破滅フラグしかないボンボンに転生してしまった件 〜グフに踏み潰される運命なんて、全力で回避してやる!〜《完結》   作:kiakia

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 感想欄で敵対してるキャラをBデバイスにしようぜ!!と言ってる読者の方もおられますが、それはあり得ません。

必要だから脳を弄るのです。
脳をいじりたいから必要とするのは本末転倒なのですから。


第五十二話 囚われのトダカ

 

 

 

 

 無機質な白壁に囲まれた、窓一つない小部屋。そこが宇宙(そら)に浮かぶ監獄のどこかであることは、耳を澄ませば微かに聞こえる空調機の駆動音から理解できる。

 

 

 トダカは、手枷も足枷もない自由な体で、備え付けの硬い椅子に深く腰掛けていた。二十四時間、部屋の隅に設置された監視カメラの赤い光が彼を射抜き、プライバシーなどという言葉は、ここには存在しない。身体的な拷問こそ受けていないものの、外界から遮断され、時間の感覚さえ奪われる静寂は、時として肉体的な痛み以上に精神を磨り潰していく。

 

 

 

 その静寂を破るのは、決まってイングリットと名乗る青髪の女が訪れる時だった。

 

 

 

 

「……答えるつもりはないと言ったはずだ。オーブ軍海将として、国防の機密を語る権限などない」

 

 

 

 トダカは、目の前に座るイングリットの冷徹な瞳を真っ向から見据え、何度目かも分からない拒絶の言葉を口にした。黙秘、あるいは核心を逸らした回答。軍人として当然の抵抗を続けているつもりだったが、イングリットの尋問は、回を追うごとに異様なほど「深く」なっていった。

 

 

 

 彼女の問いは、オーブ軍の形式的な編成などではなく、意思決定のプロセスや、首脳陣――特にユウナ・ロマ・セイランの近辺に関する、あまりに具体的で濃密な内情を読み解こうとするものばかりだ。

 

 

 

 だが、トダカは知らなかった。目の前の女が、言葉を介さずとも相手の思考の読み取るアコードという存在であることを。そして、その無知こそが、皮肉にもオーブを最悪の結末から繋ぎ止めていたのだ。

 

 

 

 

(ユウナ様……あの方は、一体どこまでを見越して俺にあの言葉を遺したのか……)

 

 

 

 トダカが心の中で反芻するのは、出撃前にユウナが見せた、焦燥を孕んだ瞳だった。もし、トダカが「アコードは心を読む」という事実を知っていれば、思考を共有するオルフェたちは、ユウナという存在の真の危うさを即座に察知し、迷わずレクイエムの照準をオーブへ向けていたはずだ。

 

 

 

 

 あの日、エルドア地区への作戦を遂行するためのブルーコスモス残党掃討の為に設置された合同司令部にて、トダカはオーブ軍代表として、たった一人でその場に立ち、周囲の喧騒から一歩引いた位置で推移を見守っていた。

 

 

 

 

  異変は、唐突な電子音の途絶と共に訪れた。

 

 

 

 全モニターが激しい砂嵐に呑み込まれ、通信回線が不安定となり。直後、本来なら厳重に管理されているはずの軍事緩衝地帯へ、ユーラシア軍のウィンダム部隊が猛烈な勢いで侵入してきたあげく、彼らは作戦の遂行を行なっていた合同軍に発砲を行ったのだ。

 

 

 

「なっ……何事だ! ユーラシア側はどうなっている!?」

 

 

 

 同席していたユーラシア軍の将校たちが、自国の軍の暴挙に自身の耳を疑うような顔で叫び、愕然とモニターを凝視する。その隣では、ファウンデーションのオルフェ宰相が「どういうことだ! ユーラシアの裏切りか!?」と、激昂していた。

 

 

 

 だが、その激情の裏側で、オルフェは不快感に眉を潜めていた。グリフィンたちアコードの部下から脳波で伝えられる現地の混乱――またしてもあのユウナのアホが、こちらの筋書きを乱すような余計な真似を仕込んだのかと、計画の微かな狂いに別の意味でキレていたのだ。

 

 

 

 割って入ろうとした『コンパス』の部隊までもが、敵味方の判別不能な乱戦の中に引きずり込まれていく。その光景を、トダカは静かに見つめており、脳裏に蘇るのは、出撃前にオーブでユウナが見せた、あの焦燥に満ちた表情だ。

 

 

 

「……トダカ、何かあれば即座に脱出しろ。ミケールなんて放っておいていい。お前の命が最優先だ」

 

 

 

 

 傲慢なオーブの独裁者を演じ、周囲には冷徹な印象を与えている主君。だが、その言葉の端々には、どうしても隠しきれない他者への善性が滲んでいる。

 

 

 

 あの日、自分に助けてくれと懇願してきた青年を。自身は結果的にはアカツキに放り込み、死地に送り込む様な真似まで行ったのだ。そんな事を行なった自分を彼は今も心配しているという事実にトダカは静かに口を開く。

 

 

 

 

「確約はできかねますな。……ですがユウナ様、これでも一介の武人として鍛えておりますし、私の部下たちは皆優秀です。今まで貴方様を何度も死地へ追いやってきた身としては、今度は私が、私の領分でできる限りのことをさせていただきます」

 

 

「……クソが……いいか、トダカ。最悪の事態になっても、自決だけはするなよ。……通信終了だ」

 

 

 

 悪役を気取り、突き放すような物言いをしながらも、最後までこちらの身を案じていたあの男。冷徹な支配者の仮面の下に、救いきれないほどの「お人好し」を抱えた主君の顔を思い出し、トダカは薄く笑った。

 

 

「これはユーラシア側の明らかな策略だ! 兵士たちよ、将校どもを即座に拘束しろ! 抵抗するなら射殺しても構わん!」

 

 

 オルフェの冷酷な号令が司令部に響き渡る。ファウンデーションの兵士たちが一斉に銃を抜き、狼狽するユーラシア側の人間へ迫る。護衛の兵士たちも応戦しようと色めき立ち、一触即発の事態となったその瞬間――。

 

 

「行かせんよ!」

 

 

 トダカは迷わず自らの拳銃を引き抜き、壁際に設置されていた可燃性の高圧ガスタンクを正確に射抜いた。

 

 

 

 激しい爆鳴と共に炎が噴き出し、視界を遮る黒煙が司令部を満たす。

 

 

 

「なっ、何事だ!?」

 

 

「今のうちに逃げろ! そこのユーラシアの将校、このメモを持ってオーブの輸送船へ向かえ!」

 

 

 トダカは混乱に乗じてユーラシア側の人間を裏口へと突き飛ばし、自らは殿(しんがり)として通路に立ち塞がった。近くにあった重厚なロッカーや資材を力任せに引きずり出し、瞬く間に強固なバリケードを築き上げる。

 

 

「ここから先は、オーブ軍海将トダカが引き受ける!」

 

 

 迫りくるファウンデーション兵の怒号に扉を蹴り破ろうとする衝撃。トダカは遮蔽物に身を隠しながら、限られた残弾で敵の足を止め、一人でその場を死守し続けた。数分、いや数秒。彼らを逃がすための時間を、あの「甘い」主君のために稼ぐ。

 

 だが、限界は唐突に訪れた。バリケードの隙間から投げ込まれたのは、数発の閃光グレネードだ。

 

 

「……っ!!」

 

 

 

 爆音と共に、白熱の光が網膜を暴力的に焼き尽くす。平衡感覚を失い、視界が白濁する中で、トダカは銃を握る力を失った。突入してきた兵士たちに組み伏せられ、床に顔を押し付けられながら、彼は意識が遠のく中で確信していた。

 

 

(……これでいい……申し訳ございません。ユウナ様。俺は、俺の領分を果たしましたぞ……)

 

 

 

 視界が暗転する直前、彼は自分を捕らえたアコードたちの冷たい殺気を感じながらも、どこか晴れやかな心持ちでいた。

 

 

 

 

 

 そして、現在。

 

 

 

 

 暗転した意識が浮上し、この無機質な独房で目覚めた直後、トダカは耳を疑うような報せを耳にすることになった。尋問に現れたイングリットが、冷淡な声で「事実」を告げたのだ。

 

 

「――ユーラシア連邦が、我がファウンデーション首都に向けて核兵器を発射しました」

 

 

 トダカの脳裏に、あのエルドア地区での混乱がフラッシュバックする。ユーラシアの将校たちが愕然としていたあの姿。それが芝居だったというのか。いや、あり得ない。

 

 

「幸いにも我々の迎撃システムが機能し、首都は護られました。ですが、これは明白な宣戦布告です。平和を愛する我が国は、降りかかる火の粉を払わねばなりません。……まもなく、我々はレクイエムを用いて『正当防衛』を遂行します」

 

 

(……レクイエムだと?)

 

 

 トダカは表情を動かさず、内心で激しい動揺を抑え込んだ。旧大戦の遺物であり、プラント本国が厳重に管理、あるいは解体しているはずの戦略兵器。それがファウンデーションの手にある。

 

 

 もしそれがハッタリでないのなら、今回の動きはやはり、彼らが最初から描き出していた醜悪な台本通りなのだろうか?

 

 

(同時にプラント本国でも、何らかの政変……クーデター騒ぎが起きていると見るべきか。でなければ、レクイエムの使用など許可されるはずがない。だとしたら、今の世界は――)

 

 

「……余計なことは、考えなくてもいいわ」

 

 

 イングリットの冷ややかな声が、トダカの思考を断ち切った。彼女は無表情にトダカを見下ろす。

 

 

「貴方がオーブの副総裁、ユウナ・ロマ・セイランと深い関わりがあることは調べがついています。貴方はまだ、捕虜としての価値がある。……それを自ら下げるような真似はしないことね」

 

 

 

 彼女はそれだけを言い残すと、音もなく独房を去っていった。それは彼女なりのやさしさからの忠告である事はトダカは勿論イングリット本人も理解出来ない。

 

 

 再び訪れた静寂にて、トダカは独房の隅にある机を見つめる。

 

 

 この角に勢いよく頭をぶつけ続ければ、情報を引き出される前に自決する事は可能だろう。軍人として、汚名を着せられたまま捕らわれ続ける屈辱に耐えるより、その方がどれほど楽か。

 

 

(だが……ユウナ様に、『自決だけはするな』と言われているからな…)

 

 

 悪役を気取りながらも必死にこちらの命を繋ぎ止めようとした、青臭い主君の焦燥。生き恥を晒し続けましょう、とトダカは心の中で苦笑する。

 

『このトダカ、あなたの『生存戦略』に、この命を預けましょう』

 

 

 愛国心や正義感の軍人としての誇りよりも、あの日、二年前にタケミカヅチで交わした約束の方が、今の彼にとっては重い。

 

 

 彼のお陰で多くの命が救われた。彼のお陰で世界はデスティニープランという鳥籠ではなく、泥に塗れた道を歩み続ける明日を掴むことができた。ならば最早トダカにとって自身の命は忠義を向けた彼に差し出すものであり、彼が死ぬなというのであれば命令に従うのみ。

 

 

 

(そして……きっとあの人は、俺を助けに来るはずだ。あんな顔をして送り出したのだ。手ぶらで終わるような男ではないだろう)

 

 

 トダカは椅子から立ち上がり、狭い独房の中でゆっくりと身体を解し始めた。

 

 

「……少し、ストレッチでもして待つか」

 

 

 

 

 屈伸をし、肩を回す。助けが来たその瞬間、コンマ一秒でも早く、一歩でも鋭く動けるように。

 

 

 

 

 迅雷の異名を持つ、海将はその瞳に静かな闘志を宿したまま、来たるべき「反撃」の時を静かに待ち続けていた。

 

 

 

 

 

 

 なお、その裏で。

 

 

 

 

「あの時と一緒ですね…!」

 

 

「バカの一つ覚えナノーネ!!!!」

 

 

 と、彼の主君はまるでトラウマに頭を燃やされたかの様に、絶叫していたという。メサイアでのあの馬鹿騒ぎを思い出して現実逃避のあまり叫び出すが目をキラキラと輝かせたババには全く通じない。

 

 

 なんせ彼の目の前には……通常の二倍サイズのデストロイが、金色に輝いて複座式のコックピットを晒していたのだから。

 

 

 





・囚われのトダカ
トダカは一人で脱出することも可能でしたが、ユーラシアの将校達がファウンデーションに拘束されると気づいた瞬間発砲し、彼ら。逃がすための殿となって自身の脱出ように用意した高速艇を提供。その結果、ユーラシアの将兵達は脱出に成功したものの、彼は捕まる羽目に。とは言え黙って拘束されたところで未来は同じかもっと酷い事になりかねませんでしたので、結果的に現場を知るユーラシアの将校達が逃亡に成功したのは後々オーブにとっても少なくはない影響を与えるでしょう。

・デストロイ
大体これ一機で80機くらいM1アストレイは作れるレベルのクソバカ機体であり、冗談抜きでこれを作るために相当な資材と資金を注ぎ込みましたがユウナは直前まで何も知らないそうな。報連相はどうなってんだ報連相は!!!となりそうですが、ドッズショックが起きたとは言え防衛用の巨大MAというものは使い道や運用をちゃんとすれば凄まじい効果を発揮しますし。

 ぶっちゃけると今のオーブは史実と違い東アジア共和国とユーラシア連邦とはそこそこいい関係で資材や資金の調達も安易となっており、何よりリヴァイアサンという最強の制海権防衛用MAの存在が、オーブの防衛用ドクトリンに少なくない影響と節約が可能となったお陰だったりします。因みに製造にはカガリ、ラクスだけではなくオーブのほぼ全ての閣僚がサインを行っており、ほぼカガリ主導の元、モルゲンレーテの地下で産声を上げるのを待っていました。

「カガリお前ムラサメ改の値段で頭抱えてたよなぁ!?」と何処ぞの紫狸は喚いてそうですがその辺りは次回。

ユウナのアコード対策について。果たしてユウナはアコードの無力化の為になりふり構わない外道な手段(ユウナ視点)を取るべきか?

  • 原作通り。
  • 平和の為に覚悟を決める。
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