鋼鉄艦船のヒーローアカデミア   作:朱鶴

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う〜ん少し滞りそう


協力と騎馬戦

「……誰も、来ない?」

 

周囲を見渡せば、すでに緑谷くんの周りには人が集まり始め、爆豪くんも切島くんたちとチームを組んでいます。1000万を持つデクくんほどではありませんが、4位という順位、そして何よりUSJで見せた「兵器」としての圧倒的な力。

 

(……やはり、そうです。私は『破壊』のイメージが強すぎる。協力するにはリスクが大きすぎる。あるいは、私の顔がまだ怖いのでしょうか……)

 

表情には出しませんが、内心では不安が押し寄せていました。せっかくおじ様に「よくやった」と心の中で報告できたばかりなのに、孤独(ぼっち)の恐怖に心拍数が跳ね上がります。

 

「八木さん」

 

その時、背後から冷ややかな、けれど確固たる意志を持った声が届きました。

振り返ると、そこには轟くん、そして飯田くんと八百万さんが並んで立っていました。

 

「……轟くん。それに、飯田さんに八百万さんまで」

 

「お前のその『艤装』の防御力と機動力……今の俺のチームには必要だ。拒否権はねぇぞ」

 

轟くんのストレートな勧誘。飯田くんも眼鏡をクイッと上げ、生真面目な顔で頷きます。

 

「八木くん! 君の障害物競走での『道を切り拓く力』には感服した! 俺のエンジンの瞬発力と、君の安定した推進力があれば、1000万確保の確率は飛躍的に高まるはずだ!」

 

「わたくしも、八木さんのエアポートを基点とした戦術に大変興味がありますの。わたくしの『創造』で、あなたの弾薬や燃料の補給、さらには艤装の強化パーツまで……万全のサポートをお約束しますわ」

 

八百万さんの頼もしい提案に、私は目を見開きました。

 

(……私を、必要としてくれている?)

 

USJで「やりすぎた」私を恐れるどころか、彼らは私の力を「正しく使うための戦略」として数えてくれていた。胸の奥に溜まっていた冷たい不安が、スッと消えていくのがわかりました。

 

「……了解しました。個体識別――いいえ。轟くん、飯田さん、八百万さん。私を、あなたの『艦隊』に加えてください。……全力を尽くします」

 

私は三人に深く頭を下げ、すぐに思考を「兵器」から「仲間のための盾」へと切り替えました。

 

---

 

轟チーム:

騎手: 轟 焦凍(氷結と炎による攻撃・制圧)

前脚:飯田 天哉(エンジンによる爆発的加速)

左脚:八百万 百(防御補助・装備創造)

右脚(要):八木 朱奈(エアポート展開による全体防御・索敵・スライド推進)

 

合計ポイント715P

 

「艤装、展開。出力制限解除、15%。……統合リンク開始」

 

私の足元から展開されたエアポートが、チーム全体を包むように低い浮力(斥力)を発生させます。飯田くんの足への負担を軽減し、さらに八百万さんが創り出した防弾プレートを私のアームで固定。

 

「飯田、行くぞ」

「応!!」

 

飯田くんの排気音が鳴り響き、私のスライド推進がシンクロします。

氷の上の滑走をさらに上回る、重戦車のような加速。

 

「さあ始まったぁぁぁ!! 1000万争奪サバイバル!! 轟率いる『八木・飯田・八百万』という超エリートが、緑谷に迫るぅぅ!!」

 

実況が響く中、私は視界の端でおじ様(オールマイト)が「……よし!」とばかりに力強く頷くのを見逃しませんでした。

 

 

(おじ様肩入れは良くないのでは?)

 

と考えている内

 

 

「スタート!!」

 

プレゼント・マイクの叫びと共に、始まると同時にスタジアムは戦場へと変貌しました。

 

(おじ様……いえ、オールマイト。そんなに身を乗り出して見ていては、周囲に不審がられますよ)

 

心の中で苦笑混じりに保護者を窘めつつ、私の視界(センサー)は冷静に周囲の敵情を分析していました。

 

「八木さん、左からB組のチームが仕掛けてきますわ!」

「了解。……エアポート・防御(シールド)!」

 

私は腰の飛行甲板のアームを操作して、飛来する鱗くんの攻撃を鉄壁の装甲で弾き飛ばしました。

 

「飯田さん、そのまま右へ回頭。八百万さん、目眩まし用の閃光弾をお願いします」

「承知いたしましたわ!」

 

八百万さんが創り出したデバイスを、私の艦載機が掴んで敵陣の頭上で炸裂させます。

 

「うわっ、眩しい!?」

「今だ、飯田!!」

 

轟くんの号令に、飯田くんのエンジンが唸りを上げます。同時に私は、艤装の推進噴射(スラスター)を飯田くんの加速に同調させました。

 

「『統合加速・レシプロスライド』!*」

 

通常の騎馬ではあり得ない、地を這うような超高速移動。私たちは瞬く間に中堅チームを抜き去り、1000万を背負う緑谷くんチームを射程に捉えました。

 

「緑谷くん……! 逃がしません」

 

私は「空天穹」を引き抜き、それを上に座る轟くんへと差し出しました。

 

「轟くん、これを使ってください」

 

「……? 弓か。俺に何をさせる気だ」

 

「私の『個性の矢』は公安に監視されていますが、あなたの『氷』なら話は別です。この弓は私の艤装の一部として、触れたエネルギーを増幅・指向性を持たせる性質があります」

 

私の意図を察した轟くんが、不敵に口角を上げました。

 

「なるほど……広範囲を凍らせるより、一点に絞った方が確実ってわけか。八百万、矢を!」

「すでに用意してありますわ!」

 

八百万さんが創り出した特殊な「冷気伝導合金」の矢を、轟くんが番えます。彼が氷結の力を流し込むと、空天穹が青白く輝き始めました。

 

「狙うは緑谷の足場だ。……行くぞ!」

 

轟くんの手から放たれた氷の矢は、私の空母としての弾道計算に導かれ、正確にデクくんチームの進路を凍てつかせ、巨大な氷の檻を作り出しました。

 

「おぉぉーっと! 轟チームの連携がエグすぎる! 八木の弓を轟が操り、逃げ道を完璧に塞いだぁぁ!! まさに空母と巡洋艦の合同演習だぁ!!」

 

「……八木、いい道具を持ってるな」

 

「お役に立てて光栄です」

 

おじ様、見ていてください。私は今、誰かを壊すためではなく、仲間と一つの目的のために力を合わせています。

 

(ですが、この振動……爆豪くんが背後から迫っていますね)

 

スタジアムを震わせる爆音。私たちの「統合機動艦隊」を、最大の激震が襲おうとしていました。

しかしその機動力で難なく振り切ります

 

そうこうしている内に

 

 

「残り、一分を切ったぁぁぁ!!」

 

プレゼント・マイクの叫びがスタジアムに響き渡ります。

 

私たちのチームは、轟くんが私の「空天穹」を使い、冷気を一点に収束させて放った氷の矢によって、緑谷くんチームを巨大な氷の檻へと追い詰めました。しかし、そこには常闇くんのダークシャドウが立ち塞がり、決定打を阻んでいます。

 

「クソがぁ!! 混ぜろよ!!」

 

背後からは、爆豪くんが爆風を撒き散らしながら、鬼のような形相で突っ込んできます。

 

(……このままでは、乱戦に持ち込まれて逃げ切られる。公安の警告(アラート)も限界に近い……!)

 

私の脳内演算が、焦りにも似たノイズを刻みます。リストバンドは赤く点滅し、これ以上の高出力は「危険」だと私の神経を締め付けます。

 

「……轟くん、八木さん。……一つ、策がある」

 

不意に、前脚を担う飯田くんの声が低く、熱く響きました。

 

「飯田さん?」

 

「エンジンの不適切な使用……本来なら禁じ手だが、今の君たちを見ていたら、俺だけが『正解』の中に留まっているわけにはいかないと思った! ……八木さん、推進力の同調をお願いできるか!?」

 

飯田くんの足から、今まで聞いたことのないような、金属が軋む凄まじい排気音が聞こえてきました。

 

「飯田、お前……」

「轟くん、しっかりと掴まっていてくれ! ……八木さん、今だ!!」

 

「了解。……艤装、全リミッター一時解除。出力30%……いえ、40%!!」

 

私のリストバンドが、激しい拒絶反応として私の腕に電撃のような痛みを与えます。でも、そんなの、おじ様に比べれば何でもない。

 

「『トルク・オーバー』!!」

「『最大戦速(フルスライド)』!!」

 

飯田くんの爆発的な加速と、私の艤装による空間を切り裂く推進力が完全に噛み合いました。

 

「なっ……速すぎっ……!?」

緑谷くんが驚愕に目を見開いたその瞬間、私たちは一陣の突風となって、ダークシャドウの防御さえも置き去りにしました。

 

視界が歪むほどの速度。

轟くんの左手が、一瞬だけ、ためらいを捨てたように熱を帯びました。

 

「……悪いな」

 

轟くんの指先が、緑谷くんの首にかかった『1000万』の鉢巻を、鮮やかに掠め取りました。

 

「獲ったぁぁぁ!! 1位奪還! 轟チーム!! なんて速さだ!! カメラが追いつけねぇぇ!!」

 

「はぁ、はぁ……!」

 

飯田くんのエンジンから黒煙が上がり、私のリストバンドからは警告音が鳴り響きます。

私はそのまま地面に膝をつきかけましたが、八百万さんが後ろから支えてくれました。

 

「……やりましたわね、八木さん」

「……はい、八百万さん。飯田さんの……おかげです」

 

ふと見上げると、1000万を失った緑谷くんが茫然と立ち尽くし、空中でバランスを崩した爆豪くんが地面に激突していました。

 

そして、貴賓席。

おじ様――オールマイトは、立ち上がって、誇らしげに私たちを見下ろしていました。

 

(見てくれましたか、おじ様。私は……この仲間たちと、新しい『速さ』で航り切りました)

 

私の心の中に、いつぶりかの勝利の喜びという名の熱が広がっていました。

 

でも彼と一緒にいたら何処か温かさを感じますね




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