破滅フラグしかないボンボンに転生してしまった件 〜グフに踏み潰される運命なんて、全力で回避してやる!〜《完結》   作:kiakia

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第十三話 国防計画乙案

 

 

 

 

 波が引き、瓦礫と泥に埋もれたオーブの街並み。しかし、そこには絶望ではなく、驚くべき速さで動き続ける「鋼鉄の巨人たち」の姿があった。

 

 

 

「よし、第三班! その瓦礫をワイヤーで固定しろ。パワーシリンダー出力全開、一気に引き上げるぞ!」

 

 

 

 

 現場で指揮を執るのは、国防軍の若手士官たちだ。彼らが操るのは、ユウナの無茶振りによって急造された「リビルド」。

 

 戦闘用の武装を全て取っ払い、代わりに巨大な油圧式パワーアームや、高出力の多目的ウィンチを増設した、いわば「重機型モビルスーツ」である。

 

 

 

 本来の「戦うための人型兵器」からすれば、その姿は無骨で、洗練さとは程遠い。だが、その太い腕が数トンものコンクリート塊を軽々と持ち上げ、泥沼に沈んだ家屋を引きずり出すたびに、被災した市民からは歓声が上がった。

 

 

 

 驚くべきは、リビルド隊だけでなく、通常の武装を解いた「本来のアストレイ」たちもまた、リビルド隊から供給された外付けの作業ユニットを強引に装備して復興作業に加わっている点だ。

 

 

 

「おい、そっちのM1! 肩のハードポイントにリビルド用のクレーンを直結しろ! 規格が合わない? 構うな、溶接してでも繋げ! 代行(ユウナ)の命令だ、『一分一秒でも早く道路を通せ』ってな!」

 

 

 

 本来、精密なメンテナンスが必要なはずのMSたちが、泥に塗れ、関節を軋ませながら、まるで巨大な労働者のように働いている。瓦礫を退け、即席の橋を架け、土砂を固めて道を造る。

 

 

 かつて「戦うための力」として畏怖されていたオーブの盾は、今、ユウナの介入によって「生かすための力」へとその定義を書き換えられていた。

 

 

 

 一方、その様子を政庁舎のモニターで眺めながら、ユウナは特大マグカップのココアを啜っていた。

 

 

 

 

 

「……はぁ。あのアストレイの修理費、後でモルゲンレーテからどんな請求書が来るか考えたくないね。エリカさん、絶対『戦時外運用による過負荷料金』とか上乗せしてくるよ、あの人なら」

 

 

 

 

 ユウナは独り言を漏らしながら、手元の資料をめくる。そこには、トダカ一佐が率いる「ミネルバへの挨拶回り」のスケジュールと、それに対する連合からの「不機嫌な通信」のログが並んでいる。

 

 

 

 

「さて……。復興作業はリビルド隊に任せるとして。僕は僕で、この『平和主義の皮を被った親連合派』の仮面が剥がれないように、精一杯の狸寝入りをしなきゃいけないわけだ」

 

 

 

 

 ユウナは、自分に言い聞かせるように軽く頬を叩いた。外ではトダカがシン・アスカとの再会に向けて動き出している。

 

 

 

 

「……く、くくく……あーはっはっは! 愉快だねぇ、トダカァ!今頃はミネルバの甲板で感動の再会、真っ最中ってわけだ!」

 

 

 

 

 俺は高級な椅子をギシギシと鳴らしながら、窓の外に広がる復興中のオーブを眺めて邪悪に口角を上げた。

 

 

 

 

 

 シン・アスカ。

 

 

 

 

 

 本来のシナリオなら、憎しみを燃料にして、戦場を蹂躙する狂犬と化すはずの少年。SEEDを発動させたあいつの強さは、まさに理外だ。戦場という極限状態において、並み居るエースを「反射」と「本能」だけで叩き伏せる。あのアスランを撃墜(?)し、不殺を貫くキラのフリーダムを真っ向から、最短の理論で刺し貫くほどの、まさに戦場における純粋な死神。

 

 

 

 

 その「復讐の力」が、プラントと連合の戦いをさらに激化させ、最終的にはデスティニープランの守護者としてデュランダル議長の尖兵と化したのが原作通りの流れだ。

 

 

 

 

「……でも、それも今日までだ! 恩人が生きてて、しかも自分を助けた時と同じように国民のために泥まみれで働いてるなんて知ったら、あのアスカ君がオーブを撃てるはずがない! 憎しみが霧散して、復讐心という名のOSがバグりまくって、もう使い物にならなくなるはずだ!」

 

 

 

 そう、あいつの強さの源泉は「怒り」だ。家族を救えなかった無力さと、それを見捨てた(とあいつが思っている)オーブへの憎悪。それが燃料となって、あいつの神経を研ぎ澄ませている。

 

 

 

 

 だから、俺はその燃料の供給源を根こそぎ破壊することにした。

 

 

 

「トダカをただ親切心だけで、会いに行かせるだけじゃない。トダカなら……例えば『君が守った命だ。君を助けたあの時の判断を、私は今も誇りに思っている』なんて、あいつの良心と根底をグチャグチャにかき回すような台詞をたっぷりと口にしてくれるだろうさ!卑怯だろ? 最低だろ? でもそれが一番効くんだよ!」

 

 

 

 

 戦場に出ても、引き金を引こうとするたびにトダカの顔がチラつく。オーブを撃とうとすれば、あの時の自分を救った「優しきオーブ軍」の記憶が、今の自分を全否定しにかかる。

 

 

 

 

 一度でも『トダカさんがいるオーブを、俺は…僕は本当に撃てるのか?』なんて迷いが生じれば、あのアスカ君はただの操縦が上手いだけの、脆くて優しい少年に戻るしかないんだ!

 

 

 

「ギ、ギギギ……傑作だぁ! 復讐の牙を抜かれ、恩義の鎖で雁字搦め。これで最高戦力の弱体化に成功!名付けて!国防計画乙案!完了だよ! アスランもカガリとくっつけて骨抜き!キラ君は海辺でニート継続!あとはいい感じに人生登用スキルSSR種無し浮気ちんぽと紫唇をどうにかすれば、これで世界は平和になっちゃうねぇ! ギャハハハハ!」

 

 

 誰が見ても「こいつ、完全に悪役(ヴィラン)だな」というレベルの三下ムーブ。実際、テンションをこうやって振り切っておかないと、連合からの「プラント攻撃に協力しろ」っていう怒号のような通信ログを見るだけで、心臓が止まってしまいそうなんだ。

 

 

 

 

 

「……あ、でも待てよ」

 

 

 

 

 三下笑いを浮かべながら椅子を回していた俺は、ふと真顔になって動きを止めた。

 

 

 

「シンってさ……キャラとしては大好きなんだけどね。というか、あの真っ直ぐで不器用なところ、放っておけないっていうか、ぶっちゃけ推しなんだけど。……それはそれとして、オーブ防衛のために牙は抜かせてもらうよ。悪いね!」

 

 

 そう。俺はあいつを嫌いなわけじゃない。むしろ、不幸な運命を辿ってほしくないからこそ、オーブを撃つという「取り返しのつかない罪」から遠ざけてやりたいんだ。……まぁ、やり方は最低最悪の精神攻撃だけど。

 

 

 

「でも、これだけで終わらせるのもマズいか。復讐心を奪って弱体化した状態で、もし連合のキの字に染まった物量に飲み込まれたり、経験値不足でロゴスの刺客に負けたりしたら……それこそバッドエンド直行だ」

 

 

 

 シンには主人公らしく戦って、勝って、生き残ってもらわなきゃいけない。俺は慌てて通信端末を叩き、ミネルバへ向かっている最中のトダカに回線を開いた。

 

 

 

「あ、もしもしトダカ? 聞こえる? 悪いんだけど、追加ミッション。ミネルバ側に『親善試合(模擬戦)』を申し込んでくれないかな?」

 

 

 

 

『……模擬戦、ですか? この時期に?』

 

 

 

 

 困惑するトダカの声。そりゃそうだ、国中が泥まみれの時に何言ってるんだって話である。

 

 

 

 

「そう! 名目は『今後の共同作業を見据えた連携確認』。ウチのムラサメ隊と、あっちの最新鋭MS(ザクやインパルス)でね。あ、こっちはデータも欲しいから、パイロットはあっちに選ばせて。……シン・アスカ君が出てくるといいなぁ!」

 

 

 

 シンには、トダカという「守るべき対象」を目の前にして、殺意ではなく「技」で戦う感覚を思い出してほしい。実戦の憎しみの中で磨く剣より、恩人の前で披露する剣の方が、きっとあいつを強くするはずだ。

 

 

 

 

「ついでに、最新鋭機のデータも抜かせてもらえれば一石二鳥だしね!じゃあトダカ、よろしく。あ、グラディス艦長には『代行がぜひ若手の育成に協力したいと抜かしてます』って伝えておいて!」

 

 

 

 

 通信を切ると、俺は再び机に突っ伏した。

 

 

 

「……よし。これでオーブが派遣しないせいで、経験値が低くなり、実力が低下するフォローも完璧。……冷静に考えるとなんでこんなに必死に育成計画立ててんだろ俺……」

 

 

 

 

 もはや、自分でも「邪悪な独裁者」なのか「超過保護なプロデューサー」なのか分からなくなってきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……あーあ、それにしても。やっぱりあの『光』には勝てないなぁ」

 

 

 

 俺は執務室の窓から、遠くの被災地に視線を向けたモニター越しでもわかる。カガリが現場に現れた瞬間の、あの空気の変化。俺が泥まみれになって必死に救助作業を手伝ったとき、国民は確かに「驚き」と「評価」をくれた。でも、カガリがそこに立って一言、声をかけるだけで、絶望していた人々の瞳に「希望」という名の熱が宿るんだ。

 

 

 

 

 理屈じゃない。実績でもない。それがアスハの、カガリ・ユラ・アスハという少女が持つ天性のカリスマ。

 

 

 

 正直、ちょっと……いや、かなり嫉妬するレベルだけど、今はその光が眩しいほど俺には好都合だ。

 

 

 

 

「横にはしっかりアスラン君も張り付いてるしね。……さて、彼はこの後どうするつもりなんだか」

 

 

 

 

 

 本来の歴史なら、彼はカガリを置いてミネルバと共にプラントへ渡る。でも、今のオーブはカガリが代表権を俺に奪われた形で実質失いお飾りモード。国中が「ワダツミ」やら「リビルド隊」やらの歴史介入によって激変している真っ最中だ。

 

 

 

 

「正直、アスランに関してはコントロールできる気が全くしないんだよね。アイツ考えすぎる癖に土壇場で直感に頼るから、こっちの予測を平気で飛び越えてくるし。……ミネルバに行くのか、それともカガリを心配して残るのか。まぁ、なるようになれだ」

 

 

 

 

 もしアスランが残れば、カガリのメンタルケアは万全。

 

 

 

 

 もしアスランが行けば、ミネルバでシンを見守る「余計なお節介焼きの先輩」として機能する。

 

 

 

 どっちに転んでも、俺の「世界平和(とスローライフ)計画」にはプラス……のはずだ。たぶん。

 

 

 

 

「ふぅ……。シンには恩人との再会と教育実習。カガリには自由とアスラン。……よし、完璧だ。俺めちゃくちゃいい仕事してるじゃないか」

 

 

 

 

 

 自分で自分を褒めておかないと、やってられない。

 

 

 

 俺は、カガリとアスランが並んで歩く映像を消し、再び冷めたココアを喉に流し込み、椅子を限界までリクライニングさせると、泥のように重い眠りへと落ちていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 被災地を回るカガリの少し後ろ、アスラン・ザラは周囲を警戒しながらも、その思考は深い霧の中にあった。

 

 

 

(ユウナ・ロマ・セイラン……一体、あいつの中で何が起きた?)

 

 

 

 これまでのユウナは、アスランから見れば「カガリを政治的に利用しようとする小悪党」に過ぎなかった。しかし、今の彼は違う。自ら泥にまみれ、誰もが予想しなかった「ワダツミ」でオーブを守り抜き、あまつさえカガリに「自由」を与えると称して婚約を破棄した。

 

 

 

 カガリは今、避難民の手を握り、共に涙を流している。その姿は、政治の重圧に押し潰されそうになっていた数日前よりも、ずっと「カガリ・ユラ・アスハ」らしく見えた。

 

 

 

(ユウナが泥を被り、カガリを解放した……。もしそれが、あいつの計算だとしたら?)

 

 

 

 アスランは自嘲気味に息を吐く。考えすぎだ。あいつは「隠居してスローライフを送りたい」とまで言っていた。しかし、その「身勝手な欲望」と「救われた数万の命」があまりに鮮やかに繋がっている。

 

 

 

 そこへ、トダカ一佐から通信が入った。トダカがユウナの代理としてミネルバへ向かうこと、そしてタリア艦長に「親善模擬戦」を申し入れたことを聞かされ、アスランの眉間にはさらに深い皺が刻まれる。

 

 

 

(模擬戦? なぜこの時期にザフトの最新鋭機と……。データの収集か? それとも……)

 

 

 

 

 アスランの中で、選択肢が激しくぶつかり合う。

 

 

 

 一つは、このままオーブに留まること。

 

 

 

 カガリは自由になったとはいえ、代表権をユウナに預けた危うい立場だ。彼女を支え、ユウナの真意を見極める必要がある。

 

 

 

 もう一つは、ミネルバに同行すること。

 

 

 

 ザフトの最新鋭艦が、混乱するオーブを離れて再び戦火に飛び込もうとしている。

 

 

 

 良くも悪くもあのヤキンドゥーエに三隻同盟として参戦したパトリック・ザラの息子という肩書きを持つ自分なら、ザフトとオーブの懸け橋になれるかもしれない。そして何より、あの「シン・アスカ」という少年の瞳に宿る危うい火が、他人事とは思えなかった。

 

 

 

 

「アスラン? どうした、浮かない顔をして」

 

 

 

 カガリが不安そうにこちらを見上げている。その瞳に、かつての迷いはない。

 

 

「いや……。カガリ、君はこれからどうする?」

 

 

「私は……ユウナのやり方は気に入らんが、あいつは今、私以上にこの国のために動いている。だから私は、代表としてではなく一人のアスハとして、できることをやるつもりだ」

 

 

 

 カガリの言葉に、アスランは決断した。

 

 

 

 

 ユウナがカガリを「自由」にしたのなら、自分もまた「自由」に動くべきだ。ただし、ユウナの思惑通りになるつもりはない。

 

 

 

 

(俺は……ミネルバへ行く。シン・アスカを……あのアスハを憎む少年に、俺が何を伝えられるかはわからない。だが、ユウナが彼に『何か』を仕掛けようとしているのなら、それを見届け、いざとなれば止める義務がある)

 

 

 

 こうして原作通り、ザフトに復帰することになったアスラン・ザラは、まだ知らない。

 

 

 

「アスランもあんまり根を詰めないでくださいよ。そんなに下手に出られると、こっちがパワハラしてるみたいで寝覚め悪いっすから」

 

 

「……ないわね。あれはちょっと、女子としては守ってあげたいっていうより、関わっちゃいけないタイプの闇を感じるわ」

 

 

「……ユウナ・ロマ・セイランに何かされたのか?」

 

 

 着任早々ものすごい状況になっており、パイロット3人組からドン引きされつつも、あのレイにすら心配される羽目になると。

 

 

 

 





アスランはミネルバに行きたいと決意したものの、カガリをおいていくのか?どのタイミングで言い出せばいいんだ?と少し迷っています。原作より情勢などで余裕があるせいでアスランもアスランしますよそりゃ。

どっちのアスランが見てみたいでしょうか?

  • 通常の優柔不断アスラン
  • 報連相の化身と化したアスラン
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