僕は強くない。でも、僕は強い。   作:Mr.♟️

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プロローグ

 

なんで僕はこの家に生まれたんやろ。親ガチャ大外れもええとこや。なんで『この家は嫌だ』みたいなブロック機能ないん?この家、ほんまにゴミすぎて笑えんわ。

 

術式が判明した頃はチヤホヤしくさったカス共。当たり術式や言うてもてはやした癖に、僕が術式を使えんって分かったら蜘蛛の子散らしたみたいにいなくなりおった。

 

言うておくけどなぁ、僕の術式『呪霊操術』なんてハズレもハズレや。誰やねん、こんなゴミ術式生み出したドブカスは。

 

この術式最大の欠点──不味いねん。呪霊を取り込む時に....そやな、呪霊玉とでも言うておこうか。この呪霊玉がデカい上に不味い。口の中に入れるだけでも嫌なのに、舌に触れた瞬間、地獄味わうんよ。

 

最初、パパと一緒に呪霊狩り行った時になぁ、玉にすることはできたけど、その場で吐いてもうてん。

 

ほんまに不味い。呪霊操術は何匹でも取り込めることが強みなんやけど、無理無理。こんなん何百個も食べたら正気失うわ。

 

まあ、御託並べてもしゃあない。パパが半殺しにして僕が玉にした呪霊2匹──1級が1匹と2級が1匹な。家に帰ってきてから、2級の方だけは頑張って飲み込んだんよ!

 

僕本当に偉いな思うて、パパに褒めてもらお思うてたらな──パパの部屋に行く間にあのドブカスに見つかって、『呪霊だしてみい』言われたん。しつこいから渋々召喚したら、瞬殺しやがった。なんなん、あいつ。しかもその後、僕すっっっごいボコられたんよ。

 

挙げ句、捨て台詞に『当主なろうなんて身の程知らずなこと考えんと生きいや』やて。10歳以上離れてる7歳の僕に対して器小さすぎん?

 

仕返ししたくても、あのドブカス強いんよ。

 

仮に手持ちの1級を飲み込んだとしても、どうせあいつに祓われる。それならあのゲボ不味い玉、飲み込むだけ損やん。

 

しかもやで?パパにあいつ〆てくれって頼んだら、『揉め事を起こすな』って僕が殴られたんよ。それから2年間パパと会うてない。僕は本邸追い出されて、今は倉庫暮らしや。

 

ご飯ももらえんからそこらの雑草と土で腹満たして、雨の日は倉庫の古びた壺に水貯めて凌いでる──あ、でも、たまに倉庫の前に塩の塊みたいなおにぎり落ちてることがあるんよ。

 

 

まあ、それで、何が恐ろしいって、そこまで飢えてても、残ってる1級の呪霊玉を食べようとは思えんのよな。

 

なんなん。こんなん人間の生活やないやろ。なにが『禪院家に非ずんば呪術師に非ず 呪術師に非ずんば人に非ず』や。お前らの方こそ人やない。畜生やないか。

 

「せめてなぁ、この呪霊玉が特級やったら、僕を虐げたやつら全員土下座させたるのに」

 

こんな在り方を良しとしている当主も、掌返して僕をいじめるゴミ共も。あのドブカスも、強面の癖に息子を見捨てるような父親も。全員見下ろしたるのに。

 

.....これからも一生こんな生活させられんのかな。それしかないよなぁ。呪霊玉飲んで本邸戻ったところで、あのドブカスに虐められるだけやしなぁ。

 

しかもや、戻ったとしても、あの吐瀉物みたいな玉を飲み込む日々が待っとる。無理や。回数の上限が決まってるならまだしも、上限がないって時点で心が折れる。

 

「相伝の十種影法術やったら、こんな目にあわんですんだのに」

 

調伏の儀はあるやろうけど、不味い玉飲まんでええんやろ。そっちが良かったわ。あ、でも、相伝やったらどの道あのドブカスに殺されるか。詰んでるやん。

 


 

あかん。なんか最近、このドス黒い呪霊玉が美味そうに見えてきたわ。

 

そりゃあそうなるよ。倉庫の前におにぎり落ちんくなったんやもん。草と水と土だけで生きてたら頭もおかしくなるやろ。

 

あー、でも、あかん。一応この1級呪霊玉は僕の虎の子や。最後の希望なんや。

 

これを飲んで本邸に戻ったところで、見捨てられてる僕を助けてくれる人はおらんやろうし、なにより呪霊もあのドブカスに祓われて終いや。

 

そうなった時に、誰かが新しい呪霊を取り込む手伝いをしてくれるかもわからん。

 

これを飲むんやったら、本邸にいる誰よりも強くなって、自分の身を守れるようにならなあかん。

 

やとすれば、僕がやらなあかんのは

 

──『縛り』やろうな。手っ取り早く強くなるんやったらそれしかないわ。

 

あかん、頭が回らん。馬鹿みたいに腹減っとんねん。思考がまとまらん.....細かいことはこれ飲み込んでから考えればええやろ。

 

 

 

 

 

 

 

 

───────まっっっっっっっっっっず!!!!!腹も膨れんやん!!なんやねん!

 

 

 

 

 

 

 

 

「....お陰で目が覚めたわ」

 

よし、縛り考えよか。

 

まず、呪霊操術のメリットは僕が今悩まされている『上限なく呪霊を取り込めること』。厳密には呪力量とかで制限があるんやろうけど、残念というべきか嬉しいと言うべきか、僕は呪力量多いんよ。

 

 

 

──待てや。待て待て待て。

 

これ、いらんやん。僕ができうる限りあのクソ不味い玉を取り込みたくない思ってるんやから、この『数の利』はメリットどころか今の僕にとってはデメリットやん。

 

なら、呪霊操術の『軍勢』という最大の強みを捨てて、扱える呪霊を極限まで絞れば──質は格段に上がるんとちゃう?

 

でも、それだけじゃ足らん。僕が試しにここで呪霊をだせば、本邸にいる連中が来る。あのドブカスがきて、この縛りで強化した呪霊があいつ以下だったら、今度は今の軟禁なんて生易しいことはしてもらえん。

 

良くて一生地下牢、最悪で殺される。

 

呪霊操術を使うようになった僕は、次期当主を目指してるドブカスにとって邪魔な芽でしかないからなぁ。もっとリスクを背負わなあかん。

 

呪霊操術の他の強みは『2級以上実力差が離れていれば、降伏を省いて無条件で取り込めること』。

 

けどな、取り込む呪霊を絞るんやったらこれも不要や。雑魚を乱獲する機能なんざいらん。これも縛りで捨てよう。

 

 

こんなもんで充分──やないな。

 

 

あいつは『投射呪法』持ちや。呪霊の動きを無視して、術師である僕の首を狙ってくるかもしれん。

 

いくら僕の呪霊が強くなろうと、指示を出す僕が反応できんかったら意味がない。

 

そら、そうや。いくら呪霊が強かろうと、僕が取り込んだ時点で呪霊の自我はなくなる。つまりや、僕の拙い指示で動くラジコンになるわけや。1級クラスの性能を、戦闘経験ほぼ皆無の僕が完璧に使いこなせるか?無理やろ。

 

 

 

 

 

 

 

ん、あれ?

 

 

 

 

 

 

──自我、残したらええんとちゃう?

 

流石にあかんか?自我を持たせた呪霊が従うとは限らんし、反逆されて僕のこと殺すかもしれんよなぁ。

 

.....いや、それならそれでええんちゃう?どの道、このままじゃ飢え死にするか、ドブカスに殺されるかや。

 

 

 

 

なら、取り込んだこの1級呪霊が、僕の味方になってくれることに全チップ賭けたる。

 

 

 

決めた、賭けよか。

 

僕が自分自身に科す縛りは4つや。

 

【保有可能数の破棄】

 

取り込み、使役できる呪霊は最大5体までとする。

 

【無条件降伏の破棄】

 

いかなる等級差であっても、無条件で取り込むことは出来ない。

 

【自我の許容】

 

取り込んだ呪霊の自我を消失させず、召喚した時の自律行動を認める。

 

【一蓮托生】

 

手持ちの呪霊がゼロになった瞬間、術師は死亡する。

 

 

 

 

ええやろ。どうせ手持ちがゼロになる時なんて、殺されそうな時くらいや。リスクとして不足はない。

 

「ほんまに頼む──友好的であってくれや」

 

呪力が練り上がる。何もない空間に影ができる。

 

 

「出てこい──ッ!!」

 

現れたのは、パパが半殺しにしたあの醜悪な化け物──やない。

 

.....あれ?

 

あ、これあかん。なんで君、人型なん?

 

取り込む前はもっとドロドロした化け物みたいな感じやったやん。

 

いや、分かっとる。分かっとるんよ。

 

僕の縛りで底上げされて、変質したんやろ?

 

 

 

等級も上がってる。1級なんてレベルやない。同じ場所にいるだけで肌がピリピリするこのプレッシャー、間違いなくあのドブカス以上....というか、比べ物にならん。

 

 

 

『特級』や。

 

 

 

 

 

おかっぱ頭に、着物。まるで日本人形みたいな──

 

なあ、僕のこと殺さんよな?そんな可愛らしい子どもみたいな見た目して──殺さんよな?

 

僕が召喚した特級呪霊は、埃っぽい倉庫の中を見渡して、ボソッと言葉を紡ぎおった。

 

「.......ここ、汚い。きらい」

 

僕は賭けに勝ったんか?

 

教えてくれや──特級呪霊『座敷童子』。

 

「ぼ、僕が....僕が君を取り込んで召喚した術師や。情けない話やけど、僕のことこれから守ってくれん?」

 

「僕を信じてくれれば、綺麗な部屋で過ごせるって約束したるから」

 

「──口減らし?」

 

「あ、違う。あなた、ゴリラの後ろで逃げ回ってた子?」

 

「辛いよね。悲しいよね。土美味しくないよね」

 

なんや。なんで友好的な──そうか。一説によれば、座敷わらしは口減らしのために亡くなった子どもの守り神や。今の僕の状況を──可哀想な子どもと重ねてるんや。

 

好都合や

 

「死にたないんや。草でも土でも喰らうたるよ──でも、明日からはちゃう。君が協力してくれれば、僕も君も美味いもん食えるて約束する」

 

 


 

「──なんや。この重圧」

 

雅くんがおる倉庫の方やん。まさか、呪霊を取り込んだんか?いや、ちゃう。雅くんがもっとる呪霊は1級呪霊だけのはずや。2級の雑魚は前に俺がプチっと祓ったったしな。

 

 

でもな、これは1級の重圧ちゃう。

 

 

なんやねん、胸糞悪い。

 

こういうことがないように、徹底的に教育したったのに。『男尊女卑はくだらない』なんてほざいた時は、顔が腫れ上がるまで殴ったった。

 

俺が真依をいびってる時に割って入ってきた時は、腕をへし折ったった。

 

俺の靴を履かせろ言うたら反抗するように睨んできたから、その足をへし折ったった。

 

俺に逆らわんように。当主なんて身の程知らずな夢を見んように。出る杭は早いうちに打っといたったんや。

 

...まあ、その必要もなかったけどな。不味い言うて呪霊玉も飲まん、向上心のないカスや。構うだけ時間の無駄。

 

せやから、餓死するまで生かしといたろ思うて玩具として生かしておいてやった。週1でコソコソおにぎり運んでた真依ちゃんはキツく折檻して、餌も断った。

 

今頃、倉庫の隅で干からびて死んでる頃や思うてたんやけど──

そんな死に損ないが──今更逆らうんか。

 

取り込んだのは1級呪霊やろうけど、縛りでも結んで底上げしたんやろ。新しい呪霊を取り込む余力なんて残ってないはずやからな。

 

 

はッ、浅ましいな。ろくに飯も食うてないのガキが、最期に死に物狂いで足掻きよって。

 

いや、感心してる場合ちゃう。

 

「──あっち側に行くなんて、俺は許さへんで」

 

甚爾君や悟君。選ばれた強者だけが立てる場所。ただ恵まれた術式を持って生まれただけの、努力も根性もないガキが──俺を差し置いてそっちの領域に足踏み入れるなんて、万死に値するやろ。

 

 

お前は死んだように生きとったらええんよ。

 

 

いや──もうええわ。

 

 

 

俺がお前のこと、確実に殺したる。アホやな。1級を底上げしたところで、俺には勝てんのに。無駄なことをした自分を恨みいや。

 


 

座敷童子ちゃん

 

 

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