腕から強靭な木々を爆発的に伸長させた。
素早く、そして力強くうねる木の枝が、死柄木たちの身体を一瞬にして雁字搦めにし、完全に捕縛する。
「クソッ……! だったら……!」
捕縛を逃れようと、マスタードが首元のガスマスクに手をかけ、致死性の催眠ガスをアジト内にめちゃくちゃに放出しようとした。
「遅い!!」
黄色い残像がアジトの中をピンボールのように跳ね回った。
その正体はグラントリノ。
彼はマスタードの背後の壁を蹴り、その小柄な身体から放たれた強烈な蹴りを首筋へと正確に叩き込んだ。
「ガハッ……!」
白目を剥き、一撃で意識を刈り取られるマスタード。
彼が放とうとしていたガスは、広がる前に音を立てて消えていく。
(……やられた。完全に、出し抜かれた!)
シンリンカムイの木々に縛り付けられながら、死柄木はギリッと奥歯を噛み締めた。
テレビで流れていたあの謝罪会見。
あれは世間への謝罪などではない。
自分たちの目を画面に釘付けにし、油断させるための完全に計算された罠だったのだ。
(さっき先生との通信が突然切れた……ということは、ここだけじゃない。別の拠点にもヒーローたちが攻め込んでいる……!)
死柄木は驚異的な速度で状況を分析していた。
壁の穴から次々と突入してくるプロヒーローや警察の武装部隊。
彼らの視線は、空間を操る黒霧の姿を必死に探している。
だが、黒霧の姿はそこにはなかった。
オールマイトが壁を粉砕するほんの一瞬の隙を突き、黒霧は既に自らのワープゲートを展開していた。
どこかへ転移して逃れた後である。
(……この絶望的な状況でもっとも重要なのは反撃じゃない。脱出だ。外の安全な座標に逃げた黒霧に、俺たちを回収させるのがベスト)
「ここで終わりだ、死柄木弔!!」
オールマイトが死柄木を真っ直ぐに睨み据えながら重々しく宣告する。
その青い瞳は目の前の死柄木だけでなく、部屋の隅々まで油断なく警戒の視線を巡らせている。
彼が本当に警戒し、探しているのは自分ではない。
裏に潜んでいるはずの先生なのだと、死柄木にも分かった。
そして、オールマイトの背後に立つ警察の特殊部隊が制圧の完了を告げるように、ヴィランたちの本名を次々と読み上げ始めた。
「
マグネ、コンプレス、トガ、マスタード。
彼らが社会から隠し、捨て去ったはずの本当の名前が、警察の冷酷なデータとして暴き出されていく。
だが。
「——そして、死柄木! お前ももう逃げられないぞ!!」
「…………は?」
死柄木の瞳の奥で、何かがプツリと切れる音がした。
引石、迫、渡我、申波。
仲間の名前は全て「本当の名」で呼ばれた。
それなのに。
自分に対する呼称だけが、当たり前のように死柄木というヴィランネームのまま呼ばれ続けている。
彼らは、死柄木弔の本当の名前——志村転弧というルーツを、何も知らないのだ。
確かにもはや自分は悪だ。
それは十分に理解している。
しかし、それでも。
自分の生まれ、自分がなぜこんな風になってしまったのかという痛切な過去すらも知ろうともせず、彼らはただの得体の知れない
それは自分という人間の根本的な存在の否定に他ならなかった。
「……ふざけるな」
腹の底から、どす黒い怒りの泥が湧き上がってくる。
俺をただの記号で呼ぶな。
俺の痛みを何も知らないくせに、正義の面をして見下ろすな。
「……ふざけるなァァァァァァッ!!!」
死柄木の絶叫が、アジトの中に木霊した。
その瞬間だった。
アジトの空間そのものが、まるで腐った果実のように不気味な音を立てて突き破られた。
「なんだ!?」
オールマイトが目を見開く。
何もない虚空から、突如としてヘドロのような黒い液体が大量に溢れ出し、そこから無数の不気味な声が産声を上げた。
「オォォォンッ!!」
「ガァァァァァッ!!」
黒い液体を纏いながらアジトの中に雪崩れ込んできたのは、複数の脳無たちだった。
死柄木が喚び出したのではない。
何者かが、転移の個性を使って脳無を送り込んできたのだ。
「脳無だと!? どこから現れた!!」
突然の化け物の出現に、プロヒーローたちの動きが一瞬だけ乱れる。
その、ほんの数秒の隙。
死柄木達ヴィランの足元から、先ほどの泥とは違う黒い霧が噴き出した。
(……ナイスだ黒霧……!)
死柄木は自分の身体が黒い霧に包まれ、別の空間へと強制的に引っ張られていく感覚を味わっていた。
「逃がすかァッ!!」
オールマイトが手を伸ばすがもう間に合わない。
視界が黒く染まり、空間が歪んでいく。
死柄木はワープしていくその瞬間の、最後の視界で。
自分から少し離れたパイプ椅子に縛り付けられている常闇の姿を見た。
『……完成形を見たかったんだ』
先ほどの先生の、あの不気味な言葉が死柄木の脳裏にフラッシュバックする。
空間が完全に暗転する直前。
死柄木が見たのは、自身の口から溢れ出す黒い泥に溺れ、苦痛と恐怖に見開かれた常闇の瞳であった。
硫黄を含むことから、サルファマスタードとも呼ばれるってWikiに書いてあったので、さるふぁ ますど→申波 真斗って感じで付けました。ほぼオリキャラです。
というかファイナルファンブックにいないですね、ギャシュリーすらいるのに。
現在句点ごとに改行していますが、通常の文章の書き方に直したほうがいいですか?
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段落を使った普通の文章のほうが良い
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今の文章の方が良い