僕は強くない。でも、僕は強い。   作:Mr.♟️

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僕が当主になってから2年。諸々の改革も一段落して、ようやく最近は休めるようになってきた。新しいことを始める土台もできたしな。

 

「目安箱か。意外と入れるやつがいるんだな」

 

そや、目安箱。今までみたいな差別主義に逆戻りなんてことにならんように、目安箱を設置したんや。当主が直々に目を通す言うてな。

 

「そんなことないやろ。まだ設置して1週間──って、バカみたいに入っとるやん」

 

30通近くあるんちゃう?なんやねん、お前ら。遠慮するってことを知らんのか。僕がこれ全部目を通すのが可哀想やと思わんの?

 

「俺が代わりに処理しておくか?」

 

「──何言うとんの。僕が目を通さな嘘になるやん。こういう細かいところでサボると後に響くねん」

 

これやからパパはあかん。僕が新しく作ろうとしているルールを、炳筆頭が破ることを推奨したらあかんやろ。

 

「そうか。なら、せめて俺が読みあげよう。休みながら聞くといい」

 

「別に読み上げとかいらんけど....まあ、ええよ」

 

ほんまにいらんけど。まあ、お言葉に甘えて寝っ転がりながら聞かせてもらおか。この後は予定もあるしな。

 

『甚壱さんと雅さんに、しっかりと休んでほしい。前当主とまでは言わないけど、適度に休んで欲しい』

 

「なんやねん。パパ、部下に愛されてるやん」

 

諸々一段落付いたから、これからはようやく休めるところや。パパは知らんけど。今は特に大変な仕事任せとらんから休めるんとちゃう?

 

「この字は蘭太だな。余計な気遣いを」

 

「ササッと読み上げてーや。次行こか、次」

 

「わかった」

 

『立場関係なく全員が集まって食事を食べる日を作ってほしいです。食べる人の顔を見たいから』

 

「ええんちゃう?それで料理を作るモチベーションに繋がるなら、そういう日を作るのも悪くないやろ」

 

「どの程度の頻度にするつもりだ?」

 

「週1、日曜日でええやろ。全員分用意して、参加せんかったやつの分は冷えた飯食わしゃええねん」

 

「わかった。来月から始められるようにしておく」

 

「そや、蘭太君にやらせたらええやん。これでパパの仕事減ったなぁ。よかったやん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あとなんぼあるん?」

 

アホらしいのも何個か混ざっとったけど、大体はちゃんとした要望やった。目安箱始めて良かったなぁ。

 

「ラスト2つだ」

 

『術式が使えなくても、呪具を手に入れる機会がほしい』

 

「躯倶留隊の誰かやろか?パパはどう思う?」

 

「それがやる気に繋がるなら、2級までの呪具なら与えて問題ない」

 

「なら、呪具を賞品にした『術式なしの大会』でも定期的に開くことにしよか。ラスト読み上げてーや」

 

躯倶留隊のことならパパの方が詳しいし、問題ない言うてるならええやろ。呪具が欲しいやなくて、機会が欲しいちゅうのも気概として悪くない。

 

『今の禪院家が今後も続いてほしい』

 

「──悪ないなぁ。僕がやってきたことが認められるのは」

 

「!お前のやっていることは正しい」

 

「いや、いらんよ。パパの取ってつけたような肯定なんて」

 

「............ああ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「当主様お客様がお越しです」

 

あ、もう来たん。意外と根性なかったなぁ。

 

「行くで、パパ。最後の駒が落ちたわ」

 


 

「どないしたん?そないに青い顔して。体調悪いんやったらお引き取り願おか」

 

雅を訪ねてきた客人は、財務省の要職に就いている男だ。数日前とは別人のように憔悴しきっている。

 

「た、助けてくれ....ッ!」

 

「何がぁ?僕なんてホラ吹きな子どもなんよな?助けることなんてできんわー。やって、嘘つきの言うことなんて信じられへんやろ?」

 

「申し訳なかった!私が悪かった!どうか、どうか『悪夢』から解放してくれ!」

 

いい歳をした男が、年端もいかない子どもに跪いて助けを乞う。異様なはずのこの光景が、何故か当然のものに見えて仕方がない。

 

「なんやっけ。呪霊がついとるって教えてあげたのに、嘘つき呼ばわりされたなぁ。あの時は心が痛くてしゃあなかったわ」

 

嘘だ。そもそも、この男に呪霊なんて取り憑いていなかった。取り憑いたというよりも、嫌がらせをしていたのは雅の手持ち特級呪霊『白狐』だ。

 

白狐は雅の呪霊の中でも、飛び抜けて性格が悪い。

 

「だから謝っている!本当に申し訳なかった!私が愚かだった!」

 

「言葉が羽毛みたいに軽くて、まったく響かんなぁ。謝るだけなら子どもでもできるやん。大人やったら、謝罪+αがあるべきちゃう?」

 

悪質なマッチポンプだ。だが、呪霊が見えないこの男にはそれを見抜くことはできない。この数日、余程の地獄を見せられたのだろう。

 

「なんでも、なんでもします!地獄のような日々から抜け出せるなら、なんでも!」

 

「ほんまに?信じてええの?やってほしいこと、山ほどあるんやけど──お願い、聞いてくれるかなぁ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「日本有数の大企業、報道関係者、警察、政治家に財務省のお偉いさん。完璧や。完璧に土台が出来上がった」

 

「そうか。それはよかった」

 

雅が今の男に要求したことは2つ。自身が教祖を務める『宗教団体』への入信と、その法人設立および運営への便宜だ。

 

雅が動き出したら誰にも止めることはできない。やろうと思えば明日にでも呪霊の存在を日本....いや、世界に広めることができる。人脈も資金も拡散力も──全てを手中に収めた。

 

今の雅は、例え現代最強の呪術師であろうと止めることはできない。

 

「さ、ひと仕事終わったし──僕は散歩でもしてこよか。パパはついてこんといて、鬱陶しいから」

 


 

全部上手くいっとる。怖いくらい、順調や。

 

どいつもこいつも甘すぎるねん。

 

なんで僕らが、自分たちの存在すら知らんとのうのうと生きとる『非術師』を守らなあかんのや。

 

僕は、絶対に呪術師と呪霊の存在を世間に公表する。

 

パニックになって呪霊災害が増える?知らん。そもそも呪霊を生み出しとるのは、お前ら非術師の負の感情やろ。自分たちの呪いで死ぬなら、それはただの自業自得や。

 

「僕は、甘ちゃんやない」

 

呪霊の存在を認めんやつ、呪術師の活動を認めんカス共まで助ける義理はない。

 

これからの世界に必要なのは『選別』や。

 

新しい在り方に適応し、僕ら術師に敬意を払う人間だけを庇護対象とする。

 

術師は表に出るべきなんや。

 

お前らが間抜け面で享受しとる平穏が、裏で血を流す術師の死体の上で成り立っとることを知るべきなんや。

 

そうやないと、誰にも知られず死んでいく術師が、消耗品みたいに扱われる補助監督が──あまりにアホらしいやろ。

 

昔の陰陽師やって、権力者として表舞台におったわけやしな。原点回帰するだけや。

 

それにや──

 

禪院家当主たる僕が優先すべきは、顔も知らん有象無象の安全ちゃう。『禪院家に所属する人間』の命と尊厳を守ること。それが僕の責務であり、義務や。

 

その義務を果たすためなら、外の人間なんて何万人死んでも構わへん。

 

その義務を負ったからこそ、僕は禪院家の舵取りをする権利を手に入れた。見いや、あのゴミ溜めみたいやった家が、今じゃそこそこ見れる組織になったやろ?

 

 

「五条悟が生まれたことで、呪術界のバランスは崩れた」

 

けどな、所詮は『呪術界』だけの話や。

 

僕は、日本のパワーバランスそのものをひっくり返したる。僕たち呪術師が正当な評価と対価を受け取れる世界にしたる。そのために必要な権力は手に入れつつある。このままいけば問題ない。

 

そやけど、それだけじゃ足らん。結局、世界を変えるのはいつだって──圧倒的な『力』や。

 

力がないと、我を貫くことは出来ん。

 

そろそろ次の呪霊を仲間にしに行こか。

 

 

有名税で膨れ上がった特級仮想怨霊──『トイレの花子さん』。今の僕の戦力なら従えられるはずや。

 

足手まといはいらん。家の連中は連れてくだけ邪魔やわ。

 

僕一人で充分や。

 

 

 


 

白狐(人型)

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

八咫烏(人型)

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




お願いだから他のキャラと絡んでくれや、雅くん。女子キャラとの絡みを書きたいんや。なんで独白ばっかりするの。嫌がらせやん。。。

パパが甚壱なのか否か分かりにくくて申し訳ない。
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