魔法科高校の魔法勇士〜科学魔法の常識をガチ魔法でぶん殴る!〜   作:ヴィルヘルム星の大魔王

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stage.3 マジか、魔法科入学式

 二〇九五年、陽気な春の日差しは、舞い散る桜の魅力を輝かせる。

 四月一日。小津維吹は、白い制服を身に纏い、東京ドームより広い敷地面積を持つ学校に居た。そう、国立大学附属魔法科第一高校である。ヒカルが課した実技試験対策の成果により、無事に魔法科第一高校へと進学できた。

 

 「今思えば、受験勉強の対策で躓いてばかりだったな」

 維吹は、受験勉強の実技対策講座を回想する。それは、厳しく辛い一年だった。

 魔法部屋にて、一台の仮想端末を手にデータを目視するヒカル。正面に座っている維吹に対して、魔法の家庭教師として律儀に面談を始めた。

 「維吹は、軒並み現代魔法を扱えるようだけど。今の状態では、魔法科高校への合格は合格圏手前の可能圏に等しい。だから、合格圏になるまで魔法技能を鍛えよう。勿論、筆記試験対策も忘れずにね。大丈夫、僕がサポートするから」

 その内容は、原始時代に似たマルデヨーナ世界で現代魔法のみを使い、一週間サバイバルをすることで魔法力のキャパシティを鍛える課外授業。また、箱庭で現代魔法の発動速度を向上させる的当て授業。そして、空間事象への干渉力と空間認識能力を鍛える授業だった。マージフォンでの魔法使用に慣れていた維吹にとって、現代魔法を使用する際の魔法式構築に苦労した。

 現代魔法を扱う者は、無意識に起動式を演算領域に展開する。やることは単純で事象の座標を設定するだけ。現代魔法よりも呪文詠唱が得意な維吹は、現代魔法師が幼少期に教わる基礎的な魔法しか出せなかった。幸いなことに、ヒカルの特別授業のお蔭で殺傷ランクB級魔法を普通に扱えるレベルにまで達した。

 「頑張るでござりますよ。維吹ちん!ファイト!ファイト!」

 「筆記試験の科目は…暗記と文章構成の繰り返しか」

 合格の鉢巻を額に巻き、一心不乱に参考書の問題を解答していく維吹。その後ろで、ポンポンを持ったマンドラ坊やが応援を送る。

「だああ!小論文が難しい!ただでさえ作文が苦手なのに~!」

 それでも、魔法工学や魔法理論に関する小論文には苦戦していた。

 「それにしても、白い八弁花の刺繡か。深雪曾祖母ちゃんを思い出すなぁ」

 回想から現実世界に戻った維吹は、制服の肩に施された八弁花の紋章を見つめ、曾祖母を思い出す。

 維吹が思い浮かべた人物は、十年前に他界した曾祖母の小津深雪。かつて、氷のエレメントで戦う白の魔法使い『マジマザー』として、小津家兄弟を裏で支えてきた母親である。一時期、魔導騎士ウルザードにより、魂となって家族の前から姿を消した彼女は、五人の勇気によって復活した。

 そして、西暦二〇八五年、深雪は百三十二歳で大往生を迎えた。逝去する数分前、死期を悟った彼女は、全ての魔法力を注ぎ込んでブローチ型のアイテム『天空の雪花』を作成した。このブローチは、小津家の遺影に飾られている。愛する妻を看取った小津勇は、深雪が遺した思い出を守るべく、今も大切な家と家族を守り続けている。

 「納得いきません!何故お兄様が補欠なのですか!?入試だってトップ成績だったじゃありませんか!!」

 「まだ言うのか深雪」

 校門の噴水で二人の男女が言い争っていた。尤も、女子生徒を男子生徒が宥めている。痴話喧嘩と疑われても可笑しくないが、女子生徒の「お兄様」という単語から、二人が兄妹であることは何となく理解できよう。しかし、それを知らない周囲の人間、特に二年生の一科生は、彼の紋章を見て、軽蔑する。

 「見て、あそこにいるの雑草だわ」

 「なんで花冠の子が雑草と絡んでいるのかしら?」

 兄妹であろう二人のやり取りを見ていた維吹は、彼らの周囲から聞こえる陰口に顔を顰める。一高では、上位百名を一科生、残りの百名を二科生として振り分けている。

 とどのつまり、一科生は刺繍が施された『ブルーム』、二科生は無刺繍の『ウィード』なのだ。この制度は、学校の公式制度ではなく、設立期から自然発生した歪みである。世間的には、超実力主義の産物と謳うが、実際は、制服をデザインした会社側の刺繍ミスによるものだ。だが、何も知らない生徒からすれば、選民思想と差別意識を植え付ける弊害でしかない。国立の魔法科高校に入学できる時点でエリートだが、更なるエリート文化が壁として立ちはだかり、蟠りを残している。

 (この制度って極端なクラス分けだよな。一見、合理的に見えるが、魔法師育成の制度としては非合理的だ。くっだらねぇー)

 維吹は、周囲の喧騒から離れるように遠ざかる。人が少ない場所にある長椅子を見つけ、そこに腰を下ろした。鞄から暇つぶし用に持参してきた本を手に取り、読書タイムに突入する。持参した本は、某文豪が描く推理小説。

 「すまない。隣に座ってもいいだろうか?」

 「おっと、悪い」

 目の前にいる男子生徒の声に気付いた維吹は、読書を中断し、長椅子の端っこに座り直す。男子生徒こと司波達也は、軽く会釈をして、隣に座る。達也がスクリーン型端末で情報を眺めていると、紙の擦れる音を彼の耳が捉えた。達也は、音の発生源に振り向く。隣にいる男は、電子化が進んだ現代では余り見かけない紙の本を読んでいるではないか。達也は、興味深そうに彼の本をじっと見る。

 「ほぅ、紙媒体の本か。電子媒体が主流な現代では中々お目に掛かれない」

 「お!お前も本に興味があるのか?」

 「すまない、自己紹介が遅れたな。俺は司波達也だ。達也でいい」

 「そうか!俺は小津維吹だ!よろしくな達也!」

 「……ああ、よろしく維吹」

 小津維吹の名前を聞いた瞬間、達也は一瞬固まるが、何事もなく握手を交わす。二科生である自分に対し、隔てることなく接する維吹の態度に、達也は少々困惑している。

維吹が読書に戻り始めた傍らで、達也は前日の出来事を脳裏に思い浮かべる。

 入学式の前日、リビングで寛いでいた司波達也は、秘匿回線である人物とホログラム通信で通話応対をする。その人物の正体は、以前、維吹を尾行していた国防陸軍第一〇一旅団。通称、独立魔装大隊の隊長を務める風間玄信だった。

画面に映る風間は、合格した達也に対して祝いの言葉を贈る。

 「大黒特尉、まずは魔法科第一高校の合格おめでとう。軍人という立場を抜きにして、喜ばしい事だ。妹さんの合格も誠に目出度い」

 「恐縮です。しかし大佐、合格祝いの為に通話してきた訳ではないでしょう?わざわざ厳重な紙の資料を軍の秘匿郵便で送るのですから」

 達也は、送られてきた一枚の封筒を掲げ、風間に見せる。達也の鋭い観察眼に、風間は苦笑する。それはまるで、親戚のおじさんみたいな柔らかな笑みだった。

 「はっはっは、流石は大尉だ。その資料に記載されている人物の名は、小津維吹。二枚目の資料にある父親の小津海誠は、消防庁の直轄組織である魔導消防隊の大隊長として活動している」

 魔法師の就職先として、軍関係・警察・山岳救助隊が多い中、少数だが消防の道に進む魔法師もいる。達也は、魔導消防隊という言葉から、その組織が魔法師で構成された消防庁の特殊部隊と考える。国内の治安維持を果たす警察や国防軍ではなく、国内インフラを守護する消防士は希少性が高い。博識な達也といえども組織内情などの知らないものが有る。それ故に、少し興味深そうに資料情報を読み込む。

 「魔導消防隊…噂には聞いておりましたが、魔法師の職業先としては珍しい部類ですね」

 達也の答えを聞いた風間は、違うとばかりに顔を横に振る。風間の様子に達也は、訝しげに眉を顰める。

 「いいや、違う。厳密には、魔法師だけでなく一般消防隊員も構成されている。これは相手側の詭弁だと思うが、我々からすれば魔法師と変わらん。現に、小津海誠は、魔法師として登録されていない。小津海誠は、魔法師ではなく、魔法適性のある消防士であると消防庁は一点張りしている」

 続いて、小津維吹に関する情報を話す。真面目な表情に切り替わった風間の態度に、達也の背筋も自然と張り上がる。

 「話を戻そう。去年、我々は小津維吹に接触しようとした。理由としては、此方側への勧誘だ。しかし、まんまと術中に嵌まり、逃げられてしまった」

 「大佐ともあろう御方が弱音を吐くとは…明日は槍が降るでしょうね」

 「おいおい、私も人間だ。話を戻すが、戦後の影響で国際情勢が危うい昨今、魔法師は常に人手不足だ。偶然にも、彼の中学時代の魔法適性データを取得し、監視していたのだ」

 「…そのような個人情報は、徹底的に管理されているのでは?」

 「心配するな。文部省に少し圧を掛けただけだ」

 

 職権乱用なのでは、と達也は考えるが、話が脱線する為、大人しく閉口する。その後、諸々の会話を済ませた達也は、深雪のホットココアで心を落ち着かせるのだった。

 (こいつが、大佐が言っていた要注意人物なのか?止むを得まい。精霊の眼で確認を…なに!?)

 達也の保有する『精霊の眼』は、イデアに直接干渉し、全ての物理情報体と魔法的情報体を認識することができる異能だ。この能力の恩恵で、達也は様々な敵を葬ってきた。

 だがしかし、維吹に『精霊の眼』を向けた瞬間、達也の脳内に危険信号が流れる。それは、『精霊の眼』からの警告だった。能力を発動させた瞬間、視界の先にいる維吹の姿が黒く染まっている。また、情報体を認識できず、ERRORと表示される。

 (精霊の眼が拒んでいる!?それに、靄のようなエイドスが掛かっていて視認することができない。精霊が恐れ慄く程だと!?)

 通常、眼が人間を探知した時、対象者はサーモグラフィーのように赤く染まる。しかし、維吹の情報体を視認しようとした瞬間、彼の情報核から発せられる強大な威圧が達也を襲う。

 それはまるで、彼の素性に触れるなという情報体からの脅迫。自身の出生である『四葉』本家の人間と同じ『触れられざる者』に近しい圧力だった。沖縄海戦のあの日以外、冷や汗を掻いたことがない達也は、自身の身体が拒否反応を示していることに内心驚愕する。

 「新入生ですね?そろそろ会場に向かったほうがいいですよ」

 二人の前にいるのは、一科生。それも上級生だ。手には薄型のCADを常備しており、CADの基本携帯が禁止されている一高において、所有している彼女は学校組織の一人だろう。

 「感心ですね。スクリーン型ですか。そちらの方は、紙媒体の書籍ですか?しかも、ブックカバーなんて」

 目の前の上級生は、達也の考えに気付くことなく、朗らかな笑みで会話を続ける。

 「当校では、仮想型ディスプレイ端末の持ち込みを認めていません。ですが残念なことに、仮想型を使用する生徒は大勢います。でもあなた達は、入学前からスクリーン型や紙の本を使っているんですね」

 「仮想型は読書に不向きですので」

 「電子書籍も良いですけど、紙の方がザ・読書って感じがしますんで」

 淡々と答える達也に、上級生相手にもあっけらかんとした態度で答える維吹。その様子に、お姉さん風の余裕で笑う女生徒。

 「あら、ごめんなさい。自己紹介が遅れたわ。私は第一高校の生徒会会長を務めています。七草真由美です。ななくさ、と書いて、さえぐさと読みます」

 (数字付きの家柄か。それも七草とは、厄介だ)

 (へぇ、この猫被りの面白そうな人が魔法師の頂点の一人か。苗字は、春の七草が由来か?)

 日本の魔法師の頂点に立つ数字付きの一柱、七草家の人間だと二人は心中察する。しかし、後半の少年は、見当違いな考えをしていた。絶対、七草粥が由来ではない。

 「司波達也です」

 「小津維吹です」

 「まあ!あなた達が、あの司波達也君と小津維吹君ね!」

 (どうせ新入生総代主席入学の司波深雪の兄なのに、まともに魔法が使えない「あの」だろう)

 真由美の言葉に疑り深くなっている達也。だがしかし、彼の心中とは裏腹に、真由美が口に出した言葉は意外なモノだった。

 「入試七教科、平均九十六点!特に受験者平均が六十点だった魔法理論と魔法工学で満点を取った司波達也君!前代未聞の高得点に先生方は大騒ぎよ!」

 「…ペーパーテストの成績です。ここは魔法科高校。どんなに点数が良くても、実技がからきしでは、このとおり」

 「ううん、少なくとも私にはこんな高得点は取れない。そんなに卑下する必要はないわ。誇っていい事よ」

 達也に笑みを浮かべた真由美は、維吹の方に向き直る。達也は、彼女の事を苦手な存在だと再認識した。

 「貴方の事も話題になっているわよ。小津維吹君。次席入学で、筆記試験の成績は達也君より低いけど、魔法理論と魔法工学は三位。特に、実技は司波深雪さんと並ぶほどの好成績だって聞いたわよ」

 「維吹、次席だったのか?」

 「いんや、次席とか今知った。まぁ、自分の限界まで追い込んでね。本当、限界まで」

 ハイライトの無い眼で空笑いをする維吹を見て、これは触れてはいけないなと、達也と真由美は言葉を失う。正気に戻った維吹は、真由美に一言挨拶を言い、講堂に向かった。達也もそれに倣い、講堂へ急ぐ。

 

 

 

 講堂内は、多くの学生で賑わっていた。空席を探して移動していると、前列席は一科生が使用し、後列席は二科生が使用している。特に席の規定はないが、自然と形成されている空気が伝わってくる。

 維吹は、ちゃっかり達也よりも先に座る。その行動に、達也は慌てて声をかける。維吹は一科生。周囲にいるのは二科生。面倒事が嫌いな達也は、維吹に耳打ちをする。

 「おい、ここは二科生が座る席だ。一科生のお前が座ったら悪目立ちするぞ」

 「俺さ、そういう選民思想的っつーか、差別を助長する状況が嫌いなんだよね。別にいいでしょ。誰にも迷惑かけてないし」

 (俺の胃に迷惑が掛かっているのだがな)

 「あ、あの…」

 達也と維吹の横から、弱弱しい声が聞こえる。声のする方向に振り向くと、おどおど系の眼鏡女子と橙髪のポニーテールをした女子が通路に立っていた。

 「席空いてますでしょうか?」

 「ああ、どうぞ」

 「ねえアンタ、一科生でしょ?なんで二科生の席にいるの?一科生は前の席よ」

 二科生の列に一科生がいることを訝しむ赤髪の女生徒の言葉に、維吹は肩の力を抜いて喋る。

 「別に、入学式の席は自由席だし、一科生・二科生だの…変な同調圧力は御免蒙る。それに今更、前に座る度胸なんてねえよ。それに面倒くさい」

 「絶対、最後が本音だな。お前」

 「ありがとう。私は柴田美月といいます。よろしくお願いします」

 「司波達也です。こちらこそ…」

 「小津維吹です。よろしこ」

「ふうん?一科生だからいけ好かないと思っていたけど、気に入ったわ。あたし、千葉エリカ。よろしくね!司波君、小津君!」

 その後、千葉・柴田・司波と連続性語感が良い苗字の中、一人だけ仲間はずれなことをネタに盛り上がり、高校生らしく会話が進んだ。

 「静粛に!ただいまより、国立魔法大学付属第一高校入学式を始めます——」

 「——続きまして、新入生答辞、新入生代表司波深雪」

 開会式のアナウンスが聴こえ、会場は静寂に包まれる。新入生総代挨拶で、達也の妹である司波深雪が登壇する。男女問わず、会場にいる生徒達は、彼女の美貌に魅了され、真剣な眼差しを向けていた。維吹も深雪の容姿を見て、興味深そうに観察する。

 「へえ、達也の妹か。可愛いな」

 「ああ、自慢の妹だよ」

 深雪の事を褒められた達也は、少しだけ上機嫌となり、感情を露わにする。このやり取りから、達也がシスコンであることを見抜いた維吹は、心の中で、シスコン曹長と名付けた。この日を境に、達也のシスコン階級が昇進していくのは、余談である。

 少々怪しい祝辞があったが、無事に入学式が終わり、学生証交付の時間となる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 講堂を出た四人は、お互いのクラスを言い合う。しかし、一科生の維吹だけは、A組となっている。

 その時、前方から人垣に囲まれていた司波深雪が近づいてくる。彼女の目的は、兄の達也である。深雪は、達也の近くにいる柴田とエリカを見て、ブラコン魂が発動した。維吹は、深雪と達也を茶化す。

 「こちらが柴田美月さん、そしてこちらが千葉エリカさん。同じクラスなんだ。俺の隣にいる彼、小津維吹は違うクラスだが、先程知り合った」

 「そうですか…早速、クラスメイトとデートですか?」

 千葉エリカと柴田美月を見た深雪は、兄の達也が誑かしたと勘違いを起こし、無意識に冷気を起こす。維吹のことは深雪の眼中にない。

 「お兄様…私という者がありながら…ふふ、節操が無いようですね」

 「深雪、誤解だ。それに男が一人いるだろう」

 「失礼、達也の妹さん。達也君は両手に花を侍らせていたよい。よっ、色男」

 「両手に花…侍らせ…浮」

 「おい、嘘は止めろ。落ち着くんだ、深雪」

 必死に達也が弁明した事で、深雪の怒りは収まると同時に、氷点下並みの空気が霧散していく。深雪の魔法干渉力が落ち着いたことに、達也は安堵し、妹の怒りを助長させた原因を睨む。睨まれた維吹は、笑って誤魔化す。

 「揶揄い過ぎた。ごめんよ妹さん」

 「いえ、こちらこそ早合点してしまい、申し訳ありません。改めまして、司波深雪です」

 「これはこれはご丁寧に、小津維吹です」

 「し、柴田美月です」

 「千葉エリカよ」

 深雪の誤解が解け、短い時間だが交流を深めることができた。深雪は、新入生総代としての責務が残っている事を告げ、人垣へと戻っていく。だが、生徒会長の機転により、深雪は自由となる。

 その後、維吹達は、エリカが見つけたケーキ屋で昼食を取り、そのまま解散した。

 

 

 

 

 

 

 翌日、維吹は、魔法科高校の制服に胸を張り、自身が所属するクラスの教室へと向かう。

 

 

 「A組の教室は、ここか」

 維吹は、自身の教室に赴く。A組の教室に到着し、扉を開ける。そして、電子黒板に表示された名簿順の席を確認した。百年前のパソコン室みたいな情報端末と一体化された机に座り、ぼちぼち履修登録を進める。現代では、視線誘導による登録が主流だ。だが、維吹はタイピング操作で選択科目を入力していく。

 小津家では、タイピングタイプのパソコンが三世代に渡って使われており、彼にとってはタイピングが主流なのだ。履修登録が完了したことで、身体を伸ばして肩の筋肉をほぐす。ふと、横の席から気配を感じ、横に振り向く。隣の席の小柄な女生徒が、維吹をジッと見つめていた。

 「…俺に何か用?」

 「…タイピング機能を扱う人は余りいないから気になったの。私は、北山雫」

 

 雫と名乗った少女は、維吹がタイピング操作していたことに興味を持ち始めた。自己紹介を受けたことで、維吹も名乗る。

 「小津維吹だ。パソコン関係は、タイピングの方が手慣れててね。よろしく北山さん」

 「うん、よろしく小津君」

 何処かミステリアスな雰囲気を醸し出す北山雫との交流を果たした維吹は、彼女との会話に花を咲かせる。

 初めての高校生活は、昼食と放課後に事件が起きるまで、胸躍らせるものだった。

 

 




やっと入学編一話が書けた。次回は、みんな大好きモブ崎君が登場するぜ!

達也の『精霊の眼』は、維吹と契約した天空聖者の力を感じ取り、彼に警告を促しました。何も知らない達也からすれば、維吹に対する警戒心は残っています。
天空聖者は、精霊にとって神霊に等しい、上位の存在という設定にしました。
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