破滅フラグしかないボンボンに転生してしまった件 〜グフに踏み潰される運命なんて、全力で回避してやる!〜《完結》   作:kiakia

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 ランキングがすごい事に…皆様ありがとうございます!というわけで深夜の記念投稿!


第十二話 婚約破棄は女の子だけの専売特許じゃねぇぜ!!

 

 

 

 

「う……ん、ここは天国か? それとも地獄の待合室……?」

 

 

 

 泥のように眠り、目が覚めればそこは自分の屋敷のベッドだった。とりあえず生きてる。五体満足だ。

 

 

 

 俺は這い出すようにして起き上がると、「胃の粘膜を優しく保護してくれそうな甘いココア」をバケツ一杯……は言い過ぎだが、特大のマグカップで用意する。

 

 

「……ふぅ。甘い。脳に糖分が染み渡る……。やっぱり世界を救うにはココアだよね」

 

 

 温かいココアを浴びるように飲み干し、ようやく吐き気が収まってきた。鏡を見れば、昨日の「泥まみれの救世主(笑)」から、なんとか「ちょっと疲れたイケメン御曹司」くらいには回復している。いや正確にはボンクラアホ息子なんだが。

 

 

「さて……。親父は別邸に放り込んだし、軍の掌握もトダカ一佐のおかげで順調。となると、次のお仕事は――」

 

 

 

 ちょうどその時、ミネルバから戻り、オーブの惨状と「不自然な無傷っぷり」に混乱しきっているカガリ・ユラ・アスハが、俺の元へ乗り込んできたという知らせが入り急いで応接間に向かうのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ユウナ! 一体どういうことだ! ウナトたちはどこへ行った!? それにあの『ワダツミ』とかいう防壁は――」

 

 

 

 応接室のドアを蹴破らんばかりの勢いで入ってきたカガリ。その背後には、護衛のアスラン・ザラも苦虫を噛み潰したような顔で立っている。

 

 

「やあカガリ。おかえり。無事でよかったよ。あ、アレックス君も。キラ君は元気?まぁいいか」

 

 

 俺はソファに深々と腰掛けたまま、優雅に(内心は胃の痛みに耐えながら)ココアを一口啜る。

 

 

「ユウナ! 真面目に答えろ!」

 

 

「はいはい、真面目にね。えーと、まず親父殿たちは『自分たちの無能さを痛感したから隠居して山で余生を過ごす』ってさ。で、今この国で一番偉いのは実質僕。あ、これは決定事項だから。反論は受け付けませーん」

 

 

 

「なっ……!?」

 

 

 

 絶句するカガリ。隣のアスランが鋭い視線を向けてくるが、俺はそれをヒラヒラと手で受け流す。

 

 

「というわけで、カガリ。君に大事な『お願い』……というか、『宣告』があるんだ」

 

 

 

 俺はココアのカップを置き、ニコリとかつてのアホ御曹司全開の笑顔で微笑んだ。

 

 

 

 

「カガリ! 君との婚約は破棄させてもらう!」

 

 

 

 

 再び用意した特大マグカップに入ったココアを飲み干し、胃の粘膜を強引にコーティングした俺は、開口一番そう言い放った。

 

 

「……え?」

 

 

 

 乗り込んできたカガリが、鳩が豆鉄砲を食ったような顔で固まる。後ろに控えていたアスランも、鋭く問い詰めようとしていた口を中途半端に開けたままフリーズした。

 

 

 

「ユ、ユウナ……今、なんて言った?」

 

 

 

「だから、婚約破棄! 解消! 終了! サヨナラー! ってことだよ。ほら、君も僕みたいな『政略結婚の権化』みたいなアホ御曹司と結婚するの、嫌だったでしょ? 良かったね、願いが叶って!」

 

 

 

 

 俺はあえて、かつての「アホのユウナ」を数倍に濃縮したような軽いノリで、パチンと指を鳴らしてみせた。

 

 

 

「な……っ、何を勝手なことを! この状況で、何をふざけているんだ! お前の父上はどうした! セイラン家がオーブを私物化するつもりか!」

 

 

 

「いやいや、私物化なんて。親父たちは『これからの時代は若者のノリについていけない』って言って、山に籠もっちゃったんだよ。だから、今のオーブの全権は僕が握ってる。代表権も、実務も、ぜーんぶ僕。君はもう、面倒な書類仕事も、好きでもない男との結婚も気にしなくていいんだ。自由だよ、カガリ!」

 

 

 

 

 俺はソファから立ち上がり、オーバーなジェスチャーで両手を広げる。実際、胃の奥はまだチリチリしているし、頭の片隅では「これでいいんだよな……?」と冷や汗をかいているが、ここで引くわけにはいかない。

 

 

 

 

 

「……お前、本気なのか?」

 

 

 

 

 

 

 アスランが、疑念に満ちた瞳で俺を射抜くように見てくる。

 

 

 

 

 

「本気も本気、超マジだよ。アレ…いや、アスラン君……君もさ、カガリが泣きながら僕と結婚する姿なんて見たくなかったろ? 感謝してほしいくらいだね」

 

 

 

 

「……っ」

 

 

 

 

 

「あ、怖い怖い。そんな顔しないでよ。……とにかく! これからは僕が『ユウナ・ロマ・セイラン代表代行』として、この国を泥臭く守っていく。カガリ、君はオーブの象徴として、あるいは一人のパイロットとして、一人の女として自分の信じる道を歩めばいい」

 

 

 

 

 カガリを政治のドロドロから解放し、俺が一人で泥を被る。キラがフリーダムで乱入してくるという「予定されていた面倒」を回避しつつ、オーブの舵取りを俺一人の手に収める。

 

 

 

「さあ、話は終わり! 忙しいんだ、復興作業に、連合への嫌がらせに、やることが山積みでね。……ああ、あとココアのおかわり、誰か持ってきて!」

 

 

 俺はあえて背中を向け、執務椅子にドカッと座った。鏡は見ない。きっと、今の俺は最高に「嫌な奴」で、最高に「救いようのないバカ」に見えているはずだ。

 

 

 

 

 それでいい。

 

 

 

 

「ま、そういうことだから。あ、勘違いしないでよね? 僕がこの国のリーダーをやりたいなんて、これっぽっちも思ってないから!」

 

 

 

 俺は椅子の背もたれに深く寄りかかり、わざとらしく脚を組んでみせた。

 

 

 

「今のオーブはさ、いわば『火の車』でしょ? 復興だの連合との交渉だの、これから起きる面倒くさいこと山積みなんだよ。だから、その辺の『汚くてドロドロした仕事』は全部僕がやってあげる。で、ある程度落ち着いたら、全部君に丸投げして隠居するつもりなんだ。もちろん、僕が死ぬまで一生遊んで暮らせるだけのお金はもらうけどね!」

 

 

 

 

 特大マグカップのココアを最後の一滴まで啜り、プハァと息を吐く。

 

 

 

「国民だってそうでしょ? 僕が泥まみれになって救助作業したところで、せいぜい『へぇ、あのバカ息子もたまにはやるじゃん』程度だよ。結局、みんなが最後に見上げるのは『アスハの威光』。僕みたいな汚物なセイランの人間がどれだけ頑張っても、アスハにもサハクにもキオウにも勝てないんだ。だったらさ、美味しいところは全部君にあげるから、僕は南の島でスローライフ! これが僕の完璧なライフプランってわけ!あっスカンジナビアでもいいかもね!きっとオーロラが綺麗だ!」

 

 

 

 

「…………は?」

 

 

 

 

「だから君はしばらく好きにしてね!弟のキラくんと静かに過ごすもヨシ!いずれ本格的に政治の道を歩むのだから勉強するのもヨシ!なんならマリューさん達と世界を見に行くのだって許すよ!」

 

 

 

 

 

 カガリの口が、見たこともない形に開いたまま固まった。隣のアスランに至っては、脳内の演算処理が限界を超えたのか、瞳孔が小さく震えている。

 

 

 

 彼らの脳内では今、凄まじい情報が衝突しているはずだ。

 

 

 

『こいつ、昨日まで泥まみれで人を助けてたよな?』

 

 

 

『父親を追放してまで全権を握ったのは、全部自分の隠居生活のためか?』

 

 

 

『っていうか、カガリに丸投げするって……正気か?』

 

 

 

 

 怒りとか、困惑とか、疑惑とか。そういう既存の感情を通り越して、二人の思考回路は完全にショートしていた。

 

 

 

 

「あ、アスラン君。そんな幽霊を見たような顔しないでよ。君もカガリとイチャイチャできる時間が増えて万々歳でしょ? ほら、二人ともさっさとミネルバなり家にでも戻って。僕さぁ、これから連合の皆さんと建設的な相談をしなきゃいけないからさ」

 

 

 

「……ユ、ユウナ……お前……本気で言っているのか……?」

 

 

 

 

 アスランが掠れた声でようやく絞り出す。

 

 

 

 

「本気も本気! 1000%本気! 向こうは僕が『親連合派の操り人形』だと思って、プラント潰すために兵を出せとか無茶苦茶言ってくるに決まってるんだよ。その対応だけで僕の胃に穴が空きそうなんだ。ほら、シッシッ! 邪魔者は退散!」

 

 

 

 手をヒラヒラさせて追い払うと、二人はまるで魂が抜けたような足取りで、フラフラと部屋を出て行った。

 

 

 

 

 

 扉が閉まる音が聞こえた瞬間、俺は机に突っ伏した。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……う、げぇ……。言い切った。言い切っちゃったよ……。嫌われるのって、意外と精神削れるわ……」

 

 

 

 

 

 胃の粘膜が悲鳴を上げている。

 

 

 

 

 これでいい。カガリを「代表」という呪縛から解き放ちつつ、オーブの実権と、連合から押し付けられる「汚い役割」を全部俺が一人で背負い込む。

 

 

 

 

 本編ならカガリが板挟みになって苦しむ役割を、僕が「バカなフリ」をして全部吸い上げるんだ。

 

 

 

 

 

 

「……さて。ココア、お代わりもう一杯……いや、もう点滴で打ってくれないかな、これ……」

 

 

 

 

 

 だがそこでユウナは冷静になる。そう、冷静になって気づいてしまったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……あれ? 待てよ。……よくよく考えなくても、俺、詰んでない?」

 

 

 

 

 

 

 再び特大マグカップのココアを飲み干し、ふと静寂が訪れた執務室で、俺は冷や汗が止まらなくなった。

 

 

 

 死にたくない。平穏にスローライフを送りたい。その一心で、シナリオの知識をフル動員して「介入」してきた。親父を追放したのは、あいつにオーブを連合へ売り飛ばさせないためだし、カガリに婚約破棄を突きつけたのは、彼女が政治の泥沼で曇って、挙句の果てに最強のコーディネイターであるキラに「死ねぇ!!!セイララァァァァン!!!」なんてされるなんて不名誉な事態を防ぐためだ。

 

 

 

 

 

 

 

 ……でも、冷静になって現状を整理してみよう。

 

 

 

 

 

「まず、モルゲンレーテ。エリカさんたちに『ワダツミ』だの『リビルド』だのを不眠不休のデスマーチで作らせた。……これ、間違いなく恨まれてるよね? 現場の技術者に『あのバカ息子、現場を知らねえ癖に!』ってスパナでぶん殴られても文句言えないレベルだよな?」

 

 

 

 

 さらに、連合だ。

 

 

 

 

 「親連合」のフリをして権力を握ったけど、実態は連合の思い通りに動く気なんてサラサラない。期待させておいて裏切り続けるんだから、あのアズラエル(の後釜たち)が「あの小僧を消せ」って暗殺者を送ってくるリスクが爆上がりしてないか?

 

 

 

 

 そして、一番怖いのが国内の「アスハ支持者」だ。

 

 

 

 

「カガリを実質的な軟禁……というか、政治から遠ざけたせいで、熱狂的な支持者からすれば俺は『獅子身中の虫』そのものだろ。……絶対、どっかの物陰から『ユウナ・ロマ・セイラン、覚悟!』とか叫びながら、某ガトーさんみたいな熱い眼差しをした軍人が飛び出してくるやつじゃないか、これ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 敵を減らすために動いているはずなのに、気づけば全方位に喧嘩を売っている。

 

 

 

 

 

 

「……あ、やばい。胃が、胃がキリキリする……!」

 

 

 

 

 

 知識があるからこそ、「ここでこうすれば被害が減る」とわかってしまう。でも、その「最適解」を選べば選ぶほど、俺個人へのヘイトが積み重なっていくこの仕様、クソゲーすぎないか?

 

 

 

 

「……トダカ一佐……。俺、やっぱり今日から寝室の護衛を三倍にして……あと、毒見役も。あ、でも毒見役の人が親父やブルコスの刺客だったらどうしよう……!」

 

 

 

 

 机に突っ伏してガタガタ震えてトダカに助けを求める妄言を吐く、俺の横で、ココアのお代わりを持ってきた執事が「……お疲れのご様子ですね」と、哀れみのこもった声をかけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……トダカ一佐。いや、トダカ。……ええい、呼び捨てはまだ慣れないな」

 

 

 

 

 

 数時間後、改めて俺が頭を掻きむしりながらそう呼ぶと、トダカ一佐は表情ひとつ変えず、深く頷いた。

 

 

 

 

 

 

「人がいなければトダカでも構いません。……それで、代表代行。次のご指示を」

 

 

 

 

「ああ、そうだった。……悪いけど、トダカ。俺の代理としてミネルバに挨拶しに行ってきてよ。カガリの安全確認とか、復興への協力要請とか……適当に、いい感じの顔をしてさ」

 

 

 

 

 トダカは「承知いたしました」と素直に引き受けて出ていってくれたようだ。

 

 

 

 

 

 そう、これでいい。これがやりたかったんだ。

 

 

 

 

 

 本来の歴史(原作)なら、トダカ一佐は後の戦いでシン・アスカの手によってその命を散らす。そしてそれが、シンにとって「オーブという国」を完全に決別させる決定打になるはずだった。

 

 

 

 

 だけど、今ここでトダカを使いに出せばどうなる?

 

 

 

 

 家族を救えなかったことでオーブを恨んでいるシンが、自分を救ってくれた「恩人」と再会し、その恩人が今もオーブ軍の柱として、俺の元で必死に国を立て直そうとしているのを見てしまえば。

 

 

 

 

 

 

「……ギャハハハ! 見ものだよねぇ、シン・アスカくーぅん??恩人が生きて元気に働いてるって知った後で、君さぁ!このオーブを撃てるかな? 正義の味方ごっこを続けられるかなぁ!?」

 

 

 

 

 

 我ながら、小物感全開の三下みたいな笑い声が出た。

 

 

 

 

 胃は痛いし、暗殺の恐怖で足は震えてるし、精神状態はボロボロだ。その反動で、なんだかテンションが変な方向へ突き抜けていく。

 

 

 

 

「ふぅ……。よし、これだけフラグをへし折れば、しばらくは安泰でしょ。……あー、疲れた。もう寝る。死ぬほど寝る。毒見は……あ、いいや、もう、寝て起きたら毒で死んでても本望だよ……」

 

 

 

 

 俺はふらふらと立ち上がると、仮眠室へと向かった。明日にはまた、嫌な奴の仮面を被らなきゃいけない。

 

 

 

 

 連合からの理不尽な要求と、モルゲンレーテの恨み節と、アスハ支持者からの殺意を捌く毎日。油断すれば即座にグフに踏み潰されて死ぬバッドエンドだ。

 

 

 

 

 ……あーあ、本当に、誰かこの「介入」代わってくれないかな。

 

 

 

 






・カガリ
常時宇宙猫。


・アスラン
アスラン迷走。


・ユウナ
取り敢えず三下ムーブでシン・アスカを想って下衆顔してる。

・キラ
スプーンカチャカチャしながら偶に虚空を眺めてる

どっちのアスランが見てみたいでしょうか?

  • 通常の優柔不断アスラン
  • 報連相の化身と化したアスラン
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