ドブカス「どけ!俺はお兄ちゃんだぞ!!!」 作:null null
宜しくお願いします!!!
……は?
大学受験を控えて猛勉強中だったはずの俺、野沢猿弥。
目が覚めたら見知らぬ天井。しかも、見知らぬおばさんにお姫様抱っこされている。
……いや、どういう状況!?
え?いや、俺の体重、60キロだぞ? 何でそんな軽々しく持ち上げれるん???
混乱する俺を余所に、近くにいたおっさんがめっちゃうるさい声で叫んだ。
「うむ、良くやった! 男だ! 男が産まれたぞ!!」
いや、男が産まれただけでそんな喜ぶ?
っていうか……産まれた?
動かない体に焦り、恐る恐る鏡を覗き込んだ俺は、そのまま硬直した。
鏡の中にいたのは――赤ん坊の自分だった。
~~~
あれから10年。
いくつか分かったことがある。
まず、ここは漫画『呪術廻戦』の世界だ。
そして俺は――よりにもよって、禪院直哉に転生していた。
最悪だ。最初はそう思った。
だってこいつ、最後は覚醒した真希にボコボコにされて「ドブカス……がぁ!!」とか言いながら退場する最凶の噛ませ犬ネットミームドブカスキャラだぞ?
だがしかーし! 俺は閃いてしまった。
そうならなければいいだけの話だ!
俺が真希や真依、虐げられるみんなに優しくして、全力で「理想のお兄ちゃん」を遂行したるわ!
ついでに死んでしまう推しキャラも全員助けて、この腐った家系ごとハッピーエンドに叩き込んでやる!
「俺はお兄ちゃんだぞ!!」
思わず叫んでしまった。ま、誰にも聞かれてなきゃセーフ。
関西弁と標準語が混ざってるのは、直哉のキャラに寄せようとする、俺の努力の証やから、細かいことは気にせんといて。
「直哉様」
「ひぇっ!?」
不意に声をかけられ、心臓が跳ね上がる。そこには一人の女中が控えていた。
「……なんや、びっくりさせんなや。で、何の用や?」
いかん、驚いた拍子に少し不機嫌なトーンが出てしまった。
ごめん女中さん!
案の定、彼女は情けない声を上げてその場にへたり込んでしまった。
「す、すみません! 直哉様……!」
「……ええんやで。急に話しかけられたから驚いただけや。それで? 用件は?」
努めて優しく(当社比)聞き返すと、彼女は震えながら答えた。
「あ、あの……直毘人様がお呼びです。『部屋に来い』と……」
あぁ、なるほど。「新当主のお披露目」に関する話がある時期か。
「わかった。下がってええで。……あ、転ばんようにな」
「は、はい! 失礼します!」
逃げるように去っていく背中を見送り、俺は深く息を吐く。
「ふぅ……行くか」
覚悟を決めて廊下を進み、威圧感たっぷりの襖を開ける。
「入るで、父さん」
そこには、酒の匂いと圧倒的なオーラを纏った親父、【禪院直毘人】が座っていた。
「直哉か。少し話がある」
「話ってなんや? 『新当主おめー』とでも言わせたいんか?」
軽くで返してみるが、親父は厳しい目をしている。
「分かっているか。今日は――」
「『新当主のお披露目会』やろ? 知ってるって」
「そうだ。……あと15分後には出発するぞ」
「はぁ!? 15分後? 準備どころか心の整理もできてへんけど!?」
慌てる俺を、親父は酒を煽りながら一蹴した。
「大丈夫だ。お前に何かやらせるつもりはない。」
「まあ、ならええんやけど。……ほな、やりたいことあるから一旦戻るで」
親父の返事も待たずに部屋を辞去する。
失礼な態度に見えるかもしれんが俺にとって、この「15分」はあまりに貴重なゴールデンタイムだ。
自室に戻るなり、俺はピシャリと襖を閉めて鍵をかけた。
ここは禪院家嫡男に相応しい豪華な和室――ではなく、俺のトレーニング部屋だ。
何でこんな部屋があるのかって?
親父に頼み込んだら案外あっさり許してくれた。
まあ、そんな事は置いておいて、
「投射呪法と体術、もっと磨かなアカンな。このままじゃ、特級レベルには歯が立たん」
俺は壁に貼られた、自作の「歩法図」を睨みつける。
前世の知識を総動員して、1秒を24分割するとかいう鬼畜呪術を使いこなす為のトレーニングをする。
さらに、文机の引き出しの奥――隠し段から一冊の古い帳面を取り出す。
そこには、『真依救済計画』『伏黒甚爾との接触注意点』といった、物騒なメモがびっしりと書き込まれていた。
「15分もあれば、イメージトレーニングと筋トレの1セットくらいは余裕や」
俺は着物の裾をまくり上げ、誰にも見せない必死の形相で、静止した空気の中に拳を突き出した。
あの日、覚醒した真希に叩き伏せられた「本物の直哉」の末路を、俺は絶対に辿らん。
少なくとも乙骨クンレベルまで強くならんと――!!
「さて……ほな、やりますか」
~~~
「ここが新当主のお披露目会の会場か……」
重厚な通路を歩きながら、俺は冷や汗を抑えるのに必死だった。
廊下の合流地点では、他家の人間たちが次々と現れては、前を歩く親父を見て弾かれたように道の端へ寄り、深く頭を下げる。
親父はと言えば、それが当然とばかりに目線一つ動かさず、悠然と歩を進めている。さすがは禪院直毘人、威圧感の塊や。
だが、俺は違う。
前世はただの受験生・野沢猿弥だ。自分より年上の大人たちが、必死な形相で頭を下げているのをスルーできるほどの強心臓は持ち合わせていない。
(うわ、めっちゃ頭下げてる……無視とか絶対無理やって!)
俺は親父の背中を追いかけながら、すれ違う人たち一人ひとりに「あ、どうも」「お疲れ様です」と小声で呟き、律儀にペコペコと会釈を返しながら歩いていく。
すると、すれ違った使用人たちが、頬を緩めて小さく囁き合った。
「……直哉様は今日も丁寧にご挨拶してくださったな」
「ああ。直哉様はいつも優しいお方だからな。」
「ああ。あんなに謙虚で、それでいてお強いなんて……禪院家の宝だよ」
(……え、めっちゃ好感度バグってへん!?)
どうやら、10年間「理想のお兄ちゃん」を目指して善行を積んできた結果、禪院家では『直哉様=人格者』という認識が完全に定着しているらしい。
いいやんいいやん。これで理想に一歩近づけたな。
(ただ、目立ちすぎるのは嫌だなぁ…)
そう思いながら暫く歩くと、廊下の先にはひときわ大きな門が見えてきた。
「待ってろよ、真希、真依。お兄ちゃんが絶対幸せにしたるからな。……つーても、まだ生まれてへんけど」
心の中で未来の妹たちに誓いを立て、俺は光の射す会場へと足を踏み入れた。
この先の展開どうしよう?
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まだまだ子供のパートを続けましょう
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懐玉・玉折編まで早めに行こう
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呪術廻戦0のとこまで早めに行こう。
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呪術廻戦の第一話に早めに行こう。