この作品を開いてくださりありがとうございます。そして前話に引き続きお読みくださっている方もありがとうございます。
更新ペースが落ちるのでご了承ください
それでは本編をお楽しみください〜…………
(追記:今回は実質の説明回です。提督同士の少し緊張感のある話、よくないですか?)
第九戦 夜間訪問
(その晩……)
(山口)
……新月司令、起きているかな?
(新月)
あっ、山口副司令。起きてますよ。立ち話は何ですしどうぞどうぞ……
(山口)
……失礼しますな
(新月)
……要件は?
(山口)
あの名張という重巡洋艦、私がいた世界にはなかったのだが………なんなんだ?
(新月)
あれは僕がいた世界の重巡洋艦です…さて、もしかしてその感じ、性能が知りたいのでは?
(山口)
左様。いいかね?
(新月)
そりゃぁ、少々お待ちを
(そして棚から日本帝国海軍重巡洋艦一覧Ⅱとかかれた書類を持ってきた)
(新月)
ここの要項7番に書かれてるのが名張です。(山口)どれ………
(そしてそこにかかれた性能は……
名張型重巡洋艦1番艦名張
全長220m
最大横幅31m
基準排水量:13754.67t
満載排水量:18672.60t
出力:161000馬力
速力:32.98kt
装甲:舷側210mm 甲板80mm
主砲:50口径三年式一号20cm連装砲B型7基
魚雷:六年式53cm三連装発射管13基
対空兵装:
60口径九八式7.62cm連装高角砲3基、37mm連装機関砲7基、九三式13mm四連装機銃6基、40口径八九式12.7cm連装高角砲A1型四基、
航空設備:カタパルト二基、零式水上偵察機3機搭載)
(山口、書類を追いながら無言になる)
(山口)
………………。
(新月)
……副司令、
声が消えてますよ。
(山口)
いや……
少し待ってくれ。
……確認だが、
これは重巡洋艦で間違いないな?
(新月)
はい。
あくまで分類上は。
(山口)
……舷側装甲二百十ミリ。
甲板八十ミリ。
主砲二十糎連装七基十四門。
魚雷発射管三連装十三基……三十九門。
(書類から顔を上げる)
(山口)
――戦艦と雷巡と防空巡洋艦を
一隻に押し込めたような艦だな。
(新月)
だいたい合ってます。
(山口)
合っていてたまるか。
……これが「条約型」の範疇だった世界は、
さぞ地獄だったろう。
(新月)
条約?
あぁ……
うちの世界線では、
その単語は割と早めに形骸化しました。
(山口)
……なるほどな。
(再び書類を見る)
(山口)
しかし、
出力十六万一千馬力で三十三ノット。
船体二百二十メートル。
排水量も数字上は抑えている。
(低く息を吐く)
(山口)
……化け物だが、理屈は通っている。
(新月)
設計思想は単純です。
「沈まない重巡」
「近寄らせない重巡」
「単艦で戦線を維持できる重巡」。
(山口)
……だから今日の演習で、
あれほど航空隊が近づけなかったわけか。
(新月)
ええ。
撃墜は出来なくても、
攻撃を成立させなければ意味がない。
(山口)
対空兵装の量も質も、
巡洋艦のそれではない。
しかも砲配置……
死角が極端に少ない。
(新月)
名張は、
「落とす艦」ではありません。
「諦めさせる艦」です。
(山口)
……恐ろしい思想だな。
(新月)
ですが副司令、
もっと恐ろしいのは――
(山口)
?
(新月)
これでも未完成扱いだった
という点です。
(山口)
……何?
(新月)
本来はレーダー連動射撃、
VT信管相当の近接信管、
そして新型高角砲を載せる予定でした。
(山口)
……待て。
それを載せたらどうなる。
(新月)
半径十数キロ、
事実上の飛行禁止空域が出来ます。
(山口)
…………。
(山口、静かに書類を閉じる)
……君の世界が
なぜ航空戦を制圧出来たのか、
よく分かった。
(新月)
理解が早くて助かります。
(山口)
最後に一つ聞こう。
――なぜ彼女を、
こちらの世界に連れてきた?
(新月)
……一言で言えば。
(少し間を置いて)
(新月)
この世界でも必要だと思ったからです。
(山口)
……左様か。
(立ち上がり)
(山口)
ならば私は反対せん。
あの艦は――
艦隊を護る盾だ。
(新月)
ええ。
そして、
本人はその自覚があまり無い。
(山口)
……それが一番厄介だな。
(扉に手をかけて)
(山口)
夜分、失礼した。
だが有意義だった。
(新月)
こちらこそ。
またいつでも。
(扉が閉まる)
(新月、独り言)
……行ったかな?
…………残念ながら名張はただの重巡ではないんだよな…あの子はーーーー
(遠くで、
静かな波音だけが続いていた)
次戦、第十戦 『其々の道、其々の恋路と無自覚二人 甲』