破滅フラグしかないボンボンに転生してしまった件 〜グフに踏み潰される運命なんて、全力で回避してやる!〜《完結》   作:kiakia

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第三十四話 独断専行

 

 

 

「こ、後退する! 戦線をカナジ市街まで下げて態勢を立て直すんだ!」

 

 

 

 テロリストの司令部からは、もはや誇りもへったくれもない悲鳴が響いていた。コンパスという暴力装置を前に、彼らが後生大事に抱えていた聖戦の理念は霧散し、残ったのは生への執着と、かつて自分たちが踏みにじった街へ逃げ込もうとする浅ましさだけだった。

 

 

 

「逃がすな! 奴らをカナジまで追撃し、ブルーコスモスの指導者ミケールを引きずり出すんだ!」

 

 

 

 オルドリン自治区の軍幕僚たちが激昂し、全軍に追撃の号令を下そうとした……その時だった。

 

 

 

「……お待ちください!ミレニアムより緊急通信です!」

 

 

 オペレーターの報告と同時に、殺気立った指令室のモニターが強制的に切り替わり、一人の男の姿が映し出された。

 

 

 

 整えられた紫髪にどこか眠たげながらも冷徹な光を宿した瞳。恐らくザフト軍上層部であれば知らないものはいないであろうその男の名は。

 

 

 

 

「お初にお目にかかる。世界平和監視機構コンパス、副総裁のユウナ・ロマ・セイランだ。緊急事態故に挨拶は抜きにさせてもらいたい」

 

 

 ユウナは、指令室の面々が発する怒気など歯牙にもかけない様子で、淡々と、しかし有無は許さぬ口調で告げた。

 

 

 

「こちらからの要請だ。テロリストへの追撃戦は、我々コンパスが全て引き受ける。貴公らは直ちに攻撃を停止し、市民の避難誘導、および自治区内の防衛に全力を挙げてもらいたい」

 

 

 その言葉に、プラント側の駐留軍将校が机を叩いて立ち上がった。

 

 

「ふざけるな! 我々は一方的に攻撃を受け、多くの市民と兵士が命を落としたのだぞ! 奴らがカナジに逃げ込むなら、焼き払ってでもミケールを討つのが筋だ!」

 

 

「……『筋』、か。いい言葉だ。だがね」

 

 

 

 ユウナは鼻で笑い、モニター越しに鋭い視線を突き刺した。

 

 

 

「駐留軍である貴殿らの防衛権が認められているのは、あくまでこの『オルドリン自治区』限定だ。一歩でもそこを越えてカナジ市街へ砲火を叩き込めば、それは正当防衛ではなく、明確な侵略と見なされる」

 

 

 

「何だと……!?」

 

 

 

「忘れたか? カナジはアフリカ共同体の勢力圏に近い。ザフトの部隊が感情に任せて国境線を越え、あまつさえ市街地を爆撃してみろ。それを口実に、プラントと連合が交戦に発展する可能性があるとわからないのか?」

 

 

 

「我々を……侵略者だと!? テロリストに一方的に攻撃され、蹂躙された我々に向かって、貴様は何を――!」

 

 

 

 

 

「うるせぇ!!!」

 

 

 

 

 

 プラント駐留軍の司令官が、顔を真っ赤にしてモニターのユウナを怒鳴りつけた。だが、次の瞬間、その激昂を圧力さえ感じるほどの咆哮が沈黙させる。

 

 

 ユウナの怒声が、司令室のスピーカーを割り、全通信回線を震わせた。先ほどまでの冷徹な外交官の仮面は剥がれ落ち、そこには戦場という火薬庫を預かる者の剥き出しの殺気があった。

 

 

 

「テメェ!!あのテロリスト共の狙いが本気で分かんねぇのか!? 今お前らが怒りに任せてカナジを攻撃してみろ。それが『正当な報復』で済む時期はとうに過ぎてんだよ! 最悪、連合とプラントが再び戦端を開く絶好の口実になるのが分からねぇほど、その頭は飾りか!? ああ!?」

 

 

 ユウナはモニターに身を乗り出し、ほとんど恫喝じみた勢いで言葉を叩きつける。彼の前世をベースに例えるのであれば、駐留軍の行おうとしていた事は。

 

 

『沖縄在日米軍基地がテロリストに襲撃され、テロリストが那覇市に逃げ込んだのを見て。市町村や日本政府、米国政府の許しもなく、基地司令が独断で戦車や戦闘機を民間人も多数住まう那覇市に突入させようとしている』

 

 

 

 と例えればどれ程までに正気の沙汰ではない、『ヤバイ』行為であるのか分かり易いのかもしれない。

 

 

 

 

「その結果、再び世界が核の投げ合いや大量殺戮兵器の応酬をし始めたら、お前は責任を取れるのか!? 十数億の命を背負って戦線を広げる覚悟があるってのか!? 答えろッ!!」

 

 

 

 その鬼気迫る気迫に、司令部全体が凍りついた。だが、皮肉にもその「沈黙」を破ったのは、戦場からの無慈悲な報告だった。

 

 

 

『報告! 第一、第三モビルスーツ小隊、司令部の待機命令を無視! 撤退するテロリストを追撃し、カナジ市街の境界線を越えようと 攻撃を継続しています!』

 

 

 

「何だと……!?」

 

 

 

 司令官が絶句する。モニターの端に映し出されたライブ映像では、数機のジンが加速し、逃げるウィンダムの背中に向かってなりふり構わず砲火を叩き込んでいたのだ。

 

 

 それは整然とした軍の進軍ではなく、理性を失った復讐の獣の群れだ。そして彼らが目指す場所は明らかにカナジ方面であって……司令部の人々は最悪の事態が脳をよぎり、背筋が一気に凍りついてしまう。

 

 

 

「テメェら、どんな教育してんだ!! 司令部を無視して前線の兵が進軍だと!? クソッ、これだからヘイトに染まった連中は……!!」

 

 

 ユウナの瞳に、絶望に近い怒りが宿る。ナチュラルの捕虜なんているかよと言いながら殺戮をし始めたあの有名な場面が頭の中に甦りつつ、最早彼は最低限の取り繕うことすらやめて叫び始める。それは要請ではなく最早命令である。

 

 

「今すぐ辞めさせろ! 全機、即刻後退させろ! 本気で戦争を起こすつもりか!? 世界を焼き払いたいのはどっちだよ!!」

 

 

 

 ユウナの罵声に弾かれたように、司令官は震える手でマイクを握りしめた。

 

 

 

「全MS隊へ通達、直ちに追撃を中止せよ! 境界線から後退し、オルドリン内へ帰還しろ! 繰り返す、作戦は終了だ! 直ちに――」

 

 

 

 だが、その命令が前線に届くことはなかった。戦場に散った仲間の血、焼き払われた市街、そして目の前にいる「弱り果てた敵」。

 

 

 

 狂乱状態に陥ったパイロットたちにとって、司令部の弱腰な命令など、ただの雑音に過ぎなかったのだ。

 

 

 映像の中で、一機のジンが逃げ遅れたウィンダムの脚部を撃ち抜き、地面に転倒させる。パイロットはハッチをこじ開けようと必死に抵抗するが、ジンはその巨大な足で、逃げ場を失った機体を弄ぶように、じわじわと踏みつけ始めた。

 

 

 

 コンパスが行った防衛のための戦闘ではなく、そこにあるのは、純粋な悪意と、なぶり殺しの悦楽だった。

  

 

 

 テロリストたちの「聖戦」の魔法が解けた後に残ったのは、加害者と被害者が入れ替わっただけの、終わりなき地獄。

 

 

 

 

  カナジの境界線上で繰り広げられる凄惨な光景。正規軍による、もはや「戦闘」とは呼べない執拗ななぶり殺しがモニターを埋め尽くす中、ユウナは深く、深く椅子に身を沈め、忌々しげに天を仰いだ。

 

 

 

 現場の暴走は、彼が必死に維持しようとしていた均衡を、最悪の形で踏みにじろうとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

「チッ、どいつもこいつも熱くなりやがって……。アグネス、ついてこい! 駐留軍の不始末に付き合ってる暇はねぇ、逃げ出す前に本丸を叩くぞ!」

 

 

 

 イモータルジャスティスのコックピットで、ハイネは吐き捨てるように言い放った。彼の瞳には、地上のなぶり殺しに対する憐憫よりも、この混乱が引き起こす最悪の二次災害への懸念が強く宿っている。

 

 

 

 一刻も早く本丸を潰して事態を終結させる。でなければ駐留軍は本当にカナジに突撃しかねない。そうなる前に敵司令部の撃破、もしくは降伏を促さなければ混乱はさらに増大してしまう。

 

 

 

 推力を最大まで高め、後方に控えるテロリストの司令部――ミケール大佐の所在が疑われる拠点へと、弾丸のような速度で突進を開始した。

 

 

 

 

「了解、ハイネ隊長! どさくさに紛れて逃げようったって、そうはいかないんだから!」

 

 

 

 アグネスのギャンがその後を追い、戦域を横断していく。その背後、混乱に染まる戦場の上空で、一機の影が静かに制空権を奪い取った。

 

 

 

 シンが駆るガイアティターンズである。彼は獣のような鋭い感覚を研ぎ澄ませ、逃走を図るテロリストたちの動線を完全に把握している。

 

 

 

 家族を、トワを、ルナマリアとの平穏を汚そうとした連中。しかし、地上で理性を失い残虐な行為に耽る駐留軍の姿は、かつて復讐に心を焼かれていた頃の自分を思い出させ、シンの心に冷めた静寂をもたらしていた。

 

 

 

「……あんなの、もう見たくないんだ。だから、俺が全部終わらせる!」

 

 

 

 シンはガイアティターンズを人型形態に変形させ、空中へと躍らせると、両手に握った新型レールガン『ライコウ』の照準を別々の熱源へと固定した。モニターには、市街地の路地を縫うように逃げ回る二機のウィンダムをターゲットとして、同時に引き金が引かれた。

 

 

 後もなく放たれた神速の弾丸は、空気を引き裂きつつ、寸分の狂いもなく二つの標的を射抜いた。

 

 

 

 一発目の弾丸が左側のウィンダムのコックピットを、中心からわずかに逸れた位置で正確に貫通する。装甲はバターのように切り裂かれ、中のパイロットは衝撃を感じる暇さえなく、鋼鉄の礫と共に沈黙した。

 

 

 同時に放たれた二発目の弾丸もまた、右側のウィンダムの胸部装甲を一点で穿つ。動力源や推進剤を避けた精密射撃により、敵機は派手な爆発を起こすことすら許されず、内部の「命」だけを奪われて、ただのガラクタとなって前のめりに崩れ落ちる。

 

 

 

 

 

 

 シンの戦術は、もはや怒りに任せた力押しではない。ライコウから放たれる一撃一撃が、テロリストたちのコックピットを適確に、そして無慈悲に潰していく。

 

 

 逃げれば逃げるほど、その背後に「死」の指先が正確に触れていく。爆散して四散することもない、ただ静かに、だが確実に鉄の骸な積み重なっていく。二丁のレールガンが交互に火を噴くたび、カナジへと逃げ込もうとしていた連中の「明日」が、一片の情けもなく断ち切られていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 だが、それだけで終わることは無い。人は劣勢である時は恐れるものだが。優勢となってしまえばまた違う感情に支配されるのだ。そう、報復という名の激情に。

 

 

 

「どけッ! 仲間の仇だ、ブルーコスモスの化け物共め!」

 

 

 

 オルドリン地区司令部のザフト兵たちが、後退するテロリストのダガーLに殺到していた。怒りに狂ったジンの一隊は、逃げ遅れた105ダガーを蜂の巣にして撃墜すると、そのまま勢いに任せてカナジの境界線へとなだれ込もうとする。彼らにとって、もはやこれは戦争ではなく、剥き出しの憎悪を晴らすための猟場だった。

 

 

 その時、天から降り注ぐ青き閃光が、狂乱の最前線を切り裂いた。

 

 

 

「こちら世界平和監視機構コンパス! 警告します、直ちに後退してください!」

 

 

 

 上空から急速降下し、ジンとテロリストの間に割り込んだのはキラの搭乗するライジングフリーダムだ。かつての愛機、フリーダムに似た意匠を持つ機体で彼は広域通信を全開にし、悲痛な、それでいて断固とした声を張り上げる。

 

 

 彼はずっと空中で事態を監視していた。最も機動力が高く、最も技量の高いキラに与えられた仕事は中枢及び最終防衛ラインを突破しようとする敵軍の排除だ。

 

 

 

 だが、事態が急変し、ハイネとアグネスが本丸に攻め込み、シンが残存する敵部隊を破壊する中。キラは勢いのままカナジに突入しようとするザフト軍を止めようと動いたのだ。

 

 

 

 

「ミケール大佐はここにはいません! これ以上の戦闘継続は不必要な市民の被害に繋がります! 追撃はコンパスに任せて、現地の部隊は民間人の避難を優先してください!」

 

 

 しかし、その必死の叫びは、復讐に酔うザフト兵にも、死に物狂いのテロリストにも届かない。ダガーLはフリーダムに向けて遮二無二ビームを放ち、ジンの一隊は「邪魔をするな、コンパス!」と叫びながら、キラの機体を避けてなおも敵機へと突き進もうとする。

 

 

 

「……分からず屋め!!」

 

 

 

 キラの瞳が鋭く光る。彼は迷いを断ち切るように操縦桿を叩いた。

 

 

 

 ライジングフリーダムの腰部に懸架されたヴァイパー3レールガンが展開し、手に保持したドッズライフルが唸りを上げる。

 

 

 

 キラの狙撃は神速かつ正確だ。まず、先行していたジンのメインカメラをピンポイントで射抜き、その視界を奪う。続けざまに放たれたレールガンの弾丸が、武器を構えたジンの腕部のみを正確に粉砕した。

 

 

 

 爆発を最小限に抑えつつ、戦闘能力だけを剥ぎ取っていく「不殺」の乱舞が戦場で披露される。だが、一機のジンがカメラを破壊され、腕を失いながらも、ハッチを無理やり開けて身を乗り出した。

 

 

 

「殺してやる……!仲間を殺した連中を、この手でッ!」

 

 

 

 パイロットは拳銃を手にし、無謀にも105ダガーのコックピットに向けて身を挺して突撃を試みる。その狂気とも言える復讐心に、キラの表情が歪んだ。

 

 

「この……! やめてください!!」

 

 

 

 キラはライジングフリーダムを反転させ、突進するジンの脚部へと向け、最低出力に調整したビームサーベルを一閃させた。

 

 

 

 白熱する刃がジンの膝関節を焼き切り、バランスを失った機体は地面を激しく削りながら転倒する。機動力を奪われ、ゆっくりと地上に倒れ伏すジン。それでもなお、パイロットはハッチから憎悪の言葉を叫び続けていた。

 

 

 その光景を好機と見たか、あるいは追い詰められた鼠の最後の悪あがきか。後退していたテロリストたちが、形勢逆転と言わんばかりにビームライフルの銃口を一斉にキラへ達へと向ける。

 

 

 

「……堕ちろ、化け物め!」

 

 

 

 放たれた複数の火線が、薄暗い戦域を刺し貫く。だが、ライジングフリーダムの青き翼が閃いた瞬間、キラの機体は瞬時に流れる様な鋭角的な機動でその全てを回避した。

 

 

 

 そこから始まったのは、慈悲と残酷が同居する、わずか三十秒の「断罪」だった。

 

 

 

 キラは射撃武器をあえて使わず、白熱する一本のビームサーベルのみを手に、テロリストの密集地帯へと文字通り飛び込んだ。燃え盛る市街地の火に照らされ、ゆらめく陽炎のように幻惑的な動きで敵機の間をすり抜ける。

 

 

 一閃。先頭にいたダガーLの右腕が、ビームライフルを握ったまま宙を舞う。

 

 

 二閃。即座に背後を取られた別の機体が、バックパックの推進剤を焼かれ、噴き出す白煙と共に地面に沈み込む。

 

 

 キラの動きに迷いはない。コックピットという針の穴ほどの急所を、あえてミリ単位で避けながら、その周囲にあるセンサー、関節、スラスター、武装だけを、彫刻刀で削り取るような精密さで切り裂いていく。

 

 

 

 三機、四機――。

 

 

 

 ドロリと溶け落ちる装甲の熱、焼き切られた回路から散る火花。炎に照らし出されたライジングフリーダムの姿は、死すら許さぬ「戦いの神」そのものであった。その翼が翻るたびに、鋼鉄の巨体が次々と手足を失い、物言わぬ残骸となって地面に落ちていく。

 

 

 

 五機、六機。

 

 

 

 わずか三十秒。コンパスのエースによって徹底的に「分解」された機体群が、地面に散乱する瓦礫のように無残に転がった。

 

 

 

 

 爆発は起きない。誘爆すら許さないその圧倒的な支配力に、生き残っていたテロリストたちは銃を構えることすら忘れ、ただただ震え上がった。そしてそれは、キラに組み伏せられたザフトの兵士たちにとっても同じだった。

 

 

 

 

 燃え広がる炎の赤に染まり、静かに浮遊するライジングフリーダム。その機体から放たれるのは、圧倒的な強者だけが許される絶対的な威圧感であった。戦うことも、殺すことも、そして自ら望んで死ぬことさえも、この青き翼の前では許されない。

 

 

 

 それは慈悲という名の支配であり、見る者に傲慢ささえ感じさせるほどに美しく、抗いようのない恐怖として、戦場にいた全ての者の魂を芯から凍りつかせた。

 

 

 その重苦しい沈黙を切り裂いたのは、後方の市街地北方から響いた凄まじい爆発音と、それに続く通信機越しの苦々しい声だった。

 

 

 

「こちらハイネ中佐。テロリストの司令部、および通信拠点の制圧を完了したぜ。……だが、案の定だ。ミケールの野郎はここにはいねぇ。最初からトカゲの尻尾切りに使うつもりだったんだろうな」

 

 

 イモータルジャスティスのコックピットから、部隊長からの報告が入る。制圧した拠点には幹部数名が残されていたものの、本命の姿はない。

 

 

 背後ではアグネスがイラついた様子で逃げ出そうとする敵MSをビームアックスで叩き壊す音が混じっていた。

 

 

 

「シン、キラ。聞こえるか。これより残敵の掃討に移る。……いいか、生き残った敵兵がいるなら、そのままコンパスで保護しろ。興奮したザフト兵どもに、勝手な私刑を許すんじゃないぞ」

 

 

 

 彼は慈悲で敵パイロットの保護を命じているのではなく、情報を得る為。なにより国際法廷に引き摺り出すことでこちらの正当性を示そうとしているのだ。

 

 

 パイロット達は十中八九、法の名の下に銃殺されることになるだろうが知ったことではない。それよりもザフト兵が命令を無視してテロリストを私刑するという状況を作り出すことが問題なのだから。

 

 

 

「……ハイネ隊長」

 

 

 

 ライジングフリーダムのコックピットで、キラは短く呼びかけた。その声は微かに震えており、モニターに映る無残にひしゃげたジンの残骸を見つめる瞳には、申し訳なさそうな、痛みを堪えるような色が浮かんでいた。

 

 

 

「……すみません。感情を抑えられなかった現地のザフト兵を……攻撃しました。止めるために、仕方なかったとはいえ……」

 

 

 キラの言葉は、深い自責に溢れていた。平和を守るための組織が、守るべき対象であるはずの友軍を撃った。その矛盾が、彼の心に重くのしかかっていたのだ。だが、ハイネは鼻で笑うように、だが確かな信頼を込めた声で即座に返した。

 

 

「謝る必要はねぇよ。……いや、むしろよくやった。殺してないんだろ? なら、それで十分だ。事後処理はセイラン副総裁に任せろ……俺たちが現場で泥を被ってでも引いた一線は、副総裁なら最大効率で利用してみせるさ」

 

 

 恐らくこの場にユウナがいるのなら「残業がぁ…!俺の休みがぁ…!」とぎゃーぎゃーと叫んでいるだろうが、それでも、彼であればキラを非難することはないとハイネは確信していた。

 

 

 とはいえ、プラントの強硬派であるジャガンナート辺りは嬉々として口撃する事だろうが……果たしてあの紫狸に勝てるのだろうか?と疑問に思いつつも、ハイネはイモータルジャスティスのセンサーを巡らせ、戦場に漂う硝煙の向こう側を見据えた。

 

 

 

「世界が再び火の海になるシナリオは防げたんだ。……キラ、割り切って胸を晴れ。お前は今日、間違いなく戦争を防いだ。その事を忘れるな」

 

 

 

 その言葉は、冷徹な理屈を超えてキラの心に届いた。

 戦場にゆらめく火影の中、ライジングフリーダムは静かに機首を上げた。

 

 

 

 かつてのように一人で全てを背負うのではない。泥を被る役割を分かち合える戦友がいて、その後始末を引き受ける政治家がいる。

 

 

 史実の様に一人で背負い込むこともなく、キラはハイネの言葉を噛みしめながら、残された仕事を完遂するために、再び夜の帳へと加速を開始するのであった。

 

 





・史実との違い
 余りにもコンパス側の戦闘が苛烈になり過ぎて、史実では冷静であったテロリスト側の司令部は恐慌状態となっている事と、カナジ市に流れ込もうとしたのが駐留軍「パイロット」の独断専行となった事。原作では司令部が思いっきりカナジへの追撃命令を出しており。後々ジャガンナートはコンパス側を糾弾していましたが、仮にカナジで犠牲者が出た場合WW1並のドミノ倒しになりかねなかった危険な状態でした。

 ユウナが通信を出した理由は、以前に複数回ミケール大佐の直属と思える部隊が似たようなことをしたのを知っているからであり、実際に劇場版では3〜4回程ザフト側を国境侵犯させる為のテロが起きていたそうな。今まではユウナ達は未然に防ぐ事にギリギリ成功していましたが、今回はキラが武力行使しなければならない程に危うかった戦闘だったと言えるでしょうね。


・ユウナの言動
 もう途中からチンピラがヤクザ手前になってますが、基本的にユウナがそのような言動をするときはメンタルゲージがガリガリ削られてる場面であると覚えておくといいかもしれません。今回はマジで現地部隊の暴走で戦争が再び勃発しかねないレベルのヤバさだったのでもう叫びまくっていました。次回も、そのまた次回も久々にユウナは叫びまくってくれるでしょう。

ユウナのアコード対策について。果たしてユウナはアコードの無力化の為になりふり構わない外道な手段(ユウナ視点)を取るべきか?

  • 原作通り。
  • 平和の為に覚悟を決める。
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