期末試験が始まり皆が色んな意味で苦戦してる中
期末試験を目前に控えた放課後。
A組の教室には珍しく緊張した空気が漂っていた。
実技試験ももちろん重要だが、その前に立ちはだかるのは筆記試験。
赤点を取れば補習行き。
そして補習組は実技試験にも影響が出る。
そんな中――
「……勉強を教えてほしい⋯⋯ですか?」
私は目の前の三人を見て、思わず聞き返してしまった。
瀬呂範太。
葉隠透。
芦戸三奈。
前回の順位はそれぞれ、
17位。
16位。
そして19位。
つまり――
「頼むよ朱ちゃん〜! 本当にヤバいの!」
机に突っ伏しながら芦戸さんが叫ぶ。
「俺も結構ヤバい」
「私は顔見えないから余計にヤバいよー!」
三人とも悲壮感が凄かった。
私は少し困ったように首を傾げる。
「……私、教えるのは苦手で」
「そこを何とか!」
「頼む!」
「お願い!」
三人が一斉に頭を下げた。
その勢いに押されてしまう。
「まぁ確かに、このままだと……色んな意味で危ないですね」
「だろ!?」
「というか赤点確定だから!」
「先生達に補習されるの嫌だし!」
切実だった。
私は少し考える。
確かに国語は苦手だ。
だが数学や理科ならある程度教えられる。
天喰先輩も言っていた。
『自分が出来る事を……誰かのために使うんだ……』
ならば。
「……分かりました」
「「「やったぁぁぁ!!」」」
教室中に歓声が響いた。
しかし。
十分後。
「つまり、ここに作用する力は――」
私はノートに図を書きながら説明していた。
「だから答えはこうなります」
静寂。
三人の顔が固まっている。
「……分かりましたか?」
「えっと」
瀬呂が手を挙げる。
「何でしょう」
「どこからその式出てきた?」
「公式です」
「その公式が分からねぇ!」
「あっ」
しまった。
私は普段、感覚的に計算している部分が多い。
説明を飛ばしていたらしい。
葉隠が机に突っ伏した。
「ダメだー! 頭良い人の教え方だー!」
「途中式が三段階くらい消えてるー!」
「えっ」
私は困惑した。
そんな難しい話をしたつもりはない。
すると後ろから声がした。
「八木さん」
振り返る。
そこには八百万百が立っていた。
「説明が少し難しいのだと思いますわ」
「あ……そう、なのですか?」
「ええ。少し補足いたしますわ」
そう言うと百は私の隣へ座った。
そして。
「まずこの公式がどういう意味かと言いますと――」
数分後。
「なるほど!」
「そういう事か!」
「分かったー!」
三人が一斉に理解した。
私は目を瞬かせる。
同じ内容を説明したはずなのに。
「……凄いです、百さん」
「ふふ。教えるのも勉強ですわ」
百が優しく笑う。
その時。
ガラッ。
教室の扉が開いた。
「勉強会か?」
飯田だった。
その後ろにはお茶子、上鳴、切島、耳郎までいる。
「おい待て」
瀬呂が青ざめた。
「なんか人数増えてね?」
「俺もヤバい」
上鳴が即答した。
「私も国語が……」
お茶子も手を挙げる。
気付けば。
教室の一角が即席勉強会になっていた。
私はその光景を見て少しだけ驚く。
研究所にいた頃。
勉強は命令だった。
誰かと机を囲むものではなかった。
だが今は違う。
みんなで悩み。
みんなで笑い。
みんなで助け合っている。
「……」
気付けば。
少しだけ口元が緩んでいた。
「朱ちゃん笑った!」
「え?」
芦戸が指を差す。
教室中の視線が集まった。
「いや、今笑ったよな?」
「珍しいな」
轟まで反応する。
私は慌てて顔を逸らした。
「そ、そのような事はありません」
「顔赤いぞ」
ナチュラル追撃する轟くん
「⋯⋯赤くないです」
教室に笑い声が広がる。
その日。
八木朱奈は勉強を教える難しさと。
誰かと一緒に学ぶ楽しさを。
少しだけ知ることになった。
誤字脱字報告や感想などお待ちしております
朱奈のイラスト(AI生成)見てみたいですか?
-
見たい
-
別にいらない