破滅フラグしかないボンボンに転生してしまった件 〜グフに踏み潰される運命なんて、全力で回避してやる!〜《完結》 作:kiakia
シン達の初出撃も近いのですが、その前に必要なモルガのお話を。モルガのデザインに関してはモルガ、もしくはモルガキャリアと検索していただけるとどんなものなのか分かるかと。
「お忙しい中、このような形での通信となってしまい、誠に申し訳ございません、閣下」
デスクの前で居住まいを正し、カメラに向かって慇懃に頭を下げつつ述べた俺の言葉に、画面の向こう側の初老の男――ユーラシア連邦の重鎮の一人である将軍は、力なく首を振っていた。
モニター越しに映る老将軍の顔には、隠しようのない疲労の色が深く刻まれている。
「……いや、構いませんよ。今の情勢では安全保障上の配慮も仕方のないことですから。それに……こちらこそ、数ヶ月前のアメノミハシラの件については、何と言ってお詫びすればよいか」
将軍は胃の痛みを堪えるかのように顔を歪める。事の発端は、ユーラシア連邦の一部強硬派が画策した、宇宙ステーション『アメノミハシラ』への武力侵攻だ。
表向きは「未確認勢力による不法占拠の是正」などと抜かしていたが、真の目的はサハク家が所有する莫大なレアメタルやオーブの技術力。それらを半ば強引に強奪することで、独立騒ぎの起きている混乱中の本国で過激派連中がどさくさ紛れにユーラシア連邦にて、イニシアチブを握ろうとした訳だ。
マジふざけんなよ……サハク家が実質的な独立状態を保っているとはいえ、水面下ではオーブ本国と密接な交流を続けていることは周知の事実だ。
それを「チャンス」と見て踏み込んだユーラシア側、いや強硬派だったが、結果は散々だった。陥落させるどころか、サハクの精鋭や雇っていたらしいサーペントテールの返り討ちに遭い、ユーラシア軍は多大な損害を出して撤退。
それだけならまだしも、これまで曲がりなりにも宥和状態を保っていたオーブとの関係に、取り返しのつかないヒビを入れちまったわけだ。
あの時は、あわや一触即発……オーブとユーラシアの全面衝突かというところまでいったが、コンパスが本格的に介入してくる前に、ユーラシア側が泥縄式に関連者全員を処罰、更には公式の謝罪を行うことで、どうにか最悪の事態は免れた。
とはいえ現場の暴走で軍が勝手に動いたといえる今回の騒動はユーラシアの国威に大きな傷をつける事になる。大西洋連邦辺りは内心笑いが止まらないだろう。シビリアンコントロールの引き締めにユーラシアは現在相当苦労しているらしい。
カガリたちの意向もあって、オーブとしては「これ以上事を大きくしたくない」と穏便に収める道を選んだものの、その代償として一ヶ月以上もの間、両国間の外交チャンネルは実質的に凍結状態に陥っていた。
だが、そんな気まずい沈黙を破ってまで俺がこの老将軍に連絡を取ったのは、単なる機嫌伺いのためじゃない。俺は手元の資料をスライドさせ、通信画面に一つの機体図面を表示させた。
「……さて、本題に入りましょう。閣下、以前の約束を忘れたわけではありませんよね? 東アジア共和国と大西洋連邦……あの衝突寸前だった局面をオーブの要請で収めていただいた、その際の見返りについてです」
あの局地戦闘仕様アストレイが火種となって起きた東アジアと大西洋の一触触発の裏で、クソ面倒な立ち回りや尻拭いをしてもらった報酬として、ユーラシアに約束していたもの。それが、新型の復興・土木作業用モビルスーツ、リビルドシリーズの最新機体の引き渡しについてだ。
今やリビルドの名は、公式非公式を問わず、あの「ブレイク・ザ・ワールド」がもたらした未曾有の惨禍からの復興事業を支える代名詞となっている。
オーブの誇るアストレイをベースにした作業用モデルだけでなく、戦場に遺棄されたオンボロのジンや、使い古されたストライクダガーの装甲を剥ぎ取り、パワーシリンダーや重機アームを強引に組み込んだ改造機に至るまで、そのバリエーションは全世界に広がっている。
だが、発案国であるオーブは、そんな「寄せ集めの改造機」とは一線を画す、真の意味での新型復興用モビルスーツを完成させていた。それを今回、協力の見返りとしてユーラシア連邦へと正式に譲渡するための最終協議というわけだ。
「……本来であれば、我々の方から出向いて受け取るべきところを、こうして通信での協議となり、誠に申し訳ない」
画面の向こうで、老将軍は再び深く頭を下げた。単純な国力や領土の広さで言えば、ユーラシア連邦はオーブなど比較にならないほどの大国だ。
本来、小国の副総裁ごときが大国の将軍からこれほどまでに低姿勢な対応を受けることなどあり得ない。だが、今のユーラシアにはそれだけ余裕がなかった。
例の「ファウンデーション・ショック」によって引き起こされた、連鎖的な独立騒ぎ。あの大規模な混乱と破壊は、かつての超大国の屋台骨を確実に蝕んでいた。国内の復興は遅れ、各地で不満が爆発し、軍は治安維持と再建の両方に追われてパンク寸前だ。
(……にしても、本当に大変そうだな、この爺さん)
俺は慇懃な態度を崩さず、内心でそんな独白を漏らす。独立運動の鎮圧に追われ、身内である強硬派が勝手に引き起こした不祥事の謝罪に奔走し、その上で復興用の資材や機体をオーブから「恵んでもらう」ための交渉を任される。まさに貧乏くじの極みだろう。俺が逆の立場なら、とっくに胃に穴が開いて放り出している。
だが、そんな弱みを見せざるを得ないほどに、ユーラシアの現状は逼迫しているのだ。このリビルドシリーズの新型が配備されるか否かで、数万人規模の避難民の冬越しが変わってくる。だからこそ、彼は自尊心をかなぐり捨てて俺に向き合っている。
「閣下、頭をお上げください。先日の件はそれとして、我々は約束を違えるつもりはありません。このリビルドの最新ロットは、貴国の厳しい環境下でも十分な性能を発揮できるよう、アメノミハシラの施設で特別に調整されたものです。サハクの『ミナ様』も、今回の件でユーラシアの民にまで恨みがあるわけではないと仰っていましたよ」
俺は努めて穏やかなトーンで言葉を紡いだ。実のところ、アメノミハシラ経由にする必要性自体はそれほど高くはなかったのだが、俺がミナ様にリビルドシリーズの設計思想……いわゆる青写真を引き渡しつつ、「オーブとユーラシアの関係改善のために、サハク家の温情という形にしてほしい」と頼み込んだ結果だ。
正直に言おう。ミナという女性は、こちらの想像の数倍は話がわかる御仁だ。オーブという国家が必要としているのなら、彼女は驚くほど私心を捨てて尽くしてくれる。
そんな峻厳な女性に向かって、「黙れ」だの「クソアマ」だのとのたまわった命知らずがいたらしい……って、俺だよ!恐喝まがいにデータ寄越せとか上から目線で言いやがったカス野郎だよ!?
改めて彼女には深々と頭を下げて謝罪したが、ミナは「ふん、何の事やら」と、不敵な笑みで快く受け入れてくれた。とはいえ、あの醜態は俺の数ある黒歴史の中でもトップクラスに位置する汚点だ。思い出すだけで胃がキリキリと痛む。
「……サハク殿が、そこまで仰ってくださるとは。彼女もまた、この世界の惨状を憂いている一人ということか」
将軍が噛みしめるように呟き、俺はそれに深く頷く。サハクはサハクで色々と大変らしいが、下手に知識のない外伝であるアストレイシリーズに手を突っ込んで余計な騒ぎを起こしたくはないと基本的には放置する予定だ。
それでも新型の二枚板ライフルや試作されたムラサメ改は数機を物資と共に送っている。リバティアストレイと共にきっとアメノミハシラは今後も強固な独立組織として世界に睨みを利かせてくれる事になるだろう。
「ええ。我々オーブとしても、隣人が凍えているのを黙って見過ごすほど冷血ではありませんよ。今回の支援が、これまでのわだかまりを溶かす一助になればと願っています」
内心では、ここでユーラシアに大きな貸しを作れたことのデカさを噛み締めていた。このカード一枚で、今後ファウンデーション王国が仕掛けてくるであろう策動に対して、打てる手が一気に広がる。
地政学的な包囲網を敷く上でも、ユーラシアという巨人を味方……とまではいかなくても、中立以上の立場に引き止めておく意義は計り知れない。なんならこちらもユーラシア側で色々とファウンデーションを弱らせるための謀略を行う必要もある。
俺が端末の操作を終え、エンターキーを静かに叩くと、データ転送を示すプログレスバーが画面の端で伸びていく。完了の電子音が鳴り響いた後、通信画面の向こうで将軍は手元のモニターを食い入るように見つめ始めた。
重苦しい、それでいてどこか救いを待つような沈黙が流れる。ページをめくる指の動きが止まるたび、将軍の眉間の皺が少しずつ、だが確実に和らいでいくのを、俺は見逃さなかった。
だが、新たなページに差し掛かった途端、将軍の表情が彫像のように固まった。
流れるような指の動きがぴたりと止まり、その老骨に鞭打つような鋭い眼差しが、困惑の色に塗りつぶされていく。彼は何度もモニターを凝視し、時には懐から取り出したメガネを掛け直して、自分の視力が狂っていないかを確認するように画面を見つめていた。
やがて、彼は震える指先で画面を指し、絞り出すような声で俺に問いかけてきた。
「……セイラン副総裁。確認したいのだが、この、次のページに表示されている機体は何なのでしょうか?? 私の知る人型作業用マシンとは、あまりにかけ離れているのだが……」
画面に映し出されているのは、これまでのアストレイの系譜とは一線を画す、異質なシルエットだった。
人型からは程遠い、低く地を這うような多節構造。銀色と黒の重厚な装甲に包まれたその姿は、まるで巨大な『芋虫』か何かを機械化したような、生物的な禍々しさと重機としての機能美が同居したデザイン。側面に配置された巨大な赤い歯車状のパーツが、それがただの乗り物ではないことを主張している。
「この……脚もなく、腹ばいのような形状をした代物は一体何なのですか? まさか、これを復興用の主力に据えろと仰るのか……?」
将軍の困惑はもっともだった。モビルスーツという概念が浸透しきったこの世界において、その「モルガ」と名付けられた機体は、あまりにも既存の常識を逸脱していた。
彼は、俺がこの期に及んで新手の嫌がらせでも仕掛けてきたのではないかと疑うような、あるいは純粋に理解が追いつかないといった様子で、呆然と俺の答えを待っている。
「……驚かれるのも無理はありません、閣下。それが現在、オーブとプラントが共同開発を進めている新型多目的型MA、『モルガ』です」
俺は困惑しきった将軍に対し、努めて冷静に、至極当然のことを話すようなトーンで答えた。
内心では、この世界における「文化の欠落」を再確認していた。この世界には『ゾイド』シリーズが存在しない。ガンダムのようなリアル系ロボットアニメという概念そのものが歪んでいるのか、それともミリタリー要素と生物的意匠が融合したあの一大叙事詩は、この歴史のどこにも刻まれなかったらしい。
事の起こりは、俺がシンが元気に乗り回している『ガイアティターンズ』を秘密裏に改修していた所。丁度四足歩行の獣形態であるそれを見てゾイドシリーズを思い出した所、モルゲンレーテのエリカさんや、プラントのハインラインら技術陣に、面白半分だが、半分は本気の「アイデア出し」として、ゾイドという機体概念をそれとなく伝えた。
するとどうだ。
彼ら天才技術者たちの目は、俺の予想以上にギラギラと輝き出したんだ。
「人型に固執する必要などない」「多節構造による地形適応力こそが次世代の解だ」と、彼らは即座に意気投合。そのままプラントとの共同開発プロジェクトにまで発展。
そして、結実したのがこの『モルガ』というわけだ。おかげで製作中だった純粋強化のアストレイベースのリビルドは開発凍結となり、関係者は涙を飲んで……ねぇわ大体モルガ開発たーのーしー!!と興奮して俺に詰め寄りまくって怖かった…!
「閣下、現在主流のモビルスーツは確かに万能。しかし、人型であるがゆえの制約もまた大きい。重力下での作業において、あの高い重心は瓦礫の山では命取りになりかねない。一度バランスを崩せば、機体はおろか周囲の作業員まで巻き込んで圧殺する凶器に変わる。『万能やマルチロールという言葉に惑わされるな。』それはモルゲンレーテで一種の教訓として刻まれているのですが……果たして人型のモビルスーツは本当に、被災地や平時の土木工事に適しているのでしょうか?」
俺は画面に表示されたモルガの側面図を指先でなぞった。実際、このあたりの問題はオーブ国際救援隊(ODR)を率いるミヤビが、現場での苦い経験を元に繰り返し報告してくれていたことだ。
確かにMSは人型だからこその利点がある。宇宙空間での救難活動や、高い位置にある瓦礫を取り除く作業には背丈の高さが有利に働くし、山間部なら空を飛んで向かうのが最適解だろう。以前ミヤビが「ナガノのような急峻な山岳地帯での作業は、MSがいなければ不可能だった」とぼやいていたのも事実だ。すげぇなC.E.になってもヤバいのか長野。
だが、地上、それも瓦礫に埋め尽くされた都市部や不安定な極地となれば話は別だ。重心の高さゆえに侵入できないエリアが多すぎるし、些細な転倒が大規模な二次災害に繋がったケースも数知れない。現場の人間からは「正直、移動するならMSよりトラックか最悪徒歩の方がマシだ」なんて声すら上がっていたのだ。
「そこで我々が着目したのが昆虫……自然界が数億年かけて完成させたデザインです。この世界の支配者は人類ですが、いつの世も最も繁栄し、あらゆる環境に適応しているのは昆虫ですから。見てください、この地を這うような多節構造を。脚部という脆弱な支点を廃し、全身を駆動部と接地面に変えることで、泥濘だろうが氷原だろうが、この機体は転倒という概念そのものを克服しました」
将軍の目が、図面上の強固な装甲セグメントに吸い寄せられる。
「復興作業や工業用機械において、最も尊ばれるべき美徳とは『シンプルで、扱いやすく、丈夫で、何より安価であること』です。人型機のような繊細な関節部を露出させる愚は犯していません。強固な装甲に守られた内部機構は、多少の崩落に巻き込まれた程度ではびくともしない。搭乗員の生存率は、既存のリビルドアストレイを遥かに凌駕するでしょうね」
(……まあ、実際この「モルガ」という機体の汎用性は、俺が一番よく知っているんだがな)
前世の俺の記憶にある『ゾイド』の世界において、モルガはまさに帝国軍を支えた名脇役だ。
ありとあらゆる戦場に大量投入され、背中にキャノンを積めば強力な砲撃戦用機になり、巨大なドリルを装着すれば地下を突き進む工兵隊の要となる。レドームやアンテナを立てれば電子戦機として機能し、そして何より、後部ユニットを換装した「モルガキャリア」の運搬能力は圧倒的だった。
今オーブや世界で使われている『リビルド』や『ホスピタル』といったMSベースの作業機は、どうしても「背負う」ことが基本になる。だが、高い位置に荷物を積めば積むほど、MSのバランスは不安定になるんだ。
その点、この芋虫のような多節構造はどうだ。
重いコンテナを「連結」して引きずるその姿は、モビルスーツというよりは装甲列車に近い。重心は常に地を這うように低く、どれほど重い物資を積もうが、その突破力が揺らぐことはない。
更にハインライン達は、モルガの体内にコンテナを丸ごと収納する機構をあっさり作ってしまった。その結果、モルガは強固な装甲で地上のあらゆる場面を爆走しつつ、コンテナに詰められた物質を送り届ける事や、クレーンユニットなどを装備して即席の万能重機へと変貌を遂げてしまう。
テスト段階だと言うのに現時点でリビルドの三倍以上の物資を被災地に送り届け、素早く重機に変貌を遂げ。更にザフト側のジオグーンの技術によって瓦礫を掘り進める事まで可能になってしまう。
(MSの背中に無理やりクレーンを付けるより、この低い姿勢で土台を安定させて作業する方が、物理学的にもよほど正解なんだよなぁ……エリカさんたちも、この「背負わず収納、無理ならいっそ引きずる」なんて発想の転換には、膝を打って喜んでいたっけ。あいつら、一度火がつくとモルガにガトリングやら地対空ミサイルやら積み込もうとするから怖いわ……)
実際軍事転用の為の研究も進められてるが、それに関してはドッズライフルという最強の矛や量産型のMSが当たり前のように空を飛ぶ今の戦場では、空からドッズライフルで粉砕される事によって、戦争の主役になる事は難しいはずだ。
それでも「モルガ」は戦争の脇役として活躍する事になるだろう。軍事と民事のどちらにも転用可能な新たなる、概念を引っ提げてきたMAの写真を老将軍は食い入るように見つめているのであった。
・アメノミハシラ
この辺りのエピソードは機動戦士ガンダムSEED ASTRAY 天空の皇女で描かれたもので、それが今作ではユーラシアが比較的大人しい事もあって発生時期や内容も大きく変化しています。なんでリバティアストレイが徐々に量産されてるタイミングで攻めたんでしょうねアイツら…なおこの辺りでミナとのやり取りの結果過去の自分を殴りたくなったユウナなのでした。
・モルガ
新型の土木作業用MSを最優先で輸出させるよ!と決めておいて、ウネウネしてる芋虫を引き渡そうとするのはユーラシアは割とキレていいと思います。今回は貧乏くじを引かされた将軍だからこそ比較的真っ当な対応となりましたが、普通なら徹底的に「この芋虫大丈夫?」と質問攻めするでしょうし、プラント嫌いなら「コーディネイターと手を組んでなんでこんなキモイものを作ってんだ!?」となるでしょう。可愛いのにモルガ。
ユウナのアコード対策について。果たしてユウナはアコードの無力化の為になりふり構わない外道な手段(ユウナ視点)を取るべきか?
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原作通り。
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平和の為に覚悟を決める。