ついにその日がやってきました。
雲一つない晴天の下、雄英スタジアムは数万人の観衆が放つ熱気に包まれています。場外まで響き渡る歓声、上空を飛び交う中継ヘリの音、そしてスタジアムの巨大な壁。
(……これほどの人間に、見られるのは初めてです)
控室の鏡の前で、私は体操着の襟を正しました。左手首のリストバンドは、公安の同期設定により、いつもよりわずかに青い光を放っています。これは「監視されている」という証であり、同時に「暴走は許されない」という戒めでもありました。
「……朱奈」
背後から声をかけられ、振り返るとそこには轟くんが立っていました。
「……お前のことだ。あの時の連中に、何か『枷』をハメられてるんだろ」
彼は私の手首をちらりと見やり、それから私の目を真っ直ぐに見据えました。
「だが、関係ねぇ。俺は親父の力を否定するために、一番上に行く。……お前がどんな事情を抱えてようが、全力で来い。俺も全力でそれを叩き潰す」
「……はい。私も、全力を尽くします。轟くん」
彼の宣戦布告は、不思議と私の心を落ち着かせてくれました。彼もまた、血筋や宿命という「枷」と戦っている一人だから。
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第1種目:障害物競走
アレから選手宣誓で恐らくやらかした爆豪君を置いといて私は第1種目のスタートラインに立っています
(狭い…………でもこの程度なら)
「雄英高校体育祭! いよいよ開幕だぁぁぁ!! 第1種目、障害物競走! 11クラス、総勢約200名のサバイバル! スタートッ!!」
プレゼント・マイクの絶叫と共に、ゲートが開きました。
一斉に飛び出す生徒たち。出口の狭い通路は、個性のぶつかり合いで凄まじい混沌と化します。
「……邪魔だ」
轟くんが地面を凍らせ、先行する生徒たちを足止めしながら一気に加速します。
(――艤装、部分展開。出力15%)
私はスケートのように氷の上を滑り、彼を追いました。
やがて、最初の障害物が姿を現します。かつての入試で猛威を振るった、巨大な0P(ゼロポイント)ロボット「ロボ・インフェルノ」の群れ。
「おぉっと! いきなり立ち塞がる巨大な壁! これをどう突破するのかぁ!?」
轟くんが巨大な氷壁でロボットを無力化し、その隙間を走り抜けます。
私は、エアポートを背後に連結し、アームを固定しました。
「目標、障害物の回避。……艦載機、発艦」
甲板から、数機のステルス機型小型機が射出されます。
私はそれらの機体から放たれたワイヤーを掴み、自身の艤装の推進力と合わせて一気に跳躍しました。
「……!? 空を飛んでる!?」
「八木朱奈! 艦載機を曳航(えいこう)機として利用し、ロボットの頭上をショートカットだぁぁ!!」
空中から見下ろすと、下ではデクくんがロボットの装甲を盾にして突き進み、爆豪くんが爆破で宙を舞っています。
(……おじ様、見ていてください)
スタジアムのモニター越しに見守る八木さんの顔を思い浮かべました。
私は今、破壊するためではなく、ただ「前へ進むため」にこの力を振るっている。
その事実が、胸の奥にある「不調」――いいえ、温かな高鳴りを、より一層強くさせていました。
「第1関門突破、トップ集団は依然として轟、爆豪、そして編入生の八木だぁ!!」
ロボ・インフェルノを空中で回避した私は、そのままトップ集団に食らいつきました。
前を行くのは轟くん、そして背後から爆音と共に迫る爆豪くん。
「逃がさねぇぞコラァ!!」
爆豪くんの声がが私の耳を掠めます
(縄の所は航空機で引っ張られてどうにかなりましたけど……………この反応は)
「さあトップ集団が最終エリアに到達! ここは地雷原! 威力は小さいが見た目と音がド派手な仕様! 慎重さと大胆さが試されるぞぉ!!」
プレゼント・マイクの声が響く中、轟くんと爆豪くんが地雷を避けつつ、互いを牽制しながら激しく先頭を争います。
(……この密度、艤装の滑走(スライド)では不利です。接触の可能性が高い)
私は一度足を止め、計算を開始しました。
通常なら艦載機で飛び越えたいところですが、恐らく対空兵器があるはず。
(つまり航空機無しで最大効率を……!)
私は背中のエアポートを右腕側にスライドさせ、固定しました。
「エアポート、独立防御形態。接地――」
私は巨大な装甲板を、自分の前方の地面に「道」を作るように斜めに叩きつけました。地雷が爆発しますが、戦艦の装甲を模した私の盾には傷一つ付きません。
「何だありゃあ! 八木朱奈、地雷を盾で押し潰しながら強引に道を作って進んでいくぅ!! まさに砕氷艦(さいひょうかん)の如き突破力だぁ!!」
「テメェ……ッ! 姑息な真似を!!」
爆豪くんが私の作った道を利用しようと飛び込んできます。
しかし、その時でした。
背後で凄まじい爆発音が響き、ピンク色の煙と共に何かが「飛来」してきたのです。
「うわああああああ!!!」
緑谷くんでした。
彼は地雷を大量に集めて爆発させ、その推進力で私や轟くん、爆豪くんの頭上を越えていきました。
(――緑谷くん!?)
「ここでまさかの緑谷が急浮上だぁぁぁ!!」
一瞬の静寂。そして、スタジアムが揺れるほどの歓声。
私は驚愕しながらも、すぐに思考を切り替えました。
「……負けられません」
私はエアポートを再連結し、推進力を最大まで引き上げました。地雷原を抜けた先、スタジアムへと続く通路へ、4人がほぼ同時になだれ込みます。
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狭い通路。肩がぶつかり合う。
デクくんの執念、轟くんの冷徹、爆豪くんの激情。
その中で私は、自分の内側に宿る「航る」ための意志を燃やしました。
「あぁーっと! 今1位でスタジアムに戻ってきたのは……1年A組、緑谷出久!!」
僅差。
私はデクくん、轟くん、爆豪くんに続き、
第4位
でゴールラインを駆け抜けました。
「はぁ、はぁ……」
艤装を解除し、荒い息を吐きながら膝をつきました。
1位ではありませんでした。でも、不思議と悔しさよりも、心地よい疲労感と高揚感が胸を支配していました。
「……すごかったね、緑谷くん」
私が声をかけると、デクくんは泥だらけの顔で笑いました。
「八木さんも、最後……すごかった。あんな道の作り方があるなんて」
ふと見上げると、貴賓席の方で八木さんが小さくガッツポーズをしているのが見えました。
平和の象徴ではなく、ただの「おじ様」としての、精一杯の応援。
(……できました。おじ様。私は、壊さずにここまで来ました)
しかし、喜びも束の間。
第2種目の内容が、ミッドナイトによって発表されました。
「次はこれよ! 『騎馬戦』!! そして1位の緑谷くんに与えられるポイントは……1000万!!」
スタジアムに、狩人のような鋭い視線が緑谷くんに集中します。
そして4位の私にも、複数の「視線」が突き刺さりました。
(……ここからが、本当の戦いですね)
私は再び気を引き締め、自分と共に戦ってくれる「艦隊(チーム)」を探し始めました。
って私ボッチなのでは!?
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以外と天然かつボケ寄りな朱奈ちゃん
ちなみに今回のランキングは4位に朱奈が入ったので
青山君が43位になりました
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