鳥羽鎮守府はなんとやら   作:新月ふわブイ司令官長

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どうも、新月ふわブイ司令官長です。
この作品を開いてくださりありがとうございます。そして前話に引き続きお読みくださっている方もありがとうございます。
贅沢に本日は3話同時上げしてしまってます〜。やったね☆
それでは本編をお楽しみください〜…………


第三戦 偵察

 

 

(新月)

あっ、大淀〜、俺の分の零戦五二型も整備しとくように明石に伝えといて。あと榛名、出撃は45分後、いまから準備やら補給やらしておいで

(大淀)

……了解しました。

零戦五二型一機、提督搭乗機として最優先整備。明石さんには私から伝えておきます。

燃料・弾薬は偵察任務想定で搭載量を調整、整備完了時刻は出撃10分前を目標にします。

(明石・通信)

はーい了解です!

零戦五二型、気合入れて整備しますねー!後で文句言われないように完璧に仕上げますから!

(榛名)

出撃45分後ですね……わかりました!

すぐに補給と最終点検を済ませてきます。能代さんにも伝えますね!

……榛名、準備万端で戻ります!

(大淀)

……まったく、視察がいつの間にか実戦準備になりかけてますね…

(金剛)

Oh〜!提督も飛ぶノ!?

これは完全に“見せる”気デース!

榛名、落ち着いてネ!焦ると紅茶こぼすヨ!……艦橋に紅茶はないけど!

(飛龍)

ちょっと待って、提督まで出るの!?

もう偵察ってレベルじゃないじゃない……

……でも、零戦五二型か。

うん、悪くない選択だと思う。

(山口)

新月司令も飛ばれるのか?

(菅野)

新月さん?えっ、貴方飛べるんですか?

(大淀)

では、作戦準備を最終段階に移行します。

全員、生還前提。

――それ以外の結果は、認めません。

(新月)

へいへい、任せんさい。

あと…………山口副司令と菅野大佐、驚いてますけど……一応僕もエースパイロットですよ?無被弾での一空戦での27機撃墜を成してますからね!!あとは合計撃墜数は124機程度……元陸軍飛行隊、前海軍航空隊、現海軍中将……経歴は伊達ではないですよ?

(山口)

……一空戦で二十七機、しかも無被弾。

数字だけ聞けば誇張に思えるが……君の飛び方と判断力を見ていれば、虚言ではないと分かる。

菅野くんはどれぐらいだ?

(菅野)

えっと……たしか平均で、ですけど。

一回の空戦で四〜五機、調子がいい時で七、八ってところですかね。

合計撃墜数は……まあ、百ちょっと超えたあたりだったと思います。

(山口)

……十分すぎる戦果だ。

だが平均と最大値でここまで差が出るのは珍しい。

新月司令、君は“撃墜王”というより、鬼神だな

(菅野)

いやいやいや……それ、普通に化け物ですよ?

無被弾で二十七って、理論上は可能でも実際やる人、ほとんどいないですから。

(大淀)

……あの、提督。

その経歴、もう少し早く共有していただけると、こちらの心臓に優しいのですが。

(金剛)

OH〜!!

Our Admiral is Ace of Aces デース!!

(菅野)

いやぁ……これは楽しみになってきました。

エースの“本気”、間近で見せてもらいますよ。

 

(そして偵察任務に出撃して帰還後……)

 

(新月)

さすがに久しぶりの飛行は腕が鈍るなぁ〜18機しか落とせなかった

(菅野)

………………。

い、いや、ちょっと待ってください。

十八機「しか」って何ですか。

というかなんですかあの飛び方!!なんかいきなり回り始めて制御不能になったのかな?って焦ってたらいきなり敵機の後ろについて………

完全に制御失ってスピンに入ったのかと思いましたよ!

こっちは肝を冷やして見てたのに、次の瞬間にはもう敵機の後ろ……意味が分からないです!

(山口)

……私も同じだ。

あれは常人なら空中分解か失速だ。

だが――零戦は耐えた。

いや、正確には「零戦だったからできた」と言うべきか。

(大淀)

……戦果報告を聞いて、最初は記録ミスかと思いました。

偵察任務で十八機撃墜。

それも短時間で、被弾なし。

……頭が痛くなります。

(飛龍)

あれを「腕が鈍った」って言うの、やめてくれない?

こっちの基準が壊れるから。

(金剛)

OH MY……

提督、あれはもう“技”っていうか“芸”の域デース……!

敵から見たら、悪夢そのものネ!

(新月)

あれは零戦にのみ許された「捻り込み」って技だよ。

(菅野)

……ですよね!?

やっぱりそうですよね!?

普通の機体なら絶対やっちゃいけない動きですもん!!

でも零戦だけは……空気を掴むみたいに、無理やり機首をねじ込んで……。

(山口)

零戦の軽量構造、高揚力翼、そして操縦者の感覚。

三つが揃わなければ成立しない。

……君は、それを身体で理解している。

(大淀)

つまり、再現性は……?

(菅野)

ほぼゼロですね。

少なくとも、俺には無理です。

あれを真似したら、確実に海に突っ込みます。

(山口)

だろうな。

だからこそ――

「零戦が弱い」のではない。

「零戦を完全に使える者」が、極端に少ないだけだ。

(菅野)

……参りました。

紫電改二に乗ってきた身として言うのもなんですが……

今日の空戦を見たら、はっきり分かりましたよ。

零戦は、まだ死んでない。

(新月)

さてと、榛名はどうだった?

(榛名)

え?

(新月)

ほら、菅野大佐の飛行の仕方だよ

(榛名)

え?えっと……

……はい。

菅野大佐の飛び方は、とても安定していました。

高度管理も速度管理も正確で、無駄がなくて……見ていて安心できる、正統派の飛行だと思います。

……それに比べて提督は……その……本当に蛇行運転でしたので……。

(菅野)

あ、ありがとうございます。

いやぁ……「安心する」って言われるの、久しぶりですね。

でも正直、隣で見ていて一番落ち着かなかったのは――

提督の機体でした。

(新月)まぁ、基本的に単独行動が多かったからな

(山口)

……同感だ。

あれは安定飛行ではない。

敵も味方も予測不能だ。

単独行動が多かった、という言葉で片付けるには……癖が強すぎる。

(大淀)

「癖」というか「危険運転」というか……。

戦果がすべてを黙らせていますが、同じことを他の搭乗員がやったら即禁止です。

その点、菅野大佐の飛行は教範に載せられますね。

(金剛)

でもネ!

提督の飛び方、敵から見たら最悪ヨ?

あっち行ったと思ったら、次の瞬間後ろ!

完全にトラウマ案件デース!

(飛龍)

うん。

菅野さんの飛行は「生き残る飛び方」。

提督のは……「相手を壊す飛び方」。

どっちが正しいかって言われたら、状況次第だけどね。

(菅野)

いやほんと……

今日ほど「零戦って怖いな」って思った日はないですよ。

機体じゃない。

乗ってる人が怖い。

(山口)

……榛名。

君の評価は正しい。

安定した飛行は艦隊を守る。

だが――

(山口、少し間を置いて)

ああいう蛇行運転ができる者が一人いる艦隊は、

敵にとっては厄介極まりない。

(榛名)

……そ、そうなんですね。

で、では……榛名は、安心できる側として頑張ります……!

(新月)

……もしかして榛名、意識しちゃってる〜?

(榛名)

なっ……!?

て、提督!!いきなり何を言い出すんですか!?

そ、そんな……意識しているだなんて……!

(新月)いや〜、何でも〜?

(大淀)

……提督。

からかうにしても、タイミングというものがあります。

今の榛名さん、分かりやすすぎて見ているこちらが少し気の毒です。

(金剛)

OH〜?

これはこれは〜♪

顔に出てるヨ、榛名!ほら、耳まで赤いネー!

Don’t worry!お姉ちゃん、こういうの大好物デース!

(菅野)

え、え?

えっと……僕、何かまずいことしました?

普通に飛んだだけなんですが……。

(榛名)

ち、違います!!

そ、そういう意味ではなくてですね……!

ただ……その……評価として、です!

評価として凄いと思っただけで……!

(山口)

……ふむ。

動揺して判断を誤るほどではない。

だが、感情が揺れるのは悪いことではない。

戦場では、それが責任感に変わることもある。

(飛龍)

あー、はいはい。

これは完全に自覚なしで刺してるタイプね。

菅野さん、あんまり無防備だと罪ですよ?

(菅野)

えぇ……!?

いや、そんなつもりは全然……。

(榛名)

……っ。

そ、その……。

ありがとうございます……。

(大淀)

……はい、そこまで。

これ以上続けると、作戦室の空気が妙な方向に行きます。

提督、次の指示をどうぞ。

(金剛)

Eh〜?もう終わり〜?

いいところだったのにネー!

(榛名)

き、金剛お姉さま!!

も、もう……!

(新月)

こりゃ天然ジゴロだな

(菅野)

なんですかいきなりー!

(山口)

いや、君は十分誑しだ

(菅野)

多聞さんまでー!!

(山口)

……いや、事実だ。

本人にその気がなく、相手だけが勝手に意識する。

それを繰り返している時点で、十分に誑しだ。

(菅野)

俺、ほんとに何もしてませんよ!?

普通に飛んで、普通に話してただけじゃないですか!

(大淀)

……ええ、その「普通」が問題なのです。

自覚がないまま距離を詰める、評価を真っ直ぐ口にする、悪気ゼロ。

典型的な“天然”ですね。

(金剛)

OH〜♪

これはもう確定デース!

Unconscious Lady Killer!

本人だけが気づいてないパターンネ!

(榛名)

……っ!?

ち、ちが……その……っ。

い、今の話は関係ありませんから……!

(飛龍)

はいはい、榛名は落ち着こうね。

でもさ、菅野さん。

その無自覚さ、戦場より危険だから覚えといた方がいいよ?

(菅野)

えぇ……理不尽だなぁ……。

空では褒められて、地上では糾弾されるって、どういう扱いなんですか。

(山口)

安心しろ。

君は敵機より先に、周囲を撃墜しているだけだ。

(菅野)

それ、全然安心できないんですけど!

(大淀)

まぁ……それは、提督にも言えることですけどね。

(新月)

俺?

なわけなわけ!!

(山口)

……自覚がない。

なるほど、症状まで一致しているな。

(菅野)

え、ちょっと待ってください。

新月さんまで同類扱いなんですか?

さすがにそれは無理があるような……。

(飛龍)

無理?

どこが?

自分で前に出て、背中で語って、結果だけ叩き出して、

「俺は普通だ」って顔してる時点でアウトでしょ。

(金剛)

YES!

提督はね〜、戦場で無自覚にハートを撃ち抜くタイプデース!

しかも重装徹甲弾クラス!

(新月)

待て待て待て、

俺はただ普通に指揮して、普通に飛んで、普通に戦ってるだけだぞ?

(大淀)

その「普通」が基準外なんです。

単独行動で敵中に突っ込んで、無被弾で帰ってきて、

なおかつ部下からの信頼が異常に厚い。

……誑し要素、揃い踏みですね。

(菅野)

うわぁ……。

じゃあ俺だけじゃなくて、この鎮守府そのものが危険地帯じゃないですか。

(山口)

そういうことだ。

優秀で、無自覚で、しかも否定する。

――一番厄介な指揮官だな。

(新月)

……ちょっと待て。

誰も俺を擁護しないのはおかしくないか?

(榛名)

……あ、あの……。

提督は……その……。

……い、いえ!

なんでもありません!!

(飛龍)

はい、今ので確定。

(大淀)

ええ、確定ですね。

(金剛)

Welcome to 天然ジゴロ同盟デース、提督♪

(新月)

……納得いかん。

 




次戦、第四戦 『新たな出会い』
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