破滅フラグしかないボンボンに転生してしまった件 〜グフに踏み潰される運命なんて、全力で回避してやる!〜《完結》 作:kiakia
前話の感想欄にてアグネスにはスローターダガーの対歩兵用爪先ガンなんてと提案されていましたので回答。あれは周囲の被害とか関係なく民間人も巻き込みかねない無差別っぷりが問題だったりしますので….正義の組織であるコンパスに所属してる自覚のあるアグネスはそんな酷い武装使いませんよ!テロリストだけを確実に仕留める為に踏みつけですからね!
シン達のコンパスデビュー戦から数日後。俺はプラントのシャフト部に位置する、超高層居住エリアの一角にいた。
ここはプラントのエリート中のエリート、選ばれた勝ち組だけが住むことを許される邸宅が立ち並ぶ場所だ。その一室で、俺はラクスと二人、キッチンに立っている。
「まあ、ユウナさん。随分手慣れていらっしゃいますのね」
ラクスが感心したように声をかけてくる。彼女もまた慣れた手つきで野菜を洗い、俺はボウルの中でゆで卵をフォークの背を使って力任せに潰している最中だ。
「……そりゃあな。お坊ちゃん育ちだと思われがちだが、自分の食うもんくらいは作れるさ」
俺が作っているのは、黒胡椒をこれでもかと効かせた卵サラダだ。そこに隠し味として、カリカリに焼いてから粉状に砕いた乾燥ベーコンの粉末をたっぷり混ぜ込んでいく。このバカなんじゃねぇの?ってくらいぶち込んだ塩気と旨味が、俺にとっては重要なんだ。
パンにはあらかじめ、常温に戻したバターを隅々まで、厚く、丁寧に塗っておく。こうすることで、卵サラダの水分がパンに染み込むのを防ぎ、時間が経っても食感を損なわないちょっとしたこだわりだ。
「黒胡椒にベーコン……ふふ、少し刺激的な味になりそうですわね。バターもしっかり塗って、とても丁寧ですわ」
ラクスの言葉に、俺は苦笑いしながら卵をパンの上に乗せていく。彼女の料理は大体キラのために覚えたもので、味もあいつ好みの繊細で優しいものらしいが、俺の料理は味付けがかなり濃いめでジャンキーなものだ。
お嬢様として、そしてプラントの歌姫として育てられたラクスからすると、こういう「ガツンとくる味」は案外珍しいのかもしれない。
まぁジャンキーといっても、使っている具材はすべて最高級の安全基準をパスしたものを取り寄せているから、材料費だけで並の高級ディナーが食える。だが、俺に言わせれば命には代えられないコスト扱いするしかない。
「……暗殺だの毒殺だのを常に警戒してなきゃならない立場になるとな。結局『自分で作るのが一番安全だ』って結論になるんだよ。他人が用意したもんを、毒が入ってないか疑いながら食うより、自分で安全を確認しながら作る方が、よっぽど精神衛生にいいからな」
俺は淡々とパンに卵を盛り付け、手際よく切り分けていく。実際、俺は忙しい時間の合間を縫ってはこうして一度に大量の作り置きをするのが習慣だ。
一週間ずっと同じメニューを食べ続けるなんてことも、俺にとっては珍しくない。勿論ミレニアムの食事も美味いらしいが俺は一度も食ってない。お陰でミレニアムの料理長(某タムラ中尉に似ている)に問題でもあるのか?と申し訳なさそうに言われた事もあるが、こればかりは許して欲しい。
「一週間、ずっと同じものを? それでは栄養の偏りが心配ですわ。健康を損ねては元も子もありませんわよ?」
「……まあ、案外、人間は慣れるもんだぞ」
俺は平然と答える。足りない栄養はサプリメントで補えばいい。食事なんてのは生存のための燃料補給に過ぎないんだ。
その点、サンドイッチは素晴らしい。必要な栄養素を一度に詰め込めるし、クソ忙しい時でも片手で食べられるからな。バリエーションだって具材をアレンジしたり、種類を細かく分ければ飽きないもんだ。
「何より、俺自身が作ったから『絶対に死なない』っていう安心感……。これが俺にとっては一番のスパイスなんだよ」
そんなことを嘯きながら、俺は手際よくパンを切り分けていく。
そもそも、なぜ俺が今ここで、プラントの象徴であるラクスと一緒にキッチンに立っているのか。
理由は単純だ。プラントでの事務的な手続きやら、デュランダルと対ファウンデーションについて色々と悪巧み……もとい密談をこなしていたところ、ラクスとキラに招待されたからだ。
最前線で戦うキラと、プラントで総裁としての公務をこなすラクス。二人は仕事上どうしても多忙を極め、なかなか顔を合わせる時間がない。そんな貴重な恋人同士の時間に、俺みたいな「部外者」が入り込むのは流石に無粋だろうと一度は断ったんだが。
……あいつら、相当前から二人で決めてたらしいからな。コノエ艦長やハインラインも含めた皆に『たまには休んでこい』と背中を押されちゃあ、来ないわけにもいかない。
特にハインラインの奴は相当早口であーだこーだ言ってきたお陰で理屈を並べ立てた時は「もういい!分かった!分かったから!!」と行くしかねぇよ……アイツ最近ガイアっておもちゃが増えたせいで明らかに早口の速度が速くなって怖いんだよ!!
余談だが、最近ババの姿を見ない。モルゲンレーテで何やら新型機のテストに明け暮れているようだが、そのうちムラサメ改で叫びながらテロリストを撲滅し始めるかもな。俺はぜっっったいに!!二度と!複座しないが!!フリじゃねぇぞ!!これは!!
俺は大きく深呼吸をして、沸騰しかけた脳を無理やり冷ました。それはそれとして、だ。俺は一度手を止めて、真面目な顔でラクスに向き直る。
「……ラクス。誘ってくれたのは素直に嬉しいし、感謝もしてる。だがな、冷静に考えて今のこの状況、キラにとっては相当不味くないか?」
俺の唐突な問いに、ラクスは不思議そうに小首を傾げた。
「不味い……? 味付けのことでしょうか? それとも、何か政治的な不備が?」
「いや、違う。……何故って、お前な。いいか、自分の恋人が、上司(俺)と二人きりでキッチンに立ってるんだぞ? 本来ならキラもここに参加する予定だったのに、現場の連中に『ゲルググだのギャンだのに乗ってくれ』って無理を言われて、あいつだけテストで遅れてるんだ。この状況、傍から見たら俺がキラを出し抜いてるみたいじゃないか」
俺がキラの立場なら、これなんて『NTR』っていうか……そんな言葉が喉まで出かかった。
「えぬてぃーあーる……? それは、新しく導入される通信規約の略称か何かでしょうか?」
あっやべ、口に出してたらしい。きょとんとした顔で聞き返してくるラクスを見て、俺は思わず天を仰ぐ。
そうだったわ!この子プラントのトップを務める家出身の超絶お嬢様だから、そんな不純なネットスラングなんて、知るはずねぇわ!ごめんねシーゲルパパ!あんたの娘さんに余計な知識授ける所だった…!
「……いや、忘れてくれ。とにかく、後でキラが来たらちゃんとフォローしてやってくれよ。好きな女が、別の男と二人きりで楽しそうに料理してたなんて知ったら、普通の男は気が気じゃないんだ。自分のお気に入りの女が他の男と……なんてのは、誰だって嫌なもんだろ?」
俺がやけに真剣に説き伏せると、ラクスは少しだけ顔を赤らめ、それから可笑しそうにクスクスと笑った。
「ユウナさんは、本当に……意外とお優しいのですね。キラならきっと、『ユウナさんが一緒なら安心だ』と喜んでくれると思いますけれど」
「それはそれとして、同じ男からすると案外複雑なもんなんだけどなぁ!? あいつの信頼が重すぎるっていうか、俺がそんなに枯れて見えるのかよ……」
俺は心の中で「これだから天然の善人は!」と毒突きながら、皿に残ったパン屑を指で払う。
いやまぁ確かにキラの奴なら俺がラクスの隣にいても「ユウナさんなら安心だ」なんて本気で言いそうだから困るんだ……とはいえ一応忠告はしておこう。砂漠編の極限状態のキラを知ってりゃ、ラクスに伝えておいて損ではない。
「……いいか、ラクス。キラはああ見えて溜め込みやすいし、繊細な奴なんだ。フォローだけは欠かさずやってくれよ。あいつが一人で抱え込んでパンクしたところなんて、見たくないからな」
俺はふっと冗談めかした口調を捨てて、真面目な顔で彼女を見つめた。
何処となく子供らしさは消え去り、身体も大人びてミーアに似てきた。後少しで二十歳になるラクスを見ていると、果たして前世も含めた俺はキラやラクスの様に理念や正義を掲げて戦うことなんて出来ていたのだろうか?絶対に無理に決まっている。
「……本当はな、お前らみたいな子供に、こんなヤクザな汚れ仕事をさせてる時点で、俺たち大人は失格なんだよ。撲滅だの、そんな物騒な言葉を日常にしなきゃならない場所に、お前たちを立たせている。それは、俺の……俺たちの責任だ」
ボウルの中の卵を潰す手が、無意識に止まっていた。『撲滅』だの『駆除』だの、そんな血生臭い言葉を日常の語彙に組み込まなければ生き残れない場所に、まだ学生でもおかしくない若者達を立たせている。戦略を練り、機体を与え、効率的な殺戮のシステムを構築しているのは、他ならぬ俺自身だ。
キラは一次大戦でメンタルをやられてスプーンをカチャカチャしており、ラクスは父を失っている。アスランは目の前で憎悪に塗れた父が殺される瞬間をこの目で見て、シンに至ってはアイツを原作以上に追い詰めたのは俺自身の意思だ。
平和を維持するためと称して、若者を最前線に送り込み、モニター越しに血に塗れた戦果を計算する。その冷徹な自分と、心の端で疼く大人としての矜持。その矛盾に、俺の胃は鉛を飲まされたようにキリキリと痛んだ。
だが、ラクスは洗っていた手を止め、濡れた指先を拭うことも忘れて、射抜くような真っ直ぐな瞳で俺を見返した。
「いいえ、ユウナさん。それは違いますわ」
その声には、プラントの総裁としての威厳だけでなく、荒波を越えてきた一人の女性としての、揺るぎない覚悟が宿っている。
「流石のユウナさんでも、そのお言葉だけは受け入れられません。コンパスへの参加も、この終わりの見えぬ戦いも……すべて、私たちが自らの意思で、キラと一緒に選んだ道です。誰かに強制されたわけでも、事情も分からず守られるだけの子供としてそこにいるわけでもありませんわ」
ラクスの凛とした拒絶。それは「責任を感じるな」という優しさではなく、「対等なパートナーとして認めろ」という強い意志の表明だった。その気高さに、俺は一瞬だけ気圧され、降参を示すように苦笑して両手を上げる。
「……そうか。悪かった、すまん。覚悟を侮辱するなんて意図は無いんだが……失礼だな」
かつての、前世の俺なら、彼女のそんな言葉を「おめでたい理想論だ」と鼻で笑っていただろう。だが、今の俺には分かる。その理想を現実にするために、彼女がどれだけの血の滲むような決断を重ねてきたかを。
キラ達は全員自分自身の意思で戦っている。なら大人である筈の俺が出来ることは、彼らの生存率を上げつつ。ファウンデーションを潰す為の準備をする事だ。
「わかってくださればよろしいのです。……ですが」
ラクスは再びふわりと、いつもの穏やかな微笑みに戻った。だが、その瞳には少女のような悪戯っぽい光が宿っている。
「貴方以外だとキラの御両親くらいですわ、ユウナさん。私をそのように『子供扱い』してくださる方は。プラントの象徴としてではなく、歌姫でもなく、平和の女神としてでもなく……ただの一人の守るべき子供として案じてくださること。それは、私にとって少しだけ新鮮で、とても嬉しくもあります」
彼女の言葉に、俺は居心地の悪さを感じて視線を逸らした。プラントの歌姫を「ただの子供」と呼ぶ不敬な男なんて、世界中を探しても俺くらいなものだろう。キラパパはそう言う礼節はきっちりしてるはず。
だが、そう言わしめてしまう彼女の孤独を思うと、やはり「大人」として何かを言わずにはいられなかった。
「……お節介な副総裁の戯言だと思って流してくれ。さて、感傷に浸ってる暇はねぇな。キラが帰ってくる前に、この特製サンドイッチを仕上げちまわないと」
俺は再びフォークを握り、少しだけ力の抜けた手つきで、スパイシーな卵サラダをパンに乗せ始めた。
外の世界がどれほど混沌としていても、このキッチンにある日常だけは、何者にも邪魔させない。そう心に誓いながら。
ちなみにユウナの肉体年齢は24歳です。
ユウナのアコード対策について。果たしてユウナはアコードの無力化の為になりふり構わない外道な手段(ユウナ視点)を取るべきか?
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原作通り。
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平和の為に覚悟を決める。