破滅フラグしかないボンボンに転生してしまった件 〜グフに踏み潰される運命なんて、全力で回避してやる!〜《完結》 作:kiakia
ユーラシアの荒涼とした大地を眼下に、俺たちが乗る万能艦艇は空を切り裂いていく。ブリッジの窓の外、大気圏内の乱気流を受けながらも微動だにせず突き進むその艦影を見て、俺は満足げに口角を上げた。
本来なら宇宙の海を高速で駆け抜けるためのナスカ級高速戦闘艦を、水中や空中でも使用可能としたマルチロールな特装艦がこの『バシレウス』だ。
俺は手元のコンソールで艦の状態を確認する。最大の特徴は、大気圏内での運用を可能にするために徹底的に改装された船体構造だ。ナスカ級特有の鋭利なフォルムを活かしつつ、左右のブロックを大胆に可動式へと変更。これにより、不整地への着陸や水上での安定性を確保している。まさに、宇宙・地上・水中を選ばない万能のプラットフォームと化している。
「武装は必要最低限。代わりに機動力と……隠密性に全振りした。ザフト版のガーティ・ルー、と言えば聞こえはいいが、こいつはそれ以上にタチが悪いぞ」
そう、この艦にはユニウス条約で禁忌とされたミラージュコロイドによるステルス機能が搭載されているんだ。その有用性は、かつてアーモリーワンを襲撃したファントムペインが痛いほどに示している。
では、なぜ国際条約を真っ向から踏みにじるような機能を搭載したのか。理由は至極単純だ。キラ達が所属するコンパスの任務が、起きてしまった紛争を鎮圧する「火消し」であるならば、カナード率いる傭兵部隊『X』の任務は、紛争が起きる前にその「火種」を消し去ることにあるからだ。
テロリストの隠れ家、武装組織の準備基地、あるいは国家の影で行われる非道な実験施設。そういった場所に真っ向から「コンパスです、平和のために来ました」なんて顔をして乗り込んでも、証拠を隠滅されるか返り討ちに遭うのが関の山。
だからこそ、俺の権限で強引にねじ込ませた。相手に何が起きたかを悟らせる前に、すべてを灰にする。それがバシレウスに与えられた役目だ。
名目的には、カナードたちは正規のコンパス隊員ではない。あくまで協力関係にある「コンパス公認の独立傭兵部隊」だ。国家に属さず、国際組織の正員でもない彼らの装備は、厳密にはユニウス条約の制約を受けない――。そんな屁理屈とも呼べる法的なグレーゾーンを、俺の政治力で力ずくでこじ開けたわけだ。
なーんて、政治力といえば有能そうに見えるが実際にはほぼゴリ押しだけどな!
ラメント議長にはアーモリーワンの教訓を活かすためにと、フォスター大統領にはテメェらのせいで兵器流出してるんだけどガーティ・ルー級が敵に使われたらどうすんだ?と過去の傷を抉りながらのカウンター兵器としての許可を得た上だ。
カガリに関しては「頼むから予算は超過しないでくれ」と懇願されつつも好きにしていいと言質は取れた。諦めてると言った方がいいかもしれんが……許せカガリ。バシレウス「は」全部のデータや使用状況についてちゃんと説明するから!
「まぁ、バレたら国際問題どころか世界中から大炎上だろうな。各方面の潔癖症な連中が、鬼の首を取ったように俺を糾弾する姿が目に浮かぶよ」
独り言ちて肩をすくめたその時、コンソールのプライベートラインに通信が入る。サハク家の保有するアメノミハシラを中継したSPC(共時性パリティ通信)だ。量子通信の応用により、地球の裏側だろうが月面だろうが、タイムラグなしのリアルタイムで会話を可能にする最新技術。
これさえあれば、ファウンデーションの監視網を潜り抜けて「密談」ができる。と言っても常に使用可能なのはこのタブレットくらいだ。ミレニアムやアークエンジェルでも使用可能だが、その場合予めアメノミハシラに連絡する必要があるのでおいそれと使えない。その辺りは向こうの国防にも関わるんだから当然だ。今は寧ろこれだけでも使用可能にしてくれたミナに感謝しなくては。
「……ユウナ様、ご報告です」
通信ウィンドウに現れたのは、オーブの良心とも言えるトダカの厳格な顔だ。まぁ良心といいつつ俺への扱いは普通に酷いがそれはそれとしてだ。
「ミーア嬢は、予定通りファウンデーションを離脱。私が代わりにミケール大佐捕縛任務の指揮を執る手筈が整いました。彼女は今、高速艇でオーブへの帰還路についています」
「……そうか。よかったぁ……」
俺は椅子の背もたれに深く体重を預け、本日何度目か分からない安堵の溜息を吐き出す。通信ウィンドウ越しに見えるトダカの安堵を含んだ表情を見る限り、ミーアの離脱は完璧に成功したと見ていいだろう。
正直なところ、綱渡りどころか「あみだくじ」を全力で駆け抜けるような無茶な作戦だったと言える。もしアコード達が影武者相手になりふり構わず牙を剥いていれば、ミーアの命はなかった。
そうなれば俺は、この『バシレウス』で強引に現場へ急行し、最悪のタイミングでファウンデーションと全面戦争を始める羽目になっていただろう。間に合わないと分かっていても、行かざるを得ない地獄絵図だ。それだけは回避できた。
ミーアを影武者にしたのには理由があり、万が一にもラクス本人を洗脳されることを恐れたからだ。読心能力でラクスを洗脳し、傀儡にする事に成功して仕舞えば、彼女の持つ絶大な影響力で世界を望むままに作り変えてしまう。
そんな破滅を招く前に、ラクスの性格や仕草を完璧以上にトレースしたミーアを派遣し、たった一日の滞在で「急用」を理由に離脱させるという芝居を打ったのだ。
万が一ミーアが捕縛されてラクスとして振る舞えと命令された所でこちらのラクスを出してしまえば、一瞬で向こうは原作のデュランダルの様にラクスの偽物を使って好き放題した信用できない連中へと変貌するのだから。
もちろん、ラクス本人からは「ミーアを危険に晒すなんて!」と烈火の如く反対された。だが、連中がミーアに対して決定的な暴挙に出ないと確信できたのは、最もアコードをよく知るデュランダルのお陰と言えるだろう。
デュランダル曰く、アコードの多くは選民思想でコーディネイター至上主義、いやコーディネイターすら自分たちアコード以下の家畜だとアウラより教育を受けている。そんな連中が果たして影武者のラクスを受け入れて代用品として使うか? といえば答えはノーだ。
奴らのプライドや、アコードとしての「美学」が、紛い物で妥協することを許さない。特にラクスのツガイとして生まれたタオ宰相とかいう奴は、本物に対する執着が強すぎて、偽物がその席に座っていること自体が生理的な嫌悪の対象になる。
だからこそ、正体を見抜いたとしても、奴らは「本物を手に入れるための手駒」としてミーアを扱う可能性はあれど、即座に殺したりはしない。その彼らの傲慢さこそが、今回の作戦の最大の勝算だ。
我ながら、本当に最低だとは思う。新たな道を歩み出そうとしていたミーアを、再びあの欺瞞に満ちた聖女の座へと、それも命の保証さえない死地へと引き戻したのだから。
たった一日、されどその一日の重みは計り知れない。アコードという怪物どもが巣食う魔窟に、生身の彼女を放り込むことがどれほど狂気に満ちた賭けだったか。
だが、読心の為にろくに情報も出せず、いきなり自宅に訪問して頭を下げる俺に対し、彼女は不敵な笑みを浮かべて言ったんだ。
「貸し一つですからね、ユウナ様?」
その一言で、彼女はすべてを引き受けてくれた。どんな法外な貸しになろうが、彼女の命さえ無事ならいくらでも支払ってやるさ。宝石でも、地位でも、あるいはこの俺の首でもな。
通信画面の向こう、トダカに対しても俺は念を押すように告げた。
「……トダカ、何かあれば即座に脱出しろ。ミケールなんて放っておいていい。命が最優先だ」
比較的命の保証があるミーアと違いトダカは八つ当たりに殺される可能性もある。だが、トダカは表情一つ変えず、静かに首を振った。
「確約はできかねますな。……ですがユウナ様、これでも一介の武人として鍛えておりますし、私の部下たちは皆優秀です。今まで貴方様を何度も死地へ追いやってきた身としては、今度は私が、私の領分でできる限りのことをさせていただきます」
「……クソが」
思わず吐き捨て、俺は舌打ちする。アコードなんていう、オカルトじみた精神感応能力を持つ連中を相手にするせいで、こっちも使いたくもない手札を何度も切る羽目になっている。
俺の苛立ちは八つ当たりに近いものかもしれない。だが、そんな不気味な力で人の心を弄び、俺の大切な「駒」や、それ以上の存在を脅かす連中は、一匹残らず叩き潰してやると心の底から誓う。
「……いいか、トダカ。最悪の事態になっても、自決だけはするなよ。……通信終了だ」
返事を聞く前に、俺は通信を遮断した。トダカは実質的にオーブ海軍のトップだ。次期主力機であるムラサメ改の詳細なスペックや運用データを含め、国防の根幹に関わる機密を握りすぎている。
もし、アイツの頭の中をアコードに覗かれでもすれば、オーブの国防は丸裸……とまでは言わないが、半裸に近い無防備な状態になりかねない。
また、トダカが捕虜になった所で利用価値はいくらでも有り、ある意味だからこそ、そんな重要人物だからこそアコードはそう簡単には彼を殺さないはずという賭けでもある。下手な人間では殺されかねない、だが人質としての価値が高ければ高い程大切に保管せざる得ない。
無論こんな事はやりたくなかった。それでも、トダカ以外に信頼できて、かつこの死地に送り込める相応の立場の人間が、今の俺にはいなかった。下手な立場の人間ならばアコードは「こいつの利用価値はない」と射殺しかねない。
万が一の際は殺されず、人質としての至高の価値がありつつ。それでいて、「死んでもギリギリ問題のない人物」。それがトダカだ。
……結局最後の最後にこれまで支えてくれた男を捨て駒手前の扱いにするんだ。これまでの所業も含めて正直原作ユウナ以上のクズになっちまったと吐き気がする。
アイツは俺にとって恩人であり……絶対に本人の前では口にしないし、死んでも認めたくないが、ある意味では「義父」のような存在なのだから。
つまり、ここから先は総力戦である以上に、互いの手札を秒単位で出し合い、読み合う短期決戦だ。
俺はニュータイプでもなければ、Xラウンダーでもない。スペックだけで言えば向こうが圧倒的に上だ。向こうは未来を「視」るが、俺にあるのは、それでもと足掻き続けて繋いできた「縁」だけだ。
だが、負けないのではない。勝つ。勝つしかない。奇跡でも偶然でもなく、完璧な勝利を掴み取る以外の道は最早ここまでくると残されてはいない。阻止限界点は突破して賽は投げられたんだ。
ファウンデーションなんていう不愉快なオカルト集団をこの世から完全に消滅させて、ようやく俺は枕を高くして、少しは安眠できるようになるんだからな。
(そのためにも、まずはアドゥカーフを……テメェらのバックを直接叩き潰させてもらう…!)
俺は思考のノイズを振り払い、眼前のメインモニターに意識を集中させた。青白い光が流れるコンソールの向こう側、漆黒に包まれたユーラシアの地表が急速に近づいてくる。
いよいよだ。俺は準備を整えつつ、帰ったらミーアにも色々と送らなきゃなと脳内のカタログのページを捲るのであった。
現金……はダメか?やっぱり。
・バシレウス
一言で言えばナスカ級をベースにしたガーティー・ルーと言った機体。見た目的には横の部が地上や水中での運用では下がって、下部に接する改修を受けている。武装は最低限で速度、輸送量、隠密性を重視した隠密母艦と言える機体でまさに傭兵部隊Xの母艦に相応しいと言えるでしょう。
・トダカ
まさかのミーアではなくトダカがミーアの代わりに向かう事に。この辺りはラクスとの話し合いにて予め決めており、最初の外交ではミーアを出すが。急用で帰還。代わりに歴戦の猛者であるトダカを派遣する事で相手としても文句を言いにくい状況に追い込めつつ、ラクス・クラインという象徴が本物であれ、偽物であれ敵の手中に堕ちない構図を作り出す事に。オルフェは深夜いきなりラクスの偽物がいなくなって代わりにオッサンがやってきたのですから裏でキレまくってたり。
とはいえトダカを派遣するのもリスキーではあって、彼の脳内を覗けば「今回ミーアを派遣したのはユウナ」とバレますし、リヴァイアサンのカラクリやオーブ軍全体のある程度の情報はアコード達にバレますので、万が一「囚われのトダカ」なんて事になるとオーブ軍は全軍を持ってトダカの奪還とファウンデーションとの好戦へと至るでしょう。
なおミーアも帰還したので劇場版の後半の名シーンはほとんどカットされる事。本当にオルフェはキレて良いと思います。
ユウナのアコード対策について。果たしてユウナはアコードの無力化の為になりふり構わない外道な手段(ユウナ視点)を取るべきか?
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原作通り。
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平和の為に覚悟を決める。