問題児たちとブリテンの王(100万分の1の候補)が異世界から来るそうですよ?   作:エステバリス

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前回投稿から時間を空けてしまいました。

ですが、この時間は僕にとって決して無駄ではなかったようです。

なぜなら、この空白の期間に僕は改めて自分がロリショタコンなのだと知らされてしまったんですからね!(えー




黒兎は問われた。

 

 

「ったく……今日はよく濡れる日だな……おい黒ウサギ。クリーニング代は出るんだろうな?」

 

「全くです。ってか十六夜さんが無茶苦茶やらなきゃここまでビショビショになることなかったでしょうに」

 

十六夜の暴風と蛇神の水流が交わったそれは盗賊が砕いてなお暫く揺れ続け、最終的に十六夜と盗賊の身体を丸ごと水浸しにすることでその動きを終えた。

 

だがまあ二人ともその事に関しては軽く捉えておりあまり気にしていない。十六夜は冗談半分だったのだが、盗賊はそれに乗じてお金を掠め取るつもりでもあったのか、やたら目が生き生きしていたが。

 

が、そんな二人をよそに黒ウサギはただただ呆然としていた。

 

(嘘っ……!?蛇神を殴り倒した……!?ギフトを使ったような気配もないのに?それに盗賊様の方も、あれだけの力を持ったものを資質に左右されやすい外付けのギフトで、一瞬で氷漬けに……)

 

開いた口が塞がらないとはこの事を言うのだろう。正に黒ウサギは二人のギフトに圧倒され、思わず開いた口が開いているということさえ意識しないほどの衝撃を受けた。

 

「……おーい」

 

「黒ウサギさーん?ショック死しちゃいました?」

 

「……このままボーッとしてると、脚とか胸とか揉みしだくぞ」

 

「サラッと犯罪行為をしようとしないでください」

 

「ハッ!?ちょ、貴方はおバカですか!?黒ウサギが二百年守り抜いた貞操に傷をつけると言うのですか!?」

 

「二百年守り抜いた貞操?うはっ、超傷つけてぇ」

 

「おバカ!?いいえ、おバカ!」

 

疑問形から一瞬で確定形に変えたのはなんら間違いではないだろう。なにせこの少年、女性がかなり気にする処女(ハジメテ)にこんなことを抜かしたのだから。

 

これにはさすがの盗賊もドン引き……

 

「に、二百年……?黒ウサギさんいくつですか。マーリンやスカアハの比じゃないですよ……」

 

しなかった。むしろ盗賊の関心は黒ウサギが言った二百年に向かっていた。

 

「二百年と言っても皆様の年齢に換算するとまだ15、6です!皆様と同い年くらいですから、勘違いしないでください!」

 

スパァンッ!とハリセンツッコミが炸裂。そんなやりとりをした後、三人はすぐに冷静になり、黒ウサギは倒れた蛇神に視線を送る。

 

「ところで、蛇神様はいかがなさいましょう……?もしかして死んでいらっしゃますか?」

 

「命まではとってねぇよ。そんなの面白くねぇからな」

 

「それには同感ですね」

 

「それではギフトだけいただいて行きましょうか!一応これはギフトゲームだったんですし、なにより十六夜さんが勝利を収めましたしね!」

 

「おう」

 

黒ウサギが蛇神に向かって近づいて蛇神の近くでゴソゴソやっているうちに十六夜は盗賊の元へと近づく。

 

「……どう思う?黒ウサギのこと」

 

「真っ黒ですね。シロかクロかと言われたらもう髪色の変化が露骨なくらいに」

 

「……ま、あそこまで妙に焦ってるなら気付くわな」

 

「色々と不可解なところもありますしねぇ……彼女、決定的なところだけ狙って言及してませんよ」

 

「だな……んじゃ、そろそろネタ明かしの時間か」

 

「見てくださいよお二人とも〜!こんなに大きな水樹の苗が手に入りました!これで水の問題は解決!他のコミュニティに買いに行く必要がなくなったのデスよ!」

 

うっきゃー、と大はしゃぎになっている黒ウサギに対して十六夜はその黒ウサギの謎ダンスを制止させるかのように、簡素な言葉を放った。

 

「それはよかったな黒ウサギ……それじゃ喜びついでに一ついいか?」

 

「どうぞどうぞ」

 

完全に調子に乗っている。十六夜はその黒ウサギの謎ダンスを止める質問をした。

 

「黒ウサギ……オマエ、決定的なことを一つ俺達に隠してるだろ」

 

ビクン、と黒ウサギは止まった。最早その反応だけで十六夜の問いは意味のあるものだとわかった。

 

「……さて、なんのことでしょうか?」

 

「オマエ、なんで俺達を呼ぶ必要があったんだ?」

 

「そ、それは皆様にオモシロオカシク箱庭ライフを謳歌していただこうと」

 

「始めそう言った時から怪しかったんですよね、黒ウサギさん。もしそうならなんで"世界に退屈もせずにブリテンで訓練ライフを送ってた"私も呼び出されるんでじょうか?

それにそもそも、黒ウサギさんの目は必死すぎますよ……まるで山賊に身ぐるみ根こそぎ剥がされて無一文になった旅人みたいにね」

 

その表現の仕方はどうにかならないのかと十六夜は思ったが、盗賊は自称アーサーである以前に盗賊。恐らく実体験と織り交ぜて説得力を向上させているのだろう。被害者か加害者かはともかく、彼女が咄嗟に十六夜を助けたところ、おそらくは前者だろうが。

 

「コイツは俺の勘だが……お前らのコミュニティは訳あって衰退した、もしくは弱小のチームだったんじゃないのか?」

 

そしてそこから畳み掛けるように十六夜が確信に触れる。しかし、黒ウサギはそれに対して黙るのみ。

 

「……、沈黙は是なり、だぜ」

 

十六夜の一言は黒ウサギにとってトドメの一言となり、黒ウサギは半ば諦めと絶望を共にしてへたり込んだ。

 

(くっ……せめてコミュニティの加盟を正式に明記して頂けた後にこの事に繋がったのならまだコミュニティを抜ける手順の都合上よかったのに……!)

 

しかし、これはもうほとんど追い詰められた絶体絶命の崖っぷち。黒ウサギはまさか、この一番こういうことに対して弱そうな少年(十六夜)にいの一番に確信に触れられるとは想像もしていなかった。

 

目的がほとんど割れていた上に、見極められなかった自分に対する不甲斐なさが黒ウサギを一気に襲ってきたのだ。

 

「ほとんどクロですね、この反応は。この事実をここまで必死になって隠そうとするってことは……恐らくまだ私達にはコミュニティを選ぶ権利というものが残っているんじゃないですか?」

 

黒ウサギの無言の中にある確かな動揺を感じ取った盗賊はふと十六夜に話をふる。全てのことをハッキリさせるためにだ。

 

「だろうな」

 

「ッ!」

 

「それじゃーま、私はここいらで黒ウサギさんとはお別れですね。流石に私、資金なしチュートリアルなし経験値ゼロの状態でボスキャラに挑むほどバカでもないので」

 

「まっ、待ってください!」

 

盗賊の言葉に思わず黒ウサギは必死に反応する。その過剰なまでの反応は黒ウサギのコミュニティが如何に最悪な状況かを暗喩しており、盗賊の行動はほぼ思い通りの結果に傾いていた。

 

「……なにか?黒ウサギさん。嘘つきはドロボーの始まり。そんなドロボーウサギさんは私になにか用でもあるんですか?」

 

「わっ、私のことはいくらでも罵って貰っても構いません!ですが、話を……どうか話だけでも聞いてください!」

 

「……仮に、十六夜さんはともかくとして私が黒ウサギさんがこれから語る話を聞くとして、それを真実だと証明する証拠は?」

 

盗賊は更に黒ウサギに問い詰める。自分が盗賊ということをやっていたからだろうか、彼女は非常に疑い深く、かつ真剣に問いてきた。

 

「証拠は……この場にはないです。証拠は私達のコミュニティにしかないのが現状です」

 

「……そうですか。じゃ、聞くだけ聞いちゃいましょう。私は。十六夜さんはどうします?」

 

「ん、俺か?俺は面白けりゃそれでいいさ。面白けりゃ協力する。くだらねぇ理由で俺達を呼んだってんなら、どこにでも好きなとこに行くさ」

 

「……ありがとう、ございます」

 

黒ウサギは一言、盗賊と十六夜に一礼と感謝を述べるとつい先ほどまでの司会者みたいな顔に戻った。

 

「それでは、せいぜいオモシロオカシク、我々のコミュニティの現状を語らせていただこうではありませんか」

 

◆◇◆

 

要約。

 

一つ、黒ウサギのコミュニティは元々は東西南北に別れる箱庭の東側でもかなりの力を持ったコミュニティであったが、"天災"と呼ばれる存在、"魔王"の権限によってギフトゲームに強制参加させられ、そのチップとして強力な同士と箱庭における身分証明と国籍のようなもの、コミュニティの"旗"と"名"を奪われた。

 

二つ、それ以降黒ウサギのコミュニティはそんな魔王のコミュニティによって旗と名を奪われたコミュニティの総称、"ノーネーム"としての活動を余儀なくされていること。

 

三つ、"ノーネーム"は旗と名のない者たちへの蔑称であり、身分証明となるものがないのと同然の状況ではギフトゲームの参加すらも難しい。

 

四つ、唯一の収入源たる黒ウサギも"審判権限"の制約によって"審判"としての仕事をこなせば収入は入るものの、およそ半月の間ギフトゲームへの自由参加が不可能であること。

 

そして最後に、上述の通り有力な仲間はいなくなり、コミュニティに残ったのはそもそも黒ウサギと十に足りるか満たない年端の子供が二百人ほどというのが現状である、ということ。

 

ただまあ、この最悪な状況をいくらか改善する策、コミュニティを新しく作り直すというものもあるのだが、それはコミュニティの"旗"と"名"、そして栄光を魔王から取り戻さんがためにこれを拒み続けているとのこと。

 

そしてそんな事実が知られればほぼ間違いなく異世界から呼び出した者達はコミュニティへの加入を拒否してしまうであろうということから、このことを隠していたのだという。

 

「だからこうして異世界から十六夜さんや盗賊様のような強力なギフトを保有する方々を呼び出す他なかったんです!お願いします!どうか私達に力をお貸しください!」

 

「ふぅん……"魔王"相手にコミュニティの再建、ね」

 

「………」

 

十六夜は黒ウサギの説明を自身で復唱するように、盗賊は対して何も言わずにじっと頭を下げる黒ウサギを見つめ、片方は笑い、片方は怒りを包み隠そうともしなかった。

 

「いいな、それ」

 

「これは、ちょっと……」

 

「え?」

 

「え?じゃねえよ黒ウサギ。協力してやるって言ってんだ。もっと喜べ」

 

「ってか子供と泣き落としなんて卑怯なことやってくれますね黒ウサギさん……あーぁ、傭兵さんのお人好しが感染(うつ)っちゃったんでしょうかね?」

 

「で、ですが……」

 

信じられない、そんな風に二人を、特に盗賊を見つめる黒ウサギ。そんな黒ウサギに十六夜は笑いながら、盗賊は若干目を逸らしながら答えた。

 

「魔王を相手に"旗"と"名"を取り返す……実にロマンが溢れてる。協力するには充分すぎる理由じゃねえか」

 

「こうなったのもぜぇーんぶ傭兵さんのせいですからね!ってか魔王ってなんなんですかそれ!すっげームカつく!

目的は知ったこっちゃないですけど、どんなに真っ当な理由でもそういうふざけたことする輩がいるから私みたいなのがいなくならないんですよ世の中!!」

 

十六夜はニヤニヤ笑い、盗賊はうがー!と叫ぶ。理由は違えど、この二人の思いは"魔王を倒す"という共通のものとなった。

 

「ま、そういうこった。精々期待してろよ黒ウサギ」

 

「あーもう!これでブリテンに帰る前にやってかなきゃいけないことができたじゃないですか!いったい何ヶ月、いや何年私はヘヴリディーズに文通なしで過ごせって言うんでしょうかねぇ!ぜっっったい帰ったらスカアハにボコスカジャンに扱き抜かれるーーっ!!」

 

黒ウサギは絶対に断られると覚悟して告げたことなので、この二人の返しは凄く予想外で暫くポカンと二人を見ていて、すぐに気を取り直して深く礼を述べた。

 

 






というわけで今年最後のかっこうむしでしたー!

みなさん来年もよろしくお願いします!
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