破滅フラグしかないボンボンに転生してしまった件 〜グフに踏み潰される運命なんて、全力で回避してやる!〜《完結》 作:kiakia
今日の投稿は終了!しばらくストックはあるので明日も楽しみにして頂けると幸いです。
核ミサイルにすら耐えるオーブの最高級防御地下シェルター。外界を襲う地獄のような轟音を完全に遮断したその空間で、ウナト・エマ・セイランは他の氏族の長たちと、優雅に高級酒を傾けていた。
「……フン、プラントも地に堕ちたものよ。だが、これでロゴスとのパイプはより強固になる。再開発の利権、そして軍備の拡張。我らセイランの時代が来るぞ」
その醜悪な談笑のすべてが、室内の隠しカメラによって記録されていることも知らずに。
重厚な防爆ドアが、乱暴にこじ開けられた。
現れたのは、泥と血にまみれ、顔を青白く引き攣らせたユウナ・ロマ・セイランだった。その背後には、ユウナと共に被災地を這いずり回り、彼の必死な姿を間近で見てきたトダカ一佐と、彼を信奉する完全武装の兵士たちが控えている。
「ユ、ユウナ!? 何だその格好は! ?汚らわしい…すぐに着替えてこい!」
ウナトが顔を顰めて立ち上がる。だが、ユウナの目は死人のように冷たかった。
「……着替える? 外では人が泥に呑まれ、兵士が宇宙で焼かれたんだぞ。親父殿。あんたたちがここでワインを啜っている間に、オーブの空は燃え尽きたんだ」
「何を言うか! 我々は事後処理の算段を――」
「算段、ね。これのことか?」
ユウナが懐から端末を取り出し、空中にホログラムを投影した。映し出されたのは、数分前までのこの部屋の醜態。そして、それに続いて再生されたのは、襲撃を事前に予見し、それを「ショー」と呼んで黙認していたウナトとロゴスの密談記録だった。
「な……っ!? お前、それをどこで……!」
「親父殿。あんたが笑って見過ごしたもののせいで、今日、オーブの民が数千人死んだ。宇宙軍のパイロットもだ」
ユウナの声は小刻みに震えていた。それは怒りよりも、極限の疲労と自責の念から来るものだった。彼は一歩、ウナトに詰め寄る。泥まみれの手が、ウナトの真っ白な上着の胸元を掴み、どす黒い汚れを刻みつけた。
「今、外の市民はまだ何も知らない。俺やトダカ一佐が必死に隠し、救助に奔走しているから彼らはまだ国を信じている……だがな、もしこのデータが表に出ればどうなると思う?」
ユウナは、ウナトの耳元で低く、毒を流し込むように囁いた。
「怒り狂った群衆が、このシェルターをこじ開けてあんたを引きずり出し、文字通り八つ裂きにするだろう。俺でもそれを止めることはできない……あんたは今日、オーブという国を敵に回したんだよ」
ウナトの顔から、一気に血の気が引いた。周囲の氏族長たちも、腰を抜かして座り込む。ユウナはそんな彼らを見回しながら口にする。
「お前達も選べ。今すぐ全権を俺に譲渡し、隠居するか。それとも、この場で『売国奴』として晒し者にされ、泥の中で惨めに死ぬかだ」
「ゆ、ユウナ……お前、実の親を……!」
「……親だと思っているから、死なせずに『隠居』で済ませてやるんだ。おい、連れて行け。二度と俺の視界に入れるな」
ユウナの瞳に宿る、逃げ場のない圧倒的な「覚悟」に、ウナトは膝を折った。混乱に乗じた、鮮やかな、そして血の滲むような政変。ユウナは親父たちをオーブ兵に連行させると、その場に力なく崩れ落ちそうになった。それをトダカが、黙って支える。
「……これで、良かったのかな?トダカ一佐。俺は、父親まで切り捨ててしまった」
「……あなたは国を救われました、ユウナ様。手段はどうあれ、救われた命がある。それが今のオーブの真実です」
もう、後戻りはできない。彼は自分の魂を切り売りして、オーブの未来という名の呪縛をその手に掴み取ったのだ。
「……ふぅ。よし、決まったな」
親父たちがズルズルと引きずられていくのを見届け、シェルターの扉が閉まった瞬間。俺はピンと張っていた糸を切り、その場にヘナヘナと座り込んだ。
「あー……言っちゃった。やっちゃったよ。実の親を脅迫して権力掌握(クーデター)完了。これ、後で地獄の閻魔様にめちゃくちゃ怒られるやつだわ……」
さっきまでの冷徹な執政官モードはどこへやら。俺は泥だらけの頭を抱えて独り言を漏らす。傍らで直立不動のトダカ一佐が、なんとも言えない複雑な表情で俺を見下ろしている。
「ユウナ様、お体は……」
「あー、大丈夫大丈夫。ちょっと心臓がバックバクなだけだから。いやー、人生で一番心臓に悪い芝居だったよ。トダカ一佐も、あんな大根役者の付き添いさせてごめんね?」
あえて軽口を叩いて、自分の中のドロドロしたものを誤魔化そうとする。そうでもしないと、今すぐ逃げ出したくなるからだ。トダカ一佐は一瞬呆れたような顔をしたが、すぐに真面目な顔に戻って敬礼した。
「……いえ。その『お芝居』で、この国は救われました」
「硬いこと言わないでよ。俺はただ、親父の白シャツを泥で汚した瞬間の『あ、これ絶対怒られるわ』っていう絶望感で今も震えてるんだから。あはは……」
乾いた笑い声を上げる。
これで、オーブの全権は一時的に俺のものだ。アスハの看板も、セイランの資金も、隠居した連中の資金も、宇宙軍の残り火も、全部俺がハンドルを握る。
「……あ、やべ。また吐きそう……ねえ、トダカ一佐、ちょっとバケツ。もしくは……トイレまで肩貸して……」
込み上げてくる胃液を、俺は精一杯の「軽いノリ」で飲み込もうとした。
救世主なんて、なるもんじゃない。フリット・アスノはよく、多くの人々の犠牲を乗り越え、耐えきれたなと改めて尊敬するしかない。
これからカガリを迎えに行かなきゃいけないっていうのに、今の俺は、泥と吐瀉物の臭いが染み付いた、ただの限界御曹司だった。
移動式大規模防潮ユニット「ワダツミ」
ユニウスセブン落下の余波による大津波を予見していたユウナ・ロマ・セイランが、モルゲンレーテのエリカ・シモンズら技術陣に「一週間以内に形にしろ。できなければ予算を凍結する」と半ば脅迫に近い形で強行させた即席の防衛システム。
その実態は、緻密な計算に基づいた建築物というよりは、ユウナの「とにかく人口密集地帯に分厚くて倒れない板を並べろ」という無茶振りを形にした、極めて前例のない代物だ。
海岸線の地中に埋設された巨大な塔から、警報と同時に高強度の複合装甲板がスライド展開し、海を遮る巨大な壁を形成する。しかし、あまりにも突貫工事で制作されたため、ユニット自体のアンカーだけでは津波の凄まじい運動エネルギーを支えきれない。
そのため、この「ワダツミ」は最初から「モビルスーツによる物理的な補強」を前提として設計されている。壁の背後に配置された数機のMS隊が、機体各部のリミッターを解除し、倒れようとする壁を直接肩や腕で押し返して支え続けるのだ。その中には「リビルド」だけではなく一般の「アストレイ」、最新鋭のはずの「ムラサメ」の存在も確認されたという。
また、波のエネルギーを真っ向から受けて砕けないよう、装甲板はあえてわずかに角度をつけて配置されており、壁の隙間から海水を地下放水路へと効率的に逃がし、衝撃を分散させる構造になっている。
ユウナはこれを建設させる際、周囲の反対を押し切るために「これは連合による艦砲射撃の衝撃波、および熱波から都市を守るための防壁である」という軍事的な建前を使い、予算を強引に流用した。
結果として、この「急造の板」は、本来ならオーブを地図から消し去るはずだった死の波を力ずくで撥ね退け、犠牲者を奇跡的な数にまで抑え込むことに成功した。
現場の技術者たちからは「あんなデタラメな設計、二度と御免だ」と恨み節を言われているが、その「デタラメ」こそがオーブの命運を繋いだのである。急造品であるが為人口密集地帯及び、津波の到達地点やシェルターの展開が到底間に合わない箇所限定に配備したが為完全なものとはいえなかったが少なからず「史実」と比べて被害を避けることに成功したのであった。
オマケ
ユウナ先生のクーデター解説
「……ふぅ。改めて振り返ってみても、あの時の俺は自分でもどうかしていたよ畜生!!!!結果としてそれは『奇跡』に近い成功を収めたけどさぁ……!」
数日後、俺はデスクの上の、かつて親父――ウナト・エマ・セイランが座っていた空席を眺めながら、頭を抱えつつ、その「迅速なクーデター」の勝因を分析していた。
お手本にしたのは、前世の記憶にある『機動戦士ガンダムAGE』のフリット・アスノだ。彼は数十年かけて軍を掌握し、議場を物理的に封鎖して醜聞を晒すという「完璧な包囲網」で腐敗した連邦政府を転覆させた。俺がやったことも、本質的には同じだ。だが、俺の場合はそこに「災害」という名の最悪で最高のスパイスが加わっていた。
• 物理的な隔離と逃げ場の喪失
ユニウスセブン落下の衝撃波から逃れるため、親父や重鎮たちは、地下の「絶対安全なシェルター」にこもっていた。そこは外敵からは守ってくれるが、外側から鍵をかけられれば、ただの「巨大な檻」に変わる。フリットが無防備な演説予定のオルフェノア首相やその家族を包囲したように、俺は彼らが油断して引きこもったその空間を、物理的に、そして通信ごと完全に遮断した。
• 私兵の無力化と油断
親父たちは俺を「いつものバカ息子」だと舐めきっていた。だから、私兵を召集して警護を固めることも、シェルターのキーを引き渡すことに警戒もなかった。というより、シェルターに引きこもって酒を楽しんでいる最中に私兵達は邪魔なだけだ。その隙を突き、俺はトダカと彼が信頼する兵士を連れて。
• 「正義」のすり替え
フリットが戒厳令を「腐敗の除去とスパイの抹殺」という大義で正当化したように、俺は「未曾有の災害の最中に酒飲んでるクズ共を排除する」という、誰も否定できない大義名分を掲げた。わかりやすい悪役ムーブをしてくれたのは感謝だ。お陰でトダカ達現場の兵士達も俺に同調してくれた。わかりやすい悪役はいつの日もサンドバッグになるものよ。
• 情報の完全掌握
通信網を「災害による障害」という名目で一時的に制限し、国民に向けて流す情報は俺の「泥まみれの救助活動」一点に絞った。フリットがメディア戦略でオルフェノア首相達を逆賊へと貶めたが、俺の場合は情報を統制する事で政府上層部へ関心が移らないようにと誘導した形になる。今後は「負傷したから」「未曾有の災害を防げなかった責任を取る」など適当な理由をつけてセイラン派……いやウナト派はパージされたとしても誰も気にしないし、気にする余裕もないだろう。
「フリットは数年以上の時間をかけてクーデターの準備を整えた。だけど俺は、ユニウスセブンが落ちるまでのわずかな時間で、それ以上の好条件を揃えてしまった……皮肉なもんだよ。世界が滅びかけたおかげで、権力の座が一番安定するなんてさぁ…はぁ…」
準備は突発的で、なりふり構わぬものだった。本来ならもっと時間をかけて穏便に隠居させるか、MSを伴うフリットの様な過激なクーデターになる予定だったのだ。
お陰でシモンズ主任達にお願いした、バックドア云々は半ば無駄になってしまったが、それはそれとして今後の役に立つだろうと納得しておこう。
泥を啜り、トダカの胸ぐらを掴むような思いで進めたあの瞬間。だが、その無茶苦茶な熱量が、結果としてフリットが成し遂げた「完璧な包囲網」以上の速攻を生んだのだ。
「……ま、おかげで今は全方位から恨みを買ってるわけだけど。フリットみたいに数十年も戦い続ける気も覚悟も俺にはないんだ。俺はさっさと隠居したいんだよ、本当に……」
俺は、自分自身の「迅速すぎるクーデター」のツケを払うために、次の資料へと手を伸ばすのだった。
結果的にフリットを超える最高の条件でクーデターを起こせたよジョジョー!!まぁある意味政府首脳の多くが色々な意味で消し飛んだのでこれから大変なんですけどね!
どっちのアスランが見てみたいでしょうか?
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通常の優柔不断アスラン
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報連相の化身と化したアスラン