破滅フラグしかないボンボンに転生してしまった件 〜グフに踏み潰される運命なんて、全力で回避してやる!〜《完結》   作:kiakia

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 某掲示板で4時間かけて、私が連載した作品のノベライズ版です。
果たして転生ユウナは生き残る事ができるのか…


SEED DESTINY編
第一話 破滅フラグしかないボンボンに転生してしまった件


 

 

 

 諸君は異世界転生というものを知っているかい?

 

 

 唐突だが、俺の意識がこの「紫髪の御曹司」に切り替わった瞬間に思ったのはそれだ。普通、異世界転生といえば、トラックに跳ねられたり、あるいは神様にうっかり命を刈り取られた代償として、強力な魔法や、あるいはどんな敵も一撃で粉砕する聖剣、あるいは一国の姫君から愛でられるといった「チート」を引っ提げて第二の人生を謳歌するものだ。

 

 

 だが、現実は非情である。俺が手に入れたのは、聖剣でも魔力でもない。鏡の中に映る、薄ら笑いが張り付いたような整いすぎている顔。

 

 

 不自然なほどに高級な白いスーツ。

 

 

 そして、脳内に刻まれた、全ガンダムファンが「嫌悪」とともに記憶しているであろうその名前。

 

 

 

「……ユウナ・ロマ・セイラン……嘘だろ、おい」

 

 

 

 俺はガンダムシリーズが好きだ。宇宙世紀もアナザーも一通り嗜んでいる。

 

 

 

 だからこそ、目の前の現実が信じられなかった。

 

 

 よりによって、あの『機動戦士ガンダムSEED DESTINY』において、無能・姑息・情けないの三拍子を揃え、最期は空から降ってきたグフに踏み潰されて圧死した「あのユウナ」だと?

 

 

 

「待て、落ち着け。時系列だ。今はいつだ……!?」

 

 

 

 俺は震える手でデスクのカレンダーと、端末に表示された公務の予定を叩いた。

 

 

 

 まず真っ先に調べたのはカガリ・ユラ・アスハの名と予定表だ。彼女は今、オーブ代表首長として、護衛のアレックス・ディノ(アスラン・ザラ)を伴い、プラントのアーモリーワンへ向かっている。目的は、プラントによる新型兵器開発への抗議と、現状の緊張状態の緩和。

 

 

 

「……第1話の前、プロローグの真っ最中じゃないか」

 

 

 

 その事実を認識した瞬間、心臓が肋骨の内側を激しく叩き始めた。ドクン、ドクンと、耳の奥で早鐘が鳴る。

 

 

 呼吸が浅い。吸っても吸っても酸素が肺に届かないような、ひどい過呼吸の感覚が俺を襲う。額からは嫌な脂汗が噴き出し、高級なシルクのシャツが肌にべったりと張り付いた。

 

 

 

 最悪だ。あまりにも最悪すぎる。

 

 

 

 数日後には「アーモリーワン事変」が起き、ユニウスセブンが落ちてくる。そしてその後、オーブはなし崩し的に大西洋連邦と軍事同盟を結び、地獄の戦火へと突き進む。その舵取りをするのが、他ならぬ俺の実家――セイラン家だ。

 

 

 

「待て、待て待て待て……! 俺が、あの連合との条約にサインするのか? ロゴスの連中をオーブに招き入れるのか……!?」

 

 

 

 想像しただけで胃の底から酸っぱいものが込み上げてきた。

 

 

 

 原作のユウナは、カガリを精神的に追い詰め、泣かせ、執拗に言い包めて政略結婚の祭壇まで引きずり出した。その結果、キラのフリーダムに文字通り「強奪」され、全世界に恥を晒し、最終的にはパニックの中でグフに踏み潰されて圧死したのだ。

 

 

 

 死ぬ。確実に死ぬ。

 

 

 

 このままシナリオ通りに進めば、俺を待っているのは「無様な死」というエンディングだけだ。

 

 

 

 指先がガタガタと震えて止まらない。俺は縋るような思いで、自室を飛び出し、邸内の地下にある一族専用の極秘書庫へと駆け込んだ。

 

 

 

 薄暗い書庫に、俺の荒い呼吸音だけが不気味に反響する。

 

 

 

「……あ、あった……これだ……!」

 

 

 

 端末を起動し、セイラン家が現在進行形で行っている「工作」の記録を閲覧する。

 

 

 

 俺は、心のどこかで期待していた。ユウナが無能と言われつつもオーブを掌握できたのは、実は彼なりに裏で泥を被り、国を維持するための「非情なリアリズム」があったからではないか、と。

 

 

 

 

 だが、画面に映し出されたログは、そんな淡い期待を無残に粉砕した。

 

 

 

 

 

「……っ、なんだよ……これ……ッ!!」

 

 

 

 

 吐き気がした。

 

 

 

 

 そこにあったのは、リアリズムなどという高尚なものではない。ただの、醜悪なまでの保身と利権の山だった。

 

 

 

 

 旧アスハ派官僚の徹底的なパージ。捏造したスキャンダルによる公職追放。抵抗する者への容赦ない弾圧。

 

 

 さらに酷いのは、連合兵によるオーブ国民への婦女暴行や略奪、それら「地獄のような惨状」を知りながら、連合の機嫌を損ねないために全てを組織的に隠蔽し、黙認していた事実だ。

 

 

 

「嘘だろ……これ、全部俺たちの仕業か……?」

 

 

 

 足の力が抜け、冷たい床に膝をつく。

 

 

 

 喉がヒュッと鳴り、冷や汗が床に滴り落ちた。

 

 

 

 俺(ユウナ)が握っている「権力」の正体は、国民の涙と血で塗り固められた、呪いのような代物だった。

 

 

 

 

 今の俺は、カガリからは毛嫌いされ、アスランからは軽蔑され、何なら主人公であるキラからは「敵」と見なされる。そして、ロゴスが失脚すれば、怒り狂った民衆やシン・アスカのような犠牲者たちによって、八つ裂きにされても文句は言えない。

 

 

 

 

 逃げ場なんてどこにもない。

 

 

 

 

 外伝のアストレイ? 俺の知識はスパロボ止まりだ、連中がどこで何をしているか、どうやって連絡を取るかなんて分かりっこない。

 

 

 

 

 劇場版? そんなもの、公開される前に俺はここに来ちまったんだ! 内容なんて一行も知らない!というか劇場版なんて公開されるのか?西川兄貴がまだ夢諦めてないようだけど多分無理だろ!

 

 

 

 

 死のカウントダウンが、もう始まっている。

 

 

 

 

 暗い書庫の中で、俺は自分の腕を抱きしめて震えることしかできなかった。

 

 

 

「……ふざけるな……ふざけるなよぉぉぉぉ!!」

 

 

 

 

 絶望が、恐怖が、そして自分自身(ユウナ)への嫌悪が、臨界点を超えて爆発する。

 

 

 

 

「なんでだよぉぉぉぉぉ!! 誰がこんなクソゲー設定にしたんだよぉぉぉぉ!! 嫌だ、俺は死にたくない! 潰されたくない! 助けてくれぇぇぇぇ!!」

 

 

 

 

 

 

 静まり返った書庫に、情けない、あまりにも情けない悲鳴が、ただ虚しく響き渡った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 「……はぁ、はぁ、はぁ……」

 

 

 

 

 絶叫は、どれくらいの時間続いていただろうか。

 

 

 

 

 酸欠で頭がくらくらする。喉はガラガラに焼け、床に突いた手のひらには冷たい汗の感触が残っている。どれだけ喚いても、状況は一ミリも変わらない。

 

 

 

 俺は荒くなった息を整えながら、ゆっくりと身体を起こした。冷え切った書庫の空気。鼻を突く古い紙と電子機器の匂い。五感のすべてが、ここが「現実」であることを無慈悲に突きつけてくる。

 

 

 

 一度、情報を整理しなくてはならない。

 

 

 

 

 俺は自分の内側に意識を向けた。驚いたことに、ユウナとしての「過去の記憶」は霧がかかったように曖昧だ。自分がどんな幼少期を過ごしたか、詳細なエピソードはほとんど思い出せない。

 

 

 

 

 

 だが、不思議と「知識」は引き出せる。邸内の構造、端末の操作方法、オーブの政治体制……。腐っても五大氏族、セイラン家の嫡男として叩き込まれてきた教育の賜物か、あるいは身体が覚えているのか、情報処理能力だけは前世の自分より遥かに高い。御曹司というスペックだけは本物のようだ。

 

 

 

 

 

 その反面、前世の自分の名前すら思い出せない。自分が誰だったのか、どんな生活をしていたのか……。ガンダムが好きだったという強烈なアイデンティティ以外、肝心なところが抜け落ちている。

 

 

 

 

 「……それにしても、この世界は。コズミック・イラか……あまりにも……あまりにも…!」

 

 

 

 ガンダムシリーズは数あれど、ここほど血生臭く、人の命が安い世界が他にあるだろうか。

 

 

 

 人種間の憎悪、核、虐殺兵器の応酬。「想いだけでも、力だけでも」なんて綺麗な言葉の裏で、常にジェノサイドが隣り合わせにある狂った時代だ。

 

 

 

 

 「なんで……なんでAGEじゃないんだよぉ…!」

 

 

 

 

 俺が一番好きなガンダムシリーズは『機動戦士ガンダムAGE』だった。

 

 

 

 ネットでは色々と叩かれることもあった作品だが、俺にとっては唯一無二の大好きな作品だ。いつか正当に再評価されてほしいと、心の底から願っている。

 

 

 

 

 「フリットさん……フリット・アスノさん……助けてくれ……ッ!」

 

 

 

 

 あの人は、どれだけ理不尽に大切な人を奪われ、心が傷ついても、最後の最後で復讐を乗り越えて敵を許し、本当の『救世主』になった。

 

 

 

 

 もし今、俺の隣にフリットさんのような絶対的な味方がいてくれたなら、俺の心だって折れずに済んだかもしれない。あんな強くて気高くて、優しい人が、この絶望的な状況に一人でもいてくれたら……。

 

 

 

 だが、ここにフリットさんはいない。

 

 

 

 

 いるのは、迷走するアスランと、全能感の裏で達観しすぎているキラ、そして復讐の業火に身を焼かれるシン・アスカだ。そして何より、そんな彼らに「排除されるべき悪」としてカウントされている俺がいる。

 

 

 

 

 「救世主」なんて贅沢は言わない。

 

 

 

 

 せめて、せめてこの血塗られた時代を、五体満足で生き延びる方法はないのか。

 

 

 

 

 「……やるしかない、のか。グフの下敷きになって、笑われながら死ぬなんて……冗談じゃないぞ」

 

 

 

 

 俺は、震える手で次の極秘ファイルを開いた。

 

 

 

 

 ユウナ・ロマ・セイランという「無能な悪役」の皮を被りながら、歴史の歯車に指を突っ込んででも止めてやる。

 

 

 

 

 その決意だけが、暗い書庫の中で唯一の灯火だった。

 

 

 

 






・ユウナの知識
ガンダムSEED、デスティニー。後はスパロボWやサルファ辺り。でアストレイの知識は大体スパロボとGジェネまで。またガンダムSEEDフリーダムが公開される前に転生した為ファウンデーションなどの知識は皆無。

・醜悪な記憶の数々
主にガンダムSEEDエクリプスで描かれたもの。それまでネット上では「なんだかんだでオーブを掌握してアスハと結婚まで漕ぎ着けたのは凄い」だの「非常事態で無能を晒しただけで平時は内政面や策略では優秀ではなかったのか?」と考察され、事実ユウナもそれを信じていましたが蓋を開ければ……。以前は復興のために連合の融資を引き出したとかセイランに関するデマもありましたが実際には、連合はオーブから賠償金として大量に金品を強奪するわ、婦女暴行は当たり前の占領統治だわと酷いものに。セイランがそれに協力的であったかはどうかは今作品のオリジナルですが、そこまでやられてヘイトを買いまくった連合との同盟を積極的に結ぼうとしたのですからそりゃ本編でオーブ兵も苦渋に塗れた顔になりますよ。

・AGE好き
なおAGEに転生したらしたで、民間人虐殺上等のヴェイガンのせいで頭を抱える事になります。本当にガンダム世界は地獄だ。

どっちのアスランが見てみたいでしょうか?

  • 通常の優柔不断アスラン
  • 報連相の化身と化したアスラン
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