破滅フラグしかないボンボンに転生してしまった件 〜グフに踏み潰される運命なんて、全力で回避してやる!〜《完結》   作:kiakia

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第四十六話 情報公開

 

 数時間後。激闘が繰り広げられた森林地帯には白々と冷たい朝の光が差し込み始めていた。立ち上る黒煙は細い筋となり、夜の激闘を物語る鉄屑の山を静かに包み込んでいる。

 

 

 

 到着したユーラシア連邦軍の装甲車が慌ただしく行き交い、拘束されたブルーコスモスの残党やアドゥカーフ社員達が、まるで魂を抜かれたような足取りで護送車へと詰め込まれていく。バシレウスの格納庫には左腕を失い、VPS装甲の輝きを消したセイバー改が、役目を終えた守護者のように佇んでいた。

 

 

 

 もうアドゥカーフはこれで終わりだろう。軽く尋問してみたが高額な報酬(恐らく離反するリスクを金で抑えようとしたんだろうか?)に加えて社員の家族を盾に脅して無理やりトカゲの尻尾として扱おうとしていたらしい。

 

 

 

 だが、そんな雑な対応をされた社員が忠誠心などあるはずも無く、自身の家族の安全と引き換えにペラペラと全部話してくれたよ。

 

 

 

 もちろん本社が証拠隠滅を働く恐れもあった、だからこそ、俺はカナード以外の傭兵部隊Xのメンバーをアドゥカーフ社近くに潜伏させており、彼らはドッズライフル片手に逃げ出そうとする社員や証拠隠滅を図ろうとする連中の暴走を防ごうとしてくれている。

 

 

 お陰でカナードには迷惑をかけたが、正直あの黒い機体の実力ではカナード以外のメンバーは即死していたはずだろうしある意味結果オーライだろう。まぁ、色々と勝手に動いていた事もあってさっきカナードにはめちゃくちゃ文句を言われたけどな。

 

 

 

 お陰で足がいてぇ…!同じ苦しみを味わえって同レベルの威力でキックしてきたんだろうが、こちとら軍人でもなく鍛えてないナチュラルのバカ御曹司なんだぞ…!!足消し飛ぶかと思ったわ!!

 

 

 そんな訳で俺はバシレウスの艦内、薄暗い通信室のシートに深く腰掛け、モニター越しにミレニアムのコノエ艦長と対峙していた。

 

 

 

「――以上が、昨夜起きた事件の全容だ。コノエ艦長」

 

 

 

 俺は取り繕う様にクールな声を出しつつ、疲労を押し隠した。割と眠いんだよ一日中寝てないんだから。モニターの中のコノエ艦長は、顎に手を当てて険しい表情を浮かべている。

 

 

 

「襲撃してきたのは、状況から見て間違いなくファウンデーション王国の部隊だ。連中は『ブラックナイトスコード』と呼称される新型機を投入してきた。面倒なのは連中は通信妨害装置まで用意している様で、周囲を捜索してそれっぽいものを見つけて確保した……」

 

 

 解析は流石に後回しになるだろう。ユーラシアにはデリケートな時期に戦闘を起こしたおかげで警戒されているし、飴として色々と提供しなけりゃならん。

 

 

 面倒くさいが好感度調整ってやつだ。損傷の少ない無人機のディンにアドゥカーフ社のMA。妨害装置に加えてあの黒いMS……データ的にはブラックナイトスコードルドラって奴か?をお陰で全部引き渡す事になった。

 

 

 無論ある程度データもあれこれ抽出した上での話だが、新型MSの開発を凍結したユーラシアにとっては全てが宝の山。これで問題なくミケール捕縛任務の中止もなく継続できるはずだ。

 

 

 出来ればルドラだけは持ち帰りたかったが、まぁそこは諦めるしかない。そんなゲンナリとした事ばかりを考えつつもいよいよ本題に入る。

 

 

 

「あと、これは信じられないかもしれんが……連中の厄介な所はパイロットが持つ『読心能力』だ。オカルトじみてるがこっちの脳内を探って情報を読み取るせいでカナードでも苦戦しちまった」

 

 

 

 

 案の定、コノエ艦長が眉をひそめる。歴戦の軍人である彼にとって、俺の言葉は現実離れしたものに聞こえるはずだ。

 

 

 

 まぁ実際にはカナード相手への読心は通用しなかったはず。とはいえ相手が読心能力持ちだと情報共有をするのは、最早同族を殺したとアコードにバレる瀬戸際の今。最前線ではなく後詰めのミレニアムには隠す必要もない。

 

 

 

 

「……通信妨害については理解しました。ですが、副総裁。読心、とは……。流石にオカルトが過ぎるのでは?」

 

 

「そう言われるのは百も承知だ。だが、実際に拳を交えたカナードが報告している。こちらの思考を読み、じゃんけんで後出しをするように最適解をぶつけてきやがる。本当にクソゲーだよ、お陰で今の今まで艦長達と情報共有出来なかったんだから」

 

 

 

 俺は吐き捨てるように言い、通信の秘匿性を再確認した。アークエンジェル組のラミアス艦長や、司令部にいるはずのトダカには、まだ詳しいことは話せない。

 

 

 

 だが、この現場の混乱から切り離され、ミレニアムで待機しているコノエ艦長たちなら、情報を共有しておく価値はある。俺はその時奇跡が起きてどうにかなった!なんて展開は大嫌いなんだ。その恩恵を受けてカガリ達が庇ってくれたおかげで生き延びてる身ではあるが、奇跡や神様の手助けではなく予め備える事が人の命を救うと信じているのだから。

 

 

 

 襲撃部隊を全滅させた事実は、遅かれ早かれファウンデーション側にも伝わるだろう。ならば、読心されるリスクが比較的低い――つまり、前線で直接奴らと顔を合わせない、バックアップ側の連中には、あらかじめ情報を共有しておくことで優位に立つしかない。

 

 

 

「……信じがたい話ではありますが」

 

 

 

 通信モニターの向こうで、コノエ艦長が沈痛な面持ちで口を開いた。

 

 

「副総裁がそこまで仰るなら、我々もそのオカルトを前提に動くしかありませんな。それで……トダカ海将やアークエンジェル隊はどうされますか? 今すぐ『急用ができた』とでも理由をつけて離脱させ、合流を後日に遅らせるべきでしょうか」

 

 

 

「……正直、迷ってるんだ」

 

 

 

 俺は椅子の背もたれに深く体を預け、こめかみを指で強く押さえた。視線の先では、回収作業に当たるユーラシア軍の兵士たちが、黒いMS、ルドラをアドゥカーフの持ち込んだ大型トレーラーに詰め込んでいる。

 

 

 

 あの機体の現物は確保した。だが、これを突きつけたところで「テロリストに強奪された最新鋭機を、貴国が破壊してくれたようで感謝する」なんて、白々しい外交辞令で返されるのがオチだろう。なんなら返還しろと騒ぎかねない以上今の所は所属不明機として誤魔化すしかない。

 

 

 

 それに、たった一日で、読心能力なんていう証拠のない、オカルトじみたイカサマを武器に、一国を国際社会の場で糾弾する準備を整えるのは、あまりに現実味がない。

 

 

 

 かといって、心の中を覗き見してくる化け物どもと、平然とした顔で共同任務に就くのは、正気の沙汰でもない……クソっ。面倒くせぇ。

 

 

 

(できればあの機体のパイロットは捕虜にして、生きた証拠として引きずり出したかったんだが……カナードですら余裕を奪われるほどの化け物相手だ。あそこで仕留めきらなきゃ、こっちが消されてた。仕方ねぇか)

 

 

 

 俺の頭の中では、二つの選択肢が激しく火花を散らしていた。

 

 

 

 一つは、一時離脱。トダカたちを強引に連れ戻し、一度オーブへ帰還して態勢を立て直すベターな安全策だ。これならトダカを危険に晒す事もなく帰還できる。

 

 

 

 だが、これには大きな欠陥がある。こちらが引けば、ファウンデーション側には証拠隠滅の時間を与えることになる。なりふり構わなくなった連中が地下に潜り、さらに狡猾な手段で牙を剥いてくる可能性は捨てきれない。

 

 

 そしてもう一つは、強行軍。予定通り合流し、作戦を継続するリスキーな博打だ。

 

 

 

 一見すれば無謀だが、向こうはまだ「自分たちの粛清部隊が返り討ちに遭った」という正確な情報を掴めていないはずだ。もし、奴らがこちらの実力を侮ったまま、予定通りのタイミングで事故を装った奇襲を仕掛けてくるつもりなら――。

 

 

 

「……逆奇襲、か」

 

 

 

 俺の独り言に、コノエ艦長が怪訝そうに眉を動かした。あらかじめ読心対策を複数全機に仕込んでいることは、向こうの計算には入っていないはず。

 

 

 

 万全の準備を整え、奴らの攻撃を逆手に取って、その喉元にこちらから食らいつく。相手に立て直しの時間を与えず、混乱の中に叩き落とす。

 

 

 

 成る程魅力的な提案だ。理屈ではわかっている。こうすれば手っ取り早く解決できる可能性は高い。だが、指先をトントンと叩く俺の心境は、決して晴れやかなものではなかった。

 

 

 

 確実性なんてどこにもない。博打としてはあまりに分が悪すぎるし、何より俺が一番嫌いな貴重な人材の命をチップにする行為だ。もし読み違えれば、部下たちの命を無駄に散らすことになる。

 

 

 

 アコードの厄介な所はデュランダルによって耳にタコが出る程聞いており、例え、読心対策が万全であっても確実に勝てるかどうか?もしくは相手が慎重策をとった挙句司令部のトダカを即射殺なんて真似をしないのか?と言われれば答えは分からない。

 

 

 

(……やめとくべきだよな。一度引いて、外交ルートからじわじわ首を絞めるのが俺の仕事だ)

 

 

 

 そう結論づけようとした矢先、モニター越しのコノエ艦長が、静かに口を開く。リスキーなら選択肢を選ぶことの出来ない俺を後押しするかのように。

 

 

 

「副総裁。失礼を承知で申し上げますが……私は、その『逆奇襲』を仕掛けるべきだと考えます」

 

 

 

 意外な言葉に、俺は思わずモニターを二度見した。慎重派のコノエ艦長からそんな攻めの言葉が出るとは思わなかった。

 

 

 

「……本気か、艦長? 相手は心の中を覗いてくる化け物だぞ。一歩間違えれば、全員スクラップだぞ」

 

 

「ええ。だからこそです。奴らは自らの能力を絶対的なものだと信じている。先ほど仰った通り、向こうはまだ自分たちの粛清部隊が返り討ちに遭ったことを正確には把握していない。この情報の空白こそが我々に残された勝機かと」

 

 

 コノエ艦長はモニター越しに、鋭い眼差しを俺にぶつけてくる。

 

 

 

「一度引けば、奴らはその空白を即座に修正してくるでしょう。次にまみえる時、連中は今回のような慢心を捨て、さらに徹底した対策をもって我々を包囲する。そうなれば、読心対策をいくら積んでいようと、その上をいかれて対策の対策を取られるのがオチです。……だからこそ勝機があるのは、連中がまだ『自分たちが無敵だ』と勘違いしている、今この瞬間しかありません」

 

 

「……慢心、か」

 

 

 

 

 俺は吐き捨てるように呟いた。アコード……奴らはいわば人類の到達点としてコーディネートされた連中だ。さらにアウラ博士の歪んだ教育によって、自分たちを「導き手」と信じて疑わない、優秀かつ傲慢な連中だとデュランダルからも聞いている。

 

 

 

 そりゃそうだろう。人類を導くために生み出された上に、優れた肉体や頭脳に加えて、読心や精神干渉といったオカルトじみたテレパシーまで使える特別な存在なんだから。自分たちが無敵だと錯覚するなという方が無理な話だ。

 

 

 

 だが、いくら能力が特別だろうと、奴らが肉体を持った「人間」であることに変わりはない。そこには必ず死角が生まれる。

 

 

 

 例えば、先ほどカナードによって討ち取られたあの黒いMSだ。パイロットのアコードは、カナードへの殺意と二重の思考への警戒に全神経を注ぐあまり、ミラージュコロイドによって近傍に潜伏していた『バシレウス』への読心を完全に怠っていた。

 

 

 

 だからこそ、俺は勝てたんだ。

 

 

 

 あの瞬間の激しい閃光――セイバー改の胸部に仕込んだ特殊装備『フラッシュアイ』は、カナードの意志で起動したんじゃない。読心対策として、俺が『バシレウス』側から外部起動させたものだ。戦っているカナード本人の思考に「発光させる」という意図がなければ、カナードの脳を覗き見ていたアコードにあの不意打ちを予見できるはずがない。

 

 

 

 ガンダムAGEに登場するMS、ダークハウンドに装備されていたこの装備をアコード対策として俺はセイバーとガイアに組み込んでいる。その原理はシンプルなもので、強烈な閃光を浴びせて敵パイロットの視界を物理的に焼き、決定的な隙を強引に作り出すって奴だ。

 

 

 

 ジャミングのせいで遠隔起動の信号が届くかは文字通りの博打だったが、運良く最良のタイミングで火を噴いてくれた。おかげでカナードは、視界を焼かれて動転したあのアコードを確実に仕留めてくれたわけだ。

 

 

 

 戦闘が終わった後、カナードからは「おい、なんだあのふざけた装備は!」と凄まじい勢いで問い詰められたが、適当に誤魔化しておいた。……まぁ、それはいい。重要なのはそこじゃない。なんならもっとヤバいものを搭載してたりするからバレなくて良かったくらいだ。

 

 

 

 ここでもう一つ、はっきりしたことがある。アコードは、遺伝子を弄くり回されたコーディネイターの上位種を自称していても、結局のところ、俺たちと同じ『人間』という種の器からはみ出しちゃいないってことだ。

 

 

 

 人間という生物である以上、逃れられない生理的な制約が必ず存在する。どれほど脳が思考を先読みしていようが、網膜に物理的な飽和光を叩き込まれれば、視神経は悲鳴を上げ、脳への情報伝達は強制的に遮断される。

 

 

 

 どんなに高尚な精神を持っていようと、焼けるような光に反射的に目を逸らさないなんて芸当は不可能なんだ。オカルトじみた特殊能力だって、所詮は肉体というハードウェアに依存したアプリケーションに過ぎない。彼らが有機生命体である以上殺せる。そう、無敵ではないんだ。

 

 

 

 ……上位種、ね。笑わせるなよ。光を浴びれば目も眩むし、洗脳されそうなやつの足を締め上げれば脳波をリンクしている奴らは痛みと不愉快を感じてしまう。

 

 

 結局の所ただの人間じゃねぇか。上位種族を名乗るのならケイ素生命体にでもなって「アナタハ ソコにイマスカ?」でも口にしておけボケが!?

 

 

 

 

 俺は震える指先を隠すように、膝の上で拳を握りしめた。読心を許さず、洗脳を許さず、人間なら絶対に避けられない妨害を叩き込み続ければ、あいつらだってちゃんと殺せる。

 

 

 

 理屈では分かっている。だが、その「理屈」に部下全員の命を賭ける重圧が、じわじわと俺の心臓を締め付けていた。

 

 

 

「……いけるか、艦長。即興で無謀に近い博打に乗って」

 

 

 

 掠れた俺の声に、モニター越しのコノエ艦長はふっと表情を和らげた。それは教え子を諭す教師のような、穏やかで揺るぎない眼差しだった。

 

 

「副総裁。もう少し、我々を信じてください。あなたが育て上げたこの『コンパス』は、決して負けませんよ。今の状況で我々が離脱を選べば、なりふり構わなくなったアコードたちは間違いなく背後から撃ってくるでしょう。奴らは証拠を消すためなら手段を選びません。……それに、宰相オルフェ・ラム・タオという男は、非常に慎重な人物です。トダカ海将を即座に殺すような真似はしないはずだ。万が一の事態に備え、強力な人質として確保しておきたいと考えるのが彼の性分でしょうからね」

 

 

 

 元教師らしい人を見る事に長けた洞察力。オルフェという傲慢だが石橋を叩いて渡る男の性格を、彼は既に見抜いている様子だ。

 

 

 この辺りの人物評価は彼の肩書きだからこそ見抜けた事なんだろう。つくづくいい人材を送ってくれたラメント議長には感謝でしかない。今度冷凍したカニでも送るか…。

 

 

 

 すると、画面の端から、場に似つかわしくない気の抜けた声が割り込んできた。

 

 

 

「大丈夫ですって、副総裁! ミレニアムのクルーは大体が元ミネルバ隊の生き残りですけど、あの地獄のような大戦を終戦まで轟沈せずに生き残ったメンツですよ? 運の強さだけなら、それこそアコードにも負けませんから!」

 

 

 副長のアーサーが、いつもの調子でへらへらと笑いながら太鼓判を押す。緊張感がないと言えばそれまでだが、その言葉には、数々の死線を潜り抜けてきた者だけが持つ奇妙な説得力がある。

 

 

「……はは、そうだったな。お前らのしぶとさは、俺が一番よく知ってるつもりだ」

 

 

 

 俺は迷いを振り払うように、深く息を吐き出した。理屈じゃない。最後は、こいつらの積み上げてきた「現場の底力」を信じるしかないんだ。

 

 

 

「――ラミアス艦長たちとタオ宰相の会談が終わり次第、我々はエルドア地区にてミケール大佐の捕縛任務に移ります。……ですが、同時に最悪の事態にも備えておきましょう。ファウンデーション王国の謀略と奇襲。たとえそれが何であっても、我々なら跳ね返せます」

 

 

 

 コノエ艦長の力強い言葉に、俺は短く頷く。賽は投げられた、ならばもう現場を信じて神に祈るしかない。俺の場合神は確率の女神様くらいしか信用してないから、ウズミ代表とシーゲル議長、最後にフリットあたりにでも祈っておくか。

 

 

 

「ああ。俺はバシレウスで一旦オーブに戻るが……後は任せたぞ、艦長。ひとまず、さっきのデータと合わせて、ガイアに積んだフラッシュアイの強制起動データをミレニアムに送る。遠隔操作のバックアップはそっちでも持っておいてくれ」

 

 

 コンソールを操作し、暗号化された大容量データを転送する。これで、いざという時の「テーブルの下の銃」は増えたはずだ。

 

 

 通信を終了しようとして、俺はふと指を止めた。画面の向こうの二人に視線を戻し、少しの躊躇いの後、声を潜める。

 

 

 

「……最後に。ここからの会話は他言無用だ」

 

 

 

 俺の真剣なトーンに、アーサーの顔からも茶らけが消え、コノエ艦長が居住まいを正した。

 

 

 

 

「トダカは俺にとって、恩人であり……ある意味、親父みたいな男なんだ」

 

 

 

 

  俺にとってのトダカは唯一無二の特別な存在だ。この世界でユウナに憑依して、右も左も分からなかった時に真っ先に頼った男であり、時に俺の腹を本気で殴り飛ばし、アカツキのコックピットに無理やり押し込んでくるような酷い扱いもしてくるが、その裏にある彼の慈悲や気遣いを忘れたことは一度もない。

 

 

 いや、まぁ、アカツキに無理やり乗せられた時だけは、恐怖のあまり「絶対にぶっ殺してやる!!!」っていう殺意が本気で湧いたけどさ……!

 

 

 だからこそ、俺は生涯に渡ってトダカへの感謝は忘れない。仮に彼がどこかの勢力に捕らわれの身になっちまえば、俺自身が真っ先に救出部隊を率いて迎えに行こうとするレベルだろう。遺伝子的な繋がりであるウナト以上に、俺はトダカという男を本当の父親のように見ていることを、もう否定はできなかった。

 

 

 だから、嫌なんだ。親父みたいな男を敵国に送らざるえなかった自分と、そんなトダカが本当に死ぬかもしれないという現実が。現実逃避気味に傭兵部隊Xの皆とポケモンをプレイして心を落ち着かせようともしたが、それでもふとした瞬間、トダカの最期を想像してしまえば、肺の空気が全部抜けるように息が詰まりそうになっちまう。

 

 

 口にすると、なんだか気恥ずかしくて喉の奥が熱くなる。だが、この感情だけは、策略でも演技でもない俺の本心だ。

 

 

 

「だから……出来れば、守ってやってほしい。あっ、絶対に言うなよ! 本人には! いいな!?」

 

 

 

 俺が必死に念を押すと、モニターの端でアーサーがにやけ面を浮かべた。

 

 

 

「フリじゃねぇよ!? あーもうクソ! やっぱ言うんじゃなかった! いいな、あとは全部任せる! 絶対に生きて帰ってこいよ!!」

 

 

 

 

 最後はまくし立てるように言い切り、俺は逃げるように通信解除のボタンを叩いた。暗転したモニターには、自分の真っ赤な顔が情けなく映り込んでいる。ガラじゃないことを言った自覚はあるが、伝えないわけにはいかなかった。

 

 

 

「……さて。じゃあ今から、カナードたちともある程度情報を共有しておくか」

 

 

 

 

 俺は大きく伸びをして、凝り固まった肩を回した。一筋縄ではいかない連中が相手だが、やるべきことは決まっている。俺は決意を新たに、重い扉を開けてブリッジへと向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それから、数時間が経過した頃だった。バシレウスの艦内に、ミレニアムから次々と飛び込んでくる信じがたい報告の数々に、俺は自分の目を疑った。

 

 

 

 キラを精神的に錯乱させようとしたファウンデーションの毒牙を、間一髪で跳ね返し、奴らを一時撤退に追い込むことに成功したこと。

 

 

 

 その混迷を極める戦場にアスランがよりにもよってズゴックで乱入し、戦局を支える援護を見せたこと。

 

 

 

 さらには、ファウンデーションがユーラシア軍の核ミサイルをハッキングして自国に撃ち込むという、狂気じみた自作自演を画策したこと――。だが、それに備えていたヒルダたちが、核の着弾を未然に阻止した上で証拠映像まで獲得できた。

 

 

 

 ここまでは、俺が仕込んだ対策や仲間の踏ん張りで、ギリギリのところで踏みとどまった「勝利」の報告だった。

 

 

 

 

 

 しかし、次の一報が、そのすべてを塗りつぶした。

 

 

 

 

 

「なんだよ、これ……」

 

 

 

 

 絶句する俺の目の前で、モニターに映し出されたのは地獄の光景だった。都市から離れた場所にあるアドゥカーフ本社が広大な工場と共に、宇宙から飛来した無慈悲な殺戮の光に飲み込まれ、関係者達を飲み込み一瞬で消滅したのだ。

 

 

 その犠牲者の中にはつい数時間前まで共にポケモンで遊んでいたムラサメ改のパイロットもおり、全員無事ではすまず、複数人が殉職してしまった。

 

 

 

 ザフトのクーデター軍によって掌握された大量破壊兵器――レクイエム。多数の民間人の死者を出しつつ、政府中枢の防衛には成功したものの、ミネルバを中心とした艦艇やMSを伴って反乱軍はレクイエムに合流してしまった。

 

 

 

 

 殺戮の光により、邪魔者を排除したファウンデーションは、全世界に向けて狂気の声明を発表した。核ミサイルにさらされた自国への非難決議と共に、全人類に強制的な管理社会「デスティニープラン」の導入を受け入れろと宣戦布告を行ったと。

 

 

 

 

 その宣戦布告は地球圏の国家全てにわたり、プランの導入を強要し、従わない場合はレクイエムを発射して軍民問わない無差別攻撃を行うという恫喝を。

 

 

 

 

 そして、アークエンジェルが轟沈し、トダカが一人。ファウンデーションの捕虜になってしまった事を。

 

 

 

 

 

 俺がバシレウスの艦内でその脅迫を知る事になった時、世界はすでに、戻ることのできない破滅へのカウントダウンを始めていたのだった。

 

 





・情報公開
今回はミレニアム組に限定で情報公開、今わかる情報のなかでも取捨選択した上でブリッジクルーに限定で色々とばら撒きましたが、パイロット達はアコードと最前線でブルコス狩りを行う為に伝えられず。その辺りのもどかしさが読心能力持ちへの苦悩といえます。

・ユウナの選択
ルドラや無人機を全てばら撒き糾弾する選択肢にはユウナにはありません、なんせトダカやコンパスメンバーがファウンデーションに残留する中で全世界にこの情報をばら撒いてファウンデーションを糾弾すれば最悪皆の命を危険に晒す。それでは所属不明機扱いすれば、ファウンデーションも確実にテロリスト云々と誤魔化した上でこちらの追求を交わしつつ先延ばしには出来たとしても、さらに地下に潜ったり。オーブを標的に悪辣な手段を講じる可能性がある。

 その結果とは言えコノエ艦長という通り、慎重になりすぎず。かと言って豪胆になり過ぎない逆奇襲を想定した作戦の続行は危険ではありますが、ある意味1番ベターな選択肢だったりします。オルフェの性格的にも律儀にオーブを撃てばいいというのに、解答期間の5日もの間、オーブが行動しないというのなら約束を守り撃とうとしなかったりとジブリール達と比べれば結構真面目な部分もありますし、その辺りもコノエ艦長は気づいたのかもしれんが。

 なおルドラとNJダズラーデータはある程度集めたとは言え大部分はまずはユーラシアを黙らせる為に差し出しています。現状ではダズラーの現物を入手しても解析には時間もかかりますし(そもそも戦闘が起きて7〜8時間程度なので解析とか言ってられる時間もない)、アドバンテージとしてはファウンデーションは謎のジャミング技術を持ち、敵対することがほぼ確定してる集団であるということ。しかし、それだけでハインラインは史実以上の結果を出してくれるのでした。真田さんかよこの人。


・ダイジェスト
 次回はダイジェストのエルドア地区の戦い。原作との相違点を語りつつ、リザルト風景のお話を。原作よりも上手くいった部分もあれば、ユウナの介入によって原作とはまた別の犠牲者が出るなど歴史が変わった部分も多くありますが、その辺りも含めてお待ちくださいませ。

ユウナのアコード対策について。果たしてユウナはアコードの無力化の為になりふり構わない外道な手段(ユウナ視点)を取るべきか?

  • 原作通り。
  • 平和の為に覚悟を決める。
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