魔法科高校の魔法勇士〜科学魔法の常識をガチ魔法でぶん殴る!〜   作:ヴィルヘルム星の大魔王

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科学技術を魔法とする魔法科高校の劣等生の世界に、本物の魔法使いをぶち込む。


stage.1 マジでマジな魔法家族

 魔法。それは、ファンタジーに登場する特殊な力。主に西洋圏における特殊能力の一種。ウィザードやウィッチと呼ばれる術者が使用するイメージが強く、ファンタジーものの定番として知られる。

 

 時は1999年、とある宗教家が提唱した思想による滅亡を再現すべく、核兵器による大規模テロを企む狂信者集団がいた。そのテロ行為を一歩寸前で止めたのは、一人の平凡な警察官だった。正義感に駆られた警察官の身に超能力が発現し、テロ組織壊滅に貢献した。その者は、魔法師界において『始まりの魔法師』と呼ばれ、魔法師の歴史の原点として語り継がれている。

 超能力者の活躍に驚愕した各国政府は、国の有力者と共同研究で魔法師と呼ばれる実験体を作り出す。魔法師は、国防を兼ねた人間兵器としての軍事的戦力、又、外交手段の道具として扱われ、政府は魔法師を盾に牽制し合っていた。その影響で、第三次世界大戦が勃発し、氷河期が再来する事態に陥る。第三次世界大戦の影響で、魔法師と民間人を含む世界総人口の3割が減少する世界問題にまで発展した。

 

 「殺せー!」

 「中央は防御系統の魔法を展開せよ!右翼はサイオン弾で撃ち続け、左翼は震動系魔法で敵の足場を崩すのだ!」

 

 御伽噺の産物であった魔法は、科学で証明された技術として世界共通の認識へと至る。しかし、それは現代魔法と呼ばれる科学技術であり、魔法ではない。また、〈充分に発達した化学は、魔法と見分けがつかない〉という言葉の通り、魔法と科学は表裏一体と読み取れる。その定義は、神秘性の有無にあると100年前の幻想小説作家は提唱した。古式魔法という秘術もあるが、それは現代の魔法師にとって古臭い時代遅れの魔法技術に過ぎない。そもそも、古式魔法師に分類される者の中でも魔術・道術・呪術といった技術を扱う術者達は、古式魔法師という呼び名を嫌い、伝統に則った魔術師・仙術使い・呪術師を自称している。魔法師界隈では、その者らを伝統派の古式魔法師と呼ぶ。

 

 また、日本には、数字が特徴的な苗字を持つ十家の組織『十師族』が、日本中の魔法師を統括している。十師族は、十ヶ所の研究所から誕生した実験体であり、政府から限定的な権力が付与されている。日本中の魔法師を管理することで魔法師の市民権を維持する組織ということが、非魔法師の共通認識だ。だがしかし、その実態は、公的権力との癒着・国益に背く魔法師の排除・魔法師の繁栄といった違法行為を人知れず行い、法の一線を越えた超法規的措置が黙認されている。表社会では、地元の地主や一企業の実業家という肩書を隠れ蓑に、日本社会に溶け込んでいる。

 

 閑話休題。現代魔法師とも古式魔法師とも呼べるかどうか分からない『本物の魔法使い』が日本に実在する。

 

 その魔法使いの一族は、東京都内にある土呂市観座州にある二階建ての一軒家で平凡家庭の家族として暮らしている。階段近くの壁には、魔法部屋と呼ばれる異空間が存在する。探知能力に優れた魔法師でさえ探知できない特殊な空間構成となっている。それは、魔法の眼を持つ者でさえも見抜けない。家の表札には、『OZU』と表記されており、この家に本物の魔法使い達が生活を営んでいる。

 

 「さて、魔法の練習でもやるか」

 

 小津家の魔法部屋に一人の少年が入室した。Mの刺繍が施されたフード付きの灰色ジャケットを着た少年は、ズボンのポケットから板型端末機を取り出す。最初に彼が目に付けたのは、何気ない普通のテーブルだった。

 

 「お題はどうしよっかな~。よし決めた!木彫りの熊だ!」

 

 小津維吹は、祖父お手製の魔法教科書を左手に持ち、右手にある板型魔法ツールのマージフォンに魔法力を込める。現代魔法では、起動式と呼ばれる情報コード型の魔法式が主流である。だが、維吹にとっては幼い頃から手に馴染むマージフォンが丁度良いと感じている。マージフォンに内蔵されている『ワンドアプリ』をタッチし、ワンドモードに変化させる。維吹は、マージフォンを机に向け、呪文を唱えた。

 

 「ジルマ・マジーロ*1!」

 

 維吹は、脳内に木彫りの熊を思い浮かべ、机の材料である木を媒体に錬成する。すると、机の表面が揺れ動き、木彫りの熊が完成した。維吹が発動させた錬成魔法は、目の前の物質構造を組み替え、異なる物質に変換させる魔法である。だが、錬成魔法には、二種類の能力がある。それは、物質の構造を組み替える能力と元の物質から物体を作り出す能力だ。

 

 「よっしゃあ!」

 「やったでござりますですね!維吹ちん!」

 「前回と比べて形になったよマン坊!」

 

 維吹はガッツポーズで錬成魔法の成功を喜ぶ。それを応援するのは、植木鉢から生えているマンドラゴラの妖精マンドラ坊や。その直後、部屋にパチパチと響き渡る拍手の音を彼の耳は捉えた。音の鳴る方向に振り向くと、茶髪髪をした一人の青年が拍手を鳴らしていた。彼の顔を見た瞬間、維吹の顔は嬉々とした表情を浮かべる。そして、青年の名前を口に出した。

 

 「ヒカル爺ちゃん!」

 「ヒカルちん!お久しぶりでございますです!」

 

 ヒカル爺ちゃんと呼ばれた青年は、維吹が錬成した木彫りの熊を手に取り、全体をまじまじと眺める。その様子を見た維吹の顔は、歓喜の表情から一転して張り詰めた表情に変化する。細部まで観察したヒカルは、木彫りの熊を机の上に置き直す。維吹の方に顔を向け、人差し指と親指を繋げて輪を作る。OKのサインだ。そのサインを見た維吹は、ほっと胸を撫で下ろす。マンドラ坊やはニコッと笑う。

 

 「よく出来たね。花丸満点だ。きちんと練習していたようだね」

 

 青年の名は、祖父の小津ヒカル。見た目は30代の青年に見えるが、これには訳がある。それは、ヒカルが人間とは違う存在だからだ。維吹の曽祖父の弟子であり、魔法の先生だったヒカルは、祖母の小津麗と結婚し、日本から離れた場所で暮らしていた。今、彼が日本にいるのは、自身の孫である維吹に会いに来たからである。家族という絆を知った彼は、孫への愛という絆を日々実感している。

 

 「うん!毛並みの細かい彫りまで再現できているね。流石は僕の孫だ。錬成魔法を見ていると、かつての教え子を思い出すよ」

 「それって、魁大叔父さんのこと?」

 

 祖父の『教え子』という単語に、維吹は聞き返す。その反応を見たヒカルは、嬉しそうな顔を浮かべ、召喚魔法でティーカップとティーポットを取り出す。そして、中身の紅茶をカップに注ぎ入れる。維吹は、お茶請けのパウンドケーキを用意し、マンドラ坊や用の取り皿にも入れる。

 

 「維吹ちん、ありがとうございますです」

 「そうさ、赤の魔法使いにして勇気のある魔法使いの一人だよ。今日も維吹に話そうか。五色の魔法使いのお話を――」

 

 椅子に座ったヒカルは、小津家に伝わる『五色の魔法使い』の伝説を語る。

 2005年の日本に、五色の魔法使いと呼ばれる五人の兄弟姉妹がいた。普通の人間として平和に暮らしていた彼らの日常に、地底の奥深くに封印された帝国地底冥府インフェルシアによる侵攻してくる。その年代に起きた失踪事件や事故の一部は、全てインフェルシアの仕業によるものだった。ビルが爆発したり、倒壊する事故は週に一日起きる事態となり、大勢の犠牲者が出た。

 母を失った五人の魔法使いは、五色の魔法使い【魔法戦隊マジレンジャー】として、インフェルシアの怪人達と戦い、平和を守ってきた。そこに対峙するのは、伝説の勇者と呼ばれた曽祖父。インフェルシアの幹部によって洗脳され、闇の魔導騎士ウルザードとして五色の魔法使いと敵対してきた。

 そして、闇落ちした曽祖父の記憶を取り戻した五人の魔法使いは、家族の絆で地底冥府インフェルシアの邪神を見事撃破する。最後には和解を結び、改心した地底冥府側は、帝国の内政を一から築き直している事を語った。語り終えたヒカルは、紅茶を飲んで一息つく。その話を聞いた維吹は、幼い童のように瞳を輝かせた。男の子にとってヒーローはテレビの世界だけの存在で憧れの対象だ。それが、現実に存在しており、尚且つ、自身の身内となれば、余計に憧れるのも無理はない。

 

 「その地底冥府との戦いを終えて、世界は平和に戻ったんでしょ?ヒカル爺ちゃん達が魔法戦隊マジレンジャーとして」

 「確かに…世界は平和に戻った。しかし、2045年に始まった第三次世界大戦もとい二十年群発戦争が勃発したのは中学校の歴史で習っているよね?インフェルシアの侵略以上の犠牲が続出した悲しい戦争だ。僕らは魔法使いと云えど、魔法師ではない。正体が露見することは掟によって禁じられているからね。小津家は、一般人として戦火の影響に怯えていたよ。でもね、そんな辛く大変な時でも家族の力を合わせて、全員で危機を乗り越えてきたんだ」

 

 戦争を語る祖父の顔は、哀しみに包まれている。その顔を見た維吹の心に何とも言えない感情がせり上がってくる。怪物から取り戻した平和は、人間同士の争いで滅びかけた。曽祖父・曾祖母・祖父母・大叔母・大叔父が守ってきた人の未来は、国家や人の欲望の前には脆く儚いものだと痛感する。それは、ヒカルが一番理解している。

 

 「良くも悪くも、魔法師という存在のお陰で僕ら魔法使いの正体を隠すことができている。木を隠すなら森の中…みたいな状態だね」

 

 ヒカルは、正面にいる維吹を見つめる。その目は真剣な表情でいつもの柔らかな雰囲気を感じない。どこか、心配しているような雰囲気を漂わせている。

 

 「維吹、僕が教えてきた言葉を覚えているかな?」

 「いつもヒカル爺ちゃんが言っているよね。魔法は、使い手によって善にも悪にも染まる。だからこそ、悪用せず正しき力として正しき事の為に使うべし。小津家代々の家訓でしょ?」

 「そうだ。大いなる力にはそれ相応の責任がのしかかる。魔法とは、聖なる力。邪悪な心を持つ者が魔法を使えば、たちまち心が闇に飲み込まれる。維吹には大切なモノを守る力として魔法を使ってほしい。僕から課す人生の課題だ」

 「人生の…課題」

 

 紅茶を飲み干したヒカルは、カップを置き、椅子と机を用意する。そして、黒板の前に立った。

 

 「少し授業をしようか。授業名は、『魔法師の概要』だよ」

 

ヒカルは、2005年と比べ、科学技術が大幅に発達した現代の学校では余り見ないチョークを用いて、黒板に書き記す。維吹は、昔の学校で行われていた授業形式に心躍らせ、椅子に座った。維吹は、祖父が行う魔法の授業が大好きなのだ。

 

 「維吹、現代魔法師について音読しなさい。教科書の三十五項目だ」

 「はい!ヒカル先生!」

 (ヒカル先生…か。懐かしいねぇ)

 

 昔の思い出を懐かしむヒカルを余所に、維吹は指定された教科書のページを開き、そこに記載された文章を音読する。

 

 「現代魔法師は、想子・霊子と呼ばれる物質を操り、事象に付随するエイドスと呼ばれる情報体に干渉し、事象改変することで魔法を発動させる者のこと。また、科学技術を基礎とする技法を魔法として再現する者のことを指す」

 「そう、彼らは魔法の術式…起動式を演算することで発動させることができる。術式補助演算機ことCADを用いてね。CADは、0,1秒ほどの速さで魔法を展開し、魔法師の戦闘を補助する性能を持つんだ。また、魔法師が使う魔法は、現代魔法と古式魔法に別れており——」

 

 ヒカルの説明を聞きながら、現代魔法の発展を脳に入れ込む。ノートに書き写すのも忘れない。

 

 (呪文詠唱が必要なマージフォンと比べたら、現代魔法は便利だよな。まあ、一応無詠唱で魔法を使用できるけど…地味に頭使うから面倒臭い)

 

 幸いにも、維吹には魔法の才があり、無詠唱でも魔法を発動できる。それでも、実用性に劣る為、毎日練習している。

 

 「——であるからして、僕らの使う魔法は他の魔法師から見れば古式魔法と大差ない。だが、決定的な違いがある。それは何か分かるかな?」

 「はい。小津家の魔法は、マジトピアと呼ばれる世界にいる天空聖者と契約を交わして魔法力を授かり、契約した天空聖者が司るエレメントを魔法として扱います。ただ、違う点として、現代魔法における魔法力は、処理速度・キャパシティ・干渉力の三点。対して、小津家の魔法力は、勇気を原動力とする魔力…で合ってる?」

 

 天空聖者とは、天空にある異界マジトピアに住む者達を指す。古から存在する彼らは、魔法力を極めた元人間である。ヒカルも太陽の天空聖者のサンジェルとして名を連ねている。ちなみに、ヒカルと麗の間に産まれた子は、海のエレメントを司る天空聖者と契約を交わしている。

 

 「うん、問題ないね。魔法の勉強は専門の教育機関で学ぶ事が魔法を知ることに繋がるよ。そして、維吹は来年で高校受験になる。ふふふ」

 「ヒカル爺ちゃん…それってつまり、魔法科高校の受験を目指せってこと?」

 

 ヒカルの言葉に、まさかと維吹の顔は焦りを見せる。それを見たヒカルは、笑っている。太陽のように優しい祖父の顔は、教育者としてのマジな顔を見せていた。

 

 「そうだね。近くの魔法科高校を受験しようか。東京だと…魔法科第一高校が一番近いみたいだ。私立・国立枠はそこの受験を目指そうか。都立高校の受験も忘れずにね」

 「世間一般の受験生よりもプレッシャーのある受験だー!?」

 「明日から受験勉強だよ。時は金なり。何事も善は急げだ」

 

 こうして、魔法科第一高校への受験という目標を設定された維吹は、ヒカルの助力を借りて、魔法科第一高校に向けた受験勉強を始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 小津家のリビングでは、祖母の小津麗が水晶玉を眺めていた。彼女は、五色の魔法使いの一人『青の魔法使い』にして、若い頃は母親代わりとして家事に勤しんでいた。

 

 「マジ・マジ・ジジル*2

 

 麗は、旧携帯端末機型のマージフォンを水晶玉の前にかざし、占い魔法で水晶玉に映る未来を予知する。そこに映っているのは、魔法科高校の制服を纏った維吹が、事件に巻き込まれながらも楽しい学園生活を送っている未来だった。

 

 「あらあら、維吹の楽しそうな未来が映っているわ。それに、高校生になった維吹に春が来るのね」

 

 水晶玉が予知する未来を視た麗は、魔法を解き、水晶玉に布を被せる。

 

 「学業成就のお守りを買ってこないと…魁の高校受験を思い出すねぇ」

 

 そうして、麗は孫の受験を応援すべく、近くの神社へと足を運ぶのだった。

 

*1
マジレッドの小津魁が得意とする錬成魔法。物質の構造を組み替え、他の物質に変換させる。物質の再生や分解も可能だ

*2
小津麗が使用する占い魔法の強化版。水晶玉に映る予知が鮮麗な映像として映し出される




 この小説からお読みになった読者の方は初めまして、前作から読んでくださっている読者の方はお久しぶりです。2025年は、現実世界での私用やモチベーション低下により、二次創作活動を勝手ながら休憩しておりました。
 御気軽に拙作の二次小説を楽しんでいただければ幸いです。では、二話をお楽しみください。
 
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