鋼鉄艦船のヒーローアカデミア   作:朱鶴

2 / 18
こちらは基本的にもう一つの作品が行き詰まった時に投稿します


プロローグ編
プロローグ1話 汚れた彼女の転換点


海は、昔から戦場だ。

 

それは歴史書に書かれるような比喩ではなく、

事実として、現実として、今もなお続いている。

 

私の髪を撫でるこの風も、

私の鼻腔を刺すこの匂いも、

すべて他者の血と涙、そして焼け焦げた肉と油の混じった臭気だ。

 

波に乗って運ばれ、

年月を越えて染み込み、

もはや自然の一部として存在している――戦場の匂い。

 

それが私の肺を満たす。

 

耳に届くのは、誰かの叫び声と、

金属が軋み、破壊され、燃え落ちる音。

先ほどまでの爆破音はもう聞こえない。

 

目に映るのは、瓦礫と炎、

そして自分自身が壊した建造物。

 

さらにその向こうには、

かつて「人」と呼ばれていた存在の残骸が転がっている。

 

未来を持っていたはずの人達

名前があり、日常があり、帰る場所があったはずの存在。

 

(それを消したのは、私だ。)

 

その思考が私の心を少し揺らす

 

いつからだろう。

 

この光景を前にしても、

心拍数すら変化しなくなったのは。

 

いつからだろう。

 

破壊を「仕事」として認識するようになったのは。

 

いつからだろう。

 

悲鳴を聞いても、

血を浴びても、

自分が何も感じなくなったのは。

 

感情を、恐怖を、

そして笑顔を忘れたのは。

 

今、私は戦場にいる。

 

背中からは巨大な鉄の塊――艤装が展開され、

内部の動力炉が低く唸りを上げている。

装甲の隙間からは熱が逃げ、

金属特有の匂いが海風に混ざる。

 

手には弓。

人を射って私の個性を増幅させる為に存在する武器。

 

そして私は帽子を深く被り、視線を伏せる。

 

私は海の上に立っている。

 

水面は荒れ、白波が立っているというのに、

私のブーツの足裏は沈まない。

 

私の知る大人たちは、これを「個性」と呼んだ。

 

個性

 

多くの人が持つものであり唯一である証。

人が他者と違うものの象徴。

 

だが、私にとってそれは違う。

 

これは兵器だ。

道具であり、機構であり、

使われるためだけに存在する機能。

 

どうやら、私以外にも

個性を持つ人間は存在するらしい。

 

だが、私にはよく分からない。

 

私には必要がない。

私には関係がない。

 

(……考えすぎたな)

 

(戻ろう。マスターの元へ)

 

そう判断し、沿岸から離脱しようとした、その瞬間。

 

(――――?)

 

感知領域に異常反応。

 

質量、異常。

速度、規格外。

 

(戦闘機……?

いや、違う。質量が軽すぎる)

 

(人間?

否、速すぎる。

それに、このエネルギー量……)

 

思考が追いつく前に、

沿岸から凄まじい衝撃波が発生し、

私の装甲を叩いた。

 

「私が来た!」

 

砂煙の中に立つ、

筋骨隆々の金髪の男。

 

(識別開始……)

 

(No.01 オールマイト)

 

(……?

戦略行動:即時撤退推奨)

 

(理由、不明)

 

男は私を見据え、

 

「君が、この惨劇を起こしたヴィランか!」

 

と叫ぶ。

 

(会話、不要)

 

(撤退)

 

私は即座に進路を海側へ変更する。

 

だが――

 

「おっと! そうはさせないよ」

 

次の瞬間、視界が歪む。

 

距離が、消える。

 

気づいた時には、

私は男の手によって沿岸へ引き上げられ、

投げ飛ばされていた。

 

(あり得ない)

 

(現在質量350kg)

 

(それを、片手で……)

 

(……いや、あの筋肉量なら理論上は可能)

 

着地と同時に、弓を構える。

思考と動作は直結している。

 

エネルギー矢、連続発射。

 

空母機銃並みの火力が、男を包む。

 

(命中)

 

(撃破――)

 

「イテテ。中々強いね」

 

煙の中から、平然とした声。

 

(……なんで、生きている)

 

(なるほど。これが撤退理由)

 

(退路:海)

 

(艦載機残数:20)

 

(全機、発艦初め)

 

背中の装甲が展開し、

右舷航空甲板から小型艦載機が次々と射出される。

 

デルタ翼型ステルス機。

全長3cm、全幅15cm。

 

だが、それぞれが高威力武装を搭載している。

 

これで、時間を稼げば――

 

「ふん!」

 

(………………理解不能)

 

男が腕を振るった。

 

それだけで、

圧縮された空気が衝撃波となり、

艦載機群を叩き落とす。

 

全機、墜落。

 

(……本当に、人間か?)

 

その一瞬の思考停止。

 

「拘束させてもらうよ、少女!」

 

(しまっ――)

 

視界が白く弾ける。

 

ただ一撃。

 

意識が、闇へ沈む。

 

(任務………………失敗)

 

 

 




誤字脱字報告や感想などお待ちしております

朱奈のイラスト(AI生成)見てみたいですか?

  • 見たい
  • 別にいらない
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。