破滅フラグしかないボンボンに転生してしまった件 〜グフに踏み潰される運命なんて、全力で回避してやる!〜《完結》 作:kiakia
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最終決戦を数時間に控えたモルゲンレーテの深部。その一角にある薄暗い仮眠室で、ユウナはベッドに身を横たえていた。
ここ数日、彼はまともな睡眠をとっていない。各国政府との水面下での面倒な調整、物資の融通、そしてオーブ国内の防衛体制の最終確認や緊急避難対策などやるべきことは山積しており、彼の神経は完全にすり減っている。
枕元には、半分ほど中身の減ったミネラルウォーターのペットボトル。そしてその傍らには、医師から処方された強力な睡眠薬のシートが置かれていた。とはいえ今からこれを飲んでしまえば次に起きる時はデストロイのコックピットの中だとユウナは我慢して、ただ目を瞑り、以前の格納庫でのやりとりを思い出す。
それは、格納庫で機体を披露する直前に行われた、極秘の作戦会議でのことだった。
「というか副総裁、その……トダカさんはどこに囚われているんですか!? ファウンデーションの連中は一体どこに……!」
シンは、焦燥感を隠しきれない様子で身を乗り出していた。彼にとってトダカは、かつて自分をオーブから逃がしてくれた大恩人だ。その彼が敵の手に落ちているという事実は、シンの心を激しく掻き乱す。
ハイネによってある程度精神は落ち着いたとはいえここに至るまでトダカは何処にいるのか?と何ら説明されていないのだから当然だ。
「安心しろ、絞り込みはとっくに終わっている。敵の拠点はレクイエムに加えてL1だ。あそこには、かつてユーラシア連邦が放棄した『アルテミス要塞』がある。連中はそれを不法に占拠し、再利用している可能性が極めて高い」
そんなシンの焦りを受け止めるように、ユウナは説明する。アルテミス要塞……全方位を光波防御帯『アルテミスの傘』で覆われた、文字通りの難攻不落の宇宙要塞だ。
その名を耳にしたキラやアスランの表情が、一瞬で険しくなる。だが、ユウナは「厄介だが、突破する策はある」とだけ言い添え、シンの目を真っ直ぐに見据えた。
「トダカの居場所だが……まぁ、生きているからそこは安心しろ。量子ネットワーク通信の暗号化されたログから、微弱だが彼自身の生体IDの反応を拾っている」
「え……? いつの間にそんな……」
シンの呟きに、ユウナは小さく肩をすくめ、爆弾発言を事も無げに投下した。
「ぶっちゃけるとだな。コンパスに所属している全人員の装備、ならびに支給された食事には、超小型の量子発信機を仕込んである」
「「「はぁ!?」」」
シンだけでなく、その場にいたキラやアスラン、カナードやアグネスに至るまで全員が一斉に素っ頓狂な声を上げる。
もはやプライバシーもへったくれもない最低の発言に当然アグネスは皆を代表して猛抗議だ。皆の心が一つになって、汚ねぇドラえもんに非難の目を向ける。残念でもなく当然である。
「副総裁何考えてるの!?それは流石にプライバシーもへったくれもないじゃない!! 冗談でしょ!?」
アグネスが顔を真っ赤にして猛抗議する。だが、ユウナの表情は微動だにしない。実際の所は(そりゃキレるわ…)と一人納得しているのだが、ここで下手に誤魔化したり適当な発言をすれば皆の士気に関わると全てを暴露した。
「アコードの連中に関しては、最初から全力で警戒していたからな。彼らがいつ、どこで、どんな手段で拉致や暗殺を仕掛けてくるか分からん以上、全員の飯、軍服、パイロットスーツにナノサイズのチップを混ぜるのは当然の防衛策だろ?文句なら、こんな状況を作り出したファウンデーションに言ってくれ。一応言っておくが、お前たちの私生活を覗き見るような悪用は一度たりともしていない」
さらに、ユウナは技術的な補足を付け足した。この発信機が発する微弱な信号は、サハク家が管理するアメノミハシラを経由して複雑に偽装されている。そのため、敵であるファウンデーション側に逆探知される恐れは、確率的にほぼゼロに等しいのだと。
この辺りはミナとユウナがあらかじめ決めていた事だ。アメノミハシラは庇護を求めてきた国民を守る為世界最先端の通信システムが完備されており、ブレイク・ザ・ワールドやメサイア戦に於いてもオーブ正規軍に協力を行なっており、今回のトダカ救出にあたっても重宝していた。
そもそもだ。ユウナという男は、基本的には石橋を叩いて、叩いて、叩き壊す勢いで叩きまくり、最後に補強してやっと渡ることを決意する。そのようなレベルで常に「自身が死なない為」だけに立ち回ってきた男だ。
例えるなら、RPGをプレイする時は、次のエリアに行く前に周辺の雑魚敵を乱獲してレベルをアホほど上げ、店売りの最高装備と防具を全員分揃えるまでレベリングと金策を行うようなタイプ。病的なまでに不測の事態に備える、精神性が彼の根底には存在している。
Bデバイスのような非人道的な装備の投入にしろ、今回のナノチップ混入にしろ、確実に勝つ為ならば手段は選ばない。倫理観や良識で自らの首を絞める気など毛頭なかった。
同時にバレたとしても、例えばBデバイスであれば、『あの脳みそはボノボの脳みそだよ!』などと嘯くつもりあって、バレた時や各国に非難された時の逃げ道や言い訳すら用意しているのだから筋金入りだ。
それだけユウナは、自分にとっての「原作知識」というアドバンテージすら通用しないかもしれないアコードという理不尽な存在を心の底から恐れており、同時に彼らを確実に抹殺する為に裏で血を吐く思いで牙を研ぎ続けていたのだ。
キラやシン達という、この世界における最高にして最強の人材を絶対に敵に誘拐されないように立ち回りつつも、同時に「誘拐された後」の事すらも想定する。常に最悪の、そのまた最悪の想定を何重にも張り巡らせ、盤面をコントロールし続けてきた結果がこれだった。
すべては、このガンダムシリーズ最低の民度と称されるC.E.の世界で、自分が生き残るために――。
歴史の修正力という、本来なら存在しないオカルトめいた概念を、今もなお心の底で信じ込んでいるユウナ。彼は自分が「逃げ惑う最中にグフに踏み潰されて圧死する」という、本来辿るはずだった惨めな原作の末路を病的に恐れ続けていた。
だからこそ、その運命を乗り越えて大戦を生き延びた先ですら、怯え続け、その呪縛から逃れるための病的なまでの備えと執念が、結果として今回のアコードの隠れ家であるアルテミス要塞の早期発見という大きな成果に繋がったのだ。
もし仮に、トダカに発信機を仕込んでおらず、行方が完全に見失われていたとしたら、ユウナはあまりの事態の深刻さにその場で発狂し、みっともなく大泣きして取り乱していただろう。
そして、それを見かねたカナードに腹筋へ容赦のない一撃を叩き込まれ、ようやく強制停止して落ち着く羽目になっていたに違いない。具体的にいえばキラとアスランの原作の殴り合いが可愛く見えるほどにカナードにボコボコにされていたはずだろうが、それはそれとしてだ。
(そんなみっともない真似を皆の前に晒さなくて本当によかった……)と、内心で冷や汗を流しながら、ユウナは小さく安堵のため息を吐く。
だが、そんな内心のヘタレっぷりとは裏腹に、ユウナは会議の席で皆を見回しながら言葉を続けた。
「まぁ、そういう訳だから安心しろ。アルテミスを迅速に制圧して、トダカは必ず俺たちの手で連れ帰るさ。だが……。捕らえられてからそれなりの時間が経っている。最悪の場合、拷問で指の二、三本は無くなっているかもしれないし、連中のエゲつない自白剤のせいで、脳がパーになってしまっている可能性もある。……もし、その時は」
そこで言葉を止めたユウナの目は、あまりにも深く、ドス黒く濁っていた。もし、万が一にでもトダカをファウンデーションが再起不能にしていたのなら――。
彼は迷うことなく、連中にたった一人の生存すら許さないと言わんばかりに報復していたはずだろう。この世界を生き抜くために培った知識と権力、前世の記憶を総動員して、残虐に、残酷に、もはやこの世に産まれてきたことすら後悔させるために、徹底的にいたぶり抜いてやる。その双眸に宿ったのは、そんな漆黒の決意そのものだ。
「……落ち着け、ユウナ」
アスランの現実に引き戻すような声が、会議室の重苦しい空気をピシャリと叩く。辺りを見渡せば、キラやシンは初めて見るユウナのそんな闇堕ちムーブに驚いており。カナードだけは「やはりか」とため息を吐きながら無言で彼を見つめていた。
ユウナは身内の死という経験をまだ何度も味わってはいない。そうしないようにと立ち回ってきたのもあるし、自身を反ロゴス連合に引き渡さない為に戦い、散った兵士達の名前や顔も出来る限り記憶しようとしているが、あくまでそれは話した事もない味方の兵士に他ならない。
だが、ユウナはつい先日身内の明確な死を経験してしまった。バシレウスの艦内で過ごし、共にゲームをして楽しんだ傭兵部隊Xの面々。その中の数人はファウンデーションによってレクイエムで焼き払われて殉職してしまった。それがユウナの心を不安にさせており、トダカという恩人の死を連想させて焦っているのではないか?とカナードは理解していたのだ。
「……っ…す、すまん……。ちょっと、頭に血が上りすぎた……コホン! というわけで、全体への通達は以上だ。あとは個別で色々話すから解散! 渡したファイルにあるデータや作戦を、各自しっかりと頭に叩き込んでおいてくれ」
我に返ったユウナは、急速に目の色を元に戻すと、バツの悪そうな顔で頭を掻く。本人的には無意識なのだろうが、誰がどう見てもトダカという親代わりが自分のせいで捕虜になっている事実を気にしているのは明白であった。
一人一人にファイルを手渡し、彼は足早に会議をお開きにする。その後、数人と個別に短い話し合いを終えたユウナは、足早に彼専用に用意された仮眠室へと戻っていく。
それから、丸一日が過ぎた。
ユウナは格納庫の奥にある仮眠室に引きこもるようにして、たった一人で過ごしていた。やったことといえば、各機体や作戦の最終調整のチェックと、すり減った神経を無理やり休めるための、睡眠薬に頼った仮眠の繰り返しだ。
「はぁ……もう二度と、あんなクソ連中の悪口なんぞ考えることすらしたくねぇな……」
ベッドの上で毛布にくるまりながら、ユウナはぽつりと呟いた。脳をフル回転させ、常に最悪を想定し続ける行為は、想像以上に精神を蝕む。
ふと、他の連中のことが頭をよぎる。出撃前の残り少ない時間。キラ、シン、アスランの三人は、それぞれの愛する女と過ごせただろうか。カナード、ハイネ、アグネスは、今頃どこで何をして尖っているのやら……そんなことをとりとめもなく考えていた、その時だった。
――コンコン。
静まり返った部屋のドアをノックする、控えめな音が響くのであった。
ドアの向こうから響いた遠慮がちなノックの音に、俺は毛布から首だけを出して「どうぞ」と短く応じる。すると、電子ロックが解除される。
「……ユウナさん。あの、少しだけ、お時間は大丈夫でしょうか……?」
おずおずと姿を現したのはミーアだ。いつもの派手なステージ衣装や影武者としてのラクスの礼装ではなく、落ち着いた私服に身を包んだ彼女は、どこか所在なさげに指を弄んでいる。
大舞台で何万人もの観客を熱狂させる歌姫の面影はそこにはなく、ただの不安げな一人の少女がそこにいた。
「……ああ、構わんが…ちょうど頭を休めていたところだ。座ってくれ。悪いなロクな歓迎もできなくて」
俺がベッドの上で上体を起こすと、ミーアは小さく会釈をして、部屋に備え付けられたパイプ椅子に腰掛けた。
ちなみに俺の服装はいつものオーブ軍の軍服だ。何か起きた時に着替える手間も面倒くさいので、複数の軍服を用意して寝る時も同じ服を最近は着ている。この辺りはブルーコスモスの拠点を襲撃するときなんかは大体同じ格好だな。良かった、寝巻き姿を乙女に見られなくて。
数時間後には、俺たちはバシレウス、そして改修を終えたミレニアムと共に宇宙に向けて出航する。
そんな俺たちの動きを、ファウンデーションのアコードどもが黙って見過ごすはずがない。自分たちの計画に泥を塗ったオーブに対し、報復と恫喝のために必ずや通信を入れてくるはずだ。
俺は、事前に通信でミーアに伝えておいた作戦の全貌を、改めて脳内で整理する。
ミレニアムが出航した後、ミーアにはカガリのすぐ横で待機してもらう予定だ。オルフェ宰相はラクスのツガイとなって世界を導く為に産み出された存在であり、彼らは異常なほどにラクスの身柄を欲しがっている。
だが本物のラクスは、キラと共にストライクフリーダムに乗って出撃するため、この場にはいない。だからこそ、ミーアに影武者として役目を果たしてもらうのだ。
画面の向こうに『ラクス』が映っていれば、オルフェは引き金を引くことを躊躇せざるを得ない。オーブを焼けば、自分が何よりも欲したラクスを自らの手で殺すことになる。それを理解させ、敵の最大の矛であるレクイエムを封じるための生体デコイ――。
我ながら、反吐が出るほど悪趣味で冷酷……いや、クソカスな作戦だ。ミーアは、静かに俯いていたが、俺はベッドから脚を下ろし、彼女の前に屈んで、視線を同じ高さに合わせた。
「……すまん、ミーアお前には影武者としての仕事を辞めて、これからは自分自身の名前で、新しい人生を歩んでほしいと言っていたはずなのに。結局俺の都合で、また命の危険に……本当に、申し訳ないと思っている」
彼女の安全な第二の人生を保証すると約束したのに、最悪の場合はレクイエムの光に焼かれるかもしれない最前線に彼女を立たせようとしている。自分のヘタレな保身のために。
だが、ミーアはゆっくりと顔を上げると、ふわりと柔らかく、だが芯の通った微笑みを俺に向けてくれた。
「……本当に、悪いと思ってますか?」
「当たり前だろ。……悪かったと思ってるさ」
ふとした、悪戯っぽい声を聞いた瞬間、俺は即答した。だが、どうしても彼女の目を真っ直ぐに見ることができなかった。
どんなに綺麗事を並べたところで、俺が彼女を危険に晒している事実は変わらない。非難されて当然だ。だからこそ、俺は気まずさに視線を泳がせていた。
「ふふ、いいんですよ。今回は、あなたが私の命を救ってくれたことへの恩返しですから」
「恩返し、ね……」
「ですが!」
ミーアはそこで、ぴょこんと人差し指を立てて俺に詰め寄ってくる。
「以前、ファウンデーションで影武者を引き受けた時、私『貸し一つですからね?』って言ったの、覚えてますか?」
「ああ、当たり前だ。覚えているとも」
俺は頷いた。踏み倒す気なんて毛頭ない。
新たに歌姫として活動しようとしていた時期に、唐突に呼び出された挙句。情報も制限されて影武者として働いてくれだぞ?結局デュランダルと変わらないどころか、デュランダルは少なくとも彼女の身の安全は保証できる後方でプロパガンダを命じていたが、俺の場合は敵国にブチギレられるのを想定した上での民間人であるミーアの派遣を行ったんだ。
普通にデュランダル以下だろこれ……彼女はその身柄をオーブに託してる関係上、俺の言うことには逆らえない。それを承知で貸し一つと嫌な顔をせずに役目を果たしてくれた彼女には出来る限りの誠意は示したいと思ってる。
「自分に出来ることなら何だってするさ。流石に『今すぐ死んでくれ』なんて言われるのは無理だが……金なら出来る限り自腹で用意する。歌うために必要なサポートだって何でもしてやる。お前が望むなら、な。……まあ、一回だけだけどな」
俺が少し照れ隠し気味に、釘を刺すようにそう言った――その瞬間だった。
――カチリ。
静かな部屋に、不自然に小さな機械音が響いた。
「えっ……?」
音がした方に視線を落とすと、ミーアの小さな片手には、いつの間にか小さなボイスレコーダーが握られていた。そしてその赤いランプは、しっかりと録音中を示している。
「お、おい、ミーア……それ……」
何を録音したんだ、とツッコミを入れようとした、まさにその時。
「『何でもする』って、今、言いましたよね……?」
「――ぶふっ!?」
甘く、どこか有無を言わせぬ響きを帯びた声と共に、視界がぐらりと反転した。気づいた時には、俺はベッドの上に背中から倒れ込んでおり、その視界の先には、俺の両肩を小さな手でベッドに縫い付けるようにして、上から俺を覗き込んでいるミーアの顔があった。
……えっ!? いや、なんで!?
さっきまでしんみりとした、話をしていたよね!?どうしてこうなった!? と内心でめちゃくちゃに混乱する俺の思考を置き去りにして、ミーアは至近距離からはっきりと言葉を紡いだ。
「ユウナさん。貴方のことが好きです。付き合ってください。……いや、付き合うと言うか、結婚してください!」
その顔はポッと微かに赤らんでいたが、そこに照れ隠しや冗談の色は一切なかった。完全に本気だ。絶対に曖昧な返答で逃げることは許さないと言わんばかりの、強い意志を秘めた瞳が、俺の目を真っ向から射抜いていたのであった。
本来この作品でユウナが最後にいい感じになるヒロインはとある別の女性でしたが、今作では徹底的にミーアとフラグを建てまくった結果。彼女が強襲を仕掛ける事に。今後、もしミーアが強襲を仕掛けなければと言うIFでそのヒロインについてのお話も短編でやりたいですね。
何故ミーアがこんな事をしたのか?といえばまた後日。唐突に都合の良い女の子が生えてきたわけでもなく色々とありました…
ユウナのアコード対策について。果たしてユウナはアコードの無力化の為になりふり構わない外道な手段(ユウナ視点)を取るべきか?
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原作通り。
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平和の為に覚悟を決める。